2026年10月の前半は、会社の業務に響くクラウドや業務サービスの障害・停止が相次ぎました。IDCFクラウドのランサムウェア被害のように10日を超えて続くものから、合わせて20分ほどで戻ったものまで、規模も原因もさまざまです。
ここでは、10月1日〜18日に起きた11件を、当事者の公式の発表だけで図解します。「止まったら何が止まるか」「代わりをどう用意するか」を考える材料にしてください。順位や優劣をつけるものではありません。
10月前半に止まったクラウド・業務サービス11件
2026年10月1日〜18日に止まったクラウド・業務サービス11件(編集部整理)作成: 編集部 / もとの資料: 各社・各機関の公式の発表・稼働状況のページ
図に出した内容を、表でも示します。時刻は日本時間に直しています(Exchange Serverの日付だけは米国時間)。
| 日付(日本時間) |
サービス |
何が止まったか |
今の状態(10月18日) |
公式の出典 |
| 10/7 3:40頃〜 |
IDCFクラウド(東日本リージョン1) |
4ゾーンの仮想サーバーが停止し、再起動もできない。ランサムウェア攻撃で、495の企業や自治体に影響 |
4ゾーンは別環境での再構築を案内。10/18にバックアップサービスを再開。スナップショット機能は停止中 |
IDCフロンティア 第6報 |
| 10/7 公表 |
e-Gov電子申請アプリ |
9/26提供の新版で、起動・ログインできない、接続エラーなどの不具合 |
10/16に修正版(Windows版3.0.7・macOS版2.0.7)を公開 |
e-Gov |
| 10/8 0:06〜0:16と1:52〜2:01 |
GitHub |
保存・変更の操作が失敗。2回で計約19分。1回目は1万2,000超の組織で失敗 |
復旧 |
GitHub Status |
| 10/8 4:17〜5:10 |
Ubuntuの更新元(Canonical) |
archive・securityが約53分止まる。CanonicalはDDoS攻撃と公表 |
10/14に全サイトの復旧を掲示 |
Canonical |
| 10/8 20:00〜10/10 1:46 |
Google Cloud Storage(us-central1) |
書き込みの遅延とエラー。再発を含め計18時間11分 |
復旧。10/14に障害報告を公表 |
Google Cloud |
| 10/10 0:35〜10/13 2:03 |
SlackのiOSアプリ |
チャンネルを開くとアプリが閉じる |
修正版のアプリで解消 |
Slack Status |
| 10/12 7:29〜9:42 |
Zoom Scheduler |
一部の利用者で性能が低下 |
解消 |
Zoom |
| 10/13〜(米国時間) |
Exchange Server(2016・2019・SE) |
10月のWindows Serverの更新のあと、OWAに入れない、メールが滞るなど |
更新は外さず、設定で回避するよう案内 |
Microsoft |
| 10/15 9:00頃〜 |
mints(民事裁判書類の電子提出) |
サインインできない、事件が表示されないなど |
10/16 9時時点で支障なしを確認 |
最高裁判所 |
| 10/16 12:40頃 |
ドコモの緊急速報「エリアメール」 |
緊急地震速報が、北海道から東海・伊豆諸島までの対象地域に配信されず |
10/17 19:04に対応完了 |
NTTドコモ |
| 11/1 9:45〜23:45(予定) |
e-Gov電子納付 |
電子納付と、納付をともなう一部の申請の受付を休止 |
10/14に公表された計画の休止 |
e-Gov |
漏えいの面から見たまとめは、最近相次ぐ国内の情報漏えい・ランサム10件の図解にあります。この記事は「止まった・使えなくなった」に絞っています。
影響が大きく、続いている3件
IDCFクラウドは事業者のバックアップの機能も止まった
IDCフロンティアは10月7日、IDCFクラウドの東日本リージョン1で、ランサムウェア攻撃による障害が起きたと公表しました。ランサムウェアは、データを暗号化して使えなくする攻撃です。対象はtesla・henry・pascal・jouleの4ゾーンで、仮想サーバーが止まり、再起動もできなくなりました。
10月8日の第3報では、4ゾーンのデータは取り出しや復元が困難な見通しで、復元は利用者自身のバックアップからだけ可能としていました。10月14日の第5報では、スナップショット機能を使っていた194の利用者について、バックアップの取り出しが可能と確かめたと更新しています。同じ報で、外部へのデータの流出はなかったと判断しています。
10月18日の第6報で「IDCFクラウド バックアップ」の提供が再開されました。ただし、スナップショット機能は安全の確認のため停止したままです。事業者の中にあるバックアップの機能も、同じ事故で使えなくなりうることを示しています。
Exchange Serverは更新のあと、時間をおいて不安定に
Microsoftは10月16日(米国時間)、10月のWindows Serverの更新を入れたExchange Serverが不安定になる報告があると公表しました。OWA(ブラウザでメールを見る画面)に入れない、メールの送信待ちがたまって配送が止まる、といった症状です。
引き金はExchangeの更新ではなく、Windows Serverの更新(KB5126646など4本)です。負荷によって出方が違い、出ないサーバーもあるとしています。Microsoftは更新を外さず、レジストリの設定を1つ足して再起動する回避策を案内しています。
e-Govは新版の不具合に続き、11月1日に計画の休止
e-Gov電子申請アプリは、9月26日に提供した新版で不具合が続き、10月7日にお知らせが出ました。画面が白くなってログインできない、起動時に接続エラーで終わる、社内の中継サーバー(プロキシ)の認証エラーで起動できない、といった症状です。旧版で一時保存していたデータは、新版に初めてログインした時点で削除され、復元できないと案内されています。10月16日に修正版が公開されました。
これとは別に、11月1日(日)9時45分〜23時45分は、ペイジー(税や保険料をネットで払う仕組み)の基盤の休止に合わせて、e-Govの電子納付が止まります。時間は前後する場合があるとされています。
止まったものの種類と、代わりの手段
11件を、止まったものの種類で5つに分けました。代わりの手段は編集部の整理で、各社の案内ではありません(e-Govの休止日と、Exchange Serverの回避策は公式の案内です)。
止まったものの5つの種類と、平時に用意できる代わりの手段(編集部整理)作成: 編集部 / もとの資料: 各社・各機関の公式の発表を編集部が整理
| 種類 |
今回の例 |
止まると何が止まるか |
代わりの手段(編集部の整理) |
| クラウド基盤・保存先 |
IDCFクラウド、Google Cloud Storage |
社内システム・Webサイト・データ |
別の事業者・別のリージョンにバックアップを置く。戻す先と手順、かかる時間を書いておく |
| 業務SaaS・アプリ |
Zoom Scheduler、SlackのiOSアプリ、GitHub |
会議の予約・社内の連絡・開発 |
PC版・ブラウザ版で続ける。メールや電話など別の連絡手段を決める。稼働状況のページを購読する |
| 社内に置くサーバーと更新 |
Exchange Server、Ubuntuの更新元 |
社内メール・サーバーの更新 |
検証機と一部の台から段階的に更新する。公式の回避策を控える。更新元の復旧後にやり直す |
| 行政・公的な手続き |
e-Gov電子申請アプリ、e-Gov電子納付、mints |
社会保険の申請、税・保険料の納付、裁判書類の提出 |
期限より前に出す。休止日を予定表に入れる。新版は1台で試してから広げる |
| 通信・防災の連絡 |
ドコモの緊急速報「エリアメール」 |
社員のスマホへの緊急地震速報 |
テレビ・ラジオ・自治体の防災情報も使う。安否確認の仕組みを通信会社の通知と別に持つ |
並べて見えた傾向(編集部の整理)
ここからは、11件を並べて編集部が気づいたことです。各社の発表に書かれた事実をもとにしています。
攻撃だけが止まる理由ではない
攻撃と公表されたのは2件です(IDCFクラウドのランサムウェア、CanonicalへのDDoS)。GitHubは、保守作業で入れ替えた機械が古い記録のまま動き、書き込みを存在しないデータベースのサーバーに向けたと説明しています。Google Cloud Storageは、負荷分散の設定の変更がきっかけだったと報告しています。
Exchange Serverは月例の更新のあと、e-Govのアプリは新版の提供のあとに起きました。ドコモは、受け取ったデータの形式が一部違い、システムが正しく認識できなかったと説明しています。使う側からは、原因が攻撃でも設定の変更でも「止まる」ことは同じです。
止まっている時間の幅が大きい
GitHubは2回で計約19分、Zoom Schedulerは約2時間、Google Cloud Storageは計18時間11分、SlackのiOSアプリは約3日でした。IDCFクラウドは10月18日の時点で、被害を受けた4ゾーンの再開の発表がありません。
数十分なら待てば済みますが、数日続くと、代わりの手段がない業務は止まります。どのくらい止まったら代わりに切り替えるか、目安を決めておくと判断に迷いません。
予告される停止と、原因が書かれない障害もある
e-Gov電子納付の休止は、半月以上前に予告されました。予告された停止は、予定表に入れておけば避けられます。
一方で、Zoom Schedulerとmintsは、公式の発表に原因の記載がありません。原因が分からないうちは推測で判断せず、公式の続報と稼働状況のページを見ます。GitHubは10月12日の夜にも、IssuesやPull Requestsでエラーが出ました(GitHubの10月12日の障害の記事)。
影響する会社・しない会社
- 影響する: IDCFクラウドの東日本リージョン1(4ゾーン)を使っていた会社と、そこで動くサービスを使う会社。委託先がIDCFクラウドを使っていた場合も含みます。
- 影響する: 社内にExchange Server 2016・2019・SEを置き、10月のWindows Serverの更新を入れた会社。
- 影響する: e-Gov電子申請アプリで社会保険・労働保険などを申請する人事・労務の担当、e-Govの電子納付で税や保険料を納める経理の担当。
- 影響する: ドコモの社用スマホに届く緊急地震速報を前提に、防災の連絡を組んでいる会社。
- 影響する: GitHub、Zoom Scheduler、SlackのiOSアプリ、Google Cloud Storageのus-central1を業務で使う会社。
- 影響しない: IDCFクラウドのTypeS(旧ホワイトクラウド ASPIRE)とIDCFプライベートクラウドの利用者。IDCフロンティアが対象外と公表しています。
- 影響しない: 社内にExchange Serverを置いていない会社。Microsoftの案内の対象は、社内に置くExchange Server 2016・2019・SEです。
今日からできること
- 止まると困るサービスを1枚にまとめる: 業務ごとに、使っているクラウド・SaaS・行政の窓口と、その稼働状況のページを書き出します。委託先が使っているクラウドも聞いておきます。
- 各行に代わりの手段と判断する人を書き足す: ブラウザ版、別の連絡手段、紙や電話など「止まったら何で続けるか」と、切り替えを決める人を決めます。
- バックアップの置き場所を確かめる: 使っている事業者の中だけにないかを見ます。別の事業者か別のリージョンにも控え、実際に戻せるかを試します。
- 予定された停止を予定表に入れる: 11月1日(日)9時45分〜23時45分のe-Gov電子納付の休止を入れ、その時間に納付や申請を組まないようにします。
- 稼働状況のページの通知を担当者に届ける: Zoom・Slack・GitHub・Google Cloudなどの購読を設定し、通信会社のお知らせも確認先に加えます。
障害そのものは、使う側では防げないことが多くあります。それでも、止まったときに何で続けるかを決めておけば、業務が止まる時間は短くできます。今回の11件を、自社の一覧を作るきっかけにしてみてください。