金融機関でAIの利用が広がるなかで、国際的な「お手本」がまとまりました。金融安定理事会(FSB)は2026年10月15日、金融機関がAIを責任を持って導入するための12の「健全な実務慣行」の最終報告を公表し、日本では金融庁と日本銀行が10月16日に案内しました。拘束力のある規制ではありませんが、AIの利用の記録や人による監督、外部のAIへの依存の管理など、金融機関の情シスや、金融機関にサービスを納める会社が確かめることが並んでいます。
何が公表されたのか
FSBは、G20のもとで各国の金融当局の作業を調整する国際機関です。今回の最終報告は、2026年6月に出した案への意見を反映したものです。FSBは、12項目を、金融機関が自社の状況やリスクに合わせて使い、サイバーや外部委託の管理など既存の枠組みに組み込む「実務の道具箱」と位置づけています。そのうえで、金融機関の取締役会と経営陣に、AIの統治やリスク管理の枠組みを作るときに参照するよう強く促しています。
12の実務慣行の中身
12項目は、2つのグループに分かれています。
| グループ |
実務慣行 |
| 組織全体のAIの統治 |
(1)取締役会と経営陣が、AIの導入と事業・リスクの許容度・戦略との整合を決め、監督する (2)役割と責任をはっきりさせた統治の枠組みを保つ (3)AIのリスクをリスク管理の枠組みに組み込み、AIの利用をきちんと記録する (4)学び続け、見直し続ける |
| AIを使う過程全体のリスク管理 |
(5)用途ごとの重要さとリスクを、導入時とその後に評価する (6)適切なAIの技術を選ぶ (7)データを適切に管理する (8)AIの判断の説明のしやすさと、それを補う統制を考える (9)用途ごとの性能を評価する (10)人による適切な監督 (11)AIに関わるサイバーとICTのリスクを管理する (12)外部のAIへの依存によるリスクを管理する |
FSBの発表。12の実務慣行を、組織全体の統治とAIのリスク管理の2つに分けている出典: 金融安定理事会(FSB)(引用)
報告には、金融機関がAIで得た効果や、規模に合わせて実務慣行を当てはめた事例も載っています。FSBは、AIの技術の変化に合わせて、必要に応じて見直すとしています。暮らしの目線での解説は、西のITメディアの金融のAI利用に国際的な指針 ローン審査や不正検知の「責任」にあります。
影響する会社・しない会社
- 影響する: 銀行、証券、保険などの金融機関。とくに、生成AIや自分で判断して動くAIを業務に入れ始めている会社は、統治とリスク管理の見直しの材料になります。
- 影響する: 金融機関にシステムやAIのサービスを納める会社。12項目に「外部のAIへの依存の管理」があるため、委託元から、AIの使い方や管理について説明を求められる場面が増えることが考えられます。
- 参考になる: 金融以外でも、AIの利用の社内ルールを作ろうとしている会社。項目の並びは、一般の会社の点検表としても使えます。
- 直接は関係しない: AIを業務で使っておらず、金融機関との取引もない会社。
情シスが今日やること
- 社内のAIの利用を一覧にします。どの部署が、どのAI(自社で作ったもの、SaaS、AIの機能が入った製品)を、どの用途で使っているかを記録します。
- 用途ごとに、重要さとリスクを評価します。顧客への判断に関わるもの、個人情報を扱うものは、優先して人による監督や説明の仕組みを決めます。
- AIに関わるサイバーのリスクを、既存のセキュリティの管理に組み込みます。AIのAPIキーやデータの流れ、AIのサービスが止まったときの業務の続け方も対象です。
- 外部のAIへの依存を洗い出します。特定のAIの提供元に頼りすぎていないか、委託先が使うAIも含めて確かめ、契約で確認できる項目(データの扱い、障害時の連絡など)を見直します。
- 金融機関にサービスを納めている会社は、自社のAIの使い方と管理を説明できる資料を用意しておきます。
書かれていないこと
- 日本の金融庁が、今回の実務慣行を監督にどう反映するか
- 実務慣行ごとの具体的な数値の基準(規模やリスクに応じて当てはめる考え方)
- 報告に載った事例の金融機関の名前(公表の範囲で確かめていない)
2026年10月17日時点の内容です。