オンプレミス(自社で運用 する形)のExchange Serverで、10月のWindows の更新を入れた後に、Outlook on the web(OWA)に入れない、メール が送れずにたまる、といった不具合が出ています。Microsoftは10月16日、原因はExchangeではなくWindows Serverの更新にあるとして、回避の方法を公表しました。更新は削除せず、レジストリの設定を変えるよう案内しています。
何が起きているか
MicrosoftのExchangeのチームによると、10月13日(米国時間)の月例の更新の後、Exchange Serverが不安定になったという報告が寄せられています。告知とWindowsの既知の問題のページが挙げる主な症状は、次のとおりです。
OWAで「MapiExceptionMdbOffline: Unable to make connection to the server.(hr=0x80004005, ec=1142)」のエラーが出て、アプリケーションログにイベントID 1006が記録される
Outlookから送ったメールが送信トレイに残ったまま届かない
メールのキュー(送信待ちの列)が一日のうちに伸び、配送がほぼ止まる
DAG(複数のサーバーでメールボックスを冗長化する仕組み)のメンバーが、クォーラム(過半数の合意)に届かない
メールボックスの複製の間に、メールボックスに届かないことがある
再起動すると一時的に直ることがありますが、Microsoftは、問題は一定の時間がたってから出るとしています。対象はExchange Server 2016、2019、Subscription Edition(SE)です。
原因はWindows Serverの更新で入った上限
Microsoftは、Exchangeの10月のセキュリティ更新とは関係がないとしています。Exchangeの更新を入れていなくても起き、対象のWindowsで動くどの版のExchangeでも起こりえます。原因として挙げているのは、次のWindows Serverの更新です。
Windows Server
原因として挙がった更新(10月13日)
Windows Server 2025
KB5126646
Windows Server 2022
KB5126655
Windows Server 2019
KB5126651
Windows Server 2016
KB5126868
Windowsの既知の問題のページによると、10月の更新で、エンドポイントマッパー(RPCという通信で、接続先を案内する仕組み)が使うメモリーに、既定の上限が入りました。同時に受け付ける問い合わせは512件までです。Exchangeのように負荷の高い使い方では、この上限が足りないことがあるとしています。
Windows Server 2025の既知の問題のページ。状態はMitigated(回避策あり) 出典: Microsoft Learn(Windows release health) (引用)
影響の出方はサーバーの負荷で変わり、Microsoftは、一度も問題が出ないサーバーもあるとしています。Windowsの既知の問題のページでは、状態は「Mitigated(回避策あり)」で、調査を続けているとしています。この項目は、10月17日時点でWindows Server 2025と2022のページに載っています。2019と2016は、Exchangeのチームの告知が対象の更新を挙げています。
Microsoftが勧める対処
Microsoftは、10月のWindows Serverの更新を削除しないよう勧めています。代わりに、次の手順を案内しています。
Exchange Serverで、管理者として開いたコマンドプロンプトから、下のコマンドを実行する
サーバーを再起動する
再起動の後、問題がまた起きないかを見る。また起きたら、値をさらに上げる
reg add "HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Rpc" /v EpmapSavedContextCap /t REG_DWORD /d 65536 /f
この設定は、エンドポイントマッパーが同時に受け付ける問い合わせの上限を上げ、使えるメモリーを増やすものです。Microsoftは、これまでに支援した事例ではこの方法で解決したとしています。ほかに、法人向けのMicrosoftのサポートを通じて、追加の回避策も用意しているとしています。
Exchangeのチームのブログのコメント欄では、Microsoftの担当者が、臨時の更新(定例外の修正)を出すと約束するものではないと答えています。今のところ、公式の回避策は設定の変更です。
Exchangeの10月のセキュリティ更新は別の話
10月には、Exchange Server自体にも重大な脆弱性の修正が出ています(詳しくはオンプレExchangeに重大脆弱性 至急適用を、2016/2019はESU終了 )。今回の不安定化は、このExchangeの更新が原因ではありません。Windowsの更新の不具合を理由に、Exchangeの脆弱性の修正まで止める必要はありません。
影響する会社・しない会社
影響する: オンプレミスのExchange Server 2016、2019、SEを使い、10月のWindows Serverの更新(KB5126646、KB5126655、KB5126651、KB5126868)を入れた会社。とくに、メールの量が多く負荷の高いサーバーです
影響する: DAGでメールボックスを冗長化している会社。クォーラムに届かない症状も報告されています
影響する: Exchange Onlineへ移った後も、ハイブリッドの構成などでオンプレミスのExchange Serverを残している会社。残したサーバーに上の更新が入っていれば対象です
影響しない: Exchange Online(Microsoft 365)だけを使う会社。今回の告知は、自社で運用するExchange Serverについてのものです
影響しない: 10月のWindows Serverの更新をまだ入れていない会社。ただし、入れるときにこの設定を一緒に入れるかを決めておきます
情シスが今日やること
Exchange Serverが動くWindows Serverに、10月の更新(上の表のKB)が入っているかを確かめる。委託先が運用している場合は、委託先に聞く
症状が出ていないかを見る。アプリケーションログのイベントID 1006、メールのキューの長さ、OWAのサインイン、送信トレイに残るメールを確かめる
症状が出ている、または負荷の高いサーバーでは、Microsoftの手順でレジストリを設定し、再起動する。DAGのメンバーは、1台ずつ順に作業する(編集部の補足)
更新は削除しない。設定の後も同じ症状が出たら、値を上げるか、Microsoftのサポートに相談する
まだ更新を入れていないサーバーは、更新とこの設定を同じ作業の時間枠で入れる計画にする(編集部の補足)
月例の更新はセキュリティのために欠かせない一方で、業務のサーバーの動きを変えることがあります。今回のように、原因が別の製品の更新にあることもあります。メールのような止められないサーバーは、更新の後の数日間、ログやキューの長さを見る手順を決めておくと、早く気づけます。