基幹システムの刷新や運用の委託では、SIer(システムの設計から開発、運用までを請け負う会社)が発注先の候補になります。その相手の規模や人の数を、公開された数字で見たことはあるでしょうか。この記事では、上場しているSIer・ITサービス16社の最新の有価証券報告書(有報)から、売上・営業利益率・従業員1人あたり売上を表と図にまとめます。
16社の売上・営業利益・従業員数を1つの表で見る
数字は、各社が金融庁のEDINET(有報などを無料で読める開示サイト)に出した最新の有報から取り出しました。確かめた日は2026年10月7日です。計算の式と丸め方は次のとおりです。
- 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上(小数1桁に四捨五入)
- 従業員1人あたり売上 = 売上 ÷ 従業員数(万円未満を四捨五入)
- 売上と営業利益は、億円未満を四捨五入(率と1人あたりは、丸める前の数字で計算)
売上は、IFRS(国際会計基準)の会社は「売上収益」、日本基準の会社は「売上高」を使っています。表は売上の大きい順で、社名の「株式会社」は省きました。
| 会社 |
決算期 |
会計基準 |
売上(億円) |
営業利益(億円) |
営業利益率 |
従業員数(連結) |
1人あたり売上(万円) |
有報 |
| 日本電気(NEC) |
2026年3月期 |
IFRS |
35,827 |
3,599 |
10.0% |
101,800 |
3,519 |
有報 |
| 富士通 |
2026年3月期 |
IFRS |
35,030 |
3,483 |
9.9% |
99,203 |
3,531 |
有報 |
| 大塚商会 |
2025年12月期 |
日本基準 |
13,228 |
899 |
6.8% |
10,079 |
13,124 |
有報 |
| 野村総合研究所 |
2026年3月期 |
IFRS |
8,147 |
583 |
7.2% |
16,894 |
4,822 |
有報 |
| TIS |
2026年3月期 |
日本基準 |
5,965 |
762 |
12.8% |
21,598 |
2,762 |
有報 |
| BIPROGY |
2026年3月期 |
IFRS |
4,337 |
426 |
9.8% |
8,801 |
4,928 |
有報 |
| 日鉄ソリューションズ |
2026年3月期 |
IFRS |
3,813 |
442 |
11.6% |
10,276 |
3,711 |
有報 |
| インターネットイニシアティブ |
2026年3月期 |
IFRS |
3,454 |
348 |
10.1% |
5,533 |
6,242 |
有報 |
| 日本オラクル(個別) |
2026年5月期 |
日本基準 |
2,851 |
898 |
31.5% |
2,097(個別) |
13,594 |
有報 |
| 日本ビジネスシステムズ |
2025年9月期 |
日本基準 |
1,726 |
76 |
4.4% |
2,839 |
6,079 |
有報 |
| 電通総研 |
2025年12月期 |
日本基準 |
1,649 |
229 |
13.9% |
4,618 |
3,570 |
有報 |
| DTS |
2026年3月期 |
日本基準 |
1,352 |
164 |
12.2% |
6,135 |
2,204 |
有報 |
| オービック |
2026年3月期 |
日本基準 |
1,352 |
888 |
65.7% |
2,256 |
5,993 |
有報 |
| SHIFT |
2025年8月期 |
日本基準 |
1,298 |
156 |
12.0% |
11,688 |
1,111 |
有報 |
| NSD |
2026年3月期 |
日本基準 |
1,178 |
191 |
16.2% |
4,555 |
2,586 |
有報 |
| TKC |
2025年9月期 |
日本基準 |
835 |
161 |
19.3% |
2,964 |
2,816 |
有報 |
日本オラクルは、売上・営業利益・従業員数とも個別(提出会社だけ)の数字です。ほかの15社は連結(グループ全体)の数字です。
SIer・ITサービス16社の売上を大きい順に並べた図(各社の最新の有報から)作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
売上は835億円から3兆5,827億円まで 自社の案件の大きさを測る
16社の売上は、TKCの835億円から日本電気の3兆5,827億円まで開きがあります。1兆円を超えるのは日本電気、富士通、大塚商会の3社です。12社は1,000億円から1兆円の間に入ります。
発注する側が見たいのは、順位よりも「自社の案件が相手にとってどのくらいの大きさか」です。次の式で目安を出せます。
- 自社の案件の大きさ = 自社の年間の発注額 ÷ 発注先の売上
例えば年間1億円を発注する場合、売上835億円の会社では約0.12%、売上3兆5,827億円の会社では約0.003%です。割合が小さいほど悪い、という意味ではありません。体制や窓口を話し合うときに、自社がどのくらいの大きさの顧客かを知っておく材料になります。
営業利益率は4.4%から65.7%まで 高い順に並べる
営業利益率は、売上のうち本業のもうけがどのくらい残ったかを示す数字です。16社を高い順に並べると、次のようになります。
| 営業利益率 |
会社 |
| 20%以上(2社) |
オービック 65.7%、日本オラクル 31.5%(個別) |
| 10%以上20%未満(9社) |
TKC 19.3%、NSD 16.2%、電通総研 13.9%、TIS 12.8%、DTS 12.2%、SHIFT 12.0%、日鉄ソリューションズ 11.6%、インターネットイニシアティブ 10.1%、日本電気 10.0% |
| 10%未満(5社) |
富士通 9.9%、BIPROGY 9.8%、野村総合研究所 7.2%、大塚商会 6.8%、日本ビジネスシステムズ 4.4% |
16社とも、営業利益は黒字でした。野村総合研究所は、売上収益8,147億円に対して営業利益が583億円で、営業利益率は7.2%です。
この数字になった理由は、今回のデータからは分かりません。くわしくは、同社の有報のセグメント情報で確かめてください。
営業利益率は、機器の販売・開発・運用といった売上の中身や、原価のかかり方で変わります。どの会社の売上がどんな中身かは、この表からは決められません。各社の有報の「事業の内容」で、売上の中身を確かめてください。
16社の営業利益率(高い順)と、従業員1人あたり売上の表作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
1人あたり売上は1,111万円から1億3,594万円まで
従業員1人あたり売上は、人の数に対して売上がどのくらいかを見る数字です。高いほうから、日本オラクル1億3,594万円(個別)、大塚商会1億3,124万円、インターネットイニシアティブ6,242万円の順でした。低いほうは、SHIFT 1,111万円、DTS 2,204万円、NSD 2,586万円です。
この数字も、売上の中身(機器の販売、ソフト、開発、運用)で変わります。低いことが、効率の悪さを意味するわけではありません。
発注する側にとっては、人の数そのものも手がかりです。連結の従業員数はグループ全体の人数で、有報には提出会社だけの人数も載っています。例えば富士通は連結99,203人に対して提出会社が32,224人、TISは連結21,598人に対して提出会社が6,066人です。
自社の案件に入る人がどの会社の所属かは、提案書の体制図で確かめます。従業員数の数え方は、各社の有報の「従業員の状況」で確かめてください。
研究開発費の割合は12社で3.9%以下
研究開発費の割合は、研究開発費 ÷ 売上で計算しました。データに研究開発費があったのは12社です。富士通が3.9%(1,373億円)、日本電気が2.9%(1,052億円)、オービックが2.2%(30億円)で、ほかの9社は1.5%以下でした。
インターネットイニシアティブ、TKC、日本オラクル、日本ビジネスシステムズの4社は、取り出したデータにこの項目がありませんでした。ゼロという意味ではありません。有報の「研究開発活動」で確かめてください。
数字を比べるときの5つの注意
この表と図は、同じ物差しで測ったものではありません。比べるときは、次の5つを頭に置いてください。
| 注意 |
中身 |
| 会計基準が違う |
IFRSが6社、日本基準が10社。売上は「売上収益」と「売上高」で、営業利益も別の項目から取っている |
| 決算期が違う |
2026年3月期が10社。ほかは2025年8月期、9月期、12月期、2026年5月期で、最大9か月ずれる |
| 日本オラクルは個別 |
売上・営業利益・従業員数とも提出会社だけの数字。ほかの15社は連結 |
| 売上の中身が違う |
機器の販売、ソフト、開発、運用の割合は会社ごとに違う。有報の「事業の内容」で確かめる |
| 1年分の数字 |
1年だけの数字で優劣は言えない。有報の「主要な経営指標等の推移」で前の年と比べる |
発注先の有報で見る5つの場所
有報は分量の多い書類ですが、発注する側が見る場所は限られます。EDINETで社名を検索し、目次から次の5か所を開きます。
| 目次の言葉 |
載っていること |
発注する側の見方 |
| 主要な経営指標等の推移 |
売上・利益・従業員数の移り変わり |
売上と利益が続けて減っていないか |
| 事業の内容 |
何で売上を立てているか |
自社が頼む仕事は、どの事業に当たるか |
| セグメント情報 |
事業の区分ごとの売上と利益 |
自社が頼む事業で利益が出ているか |
| 従業員の状況 |
連結と提出会社の人数、提出会社の平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与 |
契約の相手の会社に何人いるか |
| 事業等のリスク |
会社自身が挙げる心配の種 |
人の確保や不採算の案件について、何と書いているか |
発注先の有価証券報告書で見る5つの場所と、EDINETでの開き方作成: 編集部 / もとの資料: EDINET(金融庁)の有価証券報告書の目次
セグメント情報は、「経理の状況」の注記事項の中にあります。上場していない会社や、上場をやめた会社の確かめ方は、使っているSaaSが撤退したら?決算短信と有報で「続くか」を読む方法にまとめています。
候補の会社を探す段階では、会社のサイトの見方も役に立ちます。IT企業のサイトはどこを見る?約3,900社の調査で分かった外注先の選び方もあわせて読んでください。
今日からできること
- いまの発注先と候補の会社を3〜5社書き出し、EDINETで社名を検索して有報があるかを調べる
- 「主要な経営指標等の推移」を開き、売上・営業利益・従業員数を前の年と比べる
- 自社の年間の発注額 ÷ 発注先の売上を計算し、自社の案件の大きさをつかむ
- 「事業の内容」と「セグメント情報」で、自社が頼む仕事がどの事業に当たるかを確かめる
- 気づいた点を比較表に書き、次の打ち合わせで営業担当に質問する
比較表のテンプレには、「実績・続く力」の観点で会社の業績を採点する例が入っています。有報で確かめた数字は、ここにそのまま書けます。
新しく発注先を選ぶときは、提案依頼書(RFP)で各社に同じ条件を示すと、提案と見積を比べやすくなります。
有報の数字は、発注先を決めつけるためではなく、質問を作るために使ってください。