Microsoftの決算は、情シスにとって「自社の請求書の裏側」を見られる資料です。2026年7月29日の決算では、Microsoft 365 Copilotの有料席が3,000万を超えました。その直前の7月1日には、法人向けMicrosoft 365の定価が上がっています。この記事では、決算の数字と値上げの表を並べ、使う側の支払いがどう売上につながるかを読み解きます。
7月29日の決算 数字のまとめ
Microsoftの会計年度は7月から翌年6月までです。今回は2026年度の最後の四半期(2026年4〜6月期)にあたります。
項目
2026年4〜6月期
前年同期比
売上高
900億ドル
18%増
営業利益
406億ドル
18%増
純利益(GAAP)
358億ドル
31%増
Microsoft Cloudの売上
593億ドル
27%増
Azureなどのクラウドサービス
伸び率のみ公表
43%増
Microsoft 365 法人向けクラウド
伸び率のみ公表
14%増(前年の特殊要因を除くと16%増)
Microsoft 365 法人向けの有料席
伸び率のみ公表
6%増
2026年度の通期の売上高は3,318億ドルで、18%増でした。サティア・ナデラCEOは、Azureの年間売上が初めて1,000億ドルを超えたと述べています。なお純利益には、Anthropicへの投資による32億ドルの利益なども含まれます。
株価は決算の翌日、7月30日に前日比15.5%上がりました(390.54ドルから451.10ドル)。10月2日の終値は517.53ドルで、2025年末の483.62ドルを約7%上回っています(Nasdaq)。
Copilot有料3,000万席の中身
Microsoft 365 Copilotは、WordやExcel 、Teamsなどの中で使えるAIの有料版です。決算説明では、席の増え方について次の数字が示されました。
数字
内容
3,000万席超
Microsoft 365 Copilotの有料席。純増は前の四半期の2倍超
7倍超
5万席以上を契約する顧客の数(前年同期比)
約75%増
情報系の社員の大半にCopilotを配る大企業の数(前四半期比)
40万人
新しい上位プラン「E7」を導入したEYの人数
E7は、Copilot、E5、本人確認 のEntra、AIエージェント 管理のAgent 365をまとめたプランです。ナデラCEOは、発売から2か月で数百社が数百万席を買ったと説明しました。英国の医療機関NHS Englandが50万5,000人に配るなど、大口の導入例も挙がっています。
一方で、Microsoft 365法人向けの有料席の伸びは6%です。エイミー・フッドCFOは、増えた席は主に中小企業 と現場の従業員向けだと説明しています。席の数はゆっくり増え、単価の高い上位プランやCopilotが売上を押し上げる形です。
7月1日の値上げ 何がいくら上がったか
Microsoftは2025年12月4日、法人向けMicrosoft 365の定価の改定を発表しました。適用は2026年7月1日からです。1ユーザーあたり月額の定価(Teams付き)は次のとおりです。
プラン
改定前
7月1日から
上げ幅
Business Basic
6ドル
7ドル
約17%
Business Standard
12.50ドル
14ドル
12%
Business Premium
22ドル
22ドル
据え置き
Office 365 E1
10ドル
10ドル
据え置き
Office 365 E3
23ドル
26ドル
約13%
Microsoft 365 E3
36ドル
39ドル
約8%
Microsoft 365 E5
57ドル
60ドル
約5%
Microsoft 365 F1
2.25ドル
3ドル
約33%
Microsoft 365 F3
8ドル
10ドル
25%
Microsoftが公表した法人向けMicrosoft 365の定価の改定表(2026年7月1日から) 出典: Microsoft「Advancing Microsoft 365: New capabilities and pricing update」 (引用)
Microsoftは値上げとあわせて、機能の追加を説明しています。主なものは次の3つです。
全ユーザー向けのCopilot Chatの強化
E3へのメール保護機能(Defender for Office 365 Plan 1)の追加
E3とE5へのIntuneの管理機能の追加
E5の顧客には、セキュリティ向けのSecurity Copilotも順次提供するとしています。
情シスの請求書とMicrosoftの売上のつながり
売上は「席数×1席あたりの単価」
法人向けMicrosoft 365のクラウド売上は、おおまかに「有料席の数×1席あたりの単価」で決まります。席が6%増え、売上が14〜16%増えたということは、単価が7〜9%ほど上がった計算です(筆者計算)。フッドCFOは、単価の上昇の理由としてCopilot、E5、E7といった上位の製品を挙げました。
Microsoftの決算説明資料。法人向けM365のクラウド売上と有料席の伸びが並ぶ 出典: Microsoft Investor Relations「FY26 Q4 Earnings Call Slides」 (引用)
7〜9月期の見通しでは、法人向けクラウド売上は約15%増(報告ベース)です。CFOは、年度を通じて伸びが加速すると見込んでいます。理由として挙げたのは、上位プランの伸びと、7月に席数課金と並べて加えた従量課金の製品です。なお決算説明の中で、法人向けの定価改定そのものには触れていません。
自社の請求額で試算する
定価ベースで、値上げとCopilotの追加がどれくらいの金額になるかを試算します。実際の金額は、契約形態や割引、為替で変わります。
ケース
計算
年間の増加額(定価)
Microsoft 365 E3を100人
(39ドル−36ドル)×100人×12か月
3,600ドル
Business Standardを50人
(14ドル−12.50ドル)×50人×12か月
900ドル
20人にCopilotを追加
30ドル×20人×12か月
7,200ドル
この例では、値上げの影響より、Copilotを足したときの増加額のほうが大きくなります。Microsoftの売上の伸びが、上位プランとCopilotに支えられているのと同じ構図です。
2027年度から数字の見え方が変わる
Microsoftは9月2日、2027年度から事業の区分を3つから2つに変えると届け出ました。新しい区分は「Agents and Infra」と「Devices and Consumer」です。法人向けMicrosoft 365のクラウド売上には、GitHubとSecurity Copilotが加わります。有料席の数にも、GitHubの有料席が含まれるようになります。次の決算から、過去の数字とそのまま比べられなくなる点に注意してください。
Copilotの価格(2026年10月3日時点の米国の定価)
製品
1ユーザーあたり月額
Microsoft 365 Copilot(大企業向け)
30ドル(年払い)。年契約の月払いは31.50ドル
Microsoft 365 Business Standard with Copilot
23.50ドル(年払い)
Microsoft 365 Business Premium with Copilot
32ドル(年払い)
Microsoft 365 Copilot Business
21ドル。キャンペーン価格は18ドルから
中小企業向けのCopilot付きBusinessプランは、7月1日に始まりました(5月28日発表)。Business Premiumは据え置きのため、Copilot付きにすると差額は月10ドルです。
有料版を買う前に、無料で使える範囲も確かめておきます。Microsoftによると、仕事用のAIチャット「Copilot Chat」は、Microsoft 365の全ユーザーが使えます。Copilot Chatが使うのは、主にWebの情報と、指示の中で示したファイルです(Microsoftの説明)。社内のデータを広く使って作業させたい人だけ有料版にする、という分け方もできます。
ライセンス見直しのチェック表
確認項目
見る場所
判断の目安
使われていないアカウント
管理センターの利用状況レポート
90日以上サインインがなければ理由を確認
プランの重なり
ライセンスの割り当て一覧
個別に買ったアドオンが上位プランに含まれていないか
Copilotの利用度
Copilotの利用状況レポート
割り当てたのに使われていない席がないか
次の更新日と単価
契約書、販売店の見積
新しい定価がいつから適用されるか
見方は分かれる 楽観と慎重の両方を並べる
楽観的な見方の根拠
慎重な見方の根拠
Copilotの有料席が3,000万を超え、純増は前四半期の2倍超
4〜6月期の設備投資は410億ドル。7〜9月期は会計処理の変更の影響を含め500億ドル超を見込む
Azureの年間売上が初めて1,000億ドルを超えた
Copilotの利用が増え、生産性部門の粗利率が少し下がった(CFO)
7〜9月期も法人向けクラウドは約15%増の見込み
有料席の伸びは6%で、中心は単価の低い中小企業と現場向け
決算翌日に株価が15.5%上昇した
Windowsと端末の売上は7%減。PC需要の弱さに加え、部品価格と在庫の動きが先行きの不確定要素(CFO)
今日からできること
管理センターでライセンスを棚卸しし、退職者や使われていないアカウントを外す
7月1日以降の見積と請求書を確認し、新しい単価がいつから適用されるかを契約先に書面で聞く
E3とE5、Copilotの追加について、必要な部署と人数を分けて試算する
Copilotを試す部署を決め、利用状況のレポートと業務時間の変化を1〜2か月測る
従量課金の機能を使う場合は、上限額と通知の設定を先に決める
Microsoftの売上の伸びは、使う側の支払いの増加と表裏の関係にあります。決算の数字は、自社の契約を見直すための材料として使えます。次の決算では、新しい区分での法人向けクラウドの伸びと、Copilotの席数を確かめておくと役に立ちます。この記事は売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身で行ってください。