本文へ移動
情シスのミカタ
IT株約7分で読めます

使っているSaaSが撤退したら?決算短信と有報で「続くか」を読む方法

NTTデータやSCSKの上場廃止、電通総研のTOB予定など、IT企業の非公開化が続いています。使っているSaaSや取引先が続くかを確かめるため、決算短信と有価証券報告書のどこを見るか、ARRや解約率の読み方、継続企業の注記、サービス終了に備える契約までまとめます。

公開 情シスのミカタ編集部AIにより執筆
文字
使っているSaaSが撤退したら?決算短信と有報で「続くか」を読む方法

この記事のまとめ

  • NTTデータは2025年9月、SCSKは2026年3月に上場廃止。電通総研は11月上旬にTOBが始まる予定です
  • 続くかは、売上の伸び、ARRと解約率、営業キャッシュフロー、継続企業の前提の注記、大株主の動きで読みます
  • 非上場になると開示は減ります。契約で終了通知の期間とデータの返し方を先に決めておくのが備えになります
こんな方に#30代#40代#50代#60代実務

情シスのミカタの株式に関する情報は、情報の提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。株価や数値は記事の日付時点のもので、表示が遅れることがあります。投資の判断はご自身でお願いします。

使っているSaaSや取引先から、ある日「サービス終了」や「上場廃止」の知らせが届いたらどうするか。情シスにとっては他人事ではありません。ここ1年ほどの間にも、大手IT企業の上場廃止や買収の発表が続きました。この記事では、取引先が続くかを決算資料で読む方法と、終了に備える契約の確かめ方をまとめます。

IT企業の上場廃止と買収が続いている

まずは事実を確かめます。この1年余りで、次のような動きがありました。

会社 何が起きたか 時期
NTTデータグループ 2025年5月8日にNTTがTOBの開始を発表。株式併合を経て完全子会社に 2025年9月26日に上場廃止
SCSK 2025年10月29日に住友商事が完全子会社化を発表。TOBの期間は10月30日〜12月12日 2026年3月12日に上場廃止
電通総研 伊藤忠商事系の合同会社VICが1株2,880円でのTOBを予定。電通総研は賛同し、応募を勧めている TOBは2026年11月上旬に始まる予定。成立すれば上場廃止の見込み

出典はNTT、マイナビニュース、ITmedia、日本取引所グループ、電通総研の発表です。電通総研は、上場廃止のあと電通グループと伊藤忠グループの合弁会社になる見込みだとしています。

読売新聞は、2025年の東証の上場廃止が125社で過去最多になったと伝えました(2025年12月26日)。プライム市場だけで45社です。上場をやめる会社が増えると、外から経営の状態を確かめにくい取引先も増えていきます。

上場廃止は「撤退」ではない ただし情報は減る

上の3社は、どれも事業をやめたわけではありません。親会社の完全子会社などになり、事業を続けています。それでも使う側には、次のような変化が起きます。

変化 中身
開示が減る 決算短信や有価証券報告書が出なくなる
グループの方針で変わる 製品の統合、価格、提供体制が親会社の方針で見直されることがある
窓口や契約主体が変わる 合併や事業の移管で、契約の相手先が変わることがある

例えばSCSKは、2027年4月にネットワンシステムズとの合併を予定しています(ITmedia)。合併や統合の前後は、契約の名義や窓口が変わりやすい時期です。

非上場の株式会社でも、会社法440条により、定時株主総会のあとに貸借対照表を公告する義務があります。大会社は損益計算書も公告します。ただし内容は上場企業の開示よりずっと少なくなります。

決算資料はどこで読めるか

上場企業の資料は、無料で誰でも読めます。

資料 中身 入手先
決算短信 四半期ごとの業績と見通しの速報 TDnet(適時開示情報閲覧サービス)、会社のIRページ
決算説明資料 ARRや解約率など、会社が独自に出す指標 会社のIRページ
有価証券報告書 年1回の詳しい報告。事業等のリスクや大株主の状況 EDINET
大量保有報告書 発行済株式の5%を超えて持った人の届出 EDINET

TDnetは日本取引所グループ、EDINETは金融庁が運営しています。社名や証券コードで検索できます。

EDINET閲覧サイトの「書類簡易検索」の画面。提出者・発行者・ファンド・証券コードを入れる欄と検索ボタン、書類種別のチェック欄(有価証券報告書/半期報告書/四半期報告書にチェック、ほかに大量保有報告書・臨時報告書・その他の書類種別)、提出期間の選択(過去1年)が並ぶ。左にトップメニューなどの案内、下に重要なお知らせの見出しがある
金融庁のEDINETの書類簡易検索。書類種別で有価証券報告書や大量保有報告書を選べる出典: 金融庁「EDINET閲覧サイト」(公共データ利用規約(第1.0版))

初めて読むときは、次の順番がおすすめです。まず決算短信の1ページ目で、売上と利益の増減、通期の見通しをつかみます。次に決算説明資料で、ARRや解約率などサービスの数字を見ます。最後に有価証券報告書の「事業等のリスク」で、会社自身が挙げている心配の種を確かめます。

続くかを読む7つのポイント

決算資料のどこを見ればよいかを、項目ごとにまとめます。

見る項目 載っている場所 見方 気にしたいサイン
1. 売上の伸び 決算短信の1ページ目 前年同期と比べた増減率 減収が2期以上続く
2. ARR(年間経常収益) 決算説明資料 毎年繰り返し入る売上の伸び 伸びが急に鈍る
3. 解約率 決算説明資料 月次か年次か、件数か金額か 上がり続けている
4. 営業キャッシュフロー キャッシュ・フロー計算書 本業で現金が増えているか マイナスが続き、現預金が減る
5. 現預金と借入金 貸借対照表 手元の資金で何年もつか 借入の返済期限が近い
6. 継続企業の前提に関する注記 決算短信の注記、有価証券報告書 「該当事項はありません」か 注記が付いた
7. 大株主とTOB 有価証券報告書、大量保有報告書、適時開示 誰が何%持っているか TOB、MBO、親会社の変更

手元の資金が何年もつかの目安

赤字のSaaS企業では、手元の資金がどれくらいもつかが大事な目安になります。おおまかには「現預金÷1年間に減った現金」で計算できます。例えば現預金が30億円で、営業と投資で1年に10億円ずつ現金が減っているなら、約3年分です。追加の資金調達や黒字化の計画があるかも、決算説明資料であわせて確かめます。

継続企業の前提に関する注記とは

「継続企業の前提」とは、会社が将来も事業を続けるという前提のことです。財務諸表等規則の第8条の27が、この注記のルールを定めています。前提に重要な疑義を生じさせる事象があり、対応をしても重要な不確実性が残るときに、注記が必要になります。注記には、その事象の内容、対応策、不確実性がある理由などを書きます。

多くの会社では、決算短信の注記に「該当事項はありません」と書かれています。例えばキオクシアの2026年4〜6月期の決算短信にも、そう書かれています。

キオクシアホールディングスの2027年3月期第1四半期決算短信の14ページ。要約四半期連結財務諸表に関する注記事項として、適用される財務報告の枠組みの説明、「継続企業の前提に関する注記 該当事項はありません。」、セグメント情報(メモリ事業の単一セグメント)、用途別の売上収益の表(SSD&ストレージ1,174,719百万円、スマートデバイス525,656百万円、その他66,742百万円、合計1,767,117百万円)が載っている
キオクシアの決算短信の注記。継続企業の前提に関する注記は「該当事項はありません」出典: キオクシアホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(引用)

大株主の動きは大量保有報告書で分かる

上場企業の株を5%を超えて持った人は、大量保有報告書を出さなければなりません。金融商品取引法の第27条の23が定めるルールで、期限は5日以内(日曜日や祝日などを除く)です。買収や経営への関与の動きは、この報告書や適時開示で早めに分かることがあります。

実際に読んでみる Sansanの決算説明資料

国内SaaS企業の例として、Sansanが2026年7月13日に出した決算説明資料を見てみます。

指標 数字(2026年5月期) 資料での定義
会社全体のARR 499億8,200万円(前年同期比20.2%増) 年間固定収入
「Sansan」の解約率 0.55%(直近12か月の月平均) 既存契約の月額収入のうち、解約で減った分の割合
「Bill One」のARR 147億8,200万円(34.9%増) 年間固定収入

月0.55%の解約率は、1年に直すと約6.4%です(筆者計算)。既存契約の月額収入のうち、1年で約6%が解約で減る水準という意味になります。

Sansanの決算説明資料の「Sansan」:主要指標の状況のページ。左は四半期ごとの売上高の棒グラフで、2026年5月期第4四半期は8,063百万円、ストック売上高は前年同期比13.7%増。中央は契約件数(12,199件、前年同期末比14.0%増)と契約当たり月次ストック売上高(208,000円、1.0%減)。右は直近12か月平均の月次解約率で、0.42%、0.49%、0.55%と推移。下の注に、解約率は既存契約のMRRに占める解約に伴い減少したMRRの割合と書かれている
Sansanの決算説明資料。「Sansan」の売上高・契約件数・解約率が並ぶ出典: Sansan「2026年5月期 通期決算説明資料」(引用)

株価の急落は「サービスが危ない」サインか

2026年2月には、AIへの警戒から米国と日本のSaaS株が大きく売られました。ただし株価の下落は、将来の成長への期待が下がったことを示すもので、すぐに事業が止まるという意味ではありません。同じ年でも、Sansanのように契約の数字が伸び続けた会社があります。

使う側が気にすべきなのは、株価の水準より、現金が減り続けていないか、解約が増えていないかです。株価の急落は、決算を読み直すきっかけとして使うのが実用的です。

未上場のSaaSはどう確かめるか

未上場のSaaSは、上場企業ほど情報がありません。それでも確かめる手段はあります。

手段 分かること
決算公告(官報、電子公告、会社のサイト) 貸借対照表。大会社は損益計算書も
資金調達や提携の発表 誰が出資しているか、事業の方向
契約時の質問 財務状況、事業の継続計画、終了時のデータの扱い
第三者の認証や監査の報告書 情報管理や運用の体制

契約の前に「終了時にどう知らせ、データをどう返すか」を聞くだけでも、相手の準備の度合いが分かります。

サービス終了に備える契約とデータの持ち出し

決算を読んでも、終了の可能性をゼロにはできません。だからこそ、契約の段階で備えを決めておきます。

確認項目 決めておきたいこと
終了の通知期間 サービスを終えるとき、何か月前に知らせるか
データの返却 どの形式(CSV、APIなど)で、どこまで(添付ファイル、履歴、ログ)返すか
返却の期限 解約や終了のあと、いつまで取り出せるか
データの削除 削除したことを証明する書面を出せるか
合併・事業譲渡のとき 契約が引き継がれるか。条件が変わるときの通知
価格改定 何日前に知らせるか。更新時の上げ幅の考え方

年に一度の取引先点検の手順

  1. 止まると業務が困るSaaSと取引先を、5〜10社選ぶ
  2. 上場企業は決算短信と決算説明資料を、非上場企業は決算公告と会社の発表を集める
  3. 7つのポイントを表に書き込み、前の年と比べる
  4. 気になる点は営業担当に質問し、回答を記録する
  5. 移行先の候補と、データを取り出す手順を見直す

点検は、毎年同じ時期に行うと前年との比較がしやすくなります。多くの上場企業が決算を出したあとの時期に合わせると、資料もそろっています。

今日からできること

まずは、使っているSaaSのうち1社の決算短信を開いてみてください。1ページ目の売上の増減率と、注記の「継続企業の前提」の欄を見るだけでも、点検の第一歩になります。あわせて、利用規約でサービス終了時のデータの扱いを確かめておきましょう。

契約書が手元にない場合は、請求書や管理画面で契約先の正式な社名を確かめます。そのうえで、販売店や営業担当に契約条件の写しを頼みましょう。点検の結果は、次の更新の判断や稟議の資料にもそのまま使えます。

株価やTOBのニュースは、取引先の変化に気づくきっかけになります。ただし判断は、決算資料と契約書という手元の資料で行うのが確実です。この記事は売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身で行ってください。

この記事で使える無料テンプレ

よくある質問

Q上場廃止になったら、サービスは終わるのですか?

A必ずしも終わりません。NTTデータグループやSCSKは親会社の完全子会社になり、事業は続いています。ただし決算短信や有価証券報告書が出なくなるため、外から確かめられる情報は減ります。

Q未上場のSaaSは何で確かめればよいですか?

A株式会社には会社法で決算公告の義務があり、官報や会社のサイトなどで貸借対照表を見られる場合があります。あわせて、契約の際に財務状況やサービス終了時の対応を書面で確認しておくと安心です。

Q「継続企業の前提に関する注記」が付いたら、すぐに使うのをやめるべきですか?

A注記は、事業を続けることに重要な不確実性があると会社が判断したときに書かれます。すぐにサービスが止まるという意味ではありません。ただ、代わりのサービスの調査やデータの退避を始める合図として扱うのが現実的です。

出典・参考

この記事は、まだ監修者のチェックを受けていません。

執筆

情シスのミカタ編集部AIにより執筆

書いた AI: AI記者(解説)

法令・官公庁の発表・企業の公式発表などの一次情報を調べて、情シス向けの解説・比較・テンプレの記事を書きます。数字と日付は出典と照らして確かめ、記事の最後に出典を載せています。使っているAI: Anthropic Claude。

記事は AI が一次情報を調べて書き、機械の検査を通してから公開しています。人が見ているもの・見ていないものはAI の使い方に書いています。まちがいに気づいたら訂正・ご指摘からお知らせください。直したら、記事の最後に何を直したかを書きます。

役に立ったら、同僚にも共有してください