「プリンターが動かない」「ネットが遅い」までは、情シスの仕事です。でも、内線電話が鳴らない、FAXが送れない、社内の動画を編集してほしい、新しい店舗の物件を探してほしい、となるとどうでしょう。公開されている情シス・社内SEの体験談を読むと、ITの周りのあらゆる依頼が、情シスの席に集まってくる様子が繰り返し語られています。
この記事では、そんな「それ、ITですか?」な依頼を、公開されている体験談や投稿から整理し、なぜ集まるのか、どこで線を引くか、角を立てずに担当へつなぐ言い方をまとめます。
情シスに届く「それ、ITですか?」な依頼
公開されている体験談や投稿5件を読んで整理すると(編集部)、届く依頼は大きく3つに分かれます。
- ITの周りの設備: 内線電話、FAX、複合機の紙詰まりやトナー、会議室のテレビ
- ITの使い方やスキル: Excelの関数、PDFの編集、動画の編集、ホームページの更新、統計の処理
- ITと関係の薄い仕事: 店舗やオフィスの物件探し、法務の対応、給与の計算、工場の機械のエラー
どれも、頼む側に悪気はありません。困ったときに「詳しそうな人」として思い浮かぶのが、情シスなのです。
あるある1: 毎日届く「知らんがな」と言いたくなる依頼
小さな会社の社内SEは、日々の相談の一覧を、こう書いています。
Excelの数式が崩れた(それはExcel教室の案件では…)
PDF編集したい(フリーソフトではダメですか…)
機械でエラーが起こってる(専門外…)
動画編集してほしい(なぜ私に…)
FAXが送れない(まだ現役だったんですね…)
出典: note「社内の何でも屋「情シス」を支える七つ道具」三流社内SE(2025年10月26日)
かっこの中の心の声に、うなずく情シスは多いはずです。同じ記事は、こうした「知らんがな」と言いたくなる依頼に毎日囲まれながら、小さな会社の社内SEとして、広い意味の「情報処理」を支えていると書いています。断りきれない事情も、にじみます。
あるある2: 電話は総務の担当、でも手配は情シス
電話は、ITと設備の境目にある代表です。
厳密にいうと、本来電話の管掌って総務課さんマターなんですけどね、ほら、仲良しですから、管理は情シスで、要望の取りまとめは総務でみたいな役割分担が多いんじゃないかと思います。
出典: note「ビジネスフォンと電話の未来をシステムサイドから考えてみた」ぴょん吉(2021年11月24日)
同じ記事は、拠点の開設や移転では電話とLANがセットになるため、回線の本数や置き場所を情シスが聞いて回る、とも書いています。電話は「線がつながっているもの」なので、自然と情シスに寄ってくるのです。
あるある3: 物件探しや給与計算まで
もっと遠くの仕事が回ってくる会社もあります。
情シスなのにオフィスや店舗の物件探しから対応していたり、法務対応、給与計算まで担当していたなんて方もいらっしゃいます。
出典: note「「情シス=なんでも屋」からの脱却」吉田航(2020年9月1日)
筆者は、組織が成長しているのに役割が分かれないままの会社で起こりやすいと見ています。人を増やしにくい時期には、いま居る人で回すことになり、宙に浮いた仕事を誰かが受け続けることになります。
あるある4: 頼られるのは、うれしい。でも
依頼が集まるのは、情シスの側にも理由があります。同じ吉田さんの記事は、情シスに仕事が集まりやすい特徴の1つに、こう挙げています。
・ホスピタリティが強く、頼まれた仕事を断れない
出典: note「「情シス=なんでも屋」からの脱却」吉田航(2020年9月1日)
ソフトクリエイトのnoteも、ユーザーの困りごとを毎日片付ける状態は、忙しくても充実感があり、それが落とし穴になると書いています。頼られる手ごたえは本物です。ただ、本来の仕事の時間が削られ、評価にもつながらないままになりがちです。
なぜ情シスに集まるのか(編集部の整理)
| 理由 |
起きていること |
| 「電気で動くもの」をまとめてITと見る |
電話、FAX、複合機、テレビ、機械が、同じ「詳しい人」の担当に見える |
| 誰に頼めばいいかが書かれていない |
担当の一覧が無いので、いちばん話しかけやすい人に頼む |
| 断らずに受けてきた |
「あの人に聞けばやってくれる」という覚え方が広がる |
| 仕事が小さく見える |
ひとつずつは5分で済みそうに見え、積み重なりが見えない |
| 役割が会社の成長に追いついていない |
本来の担当の部署や人がまだいない |
吉田さんの記事には、「誰かの善意によって成り立っているしくみは、いずれ崩壊します」という一文があります。受けている人が休んだり辞めたりすると、どこにも担当がいない仕事が残ります。線引きは、情シスのためだけでなく、会社のためでもあります。
線引きの表(編集部の整理)
断るのではなく、「まず誰が受けるか」を決めておく表です。会社に合わせて、総務と一緒に直して使ってください。
| 依頼 |
まず受ける人 |
情シスが関わる部分 |
| 内線電話・外線の故障や増設 |
総務(契約と業者の手配) |
IP電話やLANにつながる部分の設定 |
| FAXが送れない |
総務・複合機の保守業者 |
複合機のネットワークの設定 |
| 複合機の紙詰まり・トナー |
各部署・保守業者 |
ドライバー、スキャンの送り先 |
| Excelの関数、PDFの編集 |
本人・社内のマニュアルや研修 |
使ってよいソフトの一覧、FAQ |
| 動画の編集、ホームページの更新 |
広報や依頼した部署(外注を含む) |
ツールのアカウント、権限 |
| 工場や店舗の機械のエラー |
設備の担当・機械の保守業者 |
ネットワークにつながる部分 |
| 照明、空調、鍵 |
総務・ビルの管理会社 |
なし |
| 物件探し、給与計算、法務 |
総務・人事・法務・外部の専門家 |
回線やシステムの要件の相談 |
| 私物のスマホやパソコン |
本人 |
会社のルールの範囲での案内 |
断らずにつなぐ言い方の例
- 「それは総務の○○さんの担当です。私から一言伝えておきますね」
- 「複合機は保守の会社が直してくれます。電話番号は窓口のページに載せています」
- 「Excelの使い方は、社内のマニュアルのこの部分が近いです。それでも分からなければ、もう一度声をかけてください」
- 「今月は私が受けますが、来月からの担当は課長と決めますね」
- 「この依頼は窓口のフォームから出してもらえますか。記録が残ると、ほかの人にも同じ答えを返せます」
最後の言い方は、断るためではなく、記録を残すためのものです。割り込みの減らし方は、「ちょっといいですか」が1日に何十回 割り込みを減らす窓口と受付時間の決め方で詳しく書いています。
今日からできること
- 1か月の依頼を記録します。 届いた依頼を窓口のフォームやメモに残し、「ITの周りの設備」「ITの使い方」「ITと関係の薄い仕事」に分けて数えます。
- 線引きの表を総務と作ります。 上の表を下書きにして、総務や関係する部署と「まず誰が受けるか」を決めます。総務との分け方は、総務と情シスの相性は?兼任の実態と役割分担の表【特集】も参考になります。
- 窓口に「どこに頼めばいいか」の一覧を載せます。 電話、複合機、空調、鍵などの連絡先を一枚にまとめ、社内のポータルや窓口のページに置きます。
- 引き受けるなら、期間と範囲を決めます。 ほかに担当がいない仕事を受けるときは、いつまで、どこまでを上司に伝え、担当を決める日を予定に入れます。
- 記録を評価の面談で見せます。 何にどれだけ時間を使ったかを示すと、本来の仕事の時間を取る相談がしやすくなります。言い方は情シスは「稼いでいない部門」?評価面談で言われがちな一言と返し方も参考にしてください。