「ちょっといいですか」。この一言のあと、PCの画面を一緒にのぞき込む時間が始まります。情シスの席は、社内でいちばん声をかけやすい席のひとつです。
笑い話にはなりますが、1日に何度も続くと自分の仕事が進みません。公開されている情シスの声を読んで、割り込みを減らす窓口と受付時間の決め方を整理しました。社員の方にも「こう頼むと早く直る」が伝わるように書いています。
情シスの席には、なぜ人が来るのか
情シスをしている人の投稿には、席まで来る問い合わせの話が何度も出てきます。noteに投稿している「うのもの」さんは、次のように書いています。
同じオフィスにいる管理部門の人が歩いて情シスの席まで来て、『ネット繋がらないんですけど見てもらえますか?』とか言われます。
出典: note「情シス(社内SE)の仕事って楽なの?」(うのもの)
続けて「一生懸命コードを書いているときも、設計に頭を悩ませているときでも関係なく作業を中断することになります」とも書かれています(同じ記事)。
席に来る側に悪気はありません。理由はだいたい次の3つです。
窓口がどこか分からない。いちばん近い人に聞くのが早い
何が起きているかを文章にするより、見せるほうが早い
前に聞いたとき、すぐ直してくれた
3つめが厄介です。親切に対応した結果、次も席に来てもらえる関係ができあがります。悪いことではありません。ただ、対応する側の時間は1人分しかありません。
ようやく設定の途中まで進んだところで「ちょっといいですか」。戻ってきたら、どこまでやったのか思い出せない。
「3分で終わります」の3分は、こちらの作業の再開に10分かかる。
割り込みが困るのは「時間」より「再開」
困る点は、聞かれた3分ではありません。元の作業に戻るまでの時間です。
作業中に声をかけられると、頭の中の手順が飛びます。画面を見直し、どこまで進めたかを確かめ、考え直す。その分の時間が、聞かれた時間のあとにも続きます。
Togetterには、割り込みが苦手という声をまとめたページがあります。公開されている声を読むと、接客業の人からも「割り込み」が最もつらいという声が出ていました。割り込みに弱いことは、情シスに限った話ではありません。工夫として、優先度の高い作業を紙に書いて机に貼る、突然の出来事への対応を手順にしておく、といった声がありました。
対策は、割り込みをなくすことではありません。割り込みを「受けやすい形」にして、作業を止める回数を減らすことです。
窓口を1つにする
中小機構(中小企業 基盤整備機構)のDiGiWithの記事は、ひとり情シス の負担について次のように書いています。
問い合わせ窓口を一本化し、よくある質問を簡単な手順書として共有するだけでも、業務負荷は大きく下がります。
出典: 中小機構 DiGiWith「中小企業は『ひとり情シス問題』にどう向き合うべきか」
同じ記事は、ひとり情シスを最も消耗させるのは終わりのない問い合わせ対応だとも述べています(2026年5月18日の公開)。
窓口の一本化は、難しい仕組みでなくて構いません。次の表のどれかひとつから始められます。
窓口の形
用意するもの
向いている会社
共有メールアドレス
it-help@ のような宛先
20人前後まで。まず始めたい
チャットの専用チャンネル
Teams や Slack のチャンネル
日常でチャットを使っている
入力フォーム
Microsoft Forms や Google フォーム
内容をそろえて受けたい
チケット管理ツール
ヘルプデスク 用のサービス
件数が多く、履歴を残したい
どの形でも、聞くことは同じにそろえます。誰が・どのPCで・何をしたら・何が起きたか、の4つです。画面のスクリーンショットが付けば、なお早く直ります。
このテンプレは、受けた問い合わせを記録する表です。何がよく聞かれているかが見えてくると、手順書にするものを選べます。
受付時間を決める
窓口を作っても、「席に来れば早い」が残ります。そこで、直接受ける時間を決めます。
窓口タイムの例
時間帯
使い方
午前の最初の30分
席での相談もOK。朝のうちに困りごとを片づける
11時から12時
集中タイム。フォームやチャットで受け、返事は昼以降
14時から15時
席での相談もOK
15時から17時
集中タイム。緊急のみ電話で受ける
時間は例です。会社の動き方に合わせて、1日2回の「必ずつかまる時間」を作るのがコツです。
INTERNET Watchの情シス意識調査(2023年5月・回答36人のスポンサード記事)には、テレワークで連絡が電話・メール・チャットになったことで「いきなり話しかけられることなく気が楽」という回答がありました。少ない人数の調査ですが、突然話しかけられないことを楽に感じる人がいる、という声として読めます。
緊急の線引きを先に決める
受付時間を決めると、必ず「緊急のときは?」と聞かれます。先に決めておきます。
区分
例
連絡の方法
緊急
全社のネットが止まった、お客さまに影響が出る、情報が漏れたかもしれない
電話。時間外でも
通常
1人のPCの不具合、ソフトの使い方
フォームやチャット。当日か翌営業日に返事
相談
新しいツールを入れたい
週1回の相談枠
席に来られたときの返し方
仕組みを作っても、席には来ます。そのときの返し方を用意しておきます。ポイントは、断らずに「時刻」を伝えることです。
場面
言い方の例
手が離せない
「いまここまで終わらせたいので、14時に伺ってもいいですか。先に、起きていることをチャットに書いてもらえると助かります」
窓口を案内したい
「次からは、このフォームに書いてもらえると、順番に早く見られます。今日は一緒に見ますね」
急ぎに見える
「何人が止まっていますか?」(緊急かどうかを聞く)
同じ質問が続く
「手順をまとめて共有しますね。今日の夕方までに送ります」
「あとで」だけだと、頼んだ側は待ち続けます。「14時に」と言えば、頼んだ側も自分の予定を組めます。
社内に知らせるときの文面
窓口と受付時間は、決めただけでは伝わりません。1枚の案内にして、社内に知らせます。社員にとっても「冷たくなった」ではなく「分かりやすくなった」と受け取ってもらうのがねらいです。
【情シスからのお知らせ】ITの困りごとの窓口を、次のとおりにします。
まず、フォーム(またはチャット)に書いてください。画面の写真があると早く直ります。
席での相談は、毎日午前9時から9時30分と、午後2時から3時に受けます。
全社の業務が止まる、お客さまに影響が出る、情報が漏れたかもしれない、のときは、時間にかかわらず電話をください(内線:○○)。
返事は、当日中か翌営業日の午前中にします。
目的は、皆さんの困りごとを順番に、早く直すことです。ご協力をお願いします。
はじめの1か月は、決めた時間に席に来る人が少なくても大丈夫です。慣れるまでは、席に来た人にも優しく窓口を案内します。
よく聞かれることは、手順にして置いておく
窓口が決まったら、よく聞かれることを手順書にします。ブログ「今日もひっそりと情シスライフ」(2024年4月)の「情シスがイラつくことランキング」には、緊急の依頼で進めていた仕事を止められる、という話が出てきます。止められる回数を減らすには、聞かれる前に答えを置いておくのが近道です。
手順書にするもの
理由
パスワード の再設定
毎週のように聞かれる
プリンターの追加
席替えや新入社員で繰り返す
Web会議の接続
会議の直前に聞かれる
無線LANの接続
来客や新しい機器で聞かれる
手順書は、スクリーンショット付きで1ページに収めます。社内の共有フォルダかWikiに置き、窓口の案内からリンクを張ります。
今日からできること
社員の方へ
情シスの方へ
「ちょっといいですか」は、情シスが頼りにされている証拠でもあります。その信頼を、作業が止まらない形で受け止めるために、窓口と受付時間を決めておきます。
あわせて読みたい: 「何もしてないのに壊れた」の正体 情シスが見た三大犯人と1分チェック