「先週送ったメール、届いていないと言われたんですけど」。情シスの席には、送った本人より先に、困った顔が届きます。
公開されている声を7件読み、Google・Microsoft・総務省などの公式の資料で確かめました。笑える場面と、1分で聞く質問、社員に配る文面をまとめます。偽のメールの見分け方は「このメール、詐欺ですか?」の記事に分け、ここでは「届かない」「送れない」に絞ります。
「届かない」は4つに分けられる
「ビジネスメール実態調査2026」(日本ビジネスメール協会)では、6割超の人が、24時間以内に返信がないと遅いと感じています。返事が遅いと、「届いていないのでは」と不安になります。
ただ、「届かない」の中身はひとつではありません。送り手に何が見えたかで、4つに分けられます。
| 起きたこと |
送り手に見えるもの |
よくある原因 |
| 送れなかった |
送信トレイに残る |
添付が大きすぎる |
| 戻ってきた |
英語まじりのエラーのメール |
宛先の打ち間違い、相手の受信箱がいっぱい |
| 黙って届かない |
何も来ない |
迷惑メールフォルダ、隔離、送り手の認証の不備 |
| 別の人に届いた |
何も来ない |
候補から別の人を選んだ |
いちばん厄介なのは、3つめの「黙って届かない」です。
笑える場面と、その正体
「あのメール届いてないんですけど」「は?」
Zennの「ryo」さん(2026年1月)は、Gmailのアプリから会社のアドレスで仕事のメールを送りました。「送信しました」と出たのに、数日後にこう言われます。
「あのメール届いてないんですけど」
は?
送信済みフォルダ見た。ある。確かに送った。
出典: Zenn「メールが無言で消える恐怖。SPFレコードのせいやった説」ryo
エラーのメールも来ていませんでした。調べると、SPF(このサーバーから送ってよい、という届け出)に食い違いがありました。書いてあるサーバーと、実際に送っているサーバーが違っていたそうです。
届いたのは、催促のメールだけ
システム管理者のYoshiさんのブログ(2026年9月)には、受け手の側の話があります。
職場の人が、元のメールが届いていないのに、催促メールが来たと憤慨していた。
出典: ココログ「メールが届かない <DMARC理想と現実>」Yoshiのよしなしごと
元のメールは、送り手のDKIM(電子署名)の設定に誤りがありました。送り手はDMARC(認証に失敗したメールの扱いを決める仕組み)を隔離にしていたので、受け手の側で隔離されていたのです。
Yoshiさんは、隔離されたメールのヘッダーを添えて、送り手に「システムの管理者に見せてください」と返しました。
「迷惑メールフォルダに入っていたらしい」
送り手の側の情シスにも、同じ形の問い合わせが来ます。noteの「きりんの情シスさん」(2026年6月)はこう書いています。
「取引先に送ったメールが、迷惑メールフォルダに入っていたらしい」
情シスへの問い合わせの中でも、地味に厄介なのがこのパターンです。
出典: note「「お客様にメールが届いていない」を解決する。」きりんの情シスさん
きりんの情シスさんは、最初にSPF・DKIM・DMARCの3つを見るよう勧めています。設定したつもりでも、漏れていることがあります。
8年間サービスを運用してきて、Google Workspaceのカスタムドメイン DKIM が未設定のままだったことに気づいたのです。
出典: Spacely Tech Blog「自社メールがOutlookに届かない」
Spacely(2026年3月)は、Outlook宛てが届かないという報告で気づいたそうです。
受け手の判定は厳しくなっています。Googleは2024年2月から、個人のGmailに送るすべての送信者にSPFかDKIMを求めています。認証のないメールは、迷惑メールに分類されるか、拒否されることがあります。
総務省も2025年9月1日、電気通信事業者の団体に、DMARCのポリシーを隔離や拒否にするよう要請しました。受ける側でも、ポリシーに沿って処理するよう求めています。
隔離の通知が、詐欺メールに見える
Microsoft 365には、隔離(検疫)されたメールを通知で知らせる設定があります。noteの「rone」さん(2023年)は、検疫のページを開くのが怖くてできない人がいる、と書いています。
詐欺メールに気をつけてと言われ続けた社員が、「メールが隔離されました」という知らせを疑うのは、正しい反応です。通知の見本を先に配っておくと、迷わずに済みます。
あの「伊藤さん」と、この「伊藤さん」
届かないと思ったら、別の人に届いていた、という場合もあります。noteの「はせがわ」さん(2020年)は、Outlookの宛先の候補をこう心配しています。
これが日本人によくある名字だと大変、あの「伊藤さん」に送るつもりが、この「伊藤さん」に送ってしまったなどというインシデントにつながりやすくなるのです。
出典: note「Outlookのオートコンプリート機能の無効化(Outlook for Macではできない)」はせがわ
別の人のアドレスが実在すれば、エラーは返りません。Outlookでは、候補にカーソルを合わせると出る「×」で、その候補を消せます(Microsoftの案内)。
添付が大きくて、送れない
上限はサービスで違います。個人のGmailは25MB、Outlook.comは20MB、Microsoft 365は既定で送信35MBです。相手の会社の上限がもっと小さいこともあるので、大きなファイルは共有のリンクで送ります。
1分で聞く質問と、聞く理由
まず次の5つを聞きます。
| 質問(言い方の例) |
聞く理由 |
| 英語まじりのエラーのメールは、返ってきましたか |
理由とコードが書いてある |
| 届かないのは、その方だけですか |
1人なら相手の側、全員なら自社の側を疑う |
| 送った日時と件名、相手のアドレスを教えてください |
送受信の記録を調べる手がかり |
| 宛先は、候補から選びましたか。手で打ちましたか |
別の人と、打ち間違いを疑う |
| 添付はありましたか。何MBくらいですか |
サイズの上限を疑う |
自分に届かないという相談なら、「迷惑メールのフォルダは見ましたか」「隔離の通知は来ていませんか」を足します。
「アドレスを間違えていませんか」より、「候補から選びましたか」と聞きます。手順を答えてもらうと、責められている感じがしません。
切り分けの順番
- エラーのメールを読む
- 送受信の記録を見る。Microsoft 365はExchange 管理センターの[メール フロー]>[メッセージ追跡]、Google Workspaceは管理コンソールの[レポート]>[メールログ検索]
- 記録が「検疫済み」や迷惑メールなら、隔離やフォルダを確かめる
- 「配信済み」なら、受け手の仕分けルールやフォルダを探す
- 自社のメールがよく止められるなら、SPF・DKIM・DMARCを見直す
社員に配る案内の文面
【メールが届かない・送れないとき】
■ 送る前に
・宛先を候補から選んだら、名前とアドレスを両方見る
・大きなファイル(目安 ○MB 以上)は、共有のリンクで送る
■ 「届いていない」と言われたら
・エラーのメール(Undeliverable、配信不能 などの題)は、消さずに情シスへ転送
・来ていなければ、相手に迷惑メールのフォルダを見てもらう
■ 自分に届かないとき
・迷惑メールのフォルダを見る。「隔離」の通知は、開く前に情シスへ転送してよい
■ 情シスへの連絡に書いてほしいこと
・送った日時、件名、相手のアドレス、届かないのは1人か何人もか
相手への一言も、決めておくと楽です。
先ほどお送りしたメール(件名:○○)が、届いていないかもしれません。
お手数ですが、迷惑メールのフォルダもご確認いただけますでしょうか。
noteの「Z世代的視点」さん(2020年)は、「メールを送ったら、確認の電話を入れなさい」と言われて戸惑ったそうです。今は、重要な書類を送ったときや期日が近いときなど、必要に応じて電話すればよいと書いています。
隔離や迷惑メールフォルダ行きでは、エラーは返りません。大事なメールだけは、チャットや電話で「送りました」と一言添えると安心です。
情シスが先に手を打っておくこと
- 自社のドメインで送っているサービス(配信サービス、営業支援、請求書など)を一覧にする
- DMARCは、迷惑メール対策推進協議会のガイドブックのとおり、まずnone(様子を見る)で始め、集約レポートを読む。Yoshiさんも、レポートを見る体制が無いのに隔離にするのは無謀だと書いている
- 検疫の通知を使うか決める。既定の一部のポリシーでは通知が出ない(Microsoftの案内)
- 問い合わせを、表の4つに分けて記録する
記録には、このテンプレをそのまま使えます。
今日からできること
社員の方へ
情シスの方へ
「届かない」は、送った人のせいでも、受けた人のせいでもないことがある問い合わせです。エラーのメールを1通転送してもらうだけで、調べる時間はずっと短くなります。
(この記事は、公開されている体験談7件と、日本ビジネスメール協会の調査、Google・Microsoft・総務省・迷惑メール対策推進協議会の公開資料をもとに、編集部が整理しました。)