こんにちは、ミカタ編集部です。
総務の席に、パソコンの相談が来る。情シスの席に、「コピー機が紙を噛んだ」と声がかかる。小さな会社ほど、総務と情シスの仕事は混ざります。そもそも同じ人がやっている会社も多くあります。
この特集では、兼任の実態を調査の数字で確かめたうえで、どこまでが総務でどこからが情シスなのかを場面ごとに整理します。そして、公開されている総務の人・情シスの人の声から、本音とすれ違いの場面を拾いました。
公開されている声と資料、9件を読んで整理しました(編集部)。個人の声は、ブログなどに本人が公開したものだけを使っています。会社や個人が特定できる私的な情報は載せていません。
総務が情シスを兼ねる会社は、どれくらいあるのか
まず数字から見ます。調査会社のノークリサーチが、2025年10月14日に発表した資料があります。2025年5月に、日本全国・全業種の企業800社(経営層や、ITの導入・選定・運用に関わる人)へ尋ねた調査です。
年商500億円未満の中堅・中小企業全体で、情シス担当が「1名」だった割合は、2023年の21.3%(n=700)から、2025年の24.5%(n=735)に増えました。
兼任と専任の変化は、年商5〜50億円の企業(2023年n=150、2025年n=221)で次のとおりです。
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2023年 |
2025年 |
| 兼任(ほかの仕事と情シスを兼ねる) |
48.0% |
61.1% |
| 専任(情シスの仕事だけ) |
28.7% |
16.7% |
この資料は、兼任を「間接部門(総務・人事・法務など)や現場部門の仕事の傍らでIT管理・運用を担っている場合」と説明しています。つまり、総務の兼任は、兼任の中の代表的な形です。
中小機構(中小企業基盤整備機構)の特集記事も、この資料を引いています。売上50億円未満の企業では、61%で情シス担当が兼務だったと紹介し、総務的な仕事と情報的な仕事が混ざるつらさを書いています。
総務的な仕事と情報的な仕事が混在するのもつらいところです。
出典: 中小機構「中小企業は「ひとり情シス問題」にどう向き合うべきか」(村上知也さん)
どこまでが総務で、どこからが情シスか
線引きは会社ごとに違います。ここでは、よく話題になる6つの場面を、編集部が整理しました。公開されている声や資料を読んだうえでの目安であり、決まりではありません。
| 場面 |
総務が持つことが多い |
情シスが持つことが多い |
重なる所(先に決めたいこと) |
| PC |
購入の稟議、資産としての台帳、廃棄の手続き |
設定、キッティング、故障の切り分け |
台帳をどちらが持つか |
| 携帯(社用スマホ) |
通信会社との契約、請求の確認 |
端末の設定、紛失時の遠隔ロック |
紛失したとき最初に連絡する先 |
| 複合機・プリンター |
リース契約、置き場所、紙とトナー |
ネットワークへの接続、スキャン先の設定 |
故障の連絡先を機械のそばに貼る |
| 入退社 |
備品と鍵の用意・回収、書類 |
アカウントの作成と停止、PCの準備 |
人事からの連絡の順番と期限 |
| オフィス移転 |
物件、レイアウト、引っ越し業者 |
回線、ネットワーク機器、PCや複合機の再接続 |
工事日程と電源・回線の位置 |
| 防災 |
避難訓練、備蓄、安否確認 |
システムの復旧、バックアップ |
復旧の目標を、総務と情シスで一緒に決める |
電話も境目が動く場面です。キーマンズネットは2017年の記事で、従来の電話交換機は総務部門が担当していることが多いと書いています。そのうえで、クラウドで使う仕組みに変えると、担当が総務から情シスへ移ることになると指摘しています。
防災(BCP)は、仲の悪さが指摘される場面でもあります。専門家の林田朋之さんは2022年のコラムで、総務が管轄するBCPと、情シスが管轄するIT-BCPが、同じ所を目指しているのに交わらずに進んできたと書いています(全文は有料会員向けで、冒頭の無料部分だけを読みました)。
総務の人と情シスの人の本音
ここからは、公開されている声から読み取れたことを、言い換えて紹介します。
総務の人の本音
- 気づくと全部が総務に来る。人事も情シスも広報もいない会社では、パソコン、勤怠、経費、社内ルール、ホームページの更新まで、担当のない仕事が総務に集まります。
情シスも人事も広報もいない会社では、いろいろな仕事が総務に集まってきます。
出典: あい「情シスも人事もいない会社で、総務から"会社初の情シス"になった話」(2026年)
- 専門家ではないことが気になる。この筆者は、総務もシステムも「広く浅く」で中途半端ではないかと悩んだと書いています。そのうえで、現場の困りごとを見つけて整理し、形にすることはできる、と考え直しています。
- やってみたら総務の仕事と近かった。元バックオフィスの人は、ITサポートの問い合わせが、バックオフィス宛の問い合わせに意外と似ていたと書いています。
意外と普段バックオフィス宛に来ている問い合わせと似てますよね?
出典: nene「情シス未経験の元総務が今めちゃくちゃ楽しく働いている話」(2020年)
情シスの人の本音
- 総務の仕事を頼まれて驚く。情シスから総務の兼務になった人は、上司の説明では「コンプラの整備」と聞いていたのに、依頼元の管理者が一番困っていたのは鍵だった、と書いています。
「いや~、一番困ってるのは”鍵”なんですよね~。。」
出典: 情シスK「情シスが総務兼務になった日」(2024年)
- やってみると相性は悪くない。同じ人は、台帳管理や備品管理など、情シスと近い所が多いと感じたそうです。一方で、給与が上がらない点は気になる、とも書いています。
- 上司が総務の部長で、裁量がない。情シスが「総務部の課」になっている会社では、ITに詳しくない部長の指示に従う場面が多い、という相談をコンサルタントが紹介しています。日々のヘルプデスクの大変さが伝わっていない、という愚痴もあるそうです。
兼任の良い所
兼任の良さを書いた声もありました。ある情シスの人は、経理を兼務して、両方の業務が分かるぶん、システムの導入を自分の最高速度で進められると書いています。必要なデータの出し方を、その場で教えてもらえるからです。ただし、情シス側が忙しくなりすぎないよう、上司の理解とチーム体制があることが前提だとも書いていました。
よくあるすれ違いの場面
声を読んで目立った場面を、4つにまとめました。どれも、誰かが悪いのではなく、境目が決まっていないために起きています。
- 入社日の直前に知らされる。備品と鍵の用意は総務、アカウントとPCは情シスですが、人事からの連絡が総務止まりになることがあります。
- 「ITのことは任せた」で、よきにはからえ。防災では、総務がIT-BCPに関わらず、情シスは「完全に復旧させればいい」と考える、と前述のコラムは書いています。目標とする復旧の速さと範囲は、総務と情シスで一緒に決める必要があります。
- 上司の思いつきが降ってくる。総務部長がインターネットで見つけた製品を、情報システム課が試すことになり、2か月後に「思っていたイメージと違う」で終わった例があります。検討資料がなかったため、何が足りなかったのか分からないままでした。
- たらい回し。窓口が決まっていないと、パソコンの相談は総務へ、複合機の相談は情シスへと、行き来します。依頼する側は、どこに言えばよいか分かりません。
兼任で負担が重くなるのは、どんなときか
ノークリサーチの資料は、情シスの人数が同じでも、専任が減って兼任が増えれば、人の負担は増えると指摘しています。業務のすべてをIT管理に使える専任と、総務や人事などの仕事の傍らで担う兼任では、同じ1人でも負担がまったく違う、という説明です。
総務の兼任に当てはめると、負担が重くなりやすいのは次の3つの時期です。
- 月末・月初。給与や経費の締めと、新入社員のアカウント準備が重なります。情シスKさんも、月末は新入社員の受け入れで情シスが忙しい時期だと書いています。
- 契約の更新とオフィスの変更。複合機のリース、回線、ライセンスの更新が、総務の契約の管理と情シスの設定の両方にかかります。
- システムを入れ替えるとき。業務のやり方が変わるため、使う側の総務と、整える側の情シスが同じ人だと、教わる人も教える人も自分になります。
この3つは、あらかじめカレンダーに書いておくだけでも、割り込みの怖さが減ります。「この週は新しい依頼を受けない」と決めておくのも、一つの方法です。
うまくいっている会社の分け方
公開されている声と、中小機構の解説から、うまくいっている会社に共通する分け方を3つ見つけました。
分け方1: 「モノと場所は総務、IDと設定は情シス」を基本にする
物理的なもの(鍵、置き場所、契約、廃棄)は総務、ネットワークとアカウントと設定は情シス、と分けます。迷ったら、前の章の表のとおり「最初に動く人」を1人決めます。
分け方2: 重なる場面は「最初の1人」と「連絡の順番」を決める
入退社・移転・防災は、両方にまたがります。次の表のように、誰が最初に動くかを先に決めておきます。
| 場面 |
最初に動く人 |
次に動く人 |
期限の目安(編集部の例) |
| 入社 |
人事(連絡票を出す) |
情シス(アカウント・PC)、総務(備品・鍵) |
入社の10営業日前 |
| 退職 |
人事(連絡票を出す) |
情シス(アカウント停止)、総務(備品・鍵の回収) |
最終出社日の5営業日前 |
| オフィス移転 |
総務(物件・日程) |
情シス(回線・機器) |
移転の3か月前に同席 |
| 防災 |
総務(訓練・安否確認) |
情シス(復旧・バックアップ) |
年1回、復旧の目標を一緒に確認 |
退職時の止め方は、退職者のアカウントはいつ消す?で手順をまとめています。
分け方3: 窓口を1つにして、仕分けは裏で行う
中小機構の解説は、ひとり情シスの負担を減らす方法として、問い合わせ窓口の一本化と、よくある質問の手順書を挙げています。総務と情シスが別々の会社でも、依頼する側の入り口は1つにして、仕分けは裏側で行うと、たらい回しが減ります。
兼任の人が1人で担っている場合は、ひとり情シスが最初の30日でやることも役に立ちます。その人が異動や退職でいなくなる事態への備えは、ひとり情シスが突然いなくなったらにまとめました。
今日からできること
読んだ日にできることを、3つに絞りました。
- 役割分担の表を1枚作る。次の表を、自社の言葉に直して埋めます。空欄が、すれ違いの種です。
| 項目 |
契約・購入・台帳 |
設定・故障対応 |
最初に連絡を受ける人 |
代わりの人 |
| PC |
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| 社用スマホ |
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| 複合機・プリンター |
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| 電話・回線 |
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| 入退社(アカウント・備品・鍵) |
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| オフィス移転 |
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| 防災・復旧 |
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- 依頼の窓口を1つ決める。メールの共有アドレスでも、チャットの専用の部屋でも構いません。
- 入退社・移転・防災の3場面で、連絡の順番を紙1枚にする。上の分け方2の表をそのまま使えます。人事、総務、情シスの3者に、同じ紙を配ります。
兼任の人が読んでいるなら、最後にひとつ。「全部を自分で持つ」前提を、見直してみてください。中小機構の解説も、すべてを完璧にやることを前提にせず、事業が止まる・情報が漏れるといった致命的なリスクへの対応を最優先にするよう勧めています。
総務と情シスは、物と場所とIDで、同じ会社の同じ人たちを支えています。分け方が決まれば、相性は悪くありません。まずは表の空欄を、1つ埋めるところから始めてください。