AIサーバー向けの需要でメモリの価格が上がり続け、スマホとPCの値上げが相次いでいます。10月1日にはPixel 10aやGalaxy S26が値上げされ、VAIOは法人向けPC全製品の価格を改定しました。会社のPCの更新を今進めるか待つか、判断の材料を数字で整理します。
メモリの価格はどれだけ上がっているのか
PCやスマホのメモリには2種類あります。作業中のデータを置く「DRAM」と、データを保存する「NANDフラッシュ」です。NANDはSSDやスマホのストレージに使われます。
台湾の調査会社TrendForceは、メーカー同士が大口で取引する「契約価格」の予測を四半期ごとに出しています。店頭のメモリの値段とは別の、製品の原価に直結する価格です。
| 期間 |
DRAM(汎用品)の契約価格 |
NANDの契約価格 |
発表日 |
| 2026年7〜9月期 |
前期比13〜18%上昇 |
前期比10〜15%上昇 |
2026年7月3日 |
| 2026年10〜12月期 |
前期比10〜15%上昇 |
前期比15〜20%上昇 |
2026年9月30日 |
いずれもTrendForceの予測です。DRAMは上がり方がややゆるやかになる一方、NANDは10〜12月期に上げ幅が広がる見通しです。TrendForceによると、2026年4〜6月期のDRAM業界の売上高は前期比59.5%増の約1547億ドルでした。
理由は、メモリメーカーが生産能力をAIサーバー向けの製品に優先して割り当てていることです。TrendForceは、PCやスマホ向けの顧客が値上げを受け入れられる限界に近づいているとも指摘しています。
スマホとPCは何がいくら上がったか
この半年で、主な製品の価格は次のように変わりました。
| 製品 |
以前の価格 |
2026年10月3日時点 |
| iPhone 17(256GB) |
129,800円(2025年9月の発表時) |
159,800円 |
| iPhone 18 Pro(256GB) |
iPhone 17 Proは発表時179,800円 |
219,800円から |
| Pixel 10a(128GB) |
79,900円 |
92,800円(10月1日から) |
| Pixel 10a(256GB) |
94,900円 |
107,800円(10月1日から) |
| Galaxy S26(256GB) |
136,400円 |
155,800円(10月1日から) |
| Galaxy S26 Ultra(1TB) |
299,200円 |
334,200円(10月1日から) |
| VAIO 個人向けPC |
|
9月18日から値上げ |
| VAIO 法人向けPC全製品 |
|
10月1日から値上げ |
VAIOの法人向けPCの価格改定のお知らせ。10月1日から全製品が対象出典: VAIO(引用)
価格は税込です。今の価格はApple、Google、サムスンの直販サイトで確かめ、改定前の価格はITmedia Mobileの報道によります。VAIOは理由として、生成AIの普及に伴うDRAMなどの需要拡大と、部材価格の高止まりを挙げています。
ノートPCの原価は1年半で大きく変わった
TrendForceは2026年9月4日、ノートPCの原価の分析を公表しました。2025年1〜3月期に900ドルだった標準的なモデルでは、CPU・DRAM・SSDが部品代に占める割合は約45%でした。これが2026年7〜9月期には68%に上がったとしています。
同じ利益率を保つには、同等の製品を約80%値上げする必要がある計算だといいます。今は安い時期に仕入れた在庫が値上げを和らげていますが、在庫が減れば今の部品価格が製品に反映されていくとの見方です。
TrendForceは9月30日の発表で、PCメーカーが主力モデルのSSD容量を減らして原価を抑えていることにも触れています。同じ型番の後継機でも、構成が変わっていないか見積の段階で確かめる必要があります。
この高値はいつまで続くのか
TrendForceは2026年7月30日、2027年の見通しを公表しました。予測の要点は次のとおりです。
| 項目 |
TrendForceの予測 |
| DRAM |
2027年も供給不足が続き、価格は上昇傾向 |
| DRAMの新工場 |
本格的な増産は2027年後半から。大きく効くのは2028年 |
| NAND |
新しい生産能力が動き出し、2027年後半に供給がゆるむ |
| スマホ・ノートPC |
値上げで買い替えが鈍り、2027年も出荷が減る |
予測どおりなら、DRAMを多く積むPCが1年以内に安くなる見込みは小さいことになります。SSDは2027年後半から落ち着く可能性がありますが、PCの価格全体が下がるかは分かりません。
PCの売れ行きにも変化が出ています。TrendForceは9月4日、2026年のノートPCの世界出荷が前年より9.4%減るとの予測を出しました。値上げを見越した前倒しの購入で上半期の出荷が膨らみ、7月時点の13.6%減から修正した数字です。
一方で、法人の買い替え需要は比較的安定しているとしています。個人向けの買い控えが進んでも、企業向けの在庫や納期に余裕が出るとは限らない点に注意が必要です。
会社のPC、今買うか待つか
「待てば下がる」とは言いにくい一方で、全台を急いで入れ替える必要もありません。PCごとに状況で分けて考えます。
| PCの状況 |
判断の目安 |
理由 |
| Windows 10のまま |
先に更新する |
サポートは2025年10月14日に終了。法人向けESUは有料で毎年倍になる |
| 保証が切れた・故障が増えた |
先に更新する |
故障してから慌てて買うと、高い時期に選べる機種も限られる |
| 5年以上使っている |
今年度か来年度の計画に入れる |
バッテリーやSSDの劣化で業務が止まるおそれ |
| 3年以内に買ったWindows 11機 |
延命して待つ |
部品交換や延長保証で使い続けられる |
| リースの満了が近い |
再リースと入れ替えの両方で見積をとる |
再リースは月額が下がることが多く、時間を稼げる |
Windows 10の法人向けの延長セキュリティ更新(ESU)は、1台あたり1年目61ドルで、毎年倍になり、最長3年です。台数が多いと負担はすぐ大きくなるため、ESUはつなぎと考えましょう。
予算への影響は「台数×単価の上がり幅」でおおまかにつかめます。たとえば50台を更新する計画で1台あたり3万円上がれば、150万円の上振れです。まずこの数字を出してから、優先順位と延命の組み合わせを考えると話が進めやすくなります。
費用を抑える調達の工夫
値上げの時期でも、買い方を工夫すれば1台あたりの負担を減らせます。
- 台数の棚卸しをする。使っていないPCや、退職者のPCが余っていないか確かめる
- スペックを用途で分ける。全員に同じ上位構成を配らず、メモリ16GBと32GBなどに分ける
- メモリは最初に十分な量を選ぶ。薄型ノートは後から増やせない機種があるため、足りないと買い直しになる
- 見積の有効期限と、メーカーの次の価格改定の予定を販売店に確かめる
- リース、レンタル、月額制のPCサービスを比べる。月額に値上げが反映されているか、途中解約の条件はどうかを見る
- 延命の費用を出す。バッテリー交換、SSD交換、延長保証で、あと1〜2年使えるかを比べる
- 整備済みや中古も選択肢に入れる。業務用なら保証期間とデータ消去の証明を条件にする
見積で確かめる項目
同じ型番でも、時期によって構成や条件が変わることがあります。見積を受け取ったら、次の項目を前回と並べて見比べてください。
| 項目 |
確かめること |
| メモリ |
容量と、後から増やせるかどうか |
| SSD |
容量が前回の発注より減っていないか |
| CPU |
世代とモデル名が想定どおりか |
| 保証 |
期間、引き取りか出張か、バッテリーが対象か |
| 納期 |
部品不足で遅れる見込みがないか |
| 有効期限 |
見積の価格がいつまで有効か |
| 価格改定 |
メーカーや販売店に次の改定の予定があるか |
経営層に説明するときの文面の例
PCの単価が上がると、同じ台数でも予算が足りなくなります。稟議や予算の相談では、理由と選択肢をそろえて出すと話が早く進みます。次の文面は、そのまま書き換えて使えます。
件名:PC更新の予算について(単価上昇への対応)
AIサーバー向けの需要でメモリの価格が上がり、PCメーカー各社が値上げしています。当社が使っているメーカー(○○)も、○月から法人向けPCを値上げしました。
今年度の更新予定は○台で、1台あたりの見積は前回より約○万円高くなっています。そこで、Windows 10が残る○台と保証切れの○台を優先し、残りの○台は延長保証で1年延ばす案を考えています。
調査会社の予測では、メモリの不足は2027年も続く見込みのため、来年度以降も単価の上昇を見込んだ予算をお願いしたいと考えています。
社用スマホはどう考えるか
スマホも、中価格帯のPixel 10aが9万円台になるなど、社用端末の単価が上がっています。台数が多い会社ほど影響は大きくなります。
機種を2〜3種類に絞り、OSの更新が続く期間を確かめたうえで長く使う方針が向いています。端末代の分割や、リース・レンタルで月額にならす方法もあります。ドコモが12月に料金を改定するなど通信料も変わる時期のため、端末と回線を一緒に見直すと効果が大きくなります。