社用スマホ やノートPCが10台を超えると、設定の統一や紛失時の対応を手作業で回すのが難しくなります。その道具がMDM (モバイルデバイス管理)です。Microsoft Intune、Jamf、国産のLANSCOPE、CLOMO、OPTiM Bizと、2026年4月に始まったApple Businessの無料のMDMを、公式の料金ページとヘルプで比べました。
比べる前に決めておく3つのこと
MDMは、会社の端末の設定をそろえ、なくしたときに遠隔でロックや消去をする仕組みです。EDRやUTMとの役割の違いは、MDM・EDR・UTMの違い で整理しています。
製品を比べる前に、次の3つを決めると候補が一気にしぼれます。
管理する端末とOS: iPhoneだけか、Androidもあるか、Windows やMacのPCも入れるか
今使っているサービス: Microsoft 365 か、Google Workspace か
運用する人: 社内で設定する人がいるか、代行を頼みたいか
6つの選択肢の料金と対応OS
各社の公式の料金ページに出ている金額を並べました。Intuneは1人あたり、ほかは端末1台あたりの料金です。
(2026年10月3日時点・税抜/税込は表の列のとおり・月払い/年払いは「払い方」の列のとおり)
製品
対応OS
料金
払い方
初期費用
税の表記
Microsoft Intune(Microsoft 365 Business Premiumに含まれる)
Windows、macOS、iOS/iPadOS、Android、Linuxなど
Business Premiumは1人月3,298円
年払い(月払いは3,958円)
記載なし
税抜
Microsoft Intune プラン1 単体
同上
日本の料金ページに円の価格の記載なし(米国のページのFAQでは1人月8ドル)
問い合わせ
記載なし
問い合わせ
Jamf for Mac / Jamf for Mobile
Macのみ / iPhone・iPad・Androidなど
問い合わせ(25台から)
年間一括払い
問い合わせ
問い合わせ
Jamf Now
macOS、iOS、iPadOS、tvOS
1台月4ドル(最初の3台は無料と案内)
月額
記載なし
表記なし
LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版
iOS、Android、Windows、macOS
スマホ1台年3,600円(月300円)、PCは年4,800円か6,000円
年払い
1社30,000円(登録料型のプランもあり)
税抜
CLOMO MDM
iOS/iPadOS、Android、Windows、macOS
1台月300円+基本利用料月2,100円
月額(年額プランもあり)
19,800円
税抜
OPTiM Biz(旧Optimal Biz)
Android、iOS、iPadOS、Windows、macOS
スマホ・タブレット1台月300円、PC1台月500円
月額
1契約45,000円
税抜
Apple Business(内蔵のMDM)
Apple製品(iPhone、iPad、Macなど)
無料
なし
なし
なし
LANSCOPEのPC向けは、操作ログを取らない「ライトB」が年4,800円、操作ログを取る「ベーシック」が年6,000円です。初期費用を払わない代わりに、1台6,800円の登録料で毎年の利用料を下げるプランもあり、同社は3年以上使う場合に割安と案内しています。CLOMOは最低5台からの契約です。
社用スマホ20台だと年いくらか
表の料金で、スマホ20台を1年間管理する場合を計算しました。初期費用は別に書いています。
(2026年10月3日時点・税抜/税込は上の表のとおり)
製品
1年の利用料
初期費用
LANSCOPE(ライトA)
72,000円
30,000円
CLOMO MDM
97,200円(1台分72,000円+基本利用料25,200円)
19,800円
OPTiM Biz
72,000円
45,000円
Jamf Now(iPhoneの場合)
960ドル(無料の3台を引く前の金額)
記載なし
Apple Business(iPhoneの場合)
0円
なし
Intune
Microsoft 365 Business PremiumやE3をすでに使っていれば追加なし
記載なし
Intuneは単体で比べにくい製品です。Business PremiumにはOfficeのアプリやメールも入っており、MDMの代金だけを取り出せません。Microsoft 365 Business BasicとBusiness StandardにはIntuneのプラン1が含まれない点に注意してください。
どの製品も、オプションで機能や料金が変わります。CLOMOの24時間365日のリモート操作代行は1台月170円、LANSCOPEのPCの操作ログの保存期間は過去2年分(オプションで5年)です。見積もりの段階で、必要なオプションまで含めて比べてください。
Apple Businessで何が変わったか
Appleは2026年3月24日、新しいプラットフォーム「Apple Business」を発表し、4月14日に無料で始めました。これまでのApple Business Manager、Apple Business Essentials、Apple Business Connectの3つをまとめたもので、3つは提供開始後に使えなくなると発表しています。
Apple Business Managerは、会社で買ったiPhoneやMacを、電源を入れた時点で会社のMDMに自動で登録させるための管理画面でした。この役目はApple Businessに引き継がれています。マイクロソフトのIntuneの手順書も、2026年5月の版で「Apple Business ポータル」を前提条件に挙げています。
日本でも使えるMDMの機能
Appleのユーザガイドによると、日本では次の機能が使えます。
組み込みデバイス管理(内蔵のMDM)
管理対象Apple Account(会社が発行するAppleのアカウント)
アプリの入手と配布
ゼロタッチデプロイ(箱から出して電源を入れるだけで設定が入る仕組み)
内蔵のMDMでは「ブループリント」と呼ぶひな形で、設定とアプリをまとめて配れます。Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDと連携し、入社した人の管理対象Apple Accountを自動で作ることもできます。専用アプリ、メール、カレンダーなどの機能はiOS 26、iPadOS 26、macOS 26が必要です。
Apple Businessのブループリントの画面(Appleの発表資料の画像) 出典: Apple Newsroom「あらゆる規模のビジネス向けの新しいオールインワンのプラットフォーム、Apple Businessが登場」 (報道用の素材)
他社のMDMと組み合わせる
Apple Businessは、外部のMDMにもつなげます。複数のMDMをつないで、端末の種類ごとに割り当て先を分けることもできます。たとえばMacはJamf、iPhoneは国産のMDM、という使い分けです。
ゼロタッチデプロイは、Appleか、Apple製品の取扱店から買った端末で使えるとAppleは案内しています。携帯会社や販売店から買うときは、Apple Businessへの登録に対応しているかを、注文の前に確かめてください。あとから登録する方法もありますが、手間が増えます。
製品ごとの特徴
Microsoft Intune
Windows、Mac、iPhone、Android、Linuxまで1つの管理画面で扱えます。会社のアカウント(Entra ID)と組み合わせ、決まりを守っていない端末からはMicrosoft 365に入れなくする「条件付きアクセス」が使える点が強みです。Microsoft 365 Business PremiumやE3、E5を使っている会社は、すでに契約に含まれていることがあります。
Jamf
Apple製品の管理を中心にしてきた会社です。法人向けのJamf for MacとJamf for Mobileは見積もりで、25台からの年間契約です。Jamf for MobileはAndroidにも対応しています。小規模向けのJamf Nowは1台月4ドルで、25人以下の組織に向くと案内しています。日本円の見積もりは代理店や販売店に頼む仕組みです。
LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版
スマホとPCを同じ画面で管理でき、PCの操作ログ(誰がいつ何をしたかの記録)を取れるのが特徴です。料金はライセンスの種類で分かれ、iOSとAndroidは「ライトA」で年3,600円です。Android端末の一部の機能には、Googleの業務用の仕組みであるAndroid Enterpriseが必要です。
CLOMO MDM
iOS、Android、Windowsを一元管理できると案内しており、macOSにも2016年から対応しています。1台月300円に、会社ごとの基本利用料が月2,100円かかります。初期設定の代行、管理者の研修、運用代行など、人の手を借りるサービスが料金表に並んでいます。
CLOMOの公式サイトの料金案内のページ(2026年10月時点) 出典: アイキューブドシステムズ「CLOMOご利用料金のご案内」 (引用)
OPTiM Biz
2026年10月時点で、旧名のOptimal BizからOPTiM Bizに名前が変わっています。基本料金は0円で、スマホとタブレットが1台月300円、PCが1台月500円です。行政機関向けに、プライベートクラウドやオンプレミスでの提供にも対応しています。
中小企業はどう選ぶか
会社の状況ごとに、最初に検討する候補をまとめました。どれも条件つきの目安です。
会社の状況
まず検討する候補
気をつける点
iPhone、iPad、Macだけ。10人前後
Apple Businessの内蔵MDM、Jamf Now
AndroidやWindowsが増えたら別の製品が要る
Macが多く、細かい設定までしたい
Jamf for Mac(Apple Businessとつなぐ)
25台からの年間契約。見積もりが要る
Microsoft 365とWindowsのPCが中心
Intune
Business Premium以上のプランか、Intuneの契約が要る
Androidの社用スマホが多い
LANSCOPE、CLOMO、OPTiM Biz、Intune
Android Enterpriseに対応した設定にする
PCの操作ログも取りたい
LANSCOPE(ベーシック)
ログの保存期間とオプションを確かめる
設定や運用を頼みたい
CLOMOやOPTiM Bizの代行サービス、販売店のサービス
代行の範囲と、夜間や休日の対応を確かめる
すでに携帯会社の法人契約を使っている会社は、携帯会社のMDMも候補になります。たとえばKDDIはオプティムのMDMを、楽天モバイルはLANSCOPEのクラウド版を元にしたサービスだと案内しています。携帯会社ごとの料金は社用スマホの法人プランの比較 にまとめています。
迷ったら、今の契約に含まれているものから試します。Microsoft 365 Business Premiumを持っていればIntune、Apple製品があればApple Businessは追加の費用なしで使えます。足りない機能が分かってから、有料の製品を比べても遅くありません。
契約の前に販売元へ聞くこと
見積もりを頼むときは、料金表に出ない部分を確かめます。次の質問をそのまま使えます。
MDMを入れたのに、管理画面の端末一覧を開くと「最終接続 半年前」の端末が並んでいる。退職者の机の引き出しで眠っていた社用スマホだった。MDMは台帳の代わりにもなります。月に1回、一覧を開く日を決めておくと、なくした端末や使っていない回線にも早く気づけます。
今日からできること
会社の端末を、スマホ、タブレット、PCに分け、OSごとの台数を書き出す
Microsoft 365のプラン名を確かめ、Intuneが含まれているかを見る
Apple製品があれば、Apple Businessの管理画面にサインインし、端末が登録されているかを見る
端末を買っている販売店や携帯会社に、Apple Businessへの登録に対応しているかを聞く
候補を2つにしぼり、5台程度で1か月試してから契約する
MDMは、入れることより、新しい端末が届いたときと人が辞めたときに必ず使うことで効果が出ます。料金表の差より、自社の端末の組み合わせと、運用する人の手間で選んでください。