Claude Codeは、Anthropicがプログラム開発向けに出しているAIエージェントです。最近は、資料作りやデータ整理など、開発以外の仕事に使う例が増えています。総務や企画の仕事でどう使えるのか、会社で使う前に何を決めておくのかをまとめます。
Claude Codeはチャットと何が違うのか
公式ドキュメントは、Claude Codeを「エージェント型のコーディングツール」と説明しています。コードを読み、ファイルを編集し、コマンドを実行します。使える場所は、ターミナル、開発用のエディター、デスクトップアプリ、ブラウザーです。
チャットのAIは、ファイルを貼り付けて答えを受け取る使い方が中心です。Claude Codeは、自分のパソコンのフォルダの中で、ファイルを読み、書き換え、必要ならコマンドも動かします。何十ものファイルをまとめて処理する仕事に向いています。
Anthropicは、同じ仕組みをターミナルなしで使える「Cowork」も用意しています。Claudeのデスクトップアプリの中で動き、パソコンのファイルを直接読み書きします。数式の入ったExcel、PowerPointの資料、体裁を整えた文書を作れるとしています。
| 道具 |
主な使い方 |
向いている人 |
| チャット(claude.aiなど) |
質問し、貼り付けた資料について答えをもらう |
誰でも |
| Cowork(デスクトップアプリ) |
パソコンのファイルを使って、資料作りや整理を任せる |
ターミナルを使わない人 |
| Claude Code |
フォルダの中でファイル処理やコマンドの実行まで任せる |
少しでもコマンドに慣れた人 |
開発以外の使い方が広がっている
KDDIアジャイル開発センターの御田稔氏(みのるん)は、8月28日にスライドを公開しました。Claude Codeを経費精算や登壇準備に使う方法の紹介です。編集させたファイルの8割以上は、日本語の書類だったといいます。
御田氏は、使う感覚を「優秀な中途社員が数人、専属アサインされた感じ」とたとえています。続けて「ただし入社初日なので、会社のことは何も知りません」と書いています。最初に仕事の中身を教える手間が要るということです。
スライドで紹介された経費精算の流れは次のとおりです。
- 社内のマニュアルを読ませて、決まりごとを整理する
- メールやカレンダーを見て、精算の対象を確かめる
- クレジットカードの明細を入手し、PDFの不要な部分を黒塗りする
- 経費精算のサービスを開き、申請ボタンを押す直前まで進める
準備は次の3段階です。
- 日常業務の資料をまとめるフォルダを作る
- 音声入力で、自分の仕事や使っているツール、資料の場所を説明し、フォルダの整理を任せる
- あとはやりたいことを頼む
Anthropic自身も、2025年7月の公式ブログで社内の使い方を紹介しています。広告の運用担当のチームは、数百件の広告が入ったCSVを読ませる仕組みを作りました。
この仕組みは、成果の低い広告を見つけ、文字数の制限内で新しい案を作ります。数時間かかっていた作業が、数分で終わるようになったとしています。法務のチームも、社内の相談を担当の弁護士につなぐ仕組みの試作品を作りました。
総務・企画の仕事での具体的な使い方
頼み方は、ふだん部下や後輩に仕事を頼むときと同じです。どのフォルダの何を使い、何を、どの形で作るかを書きます。
| 仕事 |
頼み方の例 |
人が確かめること |
| 議事録から報告書 |
「minutesフォルダの議事録10本から、決定事項と宿題を表にしてreport.mdに書いて」 |
決定事項の抜け、人名や社名の誤り |
| 表データの整理 |
「売上のCSVから重複を除き、月別・部署別に集計してExcelで出して」 |
合計を元のデータと突き合わせる |
| 規程との照合 |
「旅費規程と今回の申請書を読み比べ、合わない点を一覧にして」 |
規程に当てはまるかの最終判断 |
| 定型文書の作成 |
「参加者名簿のCSVから、案内状を人数分作って」 |
宛名、敬称、日付 |
| 定期の作業 |
「毎朝9時に、共有フォルダの新しいファイルを一覧にまとめて」 |
実行された時刻と中身 |
向いている仕事と、向いていない仕事も分けておきます。
| 向いている仕事 |
向いていない仕事 |
| 多くのファイルを同じ手順で処理する |
一度きりで、その場の判断が多い仕事 |
| 元のデータと照らし合わせられる集計や転記 |
正しいかどうかを確かめようがない仕事 |
| 人が直す前提の下書き |
送った瞬間に取り消せない連絡 |
| 決まった手順の定期作業 |
社外秘を扱うのに、個人向けの契約しかない場合 |
手順を「スキル」にして繰り返す
同じ頼みごとを何度もするなら、手順を「スキル」として保存できます。スキルは、決まった作業の手順や注意点を書いたファイルで、呼び出すとClaudeがその手順に沿って動きます。CoworkやClaude Codeで使えます。
フォルダ全体の決まりごとは、CLAUDE.mdというファイルに書いておく方法もあります。「社外秘のフォルダは読まない」「日付は西暦で書く」など、毎回伝えたいことを書いておきます。
SmartHRの情シス領域のエンジニアは、3つの道具を用意しました。手順を書いたスキル、進み具合を記録するファイル、完了の条件を判定する仕組みです。開発期間は、約2.5か月の見積もりから約1か月に縮まったと報告しています。
開発の例ですが、手順と完了の条件を先に書くやり方は、事務の仕事にも当てはまります。「何ができたら終わりか」を決めておくと、AIの作業を確かめやすくなります。
決まった時刻に動かす
デスクトップアプリでは、決まった時刻に作業を始める「定期タスク」を作れます。毎日、平日だけ、毎週などから選べます。ただし、アプリが開いていて、パソコンが起きている間しか動きません。
スリープ中に予定の時刻を過ぎた場合は、起動したときに、過去7日以内で最後に逃した1回分だけ実行されます。朝9時の予定が夜に動くこともあるため、指示の中に「今日の分だけ」などの条件を書いておきます。パソコンを閉じていても動かしたい場合は、クラウドで動かす仕組みもあり、こちらは最短で1時間おきです。
会社で使うときの注意点
情報の扱い:契約の種類で大きく変わる
| 契約 |
学習への利用 |
保存期間 |
| Free・Pro・Max(個人向け) |
本人の設定で選ぶ |
学習を許可すると5年、許可しないと30日 |
| Team・Enterprise・API(法人向け) |
利用者が提供を選ばない限り使わない |
標準で30日 |
業務のデータを扱うなら、TeamかEnterpriseの契約にそろえるのが基本です。Enterpriseでは、条件を満たすとサーバーにデータを残さない設定も申し込めます。
パソコンの側にも記録が残ります。Claude Codeは会話の記録を、利用者のフォルダの中に暗号化せずに既定で30日保存します。共用のパソコンで個人情報を扱う場合は、保存期間の設定と置き場所を確かめます。
権限:確認ありのモードから始める
Claude Codeには、どこまで承認なしで動くかを決める「権限モード」があります。
| モード |
承認なしで動く範囲 |
向いている場面 |
| Manual(default) |
読み取りだけ |
一つずつ確かめたいとき、機密を扱うとき |
| acceptEdits |
読み取り、ファイルの編集、基本的なファイル操作 |
中身を見ながら直してもらうとき |
| plan |
読み取り(autoが使える環境では、安全確認を通ったコマンドも) |
変更の前に進め方を確かめたいとき |
| auto |
すべて。裏で安全確認が入る |
長い作業 |
| bypassPermissions |
すべて |
切り離した仮想環境の中だけ |
公式ドキュメントによると、ターミナルとVS Codeでは、最初からautoで始まります。autoは別のモデルが操作を確かめ、危険と判断したものを止める仕組みです。会社はautoを使えないようにも設定できます。
総務や企画で使い始めるときは、ManualかacceptEditsにしておくと、何が起きているかを追いやすくなります。
Manualでは、起動したフォルダの外のファイルを読み書きする前に確認が出ます。ただし、承認したコマンドは、そのユーザーが触れる場所ならどこにでも書き込めます。PC Watchの記事でも、ツールが作業フォルダの外に次々と入り、Cドライブの空きが大きく減った体験が書かれています。
御田氏のスライドは、ログインと「確定・送信」は必ず人が行うとルール化するよう勧めています。経費精算の例も、申請ボタンを押す直前で止めています。
費用:少人数で試して測る
Claude Codeの費用は、使った量(トークン)で決まります。公式ドキュメントには、企業の開発者で1人1日平均約13ドル、月150〜250ドルという目安があります。9割の人は1日30ドル以下に収まるとしています。
これは開発での数字で、開発以外の目安は公表されていません。TeamやEnterpriseでは、席ごとの利用枠が上限の基本になり、超えた分を使わせるかどうかを管理者が決めます。組織、グループ、個人の単位で支出の上限を設定できます。
PC Watchの記事には、Claudeが自分で作ったものを検証する作業でトークンを使い、上限が近づいたという話もあります。まずは数人で1か月試し、/usageで使った量を確かめてから広げます。
導入前に決める社内ルール
| 項目 |
決めること |
ひな形の例 |
| 契約 |
どの契約で使うか |
業務データはTeamかEnterpriseだけ |
| 扱う情報 |
個人情報や未公開の数字を扱うか |
扱うフォルダを分け、ほかのフォルダは読ませない |
| 権限モード |
どのモードまで認めるか |
事務部門はManualかacceptEdits。bypassPermissionsは禁止 |
| 人が行う操作 |
AIに任せない操作 |
ログイン、送信、申請の確定、支払い |
| 費用 |
上限と確認の頻度 |
1人月○ドルまで。月初に使用量を確認 |
| 成果物の確認 |
誰が何を確かめるか |
数字、宛先、人名、日付は作成者が確認 |
今日からできること
- 社内でClaude CodeやCoworkを使っている人と、使っている契約を確かめる
- 個人のProやMaxで業務データを扱っていないか確かめ、扱いを決める
- 試す人を数人決め、議事録の整理や表の集計など、確かめやすい仕事から始める
- 権限モードの決まりと、AIに任せない操作を1枚にまとめて配る
- 1か月後に使用量と効果を測り、広げるかどうかを決める