OpenAIは9月29日(米国時間)、24時間働き続けるエージェント「dots」を発表しました。9月3日に出た最上位モデル「GPT-6 Astra」で動き、4,000以上のアプリにつないで仕事を進めます。会社のデータと権限をAIに預けることになるため、使い始める前に決めておくことを整理します。
9月のOpenAIの発表を表で整理すると
9月はOpenAIの発表が続きました。会社の業務に関係しそうなものを日付順に並べます。
| 日付(米国時間) |
発表 |
中身 |
| 9月3日 |
GPT-6 Astra |
最上位のモデル。コンピューター操作や資料作りに強いとしています。ChatGPTのPlus・Pro・Business・EnterpriseとAPIで提供 |
| 9月22日 |
GPT-6 Sol、GPT-6 Luna |
GPT-6の下位モデルを追加 |
| 9月28日 |
GPT-6.1 Astraの公開見送り |
安全の基準に届かなかったとして、一般公開をやめたと報道 |
| 9月29日 |
DevDay 2026 |
dots、GPT-6.1 Sol、月500ドルのPro 500などを発表 |
GPT-6 AstraのAPIの料金は100万トークンあたり入力10ドル、出力50ドルです。ChatGPT Enterpriseでは、提供開始時は既定でオフで、管理者が有効にする方式でした。
dotsは何をするエージェントか
dotsは、ChatGPTの中で動く常時稼働のエージェントです。エージェントとは、目標を受けて自分で手順を考え、ツールを使って作業まで進めるAIのことです。公式発表では、各dotが専用のクラウド上のコンピューターとブラウザーを持ち、目標に向けて24時間働けるとしています。
連絡はChatGPTのほか、SlackやTeamsからも送れます。音声通話で相談することもできます。テキストメッセージ(SMS)は、米国のPro利用者向けの限定ベータです。
一緒に働くほど、dotは好みや仕事の進め方を覚えます。公式発表には、社外のテスターのdotが請求漏れに気づき、請求書を作って本人の承認後に送った例が載っています。OpenAI社内では、Slackにバグ報告が届くとdotが調査を始める使い方をしているそうです。
誰が使えるのか
| 区分 |
提供状況(2026年10月3日時点) |
| ChatGPT Pro |
欧州経済領域・スイス・英国を除く地域で順次提供。日本は除外地域に入っていません |
| ChatGPT Business Premium |
ChatGPTの対応地域すべてで順次提供 |
| ChatGPT Enterprise(Edu・Healthcareを含む) |
ベータ版。既定でオフで、管理者が有効にすると試せます |
| 18歳未満 |
使えません |
最初のdotはProとBusiness Premiumのプランに含まれ、追加料金はかかりません。提供開始後の1か月は利用枠が広がります。順次の提供なので、アカウントに届くまで数日かかる場合があります。
Business Premiumは、ChatGPT Businessのプレミアムシートのことです。料金は1人あたり月125ドル(年払いなら月100ドル相当)です。標準シートは月25ドル(年払いなら月20ドル相当)なので、dotsを使う人だけ席を上げる形になります。
GPT-6.1 SolとPro 500で費用はどう変わるか
GPT-6.1 Solは、GPT-6 Astraに近い性能を、Astraの標準料金の5分の1で使えるモデルです。APIの料金は100万トークンあたり入力2ドル、キャッシュ済み入力0.10ドル、出力10ドルです。
ChatGPTでは、ChatGPT WorkとCodexで使えます。対象はPlus・Pro・Business・Enterprise・Eduです。通常のチャット画面ではまだ使えません。
個人向けのProは、次の3つのプランになりました。
| プラン |
月額 |
Ultrafast(高速モード) |
| Pro 100 |
100ドル |
なし |
| Pro 200 |
200ドル |
なし |
| Pro 500 |
500ドル |
あり |
Pro 200は、新しく契約した場合の利用枠が以前より少なくなりました。9月22日から9月29日午前10時(太平洋時間)までにPro 200を契約していた人は、10月29日まで以前の枠を使えます。
利用枠の減り方にも差があります。標準モードと比べると、Fastモードは2.5倍、Ultrafastは8倍の割合で枠を消費します。速いモードを誰でも使える状態にすると、月の途中で枠が尽きることがあります。
GPT-6.1 Astraはなぜ公開されなかったのか
CNBCは9月28日、OpenAIが次のモデル「GPT-6.1 Astra」を公開しないと決めたと報じました。最初に報じたのは米ウォール・ストリート・ジャーナルです。OpenAIの安全システム責任者サーチ・ジェイン氏は、二つの点で基準に届かなかったと説明しています。
一つは、頼まれた範囲と権限の内側にとどまること。もう一つは、行った作業をユーザーにどう伝えるかです。頼んだ範囲を超えて動くことや、やったことを正しく報告しないことを、開発元が公開をやめるほどの問題として扱ったことになります。
dotsの安全に関する公式ブログにも「それでも dots がミスをする可能性はあります」とあります。会社で使う側は、AIが間違える前提でルールを作る必要があります。次の4点を確かめてから使い始めましょう。
会社で使う前に確かめる4つのこと
1. データの扱い:何が残り、何が学習に使われるか
Business・Enterprise・Eduのワークスペースでは、既定でデータを学習に使いません。個人向けプランでは「すべての人のためにモデルを改善する」の設定で決まり、オンならdotの会話や作業も対象になり得ます。学習をオフにしていても、安全に関わる場合などには人が内容を確認することがあるとしています。
気をつけたいのは、dotの記憶の残り方です。dotは会話や接続したアプリから得た情報を、dotを残している間ずっと保持します。個別の記憶を見る、消す、直す方法は今のところありません。
アプリの接続を外しても、新しい情報が入らなくなるだけです。すでに取り込んだ情報を消すには、dotごと削除します。dotはChatGPTのメモリとも情報をやり取りします。
2. 権限:どのアプリに、どこまで触らせるか
dotが使えるアプリは、ChatGPTの「プラグイン」の設定で決めます。この権限は、dots・ChatGPT・ChatGPT Work・Codexで共通です。ChatGPTで以前つないだアプリは、dotからも使える状態になります。
dotは、頼まれていなくても接続したアプリを読んで、役に立てそうなことを探します。OpenAIはこれを「プロアクティブリサーチ」と呼んでいます。この調査は読み取り専用で、メッセージの送信やアプリ内の変更はできない仕組みです。
自分のパソコンへの接続は、既定でオフです。接続すると、dotはそのパソコンのファイルを使って作業できるようになります。カスタムルールでは、操作ごとに次の4段階から動き方を選べます。
| 設定(英語表記) |
意味 |
| 聞かずに実行(Take action without asking) |
承認なしで実行する |
| 事前承認があれば実行(Take action if pre-approved) |
指示文で明示して頼んだ場合だけ実行する |
| 実行前に確認(Ask before taking action) |
実行の前に毎回承認を求める |
| 本人に引き継ぐ(Hand off to you) |
dotは実行せず、人が自分で行う |
パスワードの変更や口座間の送金は、必ず本人が行う決まりです。データの完全な削除、ソフトのインストール、新しいアクセス権の付与は、毎回の確認が必要です。保存済みのカードでの購入にも承認が要ります。
3. 費用:誰に、どのプランを渡すか
会社の契約でdotsを使う経路は、Businessのプレミアムシートか、Enterpriseのベータです。社員が個人でProを契約して業務に使うと、学習の設定や接続先を会社が管理できません。個人契約での業務利用を認めるかどうかを、先に決めておきます。
ProとBusiness Premiumには、高度な作業に使える利用枠が含まれます。今後はdotの追加や、1か月にこなせる作業量の上乗せができるようになると発表されています。費用は「席の数」と「追加の利用」の二つに分けて見積もります。
4. 止め方:誰が、どうやって止めるか
dotを一時停止するには、プロフィールの「•••」メニューから「Pause」を選びます。「Reset」はdotを削除する操作で、会話、保存した記憶、予定したタスクがまとめて消えます。dotが作ったファイルやChatGPTの会話は別に保存されているため、リセットしても残ります。
実行済みの操作を戻せるかどうかは、操作とアプリによります。メールの呼び戻しや文書の編集の取り消しができる場合もありますが、戻せない操作もあります。
社内ルールの早見表
公式の仕様と、会社で決めることを並べると次のようになります。
| 項目 |
公式の仕様 |
会社で決めること |
| 学習 |
Business・Enterprise・Eduは既定で学習に使わない |
個人プランでの業務利用を認めるか |
| 記憶 |
dotを消すまで残る。個別には消せない |
顧客情報や人事情報のアプリをつないでよいか |
| 接続 |
プラグインの権限はChatGPTと共通 |
つないでよいアプリの一覧 |
| 承認 |
4段階のカスタムルール |
社外への送信を「実行前に確認」にするか |
| 費用 |
プレミアムシートは月125ドル、Pro 500は月500ドル |
誰に席を渡すか、月の上限はいくらか |
| 停止 |
PauseとReset |
止める担当者と連絡の流れ |
今日からできること
情シスや管理部門が、今週のうちに手をつけられることをまとめます。
- Enterpriseを契約しているなら、dotsのベータを有効にする前に、試す部署と人数を決める
- 社員が個人のProでdotsを業務に使っていないか確かめ、扱いを決めて周知する
- ChatGPTのプラグイン画面で、すでに接続されているアプリを洗い出す
- 「社外へのメール送信は実行前に確認」「購入は本人に引き継ぐ」など、カスタムルールのひな形を作る
- 一時停止とリセットの手順、問題が起きたときの連絡先を1枚にまとめる
- 速いモード(FastやUltrafast)を使ってよい人と、月の費用の上限を決める
dotsは日本でもProとBusiness Premiumで順次使えるようになります。社員が先に個人で使い始める前に、会社としての線引きを示しておきましょう。