会社で使うSaaS は、部署ごとに入れているうちに、全体が見えにくくなりがちです。全体を見渡せるように、中小から中堅の会社の情シスが扱うSaaSを12分野に分け、67製品を図解 と表で並べました。製品名と提供する会社は、2026年10月7日に各社の公式サイトで確かめています。
このマップの決まりと見方
載せる製品と並べ方は、次の決まりで作りました。
確かめた日: 2026年10月7日。編集部が公式サイトを開き、製品名、提供する会社、その分野の製品であることを確かめたものだけを載せています
並び: 各分野の中で、アルファベット順、次に五十音順です。優劣、順位、おすすめを表すものではありません
数: 1分野6製品までにしぼりました。載っていない製品が劣るわけではありません
料金: 載せていません。数が多く、同じ日に確かめきれないためです
広告: 広告やアフィリエイトの契約はありません
会社名: 公式サイトの表記に合わせています
1つの製品が、複数の分野の機能を持つことがあります。たとえばGoogle Workspace には、Google ChatとGoogle Meet、ドライブが含まれます。このマップでは、製品を1つの分野にだけ置いています。
前半 アカウントと端末を守る6分野
前半は、社員のアカウントと、会社の端末やデータを守る道具です。6分野で32製品あります。
SaaSマップ前半。アカウントと端末を守る6分野の32製品(2026年10月7日確認) 作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式サイト(この記事の表と「出典・参考」の一覧)
ID管理(IDaaS・SSO)
社員のログインを1つにまとめ(SSO)、アカウントの作成と停止を一か所で行う道具です。選ぶときは、いま使っているSaaSとつながるか、多要素認証 やパスキーに対応するか、人事のデータを取り込めるかを見ます。
Microsoft Entra IDは、以前はAzure Active Directory(Azure AD)と呼ばれていた製品です。
SaaS管理
会社で使っているSaaSと、そのアカウント、契約、費用を一覧にする道具です。使われていないアカウントや、会社が把握していないSaaSを見つける用途にも使われます。選ぶときは、自社のSaaSと連携できるか、端末の台帳も一緒に管理したいかを見ます。
この分野には、名前が変わった製品が2つあります(applogとfreee IT管理)。ほかの分野の分も含めて、後の章にまとめました。
パスワード管理
SSOにつなげられないサービスのパスワードを、暗号化した保管庫に入れ、必要な人とだけ共有する道具です。選ぶときは、会社のIDでログインできるか、誰がいつ使ったかの記録が残るか、退職のときに引き継げるかを見ます。料金は法人向けパスワード管理ツール比較 5製品の料金・SSO・監査ログ・過去の事故 にまとめています。
端末管理(MDM)
会社のスマホやPCの設定をそろえ、なくしたときに遠隔でロックや消去をする道具です。選ぶときは、対応するOS(iOS、Android、Windows、macOS)と、いまの契約に含まれている製品がないかを先に見ます。料金と対応OSはMDM比較 6製品の料金と対応OS、Apple Business連携と選び方 で比べています。
Jamfは、Apple製品の管理を中心にした会社です。
ウイルス対策・EDR
端末に入ろうとする不正なプログラムを止める道具と、侵入された後のあやしい動きを見つけて対処する道具(EDR)です。選ぶときは、対応するOSと、検知した後に誰が対応するかを見ます。自社で対応しきれない場合は、監視を頼めるサービスがあるかも確かめます。
ファイル共有・バックアップ
社内外でファイルを置いて共有する道具と、Microsoft 365などのデータの控えを別の場所に取る道具です。ファイル共有は、フォルダごとの権限の細かさ、社外と共有するときの制限、操作の記録を見ます。バックアップは、対象のサービスと、どの時点まで戻せるかを確かめます。
AvePoint Cloud Backupがバックアップ、ほかの4つがファイル共有です。Microsoft 365のOneDriveと、Google Workspaceのドライブは、後半のグループウェアに含まれます。
後半 毎日の仕事と手続きを支える6分野
後半は、社員が毎日使う道具と、人事や経理の手続きの道具です。6分野で35製品あります。情シスは、アカウントと権限、ほかのSaaSとの連携の設定で関わります。
SaaSマップ後半。毎日の仕事と手続きを支える6分野の35製品(2026年10月7日確認) 作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式サイト(この記事の表と「出典・参考」の一覧)
グループウェア
メール、予定表、文書の作成、ファイルの置き場など、毎日の仕事の土台です。選ぶときは、取引先とやり取りするファイルの形式と、掲示板やワークフローまで同じ製品でそろえるかを見ます。Microsoft 365とGoogle Workspaceの料金はMicrosoft 365とGoogle Workspace比較 値上げ後の料金と選び方 で比べています。
desknet's NEO、Garoon、サイボウズ Officeには、クラウド版のほかにパッケージ版もあります。
ビジネスチャット・Web会議
文字のやり取りと、映像の会議の道具です。選ぶときは、社外の人とつながる方法、無料版の制限、発言の記録を管理者が書き出せるかを見ます。料金はビジネスチャット比較 Slack・Teams・Chatworkほか5社の料金と無料版の制限 で比べています。
Google ChatとGoogle Meetは、Google Workspaceに含まれるため、グループウェアの欄にまとめました。Microsoft TeamsもMicrosoft 365に含まれますが、チャットとWeb会議が中心の製品なので、この欄に置いています。
ヘルプデスク・問い合わせ管理
問い合わせを受け付け、担当と進み具合を記録する道具です。Freshservice、Jira Service Management、LMISは、社内のIT部門の受付や運用の管理を主な用途に案内しています。Re:lation、Zendesk、楽楽自動応対は、メールなどの問い合わせをチームで分けて対応する道具です。
選ぶときは、受付の入口(メール、チャット、フォーム)と、よくある質問を載せる場所を作れるかを見ます。
電子契約
契約書をクラウドで相手に送り、電子署名で締結して保管する道具です。選ぶときは、署名の方式、相手側に登録や費用が要るか、締結した契約書を後から探しやすいかを見ます。
勤怠・人事労務
出勤と退勤の打刻、勤務時間の集計、入社や退職の手続きの道具です。選ぶときは、シフトやフレックスなど自社の働き方に合うか、給与計算にデータを渡せるかを見ます。情シスにとっては、入社と退職の情報をID管理に渡せるかも確かめたい点です。
経費・会計
経費の申請と承認、仕訳と決算の道具です。選ぶときは、経費と会計を同じ会社の製品でそろえるか、銀行やカードの明細を取り込めるか、顧問の税理士と共有できるかを見ます。
Concur Expenseと楽楽精算が経費精算、ほかの4つが会計です。
名前が変わった製品は台帳も直す
確かめる中で、名前が変わった製品が5つありました。
今の名前
前の名前
公式サイトの案内
applog
dxeco(デクセコ)
株式会社オロが、2026年10月6日から名前を変えたと発表
freee IT管理
Bundle by freee
製品サイトの表記は「freee IT管理(旧Bundle)」
楽楽自動応対
メールディーラー
製品サイトに「名称が変わりました」と案内
OPTiM Biz
Optimal Biz
製品サイトの表記は「OPTiM Biz(旧:Optimal Biz)」
Microsoft Entra ID
Azure Active Directory(Azure AD)
製品サイトに「旧称 Azure AD」と表記
変わった日まで確かめたのは、applogだけです。オロは発表の中で、管理の対象をSaaSから、AIツールやデバイスを含むアプリ全体へ広げると説明しています。運営会社、基本の機能、サポート体制は変わらないとしています。
名前が変わると、契約書、請求書、社内の手順書、台帳で呼び方がずれます。台帳には、今の名前と前の名前を並べて書いておくと、請求書と突き合わせるときに迷いません。
入社から退職まで、どの分野をいつ使うか
12分野は、1人の社員が入社してから退職するまでの場面に当てはめると、覚えやすくなります。次の図と表は、編集部が整理した一般的な例です。会社によって順番や担当は変わります。
入社から退職までの6つの場面と、12分野のSaaSを使う場面(一般的な例) 作成: 編集部 / もとの資料: 編集部が整理した一般的な例(分野の分け方はこの記事のSaaSマップ)
場面
使う分野
1 入社が決まる
勤怠・人事労務、ID管理
2 入社日
端末管理(MDM)、ウイルス対策・EDR、パスワード管理
3 毎日の仕事
グループウェア、ビジネスチャット・Web会議、ファイル共有
4 申請と手続き
勤怠・人事労務、経費・会計、電子契約
5 困ったとき
ヘルプデスク・問い合わせ管理
6 異動・退職
SaaS管理、ID管理、端末管理(MDM)、バックアップ
入社と退職のアカウントの作業では、とくに勤怠・人事労務(名簿)、ID管理、SaaS管理の3分野のつながりを確かめます。どの名簿をもとにアカウントを作り、誰が止めるかを先に決めておくと、消し忘れを減らせます。
どの分野でも共通して確かめる点
IPA(情報処理推進機構)は、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の付録として「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」を公開しています。中身は15項目のチェックシートです。選択するときのポイントが6項目、運用するときのポイントが4項目、セキュリティ管理のポイントが5項目あります。
分野を問わず、SaaSを選ぶときと使い続けるときに当てはめられます。たとえば次の項目です。
どの業務で利用するか明確にする(No.1)
利用者の範囲を決める(No.8)
利用者の認証を厳格に行う(No.9)
バックアップに責任を持つ(No.10)
利用終了時のデータを確保する(No.13)
No.13は、利用をやめるときのデータの取り扱いの条件を確かめる項目です。乗り換えのときに困らないよう、契約の前に見ておきます。
今日からできること
自社で使っているSaaSを、この記事の12分野に当てはめて書き出す。どこにも入らないものは「その他」に置く
同じ分野に2つ以上あるところと、1つもないところに印を付ける
分野ごとに、管理者のアカウントを持つ人と、次の契約の更新日を書く
退職した人のアカウントが残っていないかを、1分野ずつ確かめる
名前が変わった製品は、台帳と社内の手順書の名前を直す
書き出しには、次の2つの台帳がそのまま使えます。契約と更新日は1つ目、アカウントと権限は2つ目に書きます。
退職のときに止める順番は、退職者のアカウントはいつ消す?停止・削除・引き継ぎの順番とチェックリスト にまとめています。製品の名前や提供する会社は変わることがあります。棚卸しのたびに、公式サイトで今の名前を確かめてください。