Googleは、Geminiアプリのカスタム機能「Gem」を終了し、「スキル」に置き換えると発表しました。個人のアカウントは2026年11月、Workspaceの企業向けは2027年3月1日以降が区切りです。作ったGemがどうなるのか、会社の管理者は何をすればよいのかを、Googleの公式情報で整理します。
Gemとスキルは何が違うのか
Gemは、指示や資料を登録しておき、決まった仕事を頼めるようにする機能です。9to5Googleによると、Googleは2024年に「カスタム版のGemini」として出しました。後継のスキルも、繰り返し使う指示を保存しておく点は同じです。
違いは使い方にあります。Gemは、サイドパネルから選んで開き、その中で会話します。スキルは、ふつうのチャットの入力欄で「/」とスキル名を入れて呼び出します(「/」は近日「@」に変わる予定です)。
| 項目 |
Gem |
スキル |
| 呼び出し方 |
サイドパネルから選んで開く |
チャットで「/」とスキル名を入れる。関係があればGeminiが自動で使う |
| 組み合わせ |
一度に一つ |
一つのチャットで複数を重ねて使える |
| 使える場所 |
Geminiアプリ。Workspaceアプリでは使えない |
GeminiアプリとWorkspaceアプリ。ただし両者は同期しない |
| 形式 |
Google独自 |
SKILL.mdという公開の形式。ほかのツールで作ったスキルも取り込める |
| 共有、ドライブのファイル追加 |
できる |
今後数週間で対応予定(9月30日時点) |
| Canvas、Deep Researchなど |
既定のツールに設定できる |
まだ対応していない |
Googleは、スキルに移す理由を二つ挙げています。チャットの画面を切り替えずに使えることと、複数のスキルを重ねて使えることです。
Googleの発表の動画の1コマ。Gmailの横のGeminiでスキルを呼んで提案書を作る出典: Google Workspace Updates(引用)
移行の日程
日程は、アカウントの種類によって大きく違います。Workspace UpdatesとWorkspace管理者向けヘルプの日程を表にまとめます。
| 時期 |
個人のGoogleアカウント |
Workspace(Business・Enterprise) |
Workspace(Education) |
| 9月30日〜 |
チャットでスキルが順次使えるように |
まだ |
まだ |
| 10月5日〜 |
対象外 |
Workspaceアプリでスキルの提供開始 |
同左 |
| 10月13日〜 |
対象外 |
Geminiアプリでスキルの提供開始(11月中旬までに完了) |
同左 |
| 11月 |
Gemのサポート終了。自動で移行 |
対象外 |
対象外 |
| 11月17日 |
アプリ内の告知では、この日から自動移行を開始 |
Gemが「設定」の中に移る。作成・編集・利用は続けられる |
同左 |
| 2027年3月1日以降 |
対象外 |
Gemの作成・編集・利用が終了。残りは下書きのスキルに自動移行 |
対象外 |
| 2027年6月1日以降 |
対象外 |
対象外 |
同じく終了。ClassroomやLMS連携のGemも終わる |
Workspaceアプリでのスキルの提供は、組織の更新設定で時期が変わります。更新の早い「即時リリース」なら10月5日から12日、「計画的リリース」なら10月19日から11月中旬の予定です。
Googleのヘルプでは、非営利団体向けのWorkspaceも2027年3月の区切りに入っています。
個人アカウントの11月17日という日付は、Geminiアプリの画面に出ている告知によるものです。9to5GoogleやITmedia NEWSが報じています。Googleのヘルプとブログでは「2026年11月」と書かれています。
作ったGemはどうなるのか
Gemの提供が終わると、残っているGemは自動でスキルに移ります。Workspace管理者向けヘルプによると、移り方は次のとおりです。
| 項目 |
移行後の扱い |
| 状態 |
作った人のスキル一覧に、無効の下書きとして置かれる。確認して有効にするまで使えず、共有もできない |
| 引き継がれるもの |
名前、説明、カスタムの指示、アップロードした知識ファイル |
| 共有の設定 |
元のGemのドライブの権限と共有の設定が、スキルに引き継がれる |
自動移行の詳しい内容は、始まる30日以上前に管理者へ知らせるとGoogleは説明しています。
移ったスキルは、作った人が有効にするまで、使うことも共有することもできません。部署で共有して使っているGemほど、作った人の確認作業が欠かせなくなります。異動や退職で作った人がいないGemは、早めに引き継ぐ人を決めておきます。
気をつけたい3つの点
一つめは、GeminiアプリのスキルとWorkspaceアプリのスキルが同期しないことです。自動で移るのはGeminiアプリの中だけです。Googleドキュメントなどでも使いたいなら、Workspace側でも作り直す必要があります。
二つめは、ファイルの対応範囲です。スキルにアップロードできるのは、テキストやPDF、画像などです。Wordの.docxやExcelの.xlsxは対応していません。
ファイルの合計は100MBまでです。GitHubのファイルもスキルでは扱えません。WordやExcelの知識ファイルを使っているGemは、PDFやテキストに変換しておく必要があります。
三つめは、使える人の条件です。Geminiアプリでスキルを作るには、18歳以上で「アクティビティの保存」をオンにしておく必要があります。Workspaceアプリのスキルも、使えるのは18歳以上です。
早めに手で作り直す手順
自動移行を待たずに、Gemを手でスキルにすることもできます。Geminiアプリのヘルプにある手順は3段階です。
- 作り直すGemを開き、知識ファイルをダウンロードする
- 新しいスキルを作り、Gemの指示などの内容をコピーする
- ファイルを付けたい場合は、スキルをダウンロードし、ファイルと一緒にアップロードし直す
ファイルをアップロードしてスキルを作る操作は、パソコンで行います。使えるのはMacのGeminiアプリと、ブラウザーのgemini.google.comです。スキルの数に上限はありませんが、同時に有効にできるのは100個までです。
ヘルプは、よいスキルを書くコツを3つ挙げています。
- Geminiがそのスキルを使うべき場面を具体的に書く
- 指示を、その仕事に必要なことだけに絞る
- 期待する出力の例を入れる
Gemの指示をそのまま貼るだけでなく、この3点で見直すと使いやすくなります。
どのGemから作り直すか
すべてのGemを一度に作り直す必要はありません。業務への影響で順番を決めます。
| 優先度 |
当てはまるGem |
対応 |
| 高 |
部署で共有して毎日使う。Workspace Studioのフローに組み込んでいる |
11月中に手で作り直し、Workspace側にも作る |
| 中 |
個人で週に数回使う。知識ファイルが多い |
自動移行の前に指示とファイルを控えておく |
| 低 |
試しに作っただけ。しばらく使っていない |
自動移行に任せるか、削除する |
会社の管理者がすること
Workspace管理者向けヘルプは、移行に備えて次の対応を勧めています。
| やること |
中身 |
| 利用者に知らせる |
自社の区切りの日を伝える。Business・Enterpriseは2027年3月1日、Educationは6月1日 |
| スキルが使えるか確かめる |
組織でスキルが有効になっているかを確認し、提供が始まったら試すよう促す |
| 大事なGemを作り直してもらう |
作った人に、重要なGemを早めに手でスキルにしてもらう |
| Workspace Studioのフローを直す |
「Gemに質問する」ステップを使うフローを、スキルなどに置き換える |
| 教育機関の対応 |
教員向けの移行ガイドを配る。ClassroomではGemini Notebookなどへの切り替えを勧める |
Workspace Studioは、Workspaceの作業を自動化するフローを作る機能です。新しいフローには、すでに「Gemに質問する」ステップを追加できなくなっています。既存のフローは2027年の区切りまで動きますが、その後は止まります。
管理コンソールの設定
Workspaceアプリでのスキルの利用は、管理コンソールで許可します。「アプリ」から「Google Workspace」「Workspace Studio」へ進みます。「スキル」の中の「スキルを作成して使用する」が設定の場所です。
組織部門やグループごとに設定でき、オフにすると利用者は既存のスキルも使えなくなります。
スキルを社外に共有できるようにする設定もあります。顧客向けの手順や社内の決まりを含むスキルが外に出ないよう、共有の方針も決めておきます。
管理者向けヘルプには、スキルはGeminiのベータ版プログラムに登録している顧客向けという注記もあります。自社のコンソールで設定が表示されるかを確かめてください。
Workspaceアプリでスキルを使えるエディションは、次のとおりです。
- Business Starter・Standard・Plus
- Enterprise Starter・Standard・Plus
- 教育機関向けのアドオン「Google AI Pro for Education」
- アドオン「AI Expanded Access」
今日からできること
- 社内でGemを使っている人と、主なGemの名前・用途を洗い出す
- 業務に欠かせないGemの指示文と知識ファイルを、作った人に控えてもらう
- Workspace Studioで「Gemに質問する」を使うフローがないかを確かめる
- 管理コンソールのスキルの設定と、社外への共有の方針を決める
- 個人のGoogleアカウントで業務用のGemを作っている人がいないかを確かめる。11月に先に移行が始まる