調べものの途中で突然、「ウイルスに感染しました」という赤い画面と警告音が出て、電話番号が表示される。これは「サポート詐欺」の手口で、画面が出ただけなら慌てる必要はありません。社員がすること、情シスがすること、そのまま貼れる掲示文をまとめます。
偽のウイルス警告とは 画面が出ただけなら感染していません
サポート詐欺は、偽の警告画面で不安をあおり、電話をかけさせてお金をだまし取る手口です。IPA(情報処理推進機構)によると、画面が表示されただけならウイルスには感染していません。偽の画面を閉じるだけで問題ないとしています。
どんな流れでだまされるのか
IPA の注意喚起をもとに、よくある流れを表にしました。
| 段階 |
起きること |
| 1. 入口 |
ウェブサイトの広告や、検索結果の上に出る罠の広告をクリックする |
| 2. 偽の警告 |
全画面に警告と警告音。画面に見えている × は偽物で、押しても消えない |
| 3. 電話 |
表示された番号にかけると、マイクロソフトのサポートを名乗る人が出る |
| 4. 遠隔操作 |
「直します」と言われ、遠隔操作ソフトを入れさせられる |
| 5. 支払い |
サポート代として数万〜10万円程度を求められる。ギフトカードやネットバンキングで払わせる |
画面の電話番号は、以前は050番号でした。IPA によると、2023年8月ごろから「0101」で始まる番号に変わっています。これは北米への国際電話です。
IPAの注意喚起に載っている、サポート詐欺の偽の警告画面の例出典: IPA(情報処理推進機構)「パソコンに偽のウイルス感染警告を表示させるサポート詐欺に注意」(引用)
遠隔操作には、AnyDesk や TeamViewer など、本来は正規のサポートに使うソフトが悪用されます。
支払いの手口も悪質です。IPA は、コンビニでギフトカードを何度も買わせ、最終的に100万円を超えた相談を紹介しています。ネットバンキングで送金額に0を足し、198万円を送らせた事例もあります。
数字で見るサポート詐欺
| 調べ |
数字 |
| 警察庁 2025年(確定値) |
「サポート名目」の詐欺は認知件数1,048件、被害額14.9億円(前年比48.1%増) |
| 警察庁 2026年上半期(暫定値) |
認知件数735件、被害額8.3億円 |
| IPA 安心相談窓口 2026年4〜6月 |
「ウイルス検出の偽警告」の相談が1,428件。全相談の37.3%で、手口別の最多 |
| IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」個人編 |
「サポート詐欺(偽警告)による金銭被害」が7年連続で選ばれる |
2025年は件数が減った一方で、被害額は増えました。1件あたりの被害が大きくなっています。会社のパソコンでも、テレワーク中の私物のパソコンでも起きます。
社員がすること 電話しない・閉じる・すぐ知らせる
社員に覚えてもらうのは3つだけです。電話しない、閉じる、情シスに知らせる、の順番です。
画面の閉じ方(Windows のパソコン)
- 画面の電話番号には電話しません。警告音がうるさければ、音量を下げます。
- キーボード左上の Esc キーを3秒ほど押し続けます。全画面が解除され、右上に本物の × が出ます。
- × を押してブラウザを閉じます。× が出ないときは、画面を一度クリックしてから Esc キーをもう一度長押しします。
- それでも閉じないときは、Ctrl・Alt・Delete の3つのキーを同時に押します。「タスク マネージャー」でブラウザを選んで「タスクの終了」を押すか、右下の電源アイコンから「再起動」を選びます。
- ブラウザを開き直したとき「ページを復元」と出ても、「復元」は押さずに閉じます。
IPAが示す閉じ方。Escキーを長押しし、右上に出た×で閉じる出典: IPA(情報処理推進機構)「パソコンに偽のウイルス感染警告を表示させるサポート詐欺に注意」(引用)
手順4のうち、タスク マネージャーで終わらせる方法は警察庁、再起動する方法は IPA が案内しています。再起動すると、保存していない作業は消えることがあります。
閉じられない・操作できないとき
2024年6月ごろから、画面全体が操作できなくなり、再起動しても消えない手口の相談が IPA に寄せられています。IPA はこれまでの対処が通用しないとして、まずネットワークを切るよう案内しています。
会社のパソコンなら、LAN ケーブルを抜き、そのまま情シスに電話で知らせます。電源の切り方は情シスの指示に従います。自宅のパソコンなら、IPA は Wi-Fi ルーターの電源を切り、2〜3分待ってからシャットダウンする手順を示しています。
電話してしまった・操作させてしまったとき
叱られるのが怖くて黙っているのが、いちばん困ります。状況ごとに、社員がすることを表にしました。
| 状況 |
社員がすること |
| 画面が出ただけ |
閉じて、情シスに「出たので閉じた」と一報 |
| 電話をかけたが、すぐ切った |
何を話したかメモして、情シスへ連絡 |
| 遠隔操作ソフトを入れた・操作させた |
LAN ケーブルを抜くか Wi-Fi を切る。電源はそのままで、すぐ情シスへ |
| お金を払った・ネットバンキングを開いた |
支払いの控え・ギフトカード・レシートを捨てずに、情シスに連絡 |
自分が操作していないのに画面が勝手に動いたら、遠隔操作されています。IPA は、すぐにネットワークを切るよう呼びかけています。会社のパソコンなら、ソフトの削除や初期化は自分でせず、情シスに任せます。
情シスがすること 連絡を受けてからの初動
連絡を受けたら、まず何が起きたかを落ち着いて聞きます。IPA は、情報漏えいのおそれが出てくるかどうかの分かれ目は、遠隔操作されたかどうかだとしています。聞き取りで、そこをはっきりさせます。
聞き取りの項目
- いつ、どのサイトを見ていて画面が出たか
- 電話をかけたか。かけたなら、名前・会社名・連絡先を伝えたか
- 遠隔操作ソフトを入れたか。相手に何分くらい操作させたか
- 操作中に、メール・社内のファイル・ブラウザに保存したパスワードを開かれたか
- ネットバンキング・会社のカード・ギフトカードで支払ったか
初動の手順
| 順番 |
すること |
メモ |
| 1 |
ネットワークから切り離す |
遠隔操作を止める。電源は不用意に切らない(記録が消えるため) |
| 2 |
調査するかを決める |
顧客情報や個人情報が入っていたら、調査を前提に端末を保存する |
| 3 |
パスワードを変える |
そのパソコンで使っていたアカウントを、別の端末から変更する |
| 4 |
お金の手当て |
カード会社・銀行に連絡。ギフトカードは発行会社へ。警察にも相談 |
| 5 |
復旧 |
遠隔操作ソフトの削除と「システムの復元」。できなければ初期化 |
| 6 |
報告 |
個人データの漏えいのおそれがあれば、個人情報保護委員会への報告が必要になる場合がある |
手順1は、IPA の「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」に沿っています。手順5は IPA のサポート詐欺の注意喚起に、手順6は IPA の企業向け相談窓口の回答例に沿っています。
起きる前にしておくこと
- 情シスの連絡先を決めて周知する。テレワーク中や夜間の連絡方法も決める
- 「業務のパソコンを、管理者の許可なく第三者に遠隔操作させない」を決まりにする(IPA の呼びかけ)
- 正規の遠隔サポートの方法を1つに決めて伝える。それ以外で「操作させて」と言われたら詐欺だと分かる
- 使っていない遠隔操作の仕組みを止める
- 画面右下に警告の通知が出続けるときは、ブラウザの通知の許可を消す
遠隔操作の仕組みでは、Windows 11 に最初から入っている「クイック アシスト」に注意が要ります。Microsoft は2024年5月、サポートを装った電話でクイック アシストを使わせる攻撃を報告しました。
この攻撃は、ランサムウェアの被害につながっています。Microsoft は、使っていない環境ではブロックや削除を検討するよう勧めています。
Microsoft は電話番号つきの警告を出しません
Microsoft は公式のサポートページで、エラーや警告のメッセージに電話番号を載せることはないと明言しています。一方的に電話をかけてくることも、ギフトカードでサポート代を求めることもありません。
社員への説明は「電話番号が出たら詐欺」で足ります。Microsoft 日本のセキュリティチームも2022年のブログで、サポート担当者が社員証を見せることはないと書いています。
社内に貼る掲示文(そのまま使えます)
下の文を A4 1枚に印刷して、プリンターの横や休憩室に貼ってください。○○ は自社の連絡先に置き換えます。
パソコンに「ウイルスに感染しました」と出たら
- 画面の電話番号には、絶対に電話しない(マイクロソフトは電話番号つきの警告を出しません)
- キーボード左上の Esc キーを3秒押し続け、右上の × で閉じる
- 閉じられないときは、LAN ケーブルを抜いて、そのまま情シスへ(内線 ○○/携帯 ○○)
- 電話した・操作させた・お金を払ったときも、すぐ連絡。早いほど被害を小さくできます
- 「遠隔操作させて」「ギフトカードを買って」と言われたら詐欺です
チャットで流すなら、短く次のようにします。
偽のウイルス警告(サポート詐欺)が増えています。画面に電話番号が出たら詐欺です。電話せず、Esc キーを長押しして × で閉じ、情シスに一言ください。閉じられない、電話してしまった、という場合も責めませんので、すぐ連絡をお願いします。
60代の家族に伝えるときは
国民生活センターは2024年3月、サポート詐欺の相談が70歳以上で大幅に増えていると発表しました。修理代100円のはずが、遠隔操作で100万円を送金されていた例も紹介しています。会社で覚えた対処は、そのまま実家でも役に立ちます。
伝えるのは次の3つで足ります。
- パソコンが「電話して」と言ってきたら、それだけで詐欺
- 電話で「ギフトカード」「電子マネー」と言われたら詐欺(警察庁も「絶対に詐欺です」と呼びかけています)
- 困ったら、相手ではなく家族に電話する。家族の番号を紙に書いてパソコンの横に貼っておく
帰省したときに、IPA の体験サイトを一緒に試しておくと安心です。
相談先も伝えておきます。IPA 情報セキュリティ安心相談窓口は 03-5978-7509 で、土日祝日と年末年始を除く10時〜17時に受け付けています。警察相談専用電話は #9110、消費者ホットラインは 188 です。
今日からできること
| チェック |
やること |
| □ |
情シスの連絡先と、夜間・テレワーク時の連絡方法を決める |
| □ |
掲示文を印刷して貼り、チャットでも流す |
| □ |
「許可なく遠隔操作させない」を社内ルールに入れる |
| □ |
正規の遠隔サポートの方法を1つに決めて周知する |
| □ |
使っていない遠隔操作ソフト(クイック アシストなど)を止める |
| □ |
初動の6手順(切り離す・調べる・変える・お金・直す・報告)を1枚にしておく |
| □ |
IPA の体験サイトで、全員に閉じ方を一度練習してもらう |
偽の警告は、気づいて閉じれば被害はありません。「電話しない、閉じる、知らせる」を、社員にも家族にも繰り返し伝えてください。