共有のパスワードをExcelや付箋で回している会社は、まだ少なくありません。法人向けのパスワード管理ツールは、社員のパスワードを暗号化して保管し、必要な人にだけ共有する道具です。1Password、Bitwarden、Keeper、Dashlaneと、国産のPrivacoの5製品を、各社の公式の料金ページとヘルプで比べました。
5製品の料金を並べる(2026年10月3日時点)
まず料金です。各社の公式の料金ページに出ている金額を、そのまま並べました。料金はすべて1人あたりの月額で、税の扱いと払い方は表の右の2列のとおりです。
(2026年10月3日時点・税抜/税込は各社の表記のとおり・年払いの月額。月払いがあるものはかっこ内)
| 製品 |
プラン |
料金(1人あたり月額) |
払い方 |
税の表記 |
| 1Password |
Teams Starter Pack |
10人まで定額で24.95ドル |
年払い(月払いは29.95ドル) |
表記なし |
| 1Password |
Business |
8.99ドル |
年払い(月払いは10.99ドル) |
表記なし |
| Bitwarden |
Teams |
4ドル |
年払い |
税別 |
| Bitwarden |
Enterprise |
6ドル |
年払い |
税別 |
| Keeper |
ビジネススターター |
408円(5〜10人向け) |
年払い |
表記なし |
| Keeper |
ビジネス |
617円 |
年払い |
表記なし |
| Keeper |
エンタープライズ |
908円(購入は見積もりの依頼から) |
年払い |
表記なし |
| Dashlane |
Omnix Password Management |
8ドル |
年払い |
表記なし |
| Dashlane |
Omnix Enterprise |
問い合わせ |
問い合わせ |
問い合わせ |
| Privaco |
法人向け |
1人年3,980円(月あたり約332円)。10人を超える場合は見積もり |
年払い |
税抜 |
1PasswordのTeams Starter Packは、10人分が定額に含まれます。さらに10人まで、1人月4.99ドル(年払い)で足せます。DashlaneのOmnix Credential Protection(月4ドル)は、漏えいやフィッシングの危険を見つける機能で、パスワードの保管庫は含みません。Omnix Enterpriseは50人を超える組織向けと案内されています。
1Passwordの公式サイトの法人向けの料金ページ(2026年10月時点・英語)出典: 1Password「Pricing and plans (Business)」(引用)
10人と30人で年額を計算すると
表の金額で、1年分を計算しました。ドル建ての製品は、円での負担が為替で変わります。
(2026年10月3日時点の年払いの料金で計算・税は各社の表記のとおり)
| 製品とプラン |
10人で1年 |
30人で1年 |
| 1Password Teams Starter Pack |
299.40ドル |
対象外(20人まで) |
| 1Password Business |
1,078.80ドル |
3,236.40ドル |
| Bitwarden Teams |
480ドル |
1,440ドル |
| Bitwarden Enterprise |
720ドル |
2,160ドル |
| Keeper ビジネススターター |
48,960円 |
対象外(10人まで) |
| Keeper ビジネス |
74,040円 |
222,120円 |
| Dashlane Omnix Password Management |
960ドル |
2,880ドル |
| Privaco 法人向け |
39,800円(税抜) |
見積もり |
SSO・共有・監査ログはどのプランから使えるか
会社で使うときに差が出るのは、料金より管理の機能です。特に次の3つを見ます。
- SSO(シングルサインオン): Microsoft Entra IDやGoogleなど、会社のアカウントでログインする仕組み。会社のアカウントを止めれば、パスワード管理ツールにも入れなくなります。
- 共有: 部署やチームごとに、見せるパスワードを分ける仕組み。
- 監査ログ: 誰がいつ何をしたかの記録。漏えいを疑ったときの調査に使います。
| 製品 |
SSO |
共有 |
監査ログ・レポート |
| 1Password |
Businessのみ(Teams Starter Packは不可) |
両プランで共有。社外のゲストはStarterが5人、Businessが20人まで |
Businessで利用状況や操作のレポート。SIEM(ログをまとめて見る仕組み)への送信もBusiness |
| Bitwarden |
Enterpriseのみ |
両プランで共有の単位(コレクション)を無制限に作れる |
Teamsからイベントログ |
| Keeper |
エンタープライズのみ(SAML 2.0) |
全プランで共有。チーム共有フォルダも全プラン |
全プランでアクティビティレポートとセキュリティ監査。詳しいレポートと通知(ARAM)は追加料金 |
| Dashlane |
Omnix Password Managementで利用可 |
共有とコレクションを無制限に作れる |
アクティビティログ。過去15か月分をCSVで出せる |
| Privaco |
機能一覧に掲載。2026年8月にHENNGE Oneとの連携を開始 |
部署・チーム単位のグループ、フォルダ、社外との共有 |
機能一覧に「セキュリティ監査機能」を掲載 |
利用者の追加と削除を、会社のアカウントの台帳から自動で反映する仕組みをSCIMといいます。1PasswordはBusiness、BitwardenはTeams、Keeperはエンタープライズ、DashlaneはOmnix Password Managementで使えます。
製品ごとの特徴もあります。Bitwarden Enterpriseは、自社のサーバーで動かす方式(セルフホスト)も選べます。Privacoは、データを国内のデータセンターに保存していると説明しています。一方で、Privacoのスマートフォン向けアプリはAndroid版が開発中です(2026年10月3日時点)。
Bitwardenの公式サイトの法人向けの料金ページ(2026年10月時点・英語)出典: Bitwarden「Bitwarden Pricing (Business)」(引用)
過去の事故と、各社がどう発表したか
パスワード管理ツールは、狙われやすい道具でもあります。1Password、Keeper、Privacoなどは、保管庫を利用者だけが開ける鍵で暗号化していると説明しています。提供する会社も中身を見られない方式で、ゼロ知識と呼ばれます。鍵のもとになるのが、ツールを開くための親のパスワード(マスターパスワード)です。
それでも事故は起きます。公式の発表で確かめられた主な事例をまとめました。
| 製品 |
時期 |
何が起きたか |
利用者の保管庫のデータ |
| LastPass(今回の比較の対象外) |
2022年8月〜12月 |
開発環境に侵入された後、クラウドの保管場所から保管庫のバックアップが持ち出された |
パスワードやメモは暗号化されたまま。サイトのURLは暗号化されていなかった |
| 1Password |
2023年9月に検知、10月に公表 |
社内で使うOktaの管理画面で不審な操作。Oktaのサポートシステムへの侵害に関連 |
利用者のデータへのアクセスはなかったと発表 |
| Bitwarden |
2026年4月22日 |
開発者向けのコマンドラインツール(CLI)のnpm配布版2026.4.0に、不正なコードが約1時間半混入 |
保管庫のデータが見られた証拠はないと発表。CLIを使わない人は影響なし |
Keeper、Dashlane、Privacoについては、今回の調べで、利用者の保管庫のデータが外に出たという公式の発表は見つかりませんでした。
事故の事例から分かること
LastPassは、マスターパスワードが既定の基準より弱い利用者に、保存したサイトのパスワードを変えることを勧めました。暗号化されていても、マスターパスワードが弱ければ総当たりで破られるおそれがあるからです。法人の顧客の3%未満には、個別に対策を勧めたと発表しています。
BitwardenのCLIの件では、CLIを使わない人は影響を受けていないと発表されました。ブラウザの拡張機能やスマホのアプリだけを使う一般の社員は対象外です。該当する版を入れた人には、入れ直しと、そのパソコンにあったAPIのトークンやSSHのキーの交換を案内しています。
選ぶときは、事故がゼロかどうかより、起きたときにすぐ、何が漏れて何が漏れていないかを公表しているかを見ます。各社のセキュリティのページや、第三者の監査の結果も確かめておきましょう。
会社の規模と目的でどれが候補になるか
どの製品にも向き不向きがあります。会社の状況ごとに、候補になる製品とプランを整理しました。
| 会社の状況 |
候補になる製品とプラン |
気をつける点 |
| 10人以下で、まずExcelや付箋の共有をやめたい |
1Password Teams Starter Pack、Keeper ビジネススターター、Privaco、Bitwarden Teams |
1Password、Keeper、BitwardenのこのプランにはSSOがない。退職時の停止は手作業 |
| 日本語の窓口と国内でのデータ保存を重視したい |
Privaco |
10人を超えると見積もり。Android版アプリは開発中。2024年設立の会社 |
| Entra IDやGoogle Workspaceで退職者をまとめて止めたい |
1Password Business、Bitwarden Enterprise、Keeper エンタープライズ、Dashlane Omnix Password Management |
会社のアカウント側(IdP)の設定が要る |
| HENNGE Oneをすでに使っている |
Privaco、ほかにSSOのあるプラン |
連携の範囲は導入前に問い合わせる |
| 費用を抑えて監査ログも欲しい |
Bitwarden Teams |
SSOとセルフホストはEnterpriseのみ |
| 自社のサーバーで動かしたい |
Bitwarden Enterprise |
サーバーの更新とバックアップを自社で担う |
| エンジニアがSSHのキーやAPIのキーも管理したい |
1Password、Bitwarden(Secrets Manager)、Keeper(アドオン) |
開発用の機能は別料金やアドオンのことがある |
10人以下の会社は、まず定額か安いプランで共有の仕組みを作るところから始められます。30人を超え、入社や退職が月に何度もある会社は、SSOとSCIMのあるプランで止め忘れを防ぐ考え方もあります。
導入の前に社内で決めておくこと
製品を選んだら、使い始める前に次のことを決めます。決めずに配ると、結局みんなが個人の保管庫にしまい込み、共有が進みません。
- 共有の単位: 部署ごと、取引先ごと、システムごとのどれで分けるか
- マスターパスワードの決まり: 長さと、多要素認証を必須にするか
- 退職と異動の手順: 誰が、いつ、どの画面で利用者を止めるか
- 管理者と緊急時の復旧: 管理者を2人以上にし、ロックされたときの復旧の方法を確かめる
- 移行の範囲: Excelやブラウザに保存したパスワードを、いつまでに移して消すか
パスワードの長さや定期変更の考え方は、いまどきの社内パスワードルールにまとめています。ツールを入れるのに合わせて、社内のルールも見直すと効果が上がります。
今日からできること
パスワード管理ツールは、入れた日より、全員が毎日使うようになってから効果が出ます。料金表の差額だけでなく、退職者を止める手間と、社員が迷わず使えるかどうかで選んでください。