「この開発、いくらくらいが普通なの?」と上司に聞かれて、答えに詰まったことはありませんか。当社は、公開されている発注の依頼のうちIT・Webの分野の約1.8万件で、予算の上限を分野ごとに集計しました。予算の書き方と、見積もりを比べるときの物差しもあわせて解説します。

何を数えたか:依頼する側が選んだ「予算の上限」

当社は2026年10月時点で、インターネット上に公開されている発注の依頼を集計しました。会社や個人が外注先を探すために出した、見積もりの依頼です。IT・Webの分野は18,304件で、主に2020年から2026年9月までに出されたものです。

依頼では、予算を「〇万円まで」の中から選ぶか、「予算上限なし」「相談して決めたい」を選びます。この記事の金額は、依頼する側が選んだ上限です。実際に契約した額ではありません。

用語 意味
上限の中央 上限の金額を小さい順に並べた、真ん中の金額
真ん中の半分 小さい順に並べて25%から75%に入る範囲
上限を選んだ割合 「〇万円まで」を選んだ依頼の割合

分野別の予算:システムは150万円、ホームページは50万円

分野ごとの予算の上限です。システム開発は中央が150万円で、真ん中の半分は70万〜500万円と幅が広くなりました。ホームページは中央50万円で、15万〜100万円に半分が入ります。

分野 依頼の数 上限を選んだ割合 上限の中央 真ん中の半分
業務アプリ・システム 4,860件 39.2% 150万円 70万〜500万円
ホームページ・ネットショップ 2,529件 46.5% 50万円 15万〜100万円
動画・写真 2,376件 52.9% 30万円 7万〜70万円
集客・SNS 3,278件 21.9% 30万円 10万〜100万円
事務のデジタル化 650件 16.5% 15万円 7万〜50万円
デザイン・印刷物 4,415件 32.2% 10万円 3万〜30万円

2024年以降の依頼に絞っても、システム・ホームページ・動画・集客・デザインの中央は同じ金額でした。この数年、上限の中央は大きく動いていません。

事務のデジタル化は、勤怠・会計・経費などをクラウドの道具に移す手伝いです。上限を選んだ依頼が107件と少ないため、数字は振れやすいと考えてください。集客・SNSは、予算の記載がない依頼も2割ほどあり、上限を選んだ割合が低くなっています。

半分以上の依頼が、予算を決めずに出ている

上限を選ばなかった依頼の内訳です。IT・Webの分野全体では、「予算上限なし」が34.7%、「相談して決めたい」が19.7%で、合わせて54.4%でした。

分野 予算上限なし 相談して決めたい 合計
業務アプリ・システム 36.2% 17.9% 54.1%
ホームページ・ネットショップ 22.8% 21.8% 44.6%
動画・写真 25.6% 16.4% 42.0%
集客・SNS 38.0% 17.9% 55.9%
事務のデジタル化 36.8% 18.3% 55.1%
デザイン・印刷物 41.9% 23.8% 65.7%

予算を伏せると、受ける側は作る範囲を自分で想定して見積もります。その想定が会社ごとに違うと、金額の差が何倍にも開きます。差の理由が分からないまま、安い会社を選んでしまうのがいちばん危ない形です。

依頼の6割は「見積もりが欲しい」

依頼には、受ける側に何をしてほしいかを選ぶ欄があります。IT・Webの分野で、詳しい内容まで公開されている8,130件を数えました。「見積りが欲しい」が57.0%で最も多く、「問合せをしたい」20.6%、「提案が欲しい」11.5%が続きます。

依頼の目的 割合
見積りが欲しい 57.0%
問合せをしたい 20.6%
提案が欲しい 11.5%
直接会って話をしたい 4.2%
電話連絡が欲しい 3.5%
資料が欲しい 3.1%

作るものが決まっているなら、見積もりを頼むのが早道です。一方で、何を作るか迷っている段階なら「提案が欲しい」と書く方が、受ける側も考えた案を返しやすくなります。発注の時期を選ぶ欄に答えた1,428件では、「すぐに発注したい」が37.9%、「情報収集の段階」が28.2%でした。

依頼する側は何を重視しているか

検討の基準を1つ選ぶ欄には、3,386件が答えていました。「価格重視」が57.9%で、「品質重視」28.0%、「スピード重視」9.3%が続きます。分野ごとに見ると、傾向がはっきり分かれます。

分野 答えた依頼 価格重視 品質重視 スピード重視
業務アプリ・システム 535件 30.8% 36.6% 15.1%
ホームページ・ネットショップ 168件 44.6% 12.5% 23.8%
デザイン・印刷物 2,091件 67.9% 24.5% 7.2%

表に載せていない分野も含めて、品質が価格を上回ったのはシステム開発だけでした。システムは作った後も何年も使うので、安さだけでは選びにくいことの表れと考えられます。

システム開発では「企画・提案重視」8.6%、「技術力重視」7.5%も選ばれていました。表にない動画・写真(278件)は、価格重視60.1%、品質重視39.6%です。

システム開発の依頼で、開発の種類に答えたのは691件です。「新規開発」が80.3%、「部分改修・機能追加」が12.6%、「全面改修」が2.5%でした。

期間の目安:システムは6か月、ホームページは2か月

IT企業が公開している制作・開発の実績のうち、期間が書かれたものを集計しました。システム開発は188件で中央が6か月、真ん中の半分は4〜12か月でした。ホームページは30件で中央2か月、1〜3か月です。

これは実績に書かれた制作・開発の期間です。社内で要件をまとめたり、見積もりを比べたりする時間は、別に見ておく必要があります。年度内に使い始めたいなら、そこから逆算して早めに動きましょう。

相場から大きく外れた見積もりが来たら

見積もりが上の表の「真ん中の半分」から大きく外れていても、すぐに高い・安いとは決められません。まずは、外れている理由を聞いて確かめます。

外れ方 確かめること
相場よりずっと高い 作る範囲が依頼より広くないか。保守や研修が何年分入っているか
相場よりずっと安い テストや移行が抜けていないか。追加の費用がかかる条件は何か
会社ごとの差が大きい 依頼文の読み方が違っていないか。同じ前提で出し直してもらう

安い見積もりは、後から「それは範囲外です」と追加の費用が出てくることがあります。追加になる条件と、その単価を契約の前に書面でもらっておくと安心です。

予算の書き方:幅と内訳で伝える

見積もりのばらつきを抑えるには、予算を「幅」と「内訳」で書くのが効果的です。そのまま使える項目を表にしました。

書く項目 書き方の例
目的 紙の勤怠表をやめ、月末の集計を半日から1時間にしたい
範囲 社員40人。打刻・休暇の申請・給与ソフトへの書き出し
予算 初期費用50万〜100万円。月額は1人あたり500円以内
時期 2027年3月から使いたい。発注先は来月中に決めたい
重視すること 品質と保守の体制。価格は2番目
決まっていないこと 既製のサービスか、作るか。案を出してほしい

初期費用と月々の費用は、必ず分けて書きます。保守やクラウドの利用料は毎年かかるので、5年使うなら5年分で比べる必要があります。

予算の幅は、3つの方向から決めると説明しやすくなります。1つ目はこの記事の上限の中央、2つ目は既製のサービスを使った場合の月額と人数です。3つ目は、今の手作業にかかっている時間と人件費です。

補助金を使う予定があれば、それも依頼文に書いておきます。補助の対象や締め切りはデジタル化・AI導入補助金の記事にまとめています。

見積もりを比べるときの物差し

同じ依頼文を、2〜3社に送るのが基本です。返ってきた見積もりは、次の点を表に並べて比べます。

  1. 作業の内訳:要件のまとめ・設計・開発・テスト・移行・研修・保守
  2. 含まれない作業:データの移行や、社内向けの説明会など
  3. 契約の形:完成を約束する「請負」か、作業を約束する「準委任」か
  4. 保守の月額と、何年後に作り直しが要るかの見込み
  5. 担当者の人数と、協力会社に出す部分の有無

請負と準委任は、民法で定められた契約の形です。請負は仕事を完成させることを約束し、準委任は決めた作業をきちんと行うことを約束します。IPAは、ユーザー企業とITベンダーが開発の段階ごとに担う役割の解説と、契約書のひな形を公開しています。

今日からできること

  1. 頼みたい仕事が、表のどの分野に近いかを決める
  2. 上限の中央と真ん中の半分を見て、社内で予算の幅を決める
  3. 依頼文に、目的・範囲・予算の幅・時期・重視することを書く
  4. 作るものが決まっていなければ「提案が欲しい」と書く
  5. 初期費用と月額を分けて、5年分の合計で比べる
  6. 見積もりの内訳を表に並べ、含まれない作業を確かめる

AIを使う開発は、予算の上限がふつうの開発より高めでした。詳しくはAIを求める発注の記事をご覧ください。外注先のサイトで確かめる所はIT企業のサイトの見方の記事にあります。

数字はすべて当社調べ(2026年10月)で、公開されている依頼と、IT企業が公開している情報を集計したものです。