社内SE(情シス)は、IT企業ではなく、ITを使う側の会社でITを受け持つ仕事です。名前は聞いても、SIerやSaaS企業と何が違うのかは見えにくい就職先です。厚生労働省のjob tagとIPAの資料をもとに、仕事の全体像と違いを図にしました。
社内SEは「ITを使う側の会社」のIT担当
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)は、IT人材のいる場所を2つの言葉で説明しています。ITサービスやソフトウェアを提供する「IT企業」と、ITを活用する一般企業の「ユーザー企業」です。この記事では、ユーザー企業の情報システム部門で働く人を社内SEと呼びます。
人数は、IT企業の側に多くいます。IPAの「DX白書2023」は、国勢調査などをもとに次の割合を示しています。
| 国・年 |
IT企業 |
IT企業以外 |
| 日本・2015年 |
72.0% |
28.0% |
| 日本・2020年 |
73.6% |
26.4% |
| 米国・2015年 |
34.6% |
65.4% |
| 米国・2021年 |
35.1% |
64.9% |
日本の2020年の人数は、合わせて1,253,930人です。「IT企業」はソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット附随サービス業の3つを指します。社内SEは「IT企業以外」の側に入ります。
経済産業省の同じ調査は、2030年のIT人材の不足を16.4万人から78.7万人と試算しました。生産性の上昇を年0.7%とした場合の数字で、中位の前提では44.9万人です。IT企業と、ユーザー企業の情報システム部門などを合わせて数えています。
仕事の地図は5つの区画に分かれる
job tagの職業の一覧に、「社内SE」という名前の職業はありません。近いのは「ヘルプデスク(IT)」「運用・管理(IT)」「システムエンジニア(基盤システム)」の3つです。ヘルプデスク(IT)の別名には「社内ヘルプデスク」が、基盤システムの別名には「社内システムエンジニア」が載っています。
この3つのタスクと、IPAの「情報システムユーザースキル標準(UISS)」のタスクを、5つの区画に並べました。UISSは、ユーザー企業に必要なITの仕事とスキルをまとめた資料です。この記事では、IPAの「UISS 有効活用ガイド Ver.3.0」(2010年3月)を参照しました。
社内SEの仕事を5つの区画に並べた図。数字はjob tagの実施率作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag、IPA 情報システムユーザースキル標準 有効活用ガイド Ver.3.0
下の表は、図の項目を区画ごとにまとめ直したものです。一部は言葉を短くしたり、まとめたりしています。
| 区画 |
仕事と実施率 |
| 1 問い合わせ対応 |
電話・メールでの問い合わせ対応 96.4%、検索・調査 92.7%、1次切り分け 90.9%、専門の担当への引き継ぎ 89.1%、データベースへの登録 89.1%、FAQづくり 76.4%、マニュアルづくり 76.4% |
| 2 端末とアカウントの管理 |
ユーザー情報の登録 83.6%、ユーザー権限の管理 82.3%、パソコンのセットアップ 80.0%、リモート接続での障害対応 74.6%、特殊な権限の付与 67.3%、情報機器・情報資産の管理、貸し出しの管理 |
| 3 ネットワーク・サーバー・クラウド |
バックアップ 90.3%、障害からの復旧 85.5%、運用手順書の更新 83.9%、構築・導入 79.0%、サーバーのリソース監視 72.6%、クラウドのサービスの調査 71.1% |
| 4 セキュリティ |
インシデント対応の管理 83.6%、攻撃や異常なアクセスの監視 80.6%、IT内部統制の管理 79.0%、サーバーの監視(ウイルス対策ソフトの運用・管理) 70.9%、社員向けの研修 67.3%、事業継続計画、システム監査 |
| 5 企画・発注・予算 |
IS戦略と投資対象の選定、IS企画、調達と調達マネジメント、契約管理、プロジェクト計画と実行管理、予算と実績の管理 86.7%、受入・保守・廃棄 |
実施率は、その職業で働く人へのアンケートで「一般的に実施されていると思う」と答えた人の割合です。IT企業で働く人も含むので、社内SEだけの数字ではありません。数字のない項目は、UISSのタスクとjob tagの仕事の説明から取りました。5つの分け方は、この記事の整理です。
1と2の実務は、キッティングとは 入社日の朝に「至急PC」と言われないための段取り表で具体的に読めます。問い合わせの記録には、次のテンプレをそのまま使えます。
SIer・SaaS企業・社内SEは、誰のシステムを作るかが違う
3つの違いを、公的な資料の説明で並べます。
SIer・自社サービスの会社・社内SEを、公的な資料の説明で比べた表作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省 job tag、IPA 情報システムユーザースキル標準 有効活用ガイド、経済産業省 IT人材需給に関する調査、IPA DX白書2023
| 見るところ |
SIer |
自社サービスの会社(SaaS・Webサービス) |
社内SE |
| 誰のシステムか |
顧客のシステム |
自社のWebサービス |
自社のシステム |
| お客さん |
発注した一般企業や官公庁 |
サービスの利用者 |
経営層と社内の各部門 |
| 立場 |
受注者 |
自社の製品の作り手 |
発注者 |
| 資料が挙げる知識・力 |
顧客の業界や業務の知識 |
新しい技術の情報収集、サービスの企画 |
発注する範囲の明確化、利用部門との連携 |
job tagは、SIerを「一般企業や官公庁向けにシステムを構築したり、既存システムの保守を行う企業」と説明しています。インターネット分野の会社は、自社開発を中心に進めることが多いとしています。IT関連サービスを提供する側の能力は、IPAの「ITスキル標準(ITSS)」にまとめられています。
社内SEの側の根拠は、IPAのUISSです。有効活用ガイドは、企業の情報システム部門を「発注者」、ベンダーを「受注者」と図に書いています。そのうえで「ISを構築・運用する主体はユーザー企業である」と書いています。ISは情報システムのことです。
job tagの数字は「職業の分類」を見て読む
job tagには、職業ごとに就業者数や年収が載っています。数字は、もとの統計の分類でまとめたものです。
| job tagの職業 |
就業者数 |
年収 |
平均年齢 |
有効求人倍率 |
| ヘルプデスク(IT) |
207,400人 |
609.8万円 |
42.2歳 |
1.36 |
| 運用・管理(IT) |
207,400人 |
609.8万円 |
42.2歳 |
2.2 |
| システムエンジニア(基盤システム) |
656,770人 |
889万円 |
38.3歳 |
2.24 |
| システムエンジニア(受託開発) |
389,760人 |
578.5万円 |
37.1歳 |
2.54 |
就業者数は2020年の国勢調査、年収と平均年齢は2025年の賃金構造基本統計調査の数字です。有効求人倍率は2025年度のハローワークの数字です。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与など」で計算されています。
上の2つの就業者数と年収が同じなのは、統計ではどちらも「その他の情報処理・通信技術者」に入るからです。基盤システムは「システムコンサルタント・設計者」の数字で、ITコンサルタントも同じ分類です。job tagも、その職業だけの数字とは限らないと注意を書いています。
入り口は3つ 新卒配属・IT企業からの転職・ほかの部署からの異動
社内SEになった人を入り口別に数えた公的な統計は、見つかりませんでした。近い数字に、IPAの「DX動向2025」があります。DXに取り組む日本企業1,190社に、DXを進める人材を確保する方法を複数回答で聞いた結果です。
| 確保の方法 |
割合 |
| 社内人材の育成 |
57.7% |
| 既存人材(他部署からの異動も含む)の活用 |
45.5% |
| 外部採用(中途採用) |
34.5% |
| 新卒採用 |
15.4% |
情シスに限った調査ではありませんが、社内の育成や異動を挙げた会社が多く、新卒採用は15.4%でした。入り口は、次の3つに整理できます。
- 新卒で配属: 入社後の配属で決まる会社と、職種を決めて採用する会社があります。募集要項で確かめます。
- IT企業から転職: job tagは、ユーザー企業がシステムの内製化を進め、技術者を積極的に雇うようになったと書いています。運用・管理(IT)の転職先にも「他の業界のIT部門」を挙げています。
- ほかの部署から異動・兼任: IPAの2024年度の調査は、中小企業4,191社が対象です。情報セキュリティの担当者を兼務で任命している会社が21.0%、専門部署(担当者)がある会社が9.3%でした。
役に立つ資格は4つ 2027年度に制度の見直しの予定
job tagは、役立つ資格として、ヘルプデスク(IT)にITパスポートや基本情報技術者を挙げています。運用・管理(IT)には、基本情報技術者や応用情報技術者を挙げています。どちらの職業も、入職に資格は特に必要とされないとも書いています。
ITパスポートから応用情報まで4つの試験の対象者像と、2026年度の日程作成: 編集部 / もとの資料: IPA 情報処理技術者試験(試験区分一覧、スケジュール、試験制度の見直しの検討状況)
| 試験 |
IPAが書く対象者像(要約) |
時間と問題数 |
受験の時期 |
| ITパスポート試験 |
職業人と、これから職業人になる人 |
120分・100問 |
随時 |
| 情報セキュリティマネジメント試験 |
利用部門の情報セキュリティリーダー |
120分・60問 |
随時 |
| 基本情報技術者試験 |
ITを活用したサービスやシステムを作る人材の基本 |
科目A 90分・60問、科目B 100分・20問 |
随時 |
| 応用情報技術者試験 |
同じ人材の応用。高度IT人材としての方向性を確立した者 |
科目A 150分、科目B 150分 |
2026年度は前期・後期 |
受験手数料は、4つとも7,500円です。どれも、試験会場のパソコンで解答するCBT方式です。応用情報の2026年度の日程は、次のとおりです。
| 応用情報技術者試験 |
前期 |
後期 |
| 申込受付 |
2026年10月6日10時〜11月7日17時 |
2027年1月27日〜2月16日 |
| 科目A試験 |
2026年10月28日〜11月10日 |
2027年2月6日〜2月19日 |
| 科目B試験 |
2026年11月24日〜12月6日 |
2027年3月3日〜3月15日 |
| 合格発表 |
2027年2月頃の予定 |
2027年6月頃の予定 |
IPAは、2027年度から新しい試験制度に移る予定だと公表しています。2026年3月31日時点の検討状況では、応用情報技術者試験と高度試験は「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」に再編する予定と示されています。ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報は、2027年度春頃から新しい制度で続きます。新設の試験は、2027年度の夏頃から秋頃に始まる予定です。
向いている人と、つらいところ
job tagは、ヘルプデスク(IT)に求められる力に、問題を解決する力とコミュニケーション力を挙げています。仕事の性質の数値(1〜5)では、「他者とのかかわり」が4.4、「厳密さ、正確さ」が4.0です。数字の上では、人とのやり取りと正確さの両方が求められます。
つらいところは、少ない人数で広い範囲を受け持つことです。job tagは運用・管理(IT)について、会社の規模によっては1人で運用・管理を任される場合がある、と書いています。
調査会社のノークリサーチは2025年10月、年商500億円未満の企業の調査結果を発表しました。情シスの人員が「1名」の割合は、2023年の21.3%から2025年は24.5%に増えています。
1人で担う会社で何が起きるかは、「弊社、情シスが消えます」ひとり情シスがいなくなった会社で起きることにまとめています。成果が見えにくい悩みは、情シスは「稼いでいない部門」?評価面談で言われがちな一言と返し方で扱いました。配属が決まった人には、ひとり情シスが最初の1か月でやること 権限・台帳・契約の棚卸し手順が最初の手引きになります。
今日からできること
- job tagで「ヘルプデスク(IT)」「運用・管理(IT)」「システムエンジニア(基盤システム)」を開き、タスクの一覧を読む。図の5つの区画のうち、興味のある区画に印を付ける。
- 同じページの「統計データ」を見て、数字がどの分類のものかを「職業分類対応表」で確かめる。
- 志望先の採用ページと募集要項で、配属が情報システム部門に決まっているかを確かめる。上場会社なら、EDINETで有価証券報告書を開き、「情報システム」「セキュリティ」で検索する。
- 説明会で聞くことを3つ書き出す。情報システム部門の人数、専任か兼任か、外部の会社に任せている範囲。
- ITパスポート試験の出題範囲を見て、受ける月を決める。応用情報を受ける人は、前期の申込みを2026年11月7日17時までに済ませる。