通販のカード決済、会費の口座振替、店頭のキャッシュレス決済。どれも、決済を専門の会社に任せていることが多い仕組みです。10月には、委託先や提供元の事故が相次ぎました。任せている先がどんな会社かを知る手がかりの1つが、有価証券報告書(有報)です。
この記事では、ネット決済の上場4社の最新の有報を読み、売上収益、営業利益、従業員、システムと情報に関わるリスクの記載を図にしました。数字は2026年10月21日にEDINETで確かめたものです。会社の良し悪しを決めるものではありません。
4社の売上収益と営業利益
ネット決済の上場4社の売上収益と営業利益(最新の有報)作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
| 会社 |
決算期 |
会計基準・範囲 |
売上収益(売上高) |
営業利益 |
営業利益率 |
| GMOペイメントゲートウェイ |
2025年9月期 |
IFRS・連結 |
825.0億円 |
313.4億円 |
38.0% |
| ネットプロテクションズHD |
2026年3月期 |
IFRS・連結 |
252.1億円 |
28.5億円 |
11.3% |
| GMOフィナンシャルゲート |
2025年9月期 |
IFRS・連結 |
179.3億円 |
22.3億円 |
12.4% |
| ウェルネット |
2026年6月期 |
日本基準・個別 |
100.6億円 |
14.1億円 |
14.0% |
億円は、有報の円単位の数字を小数1桁に四捨五入しました。営業利益率は、営業利益を売上収益(ウェルネットは売上高)で割って、編集部が計算しました。
GMOペイメントゲートウェイの売上収益は、3つの事業に分かれています。セグメントの売上収益(セグメントの間の取引を含む)は、決済代行事業が616.8億円、金融関連事業が191.9億円、決済活性化事業が17.7億円です。ほかの3社は、報告するセグメントが1つです。
数字を比べる前に知っておく4つの注意
- 決算期がそろっていません。 2025年9月期の2社と、2026年3月期・6月期の2社では、対象の期間が最大で9か月ずれています。
- 会計基準と範囲が違います。 3社はIFRSの連結、ウェルネットは日本基準の個別(子会社をまとめた数字が無い)です。IFRSの「売上収益」と日本基準の「売上高」は、名前も計り方も同じではありません。
- 親会社と子会社が並んでいます。 GMOフィナンシャルゲートは、GMOペイメントゲートウェイの連結子会社です。親会社の連結の数字には、子会社の分が入っているため、4社を足し合わせることはできません。
- 平均年収などは提出会社だけの数字です。 ネットプロテクションズHDは持株会社で、提出会社の従業員は16人です。グループで働く人全体の姿とは違います。
4社の事業と人、リスクの記載
4社の事業と人、有報の「事業等のリスク」に書かれたこと作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
| 会社 |
事業(有報の「事業の内容」から) |
従業員(連結/提出会社) |
提出会社の平均年収・年齢・勤続 |
| GMOペイメントゲートウェイ |
ネットの販売などの加盟店とカード会社などをつなぐ決済代行など |
882人/594人 |
1,097万円・37.5歳・6.3年 |
| ネットプロテクションズHD |
後払い(BNPL)の「NP後払い」「atone」、企業間の「NP掛け払い」など |
377人/16人(持株会社) |
1,166万円・38.4歳・2.6年 |
| GMOフィナンシャルゲート |
店頭などの対面の決済。決済端末の販売、決済の処理、決済代行 |
123人/106人 |
1,335万円・39.7歳・3.9年 |
| ウェルネット |
コンビニなどで払える収納代行(マルチペイメント)や、交通のチケットの決済など |
137人(個別) |
608万円・39.0歳・8.3年 |
平均年収は万円未満を四捨五入しました。
「事業等のリスク」のうち、システムと情報に関わる記載を抜き出すと、次のとおりです。
| 会社 |
システムと情報に関わる記載(要約) |
| GMOペイメントゲートウェイ |
カード会社との決済情報のやり取りにCAFIS・CARDNETのネットワークを使う。自然災害や外部からの侵入、サイバー攻撃などでサービスが止まる恐れ。サービスの利用ではカード番号を同社グループのシステムに送るため、情報が流出した場合の信用への影響を挙げ、情報セキュリティ委員会を置いている |
| ネットプロテクションズHD |
取引の情報や請求先の情報を持つ。プライバシーマークやPCI DSSに準拠し、システム部署でISO27001(ISMS)の認証を受けている。それでも、グループや委託先の人為的なミスなどで漏えいが起きる恐れを挙げる |
| GMOフィナンシャルゲート |
決済端末は、品質とセキュリティの観点で精査して仕入れる。カードの決済でCAFIS・CARDNET・VisaNetを使う。事業継続計画(BCP)を定め、教育と訓練をしている |
| ウェルネット |
プライバシーマークと、札幌本社でISMSを取得。外部からの侵入やサイバー攻撃などで、システムの機能の低下や誤作動が起きる恐れを挙げる |
決済を任せている会社が有報で見る場所
決済の委託先が上場している場合、有報の次の場所が、契約や見直しの手がかりになります。
- 「事業の内容」: 自社が使うサービスが、どの子会社やセグメントで提供されているか
- 「事業等のリスク」: システムの停止や情報の漏えいを、会社がどう見て、どんな対策を書いているか
- 「主要な経営指標等の推移」: 売上と利益が、5期でどう動いているか
- 「従業員の状況」: 提出会社とグループの人数。持株会社かどうか
国内SaaS上場18社の図解でも、契約先の有報の読み方を整理しています。委託先の事故への備えは、委託先経由の情報漏えい6件の図解も参考になります。
今日からできること
- 自社で使っている決済のサービスを書き出し、請求書や契約書で、契約している会社の正式な名前を確かめます。
- 上場している会社なら、EDINETで最新の有報を開き、「事業の内容」で、自社のサービスを提供している会社やセグメントを確かめます。
- 「事業等のリスク」で、システムの停止や情報の漏えいについての記載を読み、気になる点を営業担当への質問として書き出します。
- 契約書や利用規約で、障害や事故のときの連絡の方法と期限、自社のデータの扱いを確かめます。カードの情報を自社で持たない仕組みになっているかも、あわせて確かめます。
この記事の数字は、各社の最新の有報の1期分です。この記事は売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身で行ってください。