就職や転職で会社を調べるとき、あるいは開発の委託先を検討するとき、公式の数字として役立つのが有価証券報告書です。ここでは、中堅のシステム開発会社5社の有価証券報告書(2026年3月期)を図解で読み解きます。順位で会社の優劣を示す記事ではなく、数字が何を表すかを整理するものです。
対象は、システナ、クレスコ、NSW、アルファシステムズ、TDCソフトの5社です。いずれも決算期は2026年3月期、会計基準は日本基準です。
5社はいずれも、企業の業務システムやアプリを開発・運用する会社です。顧客から依頼を受けて開発する受託、技術者が客先で働くかたち、自社サービスの提供など、事業の組み合わせは会社ごとに異なります。この違いが、平均年齢や年収の差にもつながります。
中堅システム開発5社の平均年齢・勤続・年収(2026年3月期・単体)作成: 編集部 / もとの資料: EDINET(各社の有価証券報告書)
平均年齢・勤続は「若手型」か「ベテラン型」かを表す
有価証券報告書に載っている平均年齢・平均勤続年数・平均年収は、グループ全体ではなく、報告書を提出した会社(単体)だけの平均です。この数字を見ると、会社の人の構成が見えてきます。
| 会社 |
平均年齢 |
平均勤続 |
平均年収 |
従業員(単体) |
| NSW |
41.3歳 |
14.0年 |
649万円 |
2,070人 |
| アルファシステムズ |
38.9歳 |
15.7年 |
680万円 |
2,987人 |
| クレスコ |
37.2歳 |
11.9年 |
671万円 |
1,498人 |
| TDCソフト |
35.8歳 |
10.5年 |
620万円 |
2,203人 |
| システナ |
31.2歳 |
6.3年 |
519万円 |
3,856人 |
平均年間給与は1万円未満を四捨五入しました。平均年齢が若く勤続が短いシステナは、若手の採用が多い成長中の会社とみられます。一方、NSWやアルファシステムズは平均年齢・勤続が高く、長く勤める人が多い会社です。これはどちらが良いという話ではなく、会社の成り立ちや採用の仕方の違いを表しています。
平均年収も、平均年齢や職種の構成によって変わります。若手が多い会社は平均が低めに出やすく、同じ年齢で比べると差が小さいこともあります。年収は、年齢・勤続とセットで読むのが基本です。
中堅システム開発5社の売上・利益・従業員(2026年3月期)作成: 編集部 / もとの資料: EDINET(各社の有価証券報告書)
連結と単体の人数の差は子会社に人がいるかを表す
売上や営業利益、連結の従業員数は、グループ全体(連結)の数字です。一方、前の表の平均年収・年齢・勤続は提出会社(単体)だけの数字でした。連結と単体の人数の差を見ると、子会社に人がいるかどうかが分かります。
| 会社 |
売上高 |
営業利益 |
営業利益率 |
従業員(連結) |
従業員(単体) |
| システナ |
944億円 |
153.7億円 |
16.3% |
5,301人 |
3,856人 |
| クレスコ |
647億円 |
66.1億円 |
10.2% |
3,188人 |
1,498人 |
| NSW |
524億円 |
52.9億円 |
10.1% |
2,536人 |
2,070人 |
| TDCソフト |
484億円 |
51.6億円 |
10.7% |
2,473人 |
2,203人 |
| アルファシステムズ |
407億円 |
49.5億円 |
12.2% |
2,987人 |
2,987人 |
営業利益率は、表示した売上高と営業利益から編集部が計算しました(小数第1位)。アルファシステムズは連結も単体も2,987人で、子会社がほとんどありません。提出会社の数字が、ほぼそのままグループの数字になります。これに対してシステナは連結5,301人に対し単体3,856人で、子会社にも人がいることが分かります。平均年収などの単体の数字を見るときは、それがグループ全体ではなく提出会社だけの話である点に注意します。
また、5社の営業利益率は10〜16%台でした。システムの開発や運用は、仕入れを含む売上を計上する商社(利益率は3〜5%台になりやすい)と違い、人の技術がそのまま価値になるため、利益率は高めに出やすい業態です。ただし、利益率は事業の中身(受託が多いか、自社サービスが多いか)でも変わります。
平均年齢・勤続の差は何から生まれるか
平均年齢や勤続年数の差は、採用の仕方や事業の歴史から生まれます。新卒を多く採り、事業を広げている会社は、若手の比率が上がって平均年齢が下がります。中途採用が中心だったり、設立からの年数が長かったりする会社は、平均年齢・勤続が高くなりやすい傾向があります。
どちらにも良い面があります。若手型は新しい技術や働き方を取り入れやすく、ベテラン型は経験の蓄積や安定した運用に強いことが多いとされます。数字の高い低いではなく、自分の目的に合うかどうかで見るのが大切です。
今日からできること
これらの数字を、自分で読むときの手順です。就職・転職先を調べるときにも、委託先を検討するときにも使えます。
- 連結と単体を分けて見ます。 売上や営業利益、連結の従業員数はグループ全体、平均年収・年齢・勤続(単体)は提出会社だけの数字です。どちらの話かを先に確認します。
- 平均年齢・勤続で会社の成り立ちを想像します。 若くて勤続が短ければ若手採用が多い成長型、高ければ長く勤める人が多いベテラン型、という見当がつきます。
- 年収は年齢・職種とセットで見ます。 平均年収だけで待遇を判断せず、平均年齢や事業の中身とあわせて読みます。
- 一次情報で確かめます。 有価証券報告書は、金融庁のEDINET(電子開示システム)で誰でも無料で読めます。会社名で検索し、最新の報告書で業績の推移や従業員の状況を確認します。
就活や取引先選びでの使いどころ
これらの数字は、就職・転職先を調べるときや、開発の委託先を検討するときの材料になります。
就活で見るなら、平均年齢や勤続年数から、若手が多く早くから任される会社か、ベテランが支える安定した会社か、といった雰囲気の見当がつきます。平均年収は、入社してすぐの金額ではなく全社員の平均である点に注意します。若手が多い会社ほど、平均が実際の初任給と離れて見えることがあります。
委託先として見るなら、売上や利益が続いているか、従業員数がどのくらいかは、開発を任せ続けられる相手かを考える手がかりになります。ただし、実際の開発力や相性は数字には表れないため、最後は提案の内容や面談で確かめます。数字は、気になる点を質問するきっかけとして使うのがよいでしょう。
数字を読むときの注意
- 提出会社だけの平均です。 平均年収・年齢・勤続は、グループ全体ではなく報告書を提出した会社(単体)の平均です。子会社の社員は含みません。
- 平均は分布を表しません。 平均年齢が35歳でも、若手とベテランが混ざっている場合があります。平均だけで、全員の姿を決めつけないようにします。
- 順位で優劣を言いません。 年齢・勤続・年収・売上の数字は、会社の成り立ちや事業構成の違いを表すもので、優劣の順位ではありません。
- 投資の判断ではありません。 この記事は、数字の読み方を整理するもので、株式の売買などを勧めるものではありません。
- 1年だけで判断しません。 今回は2026年3月期の1年分です。数年の推移で見ると、売上や利益が増えているか減っているかが分かり、1年だけの数字より実態に近づきます。有価証券報告書には、過去数年の主要な数字がまとめて載っています。
平均の数字は、会社の性格をつかむ入口です。今回の5社も、若手型からベテラン型まで幅があり、「中堅のシステム開発会社」という一言では片づけられません。気になる会社があれば、有価証券報告書の事業の説明やリスクの記載まで読み進めると、数字の背景が見えてきます。数字を出発点に、面談や提案で中身を確かめていくのがよいでしょう。数字と、数字に表れない部分の両方を見ることが、会社選びでも取引先選びでも大切です。