サーバーを借りる先、クラウドの導入を頼む先は、契約したあとも数年は付き合う取引先です。規模はどれくらいで、本業でもうけは出ているのか。稟議や見積もりの比較の前に、数字で確かめたい場面があります。国内でクラウド基盤・ホスティング・データセンター・クラウド導入支援を手がける上場10社を、最新の有価証券報告書(有報)から図解と表にまとめました。就活でITインフラの会社を調べる人にも使える形にしています。
通信大手4社は 国内の通信4社を有価証券報告書で図解 NTT・KDDI・ソフトバンク・楽天グループ で扱ったため、入れていません。インターネットイニシアティブは SIerの記事 に、GMOグローバルサイン・ホールディングスは 国内セキュリティ企業の記事 に載せたため、この記事では外しました。
10社の売上・営業利益率を区分ごとに見る
数字のもとは、各社が金融庁のEDINET(有報などを無料で読める開示サイト)に出した最新の有報です。2026年10月13日に確かめました。売上と営業利益は連結の数字です。会計基準は、GMOインターネットグループがIFRS、ほか9社が日本基準です。
区分は、各社の有報の「事業の内容」を読んで編集部が付けました。1社が複数の事業を持つ場合は、主な事業で分けています。
- クラウド基盤・ホスティング: 自社のサーバーやクラウドを貸す会社(3社)
- データセンター: 設備と回線を貸す会社(1社)
- クラウド導入支援・運用: AWSなどのクラウドの導入や運用を請け負う会社(6社)
営業利益は、売上高から原価と販売・管理の費用を引いた、本業のもうけです。営業利益率は次の式で自分で計算しました。
- 営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100(四捨五入前の数字から計算し、小数1桁)
- 売上と営業利益は億円未満を四捨五入
クラウド・ホスティング上場10社の売上と営業利益率(区分別)作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
| 会社 |
区分 |
決算期 |
会計基準 |
売上(億円) |
営業利益(億円) |
営業利益率 |
研究開発費(億円) |
有報 |
| GMOインターネットグループ |
クラウド基盤・ホスティング |
2025年12月期 |
IFRS |
2,856 |
591 |
20.7% |
4.3 |
有報 |
| さくらインターネット |
クラウド基盤・ホスティング |
2026年3月期 |
日本基準 |
353 |
-4 |
-1.1% |
2.1 |
有報 |
| GMOペパボ |
クラウド基盤・ホスティング |
2025年12月期 |
日本基準 |
110 |
9 |
8.5% |
0.2 |
有報 |
| ブロードバンドタワー |
データセンター |
2025年12月期 |
日本基準 |
153 |
8 |
5.3% |
0.5 |
有報 |
| サーバーワークス |
クラウド導入支援・運用 |
2026年2月期 |
日本基準 |
400 |
6 |
1.6% |
資料に記載なし |
有報 |
| コムチュア |
クラウド導入支援・運用 |
2026年3月期 |
日本基準 |
381 |
47 |
12.2% |
資料に記載なし |
有報 |
| システムサポートホールディングス |
クラウド導入支援・運用 |
2026年6月期 |
日本基準 |
311 |
30 |
9.5% |
0.5 |
有報 |
| テラスカイ |
クラウド導入支援・運用 |
2026年2月期 |
日本基準 |
281 |
16 |
5.6% |
2.6 |
有報 |
| BeeX |
クラウド導入支援・運用 |
2026年2月期 |
日本基準 |
106 |
6 |
5.6% |
資料に記載なし |
有報 |
| JIG-SAW |
クラウド導入支援・運用 |
2025年12月期 |
日本基準 |
36 |
5 |
15.2% |
2.1 |
有報 |
研究開発費は、有報に金額が載っている会社だけを書きました。「資料に記載なし」は、有報の研究開発費の項目から取り出せなかったという意味で、開発をしていないという意味ではありません。会社名は有報の表紙のとおりです。
各社が有報に書いている事業
区分の根拠にした、有報の「事業の内容」の要点です。
| 会社 |
有報の「事業の内容」の要点 |
| GMOインターネットグループ |
ドメイン、クラウド・レンタルサーバー(ホスティング)、EC支援、決済などを持つ総合グループ。連結子会社は149社 |
| さくらインターネット |
自社グループで運営する国内のデータセンターを活かした、クラウド・インターネットインフラサービス(「さくらのクラウド」「さくらのレンタルサーバ」、GPUクラウドなど) |
| GMOペパボ |
ドメイン・レンタルサーバー(ホスティング)、EC支援、ハンドメイドの3事業(「ロリポップ!」など) |
| ブロードバンドタワー |
コンピュータプラットフォーム事業として、データセンター、クラウド・ソリューション、データ・ソリューションを提供。ほかにメディアソリューション事業 |
| サーバーワークス |
AWSのソリューション販売が主軸。導入・移行のコンサルティング、基盤構築、運用支援。Google Cloudにも展開 |
| コムチュア |
クラウドソリューション事業(Microsoft、Salesforce、ServiceNowなどの導入支援)を含む、ITのコンサルティング、構築、保守、運用 |
| システムサポートホールディングス |
5セグメントのうち、クラウドインテグレーション事業でAWS、Azure、Google Cloudなどの導入・移行支援や再販 |
| テラスカイ |
Salesforce関連を主力としたクラウドのソリューション事業と製品事業。BeeXは連結子会社 |
| BeeX |
基幹システム(特にSAP)のクラウド移行と、移行後の保守・運用 |
| JIG-SAW |
ロボット型自動運用プラットフォーム「puzzle」による、サーバーやIoT機器の自動監視・運用 |
クラウド導入支援・運用の6社のうち、コムチュアとシステムサポートホールディングスは、クラウド以外の事業も持っています。表の売上は会社全体で、クラウド部分だけの売上ではありません。
数字を比べる前に知っておく注意
この表は、同じ条件で測った成績表ではありません。
| 注意 |
中身 |
| 決算期が違う |
2025年12月期が4社、2026年2月期が3社、2026年3月期が2社、2026年6月期が1社。同じ1年間を比べてはいない |
| 連結と提出会社の違い |
売上・営業利益・連結の人数は子会社を含むグループ全体。人数・給与・年齢・勤続年数は有報を出した会社1社だけ |
| 会計基準が違う |
GMOインターネットグループだけIFRS。営業利益の出し方が日本基準と同じとは限らない |
| 子会社を含む |
BeeXはテラスカイの連結子会社。2社の数字を足すと重なる部分がある |
| 持株会社は人数が少ない |
GMOインターネットグループは提出会社197人に対し、連結は6,484人 |
| 1年分しかない |
載せたのは最新の1期分だけ。利益が続くかは、数年分を並べないと言い切れない |
営業利益率から分かること
10社のうち、営業利益が黒字なのは9社、営業損失が1社です。営業損失だったのは、さくらインターネット(営業損失4億円、営業利益率-1.1%)でした。有報によると、さくらインターネットは生成AI向けのGPUクラウドなど、新しいサービスにも取り組む会社です。同じ期の経常利益(1億円)と、親会社株主に帰属する当期純利益(2億円)は黒字です。1期の営業損失だけで、先行きは判断できません。
黒字の9社を営業利益率で分けると、次のようになります。
- 10%以上: GMOインターネットグループ(20.7%)、JIG-SAW(15.2%)、コムチュア(12.2%)の3社
- 5%以上10%未満: システムサポートホールディングス(9.5%)、GMOペパボ(8.5%)、テラスカイ(5.6%)、BeeX(5.6%)、ブロードバンドタワー(5.3%)の5社
- 5%未満: サーバーワークス(1.6%)の1社
売上は、GMOインターネットグループの2,856億円から、JIG-SAWの36億円まで開きます。ただし、GMOインターネットグループは決済・広告・金融なども含む総合グループなので、ほかの会社と同じ土俵では比べられません。
クラウド導入支援では、AWSなどのサービスを再販する会社は売上に仕入れ分が含まれ、利益率の見え方が自社サービス中心の会社と変わることがあります。売上の大きさだけでなく、何の売上かを有報の「事業の内容」で確かめます。サーバーワークスの営業利益率1.6%は、その1年の数字であり、品質を示すものではありません。
人数・平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数
次は、提出会社1社だけの数字です。平均年間給与は、万円未満を四捨五入しました。
上場10社の提出会社の人数・平均年間給与・平均年齢・勤続年数作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
| 会社 |
提出会社の人数 |
連結の人数 |
平均年間給与(万円) |
平均年齢 |
平均勤続年数 |
| GMOインターネットグループ |
197 |
6,484 |
841 |
39.0 |
6.4 |
| システムサポートホールディングス |
59 |
1,992 |
799 |
43.5 |
12.0 |
| BeeX |
200 |
256 |
782 |
41.2 |
3.5 |
| さくらインターネット |
934 |
1,135 |
741 |
40.3 |
7.0 |
| サーバーワークス |
367 |
520 |
732 |
37.3 |
3.5 |
| コムチュア |
1,667 |
1,964 |
700 |
35.5 |
8.7 |
| GMOペパボ |
307 |
307 |
700 |
36.9 |
7.7 |
| JIG-SAW |
161 |
171 |
698 |
31.4 |
5.5 |
| テラスカイ |
816 |
1,608 |
660 |
35.3 |
4.0 |
| ブロードバンドタワー |
133 |
218 |
635 |
41.1 |
11.0 |
平均年間給与は、ブロードバンドタワーの635万円から、GMOインターネットグループの841万円まで開きます。ただし、GMOインターネットグループの提出会社は197人の持株会社で、グループの現場の人たちの平均ではありません。システムサポートホールディングスも提出会社は59人で、連結1,992人の3.0%です(59 ÷ 1,992 × 100)。
提出会社の人数と連結の人数が近い会社(GMOペパボは307人で同数、さくらインターネットは934人と1,135人)は、提出会社の数字が会社の実態に近くなります。テラスカイは816人と1,608人で、提出会社は連結の約半分(50.7%)です。
平均年齢は31.4歳(JIG-SAW)から43.5歳(システムサポートホールディングス)、平均勤続年数は3.5年(BeeX、サーバーワークス)から12.0年(システムサポートホールディングス)でした。勤続年数が短い会社は、成長のなかで人が増えて平均が下がっている場合も、人の入れ替わりが多い場合もあります。1年分の数字では、どちらかは分かりません。
契約先を数字で見るときの読み方
取引先のクラウド会社を有報の数字で見るときの読み方(編集部の整理)作成: 編集部(画像生成AIで描画・文字と数字は編集部が照合) / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)をもとにした編集部の整理
売上の規模は事業の大きさ、営業利益率はその1年の本業のもうけの割合を表します。人数と給与は、提出会社の働く人の構成を表します。一方、自社の担当者の経験や、障害のときの対応は、有報には出ません。
見積もりの比較では、価格・機能・サポートの条件を先に見ます。そのうえで、契約が長くなるときは、取引先の有報で5期分の流れと現金の期末残高を確かめます。くわしい読み方は 使っているSaaSが撤退したら?決算短信と有報で「続くか」を読む方法 にまとめています。
今日からできること
- 自社が借りているサーバー・クラウドと、導入を頼んでいる会社を3つ書き出し、契約書か請求書で正式な社名を確かめる
- EDINETの書類簡易検索に社名か証券コードを入れ、最新の有価証券報告書を開く
- 「主要な経営指標等の推移」で、5期分の売上高と営業利益、現金の期末残高を見る
- 「事業の内容」を読み、頼んでいる事業が会社全体のどれだけかを確かめる
- 利用規約と契約書で、サービス終了の通知期間とデータの取り出し方を確かめる
この記事の数字は、各社の最新の有報の1期分です。次の有報が出たら、同じ場所の数字を並べて流れを見てください。この記事は売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身で行ってください。