Microsoft は2026年10月21日、Exchange Online (Microsoft 365 のメール )のEWS(Exchange Web Services)を、テナントごとに無効にする作業が始まったと、Exchange Teamブログで公表しました。あわせて、EWSで動くアプリが止まったときに、管理者が一時的に入れ直す手順を出しています。EWSは、アプリがメールや予定表を読み書きするための古いAPI(プログラムの接続口)です。
EWSの廃止の日程と、使っているアプリの洗い出し方は、Exchange OnlineのEWS廃止、2026年10月の状況と情シスの洗い出し にまとめています。この記事は、10月22日に、Exchange Teamブログの2本の記事(どちらも10月21日更新)の原文で確かめた内容です。
止まるのはどのテナントか
Exchange Teamブログ「EWS Deprecation Is Here」(10月1日公開・10月21日更新)は、世界向けのクラウドのテナントの扱いを、次のように書いています。
EWSEnabled
EWSAllowedAppIDs(許可の一覧)
扱い
True
未設定
Microsoftが10月10〜11日に許可の一覧を作った。10月11日より後にTrueにする管理者は、一覧を自分で作る必要がある
未設定
未設定
メッセージセンターで7日前に予告し、直近60日の使用状況から許可の一覧を作ったうえで、EWSEnabledをFalseにする。10月21日の時点で、この作業は始まっている
False
どれでも
管理者がすでに止めているため、Microsoftは何も変えない
Exchange Teamブログの表。EWSEnabledの値ごとの、これからの扱い 出典: Microsoft Exchange Team Blog「EWS Deprecation Is Here - What This Means To You」 (引用)
世界向けのクラウドでは、EWSEnabledがTrueのとき、許可の一覧が必須になりました。政府向けなどの独立したクラウド(ソブリンクラウド)の日程は、これから知らせるとしています。
止まるアプリと、そのときの症状
ブログは、EWSを使うアプリの例として次を挙げています。
macOSのApple メールとカレンダー
macOSの従来のOutlook(classic Outlook)
Outlookのデスクトップのアドイン
古い版のWindowsのOutlook
会社が買ったバックアップの道具など、ほかの会社のアプリ
EWSが止まると、ユーザー名やパスワードを何度も求められたり、EWSが使えないというエラーが出たりします。パスワードの入力を繰り返し求められるという問い合わせが急に増えたら、まずEWSの停止を疑います。
止まったかどうかを確かめる
Microsoft 365管理センターのメッセージセンターで、検索の欄に次の題を入れて探します。いつEWSが止められたかが分かります。
Action may be required: EWS will be disabled in your tenant in 7 days(7日後に止めるという予告)
EWS has been disabled in your tenant(止めたという知らせ)
PowerShellでは、Exchange Online PowerShellにつないで次を実行します。「EwsEnabled : False」と出れば、EWSは止まっています。
Get-OrganizationConfig | Fl EWSEnabled
ブログは、この手順はMicrosoftのサポートが代わりに行うことはできず、テナントの管理者だけがEWSを入れ直せると書いています。
一時的に入れ直す2つの方法
方法1: 管理センターのBaseline security mode(いちばん簡単)
Microsoft 365管理センターの「Baseline security mode」のページを開く
「Block access to Exchange Web Services」の行を選ぶ
「Block your entire organization from using EWS」のチェックを外し、「Apply change」を押す
もう一度同じ項目にチェックを入れ、「Apply change」を押す
画面の名前は、ブログの英語の画面のものです。チェックを入れた「止める」の状態に戻しますが、テナントの実際の設定は、EWSを許す(EWSEnabledがTrue)うえで、許可の一覧のアプリだけを通す形になります。ブログも、分かりにくいと認めています。許可しているアプリは「Scope Summary」に、止める対象から外したアプリとして出ます。一覧を変えるときは「Exclude specific apps」から行います。
Baseline security modeのEWSの画面。許可したアプリは除外として出る 出典: Microsoft Exchange Team Blog「Exchange Online EWS application stopped working? Do this.」 (引用)
方法2: Exchange Online PowerShell(細かく管理できる)
EWSEnabledがFalseなら、次を実行します。
Set-OrganizationConfig -EWSEnabled $true
どちらの方法も、ふつうは1時間以内に効き、アプリはそのまま動き出します。まれに4時間かかることがあります。
許可の一覧に漏れがないか確かめる
入れ直したあとに通るのは、許可の一覧(EWSAllowedAppIDs)に入っているアプリだけです。一覧は次のコマンドで見られます。
Get-OrganizationConfig -RetrieveEwsOperationAccessPolicy | Fl EwsAllowedAppIDs
Microsoftは、直近60日にテナントで使われたと検出したアプリを、すでに一覧に入れています。入れ直してすべて動けば、一覧を変える必要はないとしています。
ただ、月末や期末にだけ動く処理など、たまにしか動かないアプリは、60日の中に入らず漏れることがあります。足すときは、一覧の変更が効くまで24時間かかります。Set-OrganizationConfigの-EwsAllowedAppIDsは一覧全体を置き換えるため、今のIDも含めて指定します。
EWSAllowListという、ユーザーエージェントで許す別の古い設定は、今回の廃止とは関係がなく、設定し直す必要はないと、ブログは書いています。
Microsoft自身のアプリ
ブログ(10月21日更新)は、Microsoftのアプリの状況を次のように書いています。使用状況レポートに出るものは、許可の一覧に入れないと動きません。
アプリ
状況
WindowsのOutlook
最新の版(2026年8月の版16.0.20430.20092以降)にする。EWSを止めて問題が出るなら、会社が強制している設定が原因のことがある。OfficeのアプリIDでEWSを止めても影響がないか、試すよう勧めている
MacのOutlook
最新の版にし、新しいOutlookに切り替える。新しいOutlookは影響を受けない。従来のOutlookを使い続けるなら、「Microsoft Office」のアプリIDを許可の一覧に入れる
ExcelのPower Query
Exchange Onlineへの接続の機能(コネクタ)は、2027年4月に終わる予定。Microsoft Graphを使う新しい「Mail」のコネクタが先に出る。今のクエリーは自動では置き換わらず、つなぎ直しが要る
Power BI
近く知らせる
Exchange Server・ハイブリッド
組織をまたぐ連携への影響を、別のブログ記事で説明
入れ直せるのは2027年4月まで
ブログによると、今はEWSの無効化の第1段階で、管理者が入れ直せます。2027年4月には、入れ直しも効かなくなります。
根本の対応は、アプリをEWSを使わない版に更新することです。買ったアプリは提供元に更新した版を求め、自社で作ったアプリはEWSを使わないようにコードを直します。
Baseline security modeの画面は、EWSについて、乗っ取られると機密のデータの読み取りやなりすましのメールにつながると説明し、止めることを勧めています。入れ直すのは業務を止めないための一時的な手段と考え、許可の一覧は使うアプリだけに絞ります。
影響する会社・しない会社
影響する: EWSEnabledを未設定のままにしていた、Exchange Online(Microsoft 365)の会社。メッセージセンターの予告から7日で止まります。
影響する: macOSのApple メールや従来のOutlook、Outlookのアドイン、古いWindowsのOutlook、バックアップの道具、ExcelのPower QueryのExchange Onlineのコネクタを使っている会社。
影響する: EWSEnabledをTrueにしていても、たまにしか動かないアプリが許可の一覧から漏れている会社。
影響しない: 管理者が前からEWSを止めていた(False)会社。Microsoftは設定を変えません。
影響しない: オンプレミスのExchange Serverだけを使う会社。今回の廃止は、Exchange Onlineだけが対象です。
情シスが今日やること
メッセージセンターを検索します。 「EWS will be disabled in your tenant in 7 days」と「EWS has been disabled in your tenant」の投稿がないかを見て、予告や停止の日を控えます。
EWSEnabledの値を確かめます。 PowerShellで Get-OrganizationConfig | Fl EWSEnabled を実行します。未設定のままなら、予告が来る前に、許可の一覧を自分で作るかどうかを決めます。
ヘルプデスクに症状を伝えます。 MacのApple メールや従来のOutlookで、パスワードを何度も聞かれるという問い合わせがあれば、EWSの停止を疑うように共有します。
止まったら、管理者が入れ直します。 Baseline security modeかPowerShellで入れ直し、最大4時間待ちます。サポートに頼んでも、代わりには操作してもらえません。
許可の一覧の漏れを確かめます。 一覧を出し、月末だけ動く処理やバックアップの道具が入っているかを見ます。足すときは今のIDも含めて指定し、効くまで24時間みます。
2027年4月までの移行の計画を立てます。 Macの利用者を新しいOutlookへ移し、バックアップの道具などは提供元にGraph対応の版と時期を聞きます。ExcelのPower Queryでメールを取り込むブックは、持ち主を洗い出します。