Microsoft は2026年10月7日、Exchange Teamブログで、Exchange Online の「別名から送信(Sending from Aliases)」の一般提供(GA)を発表しました。これまで受信にしか使えなかった別名(プロキシアドレス)を、差出人として使えるようになります。
中小企業 では、info@やsales@を担当者の別名にして、代表アドレスの受信を一人のメールボックスで受ける運用がよくあります。その別名から返信や送信をしたい、という要望に答える機能です。ただし有効にすると、メッセージ追跡やルールの動きが変わります。
この記事の内容は、2026年10月9日に、ブログとMicrosoft Learnで確かめたものです。
何ができるようになったか
ブログは、これまでの状況を次のように書いています。別名は受信にしか使えず、送信するメッセージはすべてメールボックスのプライマリSMTPアドレスになっていました。別名で送りたい場合の回避策として、共有メールボックスや配布グループが使われてきました。
今回の機能が有効なら、ユーザーは次のことができます。
Outlook のクライアントで、別名を直接選んで送信する
別名宛てに届いたメールには、その別名で返信する
対応するクライアントで、表示する別名を選ぶ
ブログによると、この機能は一般提供の前は公開プレビューでした。
Exchange Team Blogの該当部分。別名から送信の説明と、有効にするコマンド 出典: Microsoft Exchange Team Blog (引用)
有効にする手順
設定は、組織全体で行います。ブログは、PowerShellかExchange管理センターの2通りを書いています。
方法
ブログの書き方
PowerShell
Set-OrganizationConfig -SendFromAliasEnabled $True
Exchange管理センター
Settings → Mail Flow → Turn On Sending from Aliases
ユーザーの別名の追加や削除は、Microsoft 365 管理センターで行うと書かれています。反映には、最大60分かかることがあります。
Learnは、SendFromAliasEnabledの値を次のように説明しています(日本語版も同じ内容です)。
値
Learnの説明
$true
メッセージのエイリアスが、プライマリSMTPアドレスに書き換えられなくなる。互換性のあるOutlookクライアントでは、エイリアスからの送信とエイリアスへの返信ができる。更新されたOutlookクライアントがなくても、設定はメールボックスが送受信するすべてのメッセージに影響するため、ユーザーの動作が変わることがある
$false
送受信したメッセージのエイリアスが、プライマリのメールアドレスに書き換えられる。これが既定値
つまり、有効にすると、Outlookの更新の有無にかかわらず、すべての送受信の扱いが変わります。有効にする人を絞る設定は、ブログにもLearnにも書かれていません。ブログは、公開後の改善として、別名ごとの表示名、既定値などの追加の制御、予定表への対応を調べていると書いています。ただし、実現を約束するものではないとも書いています。
Additional functionality we’re investigating (but not necessarily committing to) includes: Display names per alias / Additional filtering or default controls / Calendar support
出典: Exchange Team Blog「Sending From Email Aliases - General Availability」
対応するクライアントと使い方
ブログが書いている、クライアントごとの操作は次のとおりです。
クライアント
別名の選び方
Outlook on the web
設定の「作成」で、別名を表示して選ぶ
Outlook デスクトップ(Windows、Mac)
差出人(From)のドロップダウンから選ぶか、別名を手で入力する
Outlook モバイル
差出人(From)欄をタップして、使える別名から選ぶ
別名宛てに届いたメールへの返信は、メッセージが送られてきた別名が自動で使われると書かれています。
Learnは、Outlook on the webとOutlook for Windowsでの提供について、それぞれMicrosoft 365ロードマップの項目を参照するよう書いています。クライアントの版ごとの対応状況までは、ブログに書かれていません。
特定のドメインの別名を使わせないとき
別名は、いろいろな理由でユーザーに付けられています。ブログは、あるドメインの別名を送受信に使わせたくないときは、ドメイン全体を送信専用か受信専用にできると書いています。使うのは、Set-AcceptedDomainのSendingFromDomainDisabledとSendingToDomainDisabledです。
パラメーター
Learnの説明
SendingFromDomainDisabled
$trueなら、そのドメインのアドレスからメールを送れない。よくある使い方は、受信はしたいが送信には使わせない古いドメイン
SendingToDomainDisabled
$trueなら、そのドメインの受信者宛てのメールが止められる。よくある使い方は、使っていないMOERA(onmicrosoft.com)ドメイン宛ての配信を止めること
Microsoft 365管理センターで、ドメインを「受信のみ(Receive Only)」にする方法も、ブログは書いています。もっと細かい制限は、メールフロールールか、ユーザーが守る社内の規程で行うことになる、とブログは説明しています。
Learnの書式に沿った例です。ドメイン名は例です。
Set-AcceptedDomain -Identity contoso.com -SendingFromDomainDisabled $true
この例は、Learnの説明するパラメーターを当サイトが組み立てたものです。Learn自身には、この書き方の例は載っていません。
有効にする前に確かめること
ブログは「既知の差・動作の変更」として、次の点を挙げています。有効にするかどうかは、ここで決めます。
項目
ブログの内容
ルール
別名を考慮していないジャーナリングやルーティングのルールが、期待どおりに動かないことがある。衛生管理(hygiene)、ジャーナリング、メールフロールールは、特定のアドレスを探すため、別名に一致せず一部のメッセージに作用しないことがある
メッセージ追跡
プライマリSMTPアドレスで検索すると、別名で送られたメッセージが結果に含まれない。別名で送受信したメッセージは、別名を指定して検索する
差出人の表示
Outlookの設定で、プライマリと違う別名や表示名を使っている会社は、メッセージの差出人の表示が変わることがある
ハイブリッド
オンプレミスから送ると、宛先はmail.contoso.onmicrosoft.comのアドレスになり、有効だとそれが維持される。不在通知が、onmicrosoft.comのアドレスから出ることがある
オンプレミスのメール
この機能はExchange Onlineのメールボックスだけが対象。オンプレミスとの送受信は、そちらのサーバーで別名が書き換えられることがある
ハイブリッドの不在通知の件について、ブログは、組織が自動応答でonmicrosoft.comのアドレスを避けたいなら、Outlookチームへ設計変更の要望(DCR)を出すよう書いています。
送信の記録(送信済みアイテムの保存先)や、監査ログでの別名の扱いについては、ブログに書かれていません。ここは、有効にしたあとで、自社のテナントで確かめてください。
組織全体の設定を切り替えるため、別名を使っていないユーザーのメールにも、差出人の表示やメッセージ追跡の結果が変わる影響が出ることがあります。一斉に有効にする前に、テスト用のメールボックスで、返信や追跡の見え方を確かめてください。
共有メールボックスや配布グループとの使い分け
ブログは、共有メールボックスや配布グループが、別名送信がない間の回避策だったと書いています。ブログが書いている、共有メールボックスの扱いは次のとおりです。
共有メールボックスでは、別名からの送信は、委任された人がOutlook on the webの「別のメールボックスを開く」から開いたときだけ使えます。
Outlookのアプリでは、共有メールボックスでの別名送信はまったく対応していません。
以降は、公式の説明ではなく、編集部の整理です。
使い方
向いている場面
ユーザーの別名
代表アドレスの受信を一人の担当者が受け、その人の別名で返信する。担当者が決まっていて、メールボックスが一つで足りる
共有メールボックス
複数人が同じ受信箱を見て、対応の状況を共有する。Outlookのアプリから代表アドレスで送りたいなら、ブログのとおり別名送信は使えない
配布グループ
代表アドレス宛てのメールを、複数人へ配る。送信は別の仕組みが要る
共有メールボックスをOutlookのアプリで使っている会社は、今回の機能を有効にしても、その運用は変わりません。
影響する会社・しない会社
影響する: ユーザーのメールボックスにinfo@やsales@を別名として付けて、受信している会社。有効にすれば、その別名から送信や返信ができます。
影響する: メールフロールールやジャーナリングで、送信者のアドレスを条件にしている会社。別名で送られたメールが、ルールに一致しなくなることがあります。
影響する: 自動応答や不在通知の差出人を気にしているハイブリッド構成の会社。onmicrosoft.comのアドレスから出る場合があります。
影響しない: 別名を使っていない会社。有効にしなければ、既定の$falseのまま、これまでどおりプライマリに書き換えられます。
影響しない: 共有メールボックスをOutlookのアプリで使い、別名の送信を必要としていない会社。この機能は、アプリでの共有メールボックスには対応していません。
情シスが今日やること
別名を使っているメールボックスを洗い出します。 Microsoft 365管理センターで、info@やsales@などを別名にしているユーザーを一覧にします。誰が、どの別名で返信したがっているかも聞きます。
有効にするかを決めます。 組織全体のスイッチです。メールフロールール、ジャーナリング、衛生管理の設定のうち、送信者のアドレスを条件にしているものを見て、別名で送られたメールが漏れないか確かめます。
別名を使わせないドメインを決めます。 使わせたくない古いドメインは、SendingFromDomainDisabledか、管理センターの受信のみの設定で止めます。
有効にして、テスト用のメールボックスで確かめます。 Set-OrganizationConfig -SendFromAliasEnabled $True、または管理センターで有効にします。反映に最大60分かかります。別名からの送信、別名宛てへの返信、メッセージ追跡の結果を見ます。
利用者に知らせます。 Outlookの種類ごとに、別名の選び方が違います。次の文例を使えます。
社員へのお知らせの文例です。これは編集部の整理です。
件名: 代表アドレス(info@)から送信できるようになります
〇月〇日から、自分のメールボックスに設定されている別名のアドレスを、差出人にして送信できます。Outlookの「差出人」欄から選んでください。Outlook on the webは、設定の「作成」で別名を選びます。info@宛てに届いたメールに返信すると、info@から返信されます。送る前に、差出人の表示を確かめてください。共有メールボックスは、Outlookのアプリでは別名で送れません。うまくいかないときは、情シスへ連絡してください。
Exchange Onlineの管理で確かめることが増える変更は、ほかにもあります。メールボックスの容量まわりは、Microsoft 365のアーカイブ容量が1.5TB超へ、対象E5と管理者の準備 に、Outlookの添付の既定のブロックは、Outlookが.msix添付を2026年11月から既定でブロック、情シスの対応 にまとめています。