Microsoft は、Exchange Online (Microsoft 365 のメール)のEWS(Exchange Web Services)を、2026年10月から段階的に止め、2027年4月1日に完全に無効にします。EWSは、アプリがメールや予定表を読み書きするための古いAPI (プログラムの接続口)です。
きっかけは、2026年10月6日に更新されたMicrosoft 365ロードマップの項目573701です。アーカイブのメールボックスをMicrosoft Graphで扱えるようにする機能で、説明に「with EWS Graph APIs being deprecated」とあります。この記事は、2026年10月10日(土)に、Exchange Teamブログ、Microsoft Learn、ロードマップの原文で確かめた内容です。
今日の時点で止まっているのか、いつ止まるのか
結論は、公式の文書では「全社が同じ日に止まる」とは書かれていません。段階と日付は、Exchange Teamブログ(2026年2月5日公開・9月9日まで更新)と、Microsoft Learn(2026年9月4日更新)が次のように書いています。
時期
公式の内容
2018年7月
EWSに機能更新をしないと発表
2023年
2026年10月にEWSを無効にすると発表
2026年10月1日またはその直後
設定が未設定(Null)のテナントのEWSEnabledが、展開に合わせてFalseに変わり、そのテナントのEWSはすべてのアプリで止まる
2027年4月1日
EWSは完全に、恒久的に無効になる。管理者がEWSEnabledを操作する機能もなくなる
Exchange Team Blogの該当部分。EWSEnabledの値ごとの、2026年10月前後の動作の表 出典: Microsoft Exchange Team Blog (引用)
ブログは、2026年9月末までに、許可するアプリの一覧(AppID許可リスト)を作ってEWSEnabledをTrueにしたテナントは、10月1日の自動の変更の対象から外れる、とも書いています。
10月に入ってからのコメント欄で、Microsoftの担当者(Nino_Bilic)は、2026年10月2日に次のように答えています。「10月1日にすべての顧客でEWSが止まる」とは言っておらず、段階的な展開で、顧客のグループごとに見える変化の時期が違う、という内容です。
公表されていないことは、次のとおりです。
自社のテナントがいつ切り替わるか(ブログやLearnに、テナントごとの日付の一覧はありません。ブログは、テナントごとの使用状況の要約を、毎月のメッセージセンターで送ると書いています)
2027年4月1日より前に、全テナントが完全に止まる日
延長や例外の申請の方法
コメント欄に「10月10日に延期された」という投稿もありましたが、Microsoftの担当者がそれを確認した返信は、確かめた範囲では見つかりませんでした。日付の根拠にはしていません。
We will not be ready by April 2027. How do we get an extension? There will be no exceptions past April 2027.
出典: Exchange Team Blog「Exchange Online EWS, Your Time is Almost Up」(FAQ)
対象はどこまでか
ブログは、今回の廃止は「Microsoft 365とExchange Online(すべての環境)」だけに当たり、Exchange ServerのEWSに変更はないと書いています。オンプレミスのメールボックスは、これまでどおりEWSを使えます。
ハイブリッド構成については、ブログのよくある質問が、クラウド 側のメールボックスはGraphへ移る必要があり、オンプレミスのメールボックスをホストするにはExchange SEを使う必要が出てくると書いています。詳しい条件は原文を読んでください。
日本の会社に限った違いは、発表に書かれていません。
ロードマップ573701とGraphの穴
ロードマップ573701は、次のとおりです。ステータスは「In development」、GAは2026年11月(November CY2026)です。環境はWeb、GCC、GCC High、DoDが挙げられています。日本での提供は、書かれていません。
Access to Archive mailboxes (Main + Auxiliary) through Microsoft Graph. The goal is to give users a single, seamless Archive view, even though Archive data may physically reside across multiple auxiliary mailboxes with EWS Graph APIs being deprecated.
出典: Microsoft 365 ロードマップ 573701
この項目は、EWSの廃止の日付を書いたものではありません。ただ、Learnの「パリティギャップ」(EWSにあってGraphにまだない機能)の表では、アーカイブのメールボックスの読み書きや、アーカイブのエクスポート・インポートが、いずれも2026年第4四半期の目標です。古いメールのアーカイブやバックアップの道具が、この機能に頼っている可能性があります。
Learnは、表の予定日は目標で変わることがある、表にない機能は、EWSが完全に無効になる前にGraphで使えるようになる前提で計画しないように、とも書いています。
また、次の機能は、Graphに追加しないと確定しています。
公開フォルダでの汎用的な作成・読み取り・更新・削除
Microsoft 365グループのメールボックスでの汎用的な操作
Discovery Mailboxへのアクセス(代わりにPurview eDiscoveryのAPIを使う)
EWSを使っているものを洗い出す
洗い出しの出発点は、Microsoft 365管理センターのEWS使用状況レポートです。Learnの手順は次のとおりです。
Microsoft 365管理センターで「レポート」を開き、「使用状況」を選ぶ
「レポート」の下の「Exchange」を選ぶ
「EWS usage」タブを開く(期間は7日・30日・90日)
表には、アプリケーションID、SOAPアクション(アプリが呼んだ操作)、呼び出し回数、最後に動いた日(UTC)が出ます。「エクスポート」でCSVにできます。データは週ごとに集計され、レポートに出るまで最大10日かかります。直前に動いたアプリは、すぐには見えません。
アプリケーションIDだけでは名前が分からないときは、Microsoft Entra IDの「エンタープライズアプリケーション」で調べる、とLearnは書いています。Microsoft自身のアプリのIDは、Learnの「Commonly used Microsoft first-party services and portal apps」にあります。
Microsoft自身のアプリについて、Learnは、OutlookやOffice、Teams、Dynamics 365からEWSへの依存を取り除く作業を進めていて、クライアントを最新に保つよう書いています。
許可リストは、PowerShellで次のように設定します。ブログの例です。
Set-OrganizationConfig -EwsAllowedAppIDs "<アプリケーションID1>,<アプリケーションID2>"
Get-OrganizationConfig -RetrieveEwsOperationAccessPolicy | Format-List EwsAllowedAppIDs
ブログによると、この設定は一覧全体を置き換えます。追加や削除だけの操作はなく、反映に最大24時間かかります。
Microsoftは、一覧を作っていないテナントには、直近60日の使用状況から一覧を作ると書いています。ただし、使用が少ないアプリは漏れることがあり、もう要らないアプリが入ることもあります。ブログは、管理者が自分で一覧を作るよう勧めています。
中小企業で見かけそうなもの
EWSを使うかどうかは、製品ごとに違います。公式の情報で確かめられたものは、次の1つだけです。
Backup Exec: ベンダーのサポート記事(2026年9月29日更新)は、Exchange Onlineのメールボックス、アーカイブ、共有メールボックス、グループ、公開フォルダのバックアップを含め、データ保護のアプリは現時点ですべてEWSに頼っている、と書いています。Graphへの移行は、EWSの廃止までに行うつもりだと書いています。
この記事には、手順に注意が要る点があります。このベンダーの記事は、手順でEwsAllowList(ユーザーエージェントで許可する古い仕組み)を使っています。ExchangeチームのブログのFAQは、EWSAllowListは今回の廃止とは別の設定で、AppIDの許可リストを通ったあとに、もう1つの関門として働く、と書いています。どちらをどう設定するかは、使っている製品のベンダーに確かめてください。
以降は、公式の情報で確かめていない、編集部の整理です。メールやアーカイブにつなぐ次のような種類は、EWSを使っている可能性があるため、洗い出しの対象にします。
種類
確かめること
古いメールのアーカイブ・バックアップの道具
Exchange Onlineにつなぐ方式。Graph対応の予定と時期
複合機のスキャンtoメール
送信にSMTPを使うのか、Exchange Onlineに別の方法で接続するのか
会議室の予約システム・予定表の連携
予定表の読み書きの方式。Graphへの移行の予定
Mac・古いOutlookなどのメールソフト
使っている版と、EWSなしで動く最小の版
自社で作ったスクリプト・RPA
EWSのライブラリ(EWS Managed APIなど)を呼んでいないか
ベンダーへの聞き方
使用状況レポートでアプリケーションIDが見つかったら、そのアプリの提供元に聞きます。次の聞き方は、編集部の整理です。
件名: Exchange OnlineのEWS廃止への対応について(製品名・版)
Microsoftは、Exchange OnlineのEWSを2026年10月から段階的に止め、2027年4月1日に完全に無効にすると発表しています。次の点を、文書で教えてください。
御社の製品の、Exchange Onlineへの接続でEWSを使っている機能はどれか
Microsoft Graphへ移行する予定の時期と、対応する版
移行までの間、EWSAllowedAppIDsに登録するアプリケーションID
Graphに無い機能(アーカイブのエクスポートなど)を使う場合の代わりの方法
現在の版は、2027年4月1日以降も使えるか
影響する会社・しない会社
影響する: Exchange Online(Microsoft 365)のメールボックスに、EWSでつなぐアプリや自作のスクリプトがある会社。EWSEnabledが未設定のままだと、切り替わったテナントで止まります。
影響する: メールのアーカイブやバックアップの道具、会議室の予約システムなどを、Exchange Onlineにつないで使っている会社。ベンダーの対応の時期を確かめる必要があります。
影響する: 古い版のOutlookやOfficeを使っている会社。Microsoftは、アプリの更新でEWSへの依存を取り除いていると書いています。
影響しない: オンプレミスのExchange Serverだけを使い、Exchange Onlineにつながない会社。ブログは、Exchange ServerのEWSに変更はないと書いています。
影響しない: Exchange Onlineを使うが、使用状況レポートにEWSを使うアプリが出ない会社。ただし、レポートには最大10日の遅れがあります。
情シスが今日やること
自社のEWSの設定を見ます。 Exchange Online PowerShellで Get-OrganizationConfig | Select EwsEnabled を実行し、True、False、空(Null)のどれかを確かめます。Nullなら、これから切り替わる可能性があります。
使用状況レポートを開きます。 Microsoft 365管理センターの「レポート」から「使用状況」、「Exchange」、「EWS usage」タブで、90日分をCSVに出します。アプリケーションIDごとに、名前と担当者を付けます。
使うアプリを決めて、ベンダーに聞きます。 続けて使うものはベンダーに上の質問を送ります。使わないものは止めます。
許可リストを自分で作ります。 続けて使うアプリのIDだけで EWSAllowedAppIDs を設定し、EWSEnabledをTrueにします。反映に最大24時間かかるので、動作の確認は翌日に行います。
メッセージセンターを毎月見ます。 Microsoftは、テナントごとの使用状況の要約を、毎月のメッセージセンターで送ると書いています。2027年4月1日までに、続けて使うアプリのGraphへの移行を終える計画を立てます。
古いメールの保存にかかわる別の変更は、Microsoft 365のアーカイブ容量が1.5TB超へ、対象E5と管理者の準備 にまとめています。Exchange Onlineの管理で確かめることが増える変更は、Exchange Onlineで別名から送信が一般提供、有効化の判断と手順 にもあります。