回線・携帯・クラウドの契約先として、NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天グループの名前を目にする機会は多いはずです。その契約先がどんな会社なのかを、公開された数字で見たことはあるでしょうか。この記事では、4社の最新の有価証券報告書(有報)から、売上・営業利益・従業員数・平均年間給与を取り出し、表と図にまとめます。
先に大事な点を3つ書きます。NTTは持株会社です。楽天グループは通信だけの会社ではありません。そして、楽天グループだけ決算期が違います。この3点を知らずに数字を並べると、読み違えます。
4社の売上・営業利益・従業員数を1つの表で見る
数字は、各社が金融庁のEDINET(有報などを無料で読める開示サイト)に出した最新の有報から取り出しました。確かめた日は2026年10月9日です。4社とも、会計基準はIFRS(国際会計基準)で、売上・営業利益は連結(グループ全体)の数字です。
- 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上収益(丸める前の数字で計算し、小数1桁に四捨五入)
- 売上収益と営業利益は、億円未満を四捨五入
| 会社 |
決算期 |
売上収益(億円) |
営業利益(億円) |
営業利益率 |
従業員数(連結) |
従業員数(提出会社) |
有報 |
| NTT |
2026年3月期 |
144,091 |
17,062 |
11.8% |
344,196 |
2,606 |
有報 |
| KDDI |
2026年3月期 |
60,719 |
10,991 |
18.1% |
73,198 |
9,891 |
有報 |
| ソフトバンク |
2026年3月期 |
70,387 |
10,426 |
14.8% |
58,432 |
19,150 |
有報 |
| 楽天グループ |
2025年12月期 |
24,966 |
144 |
0.6% |
29,419 |
9,989 |
有報 |
売上収益は、楽天グループの2兆4,966億円からNTTの14兆4,091億円まで開きがあります。営業利益率は0.6%から18.1%です。会社の優劣を示す数字ではなく、事業の形の違いを見るための数字です。この数字になった理由は、有報の数字だけからは分かりません。
通信4社の売上収益・営業利益(連結)と従業員数の図作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
楽天グループは通信だけの会社ではない
4社のうち楽天グループだけは、事業の中心が通信ではありません。有報の「事業の内容」は、事業を3つの区分に分けています。
| 区分 |
有報に書かれている中身 |
従業員数(連結) |
| インターネットサービス |
「楽天市場」などのECサイト、旅行予約サイト、広告、メッセージングサービスなど |
9,793人 |
| フィンテック |
クレジットカード、銀行、証券、保険、決済など |
6,217人 |
| モバイル |
通信サービス、電力供給サービス、通信技術の提供など |
4,333人 |
| 全社共通 |
区分に分けない部門 |
9,076人 |
通信を契約する立場で見るなら、有報の「モバイル」の区分が当てはまります。この区分の従業員は4,333人で、連結29,419人の約15%です。「楽天グループの売上」や「楽天グループの従業員数」は、通信以外の事業も含んだ数字です。
ほかの3社は、通信が事業の中心にあります。ただし、金融、電力、メディア、ECなど通信以外の事業も有報に載っています。ソフトバンクは「メディア・EC」だけで従業員25,261人(連結)です。通信の会社として見るときも、数字は事業全体のものだと覚えておいてください。
持株会社とは何か 提出会社の数字の読み方
持株会社は、自分では事業をせず、子会社の株を持って経営を管理する会社です。NTTは、有報に「純粋持株会社」と書かれています。携帯はNTTドコモ、地域の固定回線はNTT東日本・NTT西日本といった子会社が提供し、契約の相手もその子会社です。
有報を出した会社そのものを「提出会社」と呼びます。NTTの提出会社の従業員は2,606人で、連結の344,196人の0.8%です。ほかの3社は、提出会社の人数が連結の13.5%から34.0%でした。
| 会社 |
提出会社の人数 ÷ 連結の人数 |
提出会社の売上(億円) |
連結の売上収益(億円) |
| NTT |
0.8% |
11,557 |
144,091 |
| KDDI |
13.5% |
39,085 |
60,719 |
| ソフトバンク |
32.8% |
36,862 |
70,387 |
| 楽天グループ |
34.0% |
9,674 |
24,966 |
提出会社の売上は、NTT・KDDI・ソフトバンクは有報の「営業収益」、楽天グループは「売上高」の数字です(経営指標等より。億円未満は四捨五入)。連結と提出会社では、数字の範囲が違います。混ぜて比べないでください。
平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社だけの数字
有報の「従業員の状況」には、提出会社の平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数が載っています。子会社の社員は入っていません。
| 会社 |
平均年間給与 |
平均年齢 |
平均勤続年数 |
| NTT |
1,056万円 |
41.4歳 |
15.6年 |
| KDDI |
1,051万円 |
42.3歳 |
16.4年 |
| ソフトバンク |
871万円 |
42.0歳 |
14.8年 |
| 楽天グループ |
851万円 |
36.0歳 |
6.3年 |
平均年間給与は万円未満を四捨五入しています。これは、有報を出した会社に勤める人の平均です。NTTでは、持株会社の2,606人の平均で、携帯や回線の現場にいる社員の数字ではありません。会社の優劣や待遇の良し悪しを示すものでもありません。この差の理由は、数字からは分かりません。
従業員数(連結と提出会社)と平均年間給与・年齢・勤続年数の図作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
有報は事業をどう区切って書いているか
法人向けの回線・ネットワーク・クラウド・セキュリティは、各社の有報で書かれ方が違います。区分ごとの人数と利益を図にしました。
有報が事業を区切る方法と、区分ごとの人数・利益の図作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
| 会社 |
区分の数 |
法人向けの書かれ方(有報の「事業の内容」) |
| NTT |
4つ |
総合ICT事業の中に「法人向け通信サービス、ソリューション事業、システム開発事業等」。地域通信事業の中にも「法人事業」。グローバル・ソリューション事業にデータセンターなど |
| KDDI |
2つ |
「ビジネス事業」が独立。デバイス、ネットワーク、クラウド、データセンターサービス(Telehouse)、IoT・DX・生成AIなど |
| ソフトバンク |
5つ+その他 |
「エンタープライズ事業」が独立。モバイル、固定サービス、データセンター、クラウド、セキュリティ、グローバル、AI、IoTなど |
| 楽天グループ |
3つ |
法人向けの名前の区分は、有報の事業の内容にありません。通信はモバイルの区分 |
区分ごとの利益は、会社によって名前が違います。NTT・KDDIは区分の営業利益、ソフトバンクはセグメント利益、楽天グループは別の利益の指標を載せています。同じ名前の区分でも、中身は同じではありません。契約したい商品が有報のどの区分に入るかは、会社ごとに確かめます。
区分ごとの数字は、次のとおりです(億円未満は四捨五入)。
| 会社 |
区分 |
従業員(連結) |
利益 |
| NTT |
総合ICT |
53,780人 |
営業利益 9,421億円 |
| NTT |
グローバル・ソリューション |
201,140人 |
4,882億円 |
| NTT |
地域通信 |
61,567人 |
3,074億円 |
| KDDI |
パーソナル |
29,753人 |
営業利益 8,283億円 |
| KDDI |
ビジネス |
39,707人 |
2,639億円 |
| ソフトバンク |
コンシューマ |
7,037人 |
セグメント利益 5,508億円 |
| ソフトバンク |
エンタープライズ |
9,094人 |
1,924億円 |
決算期の違い 楽天グループだけ12月期
NTT・KDDI・ソフトバンクは2026年3月期(2025年4月から2026年3月まで)、楽天グループは2025年12月期(2025年1月から12月まで)です。期間が3か月ずれています。同じ時点の数字ではないので、1年を比べる表としては目安です。
楽天グループの2025年12月期は、営業利益が144億円(営業利益率0.6%)、親会社の所有者に帰属する当期損失が1,779億円でした。有報の数字を書いただけで、理由は有報の数字だけからは分かりません。
契約先の確かめ方 情シスの読みどころ
契約書や見積書に書かれた会社は、有報を出している会社とは限りません。たとえばNTTのグループなら、契約の相手がNTTドコモビジネスやNTT東日本でも、有報を出しているのはNTT株式会社です。有報には、連結子会社の名前と、その会社が入っている区分が載っています。
契約先を有報で確かめる4つの手順と、4社を読む3つの注意作成: 編集部 / もとの資料: 各社の有価証券報告書(EDINET・金融庁)
この読み方は、投資のためではなく、取引先を知るためのものです。株の売買を勧めるものではありません。
有報の見方の基本は、同じシリーズのSIer・ITサービス16社を有価証券報告書で図解でも書いています。取引先がサービスをやめるかもしれないときの確かめ方は、使っているSaaSが撤退したら?決算短信と有報で「続くか」を読む方法にまとめています。
今日からできること
- 契約書・請求書から、回線・携帯・クラウドの契約先の会社名を書き出す
- EDINETで、その会社か親会社の有報を探し、「事業の内容」を開く
- 契約している商品が、有報のどの区分に入るかを確かめる
- 「従業員の状況」で、連結と提出会社の人数を見て、契約先が持株会社かどうかを確かめる
- 更新のたびに、売上と従業員数を前の年と比べ、変化を営業担当への質問にする
有報の数字は、契約先を決めつけるためではなく、質問を作るために使ってください。