会議で話がまとまらないとき、誰かが言います。「よく分からないので、とりあえず情シスに聞いてみます」。その瞬間、会議室の視線が情シスに集まります。頼られるのは、うれしいことです。ただ、届いた相談をよく聞くと、システムの話ではないことも少なくありません。
この記事では、公開されている情シスの体験談をもとに、「とりあえず情シスに」で始まる相談のあるあると、目的を一緒に探す聞き方をまとめました。
「とりあえず情シスに」は、うれしくて、少し重い
一人で情シスを担ってきたmobieさんは、この一言を何百回も聞いてきたと書いています。
「とりあえず」という言葉の裏には、「深くは分からないけれど、あなたなら何とかしてくれるはず」という、ある種の丸投げも隠れているからです。
出典: note「「とりあえず情シスに」と言われるたびに、少し嬉しくて、少し重い」mobie(2026年9月25日)
新しいクラウドのサービスを入れるかどうか、営業部門も経理部門も決めきれず、最後に「情シスに聞いてから決めよう」となった場面も紹介されています。技術の話をしていたはずが、いつのまにか「この人がいれば安心」という空気の担い手になっていた、という振り返りです。
相談は3つの型でやってくる
元情シスのあやさんは、情シスに来る相談を、大きく3つに分けています(編集部の要約)。
| 型 |
例 |
情シスだけで答えられるか |
| 本当にシステムの問い合わせ |
画面が動かない、ログインできない、パスワードを忘れた |
答えられる(切り分けに時間はかかる) |
| システムに関係するが、情シスだけでは決められない |
取引先からのセキュリティの質問、無料版のクラウドを使いたい |
社内の基準や予算の判断が要る |
| システムの相談に見えて、システムの話ではない |
経費の申請の「使い方」のつもりが、新しい取引の扱いが決まっていない |
決める部署や人をつなぐ必要がある |
3つ目の例は、こんな流れでした。「経費申請システムの使い方を聞きたい」と来た相談は、よく聞くと、前例のない取引をどの費目で申請するかが決まっていない、という話でした。経理だけでも決められず、関係する部門で集まってルールを決めることになり、気づけば情シスがその打ち合わせを設定し、業務の流れの図のたたき台まで作っていたそうです。
あやさんは、別の場面にも触れています。ある部門が手間に感じる業務を断るときに、「システムが対応していないのでできません」と説明されることがある、という話です。
「システムが対応してないのでできません!」と言われた相手は、「じゃあ仕方がないか」と、そこで黙ることがあるからです。
出典: note「情シスへの相談は「システムの相談」の顔をしてやってくる」あや(2026年9月4日)
水戸黄門の印籠のようだ、と書いています。ところが、その言葉で断られた側は、今度は情シスに「システムを何とかできないんですか?」と相談に来ます。よく聞くと、作業の負担、決まっていないルール、承認の問題が混ざっている。システムの顔をした相談の、典型的なあるあるです。
「で、何がしたいんですか?」が刺さる理由
相談を受けた情シスは、つい「目的は何ですか?」と聞きたくなります。正しい質問です。でも、聞かれる側に立つと、印象が変わります。
未経験からひとり情シスになったうめっしゅさんは、社内から「SASEってうちに必要なの?」と聞かれ、調べるためにAIに聞いたところ、「まず何をしたいか整理する必要があります」と返ってきたそうです。正しいけれど、その「何をしたいか」が分からなくて困っていた。そこで気づいたことを、こう書いています。
「なにをしたいかによります」という回答ではなく、「じゃあまず話を聞きながら本当に役に立つか、効率化できるか一緒に考えてみましょうか」という回答の方がいい気がしてきました。
出典: note「未経験ひとり情シスの苦悩「相談したら「まずなにをしたいのか」と聞かれてつらい」」うめっしゅ(2026年7月31日)
社員から来る「このシステムって業務に役立ちそう?」という相談にも、同じことが言える、という気づきです。答えを持っていない人に、大きな質問を1つ返すと、相手は黙ってしまいます。
「念のため待機」と「何でも屋」の線引き
社内のITに長く関わってきただいすけさんは、こんな依頼を受けたことがあるそうです。
「会議中、何かトラブルが起きると困るから、念のため待機していてほしい」
出典: note「情シスは何でも屋? 頼られることと、都合よく使われることの違い」だいすけ(2026年10月18日)
だいすけさんは、待機そのものを悪いとは言っていません。その前に、設備の動作の確認、基本の操作の共有、困ったときの連絡先を決めておけるのではないか、と書いています。そして、頼られることと都合よく使われることの違いは、相手に「一緒に解決しよう」という姿勢があるかどうかだ、とまとめています。目指すのは「便利屋ではなく、相談相手」だそうです。
目的を一緒に探す聞き方(言い換えの例)
公開されている体験談4件を読んで整理すると(編集部)、相手が黙らずに話せる聞き方には、共通点があります。大きな質問を1つ返さず、答えやすい小さな質問を先に並べることです。
| つい言いがちな返し |
言い換えの例 |
| 「で、何がしたいんですか?」 |
「いちばん困っているのは、手間ですか、ミスですか、時間ですか?」 |
| 「それは情シスの仕事ではないです」 |
「決めるのは〇〇さんの部署になりそうです。つなぎますね」 |
| 「システムが対応していません」 |
「システムでできるのはここまでです。残りは、ルールを決めれば回せそうです」 |
| 「目的によります」 |
「質問を3つさせてください。答えてもらえたら、要るかどうか一緒に考えます」 |
| 「念のため待機します」 |
「事前に一度、動作を確かめましょう。当日の連絡先も決めておきます」 |
相談を受けた最初の5分のメモ(例)
- 何が起きているか(画面、操作、数字のずれ、ルールの不明)
- いつまでに、何に間に合わせたいか
- 決めるのは誰か(情シス、相談した人の部署、ほかの部署、経営)
- システムでできること、ルールで決めること、の切り分け
- 次の一手(情シスが調べる、つなぐ、打ち合わせを開いてもらう)
このメモを相手と一緒に見ながら書くと、「丸投げされた」から「一緒に整理した」に変わります。
情シスの側で変えられること
体験談は、相談する側だけの問題にはしていません。情シスの側で変えられることも書かれています(編集部の要約)。
- 同じ問い合わせが続くなら、説明が分かりにくいのかもしれない。 だいすけさんは、毎回同じ操作の問い合わせが来るなら、説明書が分かりにくいか、どこにあるか知られていない可能性を挙げています。
- 代わりにやるより、一緒にやる。 急いでいるときは代わりに操作してもよい。でも時間があるなら一緒に操作してもらい、次から自分でできるポイントを伝える。そのほうが、同じ相談が何度も来るのを減らせる、という考え方です。
- 分からないことを、分からないと言う。mobieさんは、「情シスに聞けば何とかなる」という空気は、裏を返せば「情シスが分からないと言ったら困る」という空気でもあると書き、分からないことを分からないと言う勇気も、この仕事には欠かせないとしています。
- 聞かれやすさは、長所でもある。 あやさんは、相談が集まったのは「この人なら、とりあえず話を聞いてくれそう」と思われていたからかもしれない、と振り返っています。
「とりあえず情シスに」を減らすことだけが目標ではありません。「まず情シスに相談してよかった」に変わる相談を増やすことが、窓口の役目だといえます(編集部の整理)。
今日からできること
- 直近1か月の相談を、上の3つの型(システム、決めきれない、システムではない)に分けて数えてみます。
- 「決めきれない」「システムではない」相談で多いものについて、つなぎ先の部署や人の一覧を作り、窓口の案内に載せます。
- 「何がしたいんですか?」の代わりに使う、小さな質問を3〜5個決めて、チームで同じ聞き方にそろえます。
- 会議の「念のため待機」の依頼には、事前の動作の確認と当日の連絡先を先に決める手順を用意します。
- 相談を受けたら、最初の5分のメモを相手と一緒に書き、次の一手を誰がやるかを決めて終えます。