マネーフォワードiは2026年10月20日、SaaSと端末を社員の情報とひも付けて管理する『マネーフォワード Admina』で、社員のPCに入れるエージェントのソフト「Admina Tracker」の提供を始めました。ブラウザを通らずに使うデスクトップのアプリも、Adminaの画面で見えるようになります。情シスが確かめたいのは、今どこまで取れるのか、どう配るのか、そして社員の利用を記録する前に社内で何を決めておくか、の3つです。
今取れる情報と、これから取れる情報
発表では、Admina Trackerの特長として、PCで実際に起動しているツールの記録、ハードウェアやOSの情報の自動取得、USBの接続やログオンなどの記録を挙げています。ただ、Adminaのヘルプ(10月15日更新・10月21日に確認)では、今使えるのはアプリの利用状況だけで、残りは「今後リリース予定」とされています。
Adminaのヘルプ。今使えるのはアプリの利用状況で、ほかは今後リリース予定とする出典: Admina Help Center「Admina Trackerとは」(引用)
| 区分 |
中身 |
今の状況(ヘルプ) |
| アプリの利用状況 |
最前面のウィンドウで使ったアプリの名前と識別子、最後に使った時刻。端末のホスト名・シリアル番号、設定していれば利用者のメールアドレスも付く |
使える |
| ハードウェアの情報 |
メーカー、モデル、シリアル番号、CPU、メモリ、ストレージ |
今後リリース予定 |
| システムの情報 |
OSのバージョン、入っているアプリ、暗号化の状態 |
今後リリース予定 |
| ネットワークの情報 |
IPアドレス、SSID、MACアドレス |
今後リリース予定 |
| イベントの記録 |
USB機器の接続・取り外し、ログオン・ログオフ、スリープ・復帰 |
今後リリース予定 |
取らないものも書かれています。裏で動いているだけのアプリや、画面がロックされている間の利用は記録しません。ウィンドウの題や、通信の内容・URLも取りません。Macでは、画面収録やフルディスクアクセスの許可を求めない作りで、ブラウザの履歴もエージェントでは集めないとしています。
発表に添えられた画像。PCで実際に起動したアプリを、社員とひも付けて記録する(画面・データはイメージ)出典: 出典: マネーフォワードi(報道用の素材)
使い道は、会社が把握していないツールを見つけることと、端末の台帳を新しく保つことです。既にあるブラウザの拡張機能「Admina Extension」と合わせると、ブラウザの中で使うSaaSと、ブラウザの外で使うデスクトップのアプリを、一つの画面で見られるとしています。なお、検出されたことだけで社内ルールの違反とは判定しない、とサービスのページに書かれています。生成AIのアプリに何を入力したかや、情報が漏れたかどうかを自動で特定する機能でもありません。
対応するOSと、配り方
| 項目 |
Windows |
macOS |
| 対応OS |
Windows 10・11(x64)。Intuneで配る場合はWindows 10のバージョン1809以降 |
macOS 10.15(Catalina)以降。Apple SiliconとIntel |
| 配り方 |
1台ずつの手動のインストールと、Microsoft Intuneでの一括配布 |
1台ずつの手動のインストール |
| 権限 |
管理者権限は要らない。ユーザーごとに入れて動く |
入れるときに管理者のパスワードが要る。動くのは入れたユーザーの権限で、同じMacのほかのユーザーでは動かない |
| 更新 |
裏で自動で更新される |
裏で自動で更新される |
Intuneで配るときは、ADMXのテンプレートを取り込み、構成プロファイルでAPIキー・組織のID・利用者のメールアドレスを配り、Win32アプリとして本体を割り当てる、という3段階です。APIキーを配る作りなので、構成プロファイルを見られる人の範囲も、あわせて確かめておきます。
通信は、端末からAdminaへの外向きだけで、接続先は api.itmc.i.moneyforward.com のHTTPS(443番)です。自動の更新では、これとは別のホストからファイルを取ることがあるとしています。プロキシの自動設定(PACファイルとWPAD)には対応していないため、それだけでプロキシを決めている会社では、環境変数で明示する必要があります。端末の時計が2分以上ずれると、診断のコマンドが警告します。
料金と、使える条件
発表では、Adminaの利用者は追加の費用なしでAdmina Trackerを使えるとしています。シャドーIT・AIの検出の機能は、AdminaのSaaS管理プランの契約で使えると、サービスのページに書かれています。10月27日には、デモつきのオンラインのセミナーを予定しています。
社員の利用を記録する前に決めること
Admina Trackerの記録には、使ったアプリと時刻に加えて、端末のシリアル番号や利用者のメールアドレスが付きます。誰が、いつ、どのアプリを使ったかが分かる情報で、社員の個人情報として扱うのが自然です。
個人情報保護委員会は、個人情報保護法のガイドラインのQ&A(Q5-7)で、従業者を対象にオンラインでモニタリングをするときの留意点として、次の4つを挙げています。
- モニタリングの目的をあらかじめ決め、社内規程などに定めて、従業者に明示する
- 実施の責任者と、その権限を決める
- 実施のルールを先に作り、運用する人に徹底する
- ルールどおりに行われているかを確かめる
あわせて、重要なことを定めるときは、あらかじめ労働組合などに知らせて必要に応じて話し合い、定めたら従業者に周知することが望ましいとしています。
Admina Trackerに当てはめると、配る前に次のことを文書にしておくと、社員への説明と、あとで問われたときの答えがそろいます(当社の見立て)。
- 目的: シャドーIT・AIの把握、ライセンスの棚卸し、端末の台帳の更新、など。勤務の評価や勤怠の管理に使うかどうかも、使わないなら使わないと書く
- 見られる人: Adminaの管理画面で、利用の記録を見られる人と、その権限
- 残す期間: 記録をどのくらい残し、いつ消すか
- 対象の端末: 会社が配ったPCだけか。私物の端末(BYOD)には入れない、など
- これから増える項目: USBの接続やログオンの記録、ネットワークの情報が使えるようになったら、目的と周知を見直す
影響する会社・しない会社
- 影響する: マネーフォワード Adminaを使っていて、デスクトップのアプリの利用や端末の台帳を、もっと正確に把握したい会社です。追加の費用なしで入れられます。
- 影響する: 取引先からセキュリティ対策の状況を聞かれることが増えている会社です。発表は、経済産業省が検討する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」も背景に挙げています。
- 影響しない: Adminaを使っていない会社です。ただし、ほかの資産管理のツールで社員の端末の利用を記録している場合も、社内規程と周知の考え方は同じです。
情シスが今日やること
- 今使える項目を、自社の管理画面で確かめる。 発表とヘルプで書かれている範囲が違うので、導入の判断は、管理画面とヘルプで今使える項目を見てからにします。
- 目的と社内規程を先に決める。 上の5つを文書にし、必要なら人事・労務、労働組合などと話し合います。社員への案内文も、配る前に用意します。
- 通信の条件を確かめる。
api.itmc.i.moneyforward.com への443番の外向きの通信を通すこと、PACファイルだけでプロキシを決めていないか、更新のファイルを取るほかのホストを止めていないかを、ネットワークの担当と確かめます。
- 小さく試す。 WindowsはIntuneで、まず情シスの端末のグループだけに割り当てます。Macは手動のインストールなので、台数と手間を見積もります。
- 検出のあとの流れを決める。 知らないアプリが見つかったときに、誰が利用者に聞き、続けて使ってよいかを誰が決めるかを、先に決めておきます。
現場からの「このツールを使いたい」への答え方は、「このツール使いたい」にどう答える?営業・現場とのシャドーIT対策と要望の受け方でまとめています。端末の台帳や権限の棚卸しの進め方は、ひとり情シスが最初の1か月でやること 権限・台帳・契約の棚卸し手順も参考になります。SaaSの管理ツールの全体像は、情シスのSaaSマップ 2026年秋で一覧にしています。