会社がメールを配る仕組みは、メールマガジンを大勢に送る「一斉配信」と、会員登録の確認などをシステムから送る「送信APIとSMTPの中継」に分かれます。どちらも、配信先のメールアドレスなどを提供会社に預けて使います。10製品を、各社の公式のページで確かめた形と守りで並べました。
10月19日には、メール配信のユミルリンクが、5つのシステムから延べ約900万件の情報が持ち出されたとの試算を公表しました(メール配信のユミルリンクに不正アクセス 延べ約900万件を持ち出し)。10月はほかにも、メールの配信やデータの保管を任せていた先での事故の公表が続いています。この地図は、どの製品が良いかを決めるものではなく、委託先として何を確かめるかを考える材料です。
この地図の決まりと見方
- 載せたのは、2026年10月20日に、編集部が各社の公式のページ(製品・料金・セキュリティ・ヘルプ・開発者向け)で確かめられた10製品です。
- 「記載なし」は、確かめたページに書かれていなかったという意味です。機能が無いという意味ではありません。
- 料金は、金額で比べて優劣を言うためではなく、料金の形(月額か、通数に応じた従量か、無料のプランがあるか)を示すために載せています。
- 順位や点数は付けていません。
地図 10製品を形で2つに分ける
メール配信の10製品を一斉配信と送信APIに分けた地図(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式サイトを編集部が整理
| 製品 |
提供元 |
形 |
データの保管(公式の書き方) |
料金の形(公式の書き方) |
確認日 |
| Cuenote FC |
ユミルリンク |
一斉配信(クラウドとオンプレミス) |
日本国内のデータセンター |
月額5,000円から、初期30,000円から(クラウド型) |
2026年10月20日確認 |
| Cuenote SR-S |
ユミルリンク |
送信APIとSMTPの中継 |
導入事例に国内データセンターの記載 |
共用環境は月額27,000円から・初期50,000円、専用環境は月額82,500円から |
2026年10月20日確認 |
| 配配メール |
ラクス |
一斉配信(API連携あり) |
国内のデータセンター |
初期費用と、プランとアドレス数に応じた月額。配信回数に制限なし |
2026年10月20日確認 |
| blastmail |
ラクスライトクラウド |
一斉配信(API連携あり) |
AWSの国内データセンター |
Lightプランは月額4,000円、初期10,000円(1年契約で半額) |
2026年10月20日確認 |
| WEBCAS e-mail |
WOW WORLD(旧エイジア) |
一斉配信(クラウドとパッケージ)、API連携 |
日本国内のデータセンター |
初期3万円から、月額1万円から |
2026年10月20日確認 |
| ベンチマークメール |
Benchmark Internet Group(日本はベンチマークジャパン) |
一斉配信(API) |
利用規約は、世界の複数の地域で処理・保存することがあるとしている |
初期費用0円。無料プラン(500件まで・月2,500通) |
2026年10月20日確認 |
| Mailchimp |
Intuit Mailchimp |
一斉配信 |
自社で運用するサーバーは米国のデータセンター |
無料のプランと月額のプラン |
2026年10月20日確認 |
| SendGrid |
Twilio |
送信APIとSMTPの中継(マーケティング向けの機能もある) |
記載なし |
無料の試用(60日間・1日100通まで)と月額のプラン(Essentialsは月19.95ドルから) |
2026年10月20日確認 |
| Amazon SES |
Amazon Web Services |
送信APIとSMTPの中継 |
使う地域を選ぶ。東京と大阪がある |
従量(1,000通あたり0.10ドルなど)。プランは別に月額あり |
2026年10月20日確認 |
| Mailgun |
Sinch Mailgun |
送信APIとSMTPの中継 |
米国かEUの地域のドメインを選べる |
無料で始められ、送信量に応じた月額のプラン |
2026年10月20日確認 |
同じユミルリンクでも、メールマガジン向けのCuenote FCと、システムの通知向けのCuenote SR-Sは、別の製品として料金も分かれています。一斉配信の製品の多くにはAPI連携もあり、送信APIの製品にもマーケティング向けの機能を持つものがあります。分け方は、主な使い方の目安です。
管理画面の守りと送信ドメイン認証
配信先のリストを預ける以上、管理画面に誰が入れるかは、もっとも大事な確認の一つです。各社の公式のページで、管理画面の2要素認証(パスワードに加えて別の確認を求める仕組み)と、接続元のIPの制限を確かめました。
管理画面の2要素認証・接続元IPの制限・送信ドメイン認証の公式の記載(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式サイトを編集部が整理
| 製品 |
管理画面の2要素認証 |
接続元IPの制限 |
送信ドメイン認証(公式の書き方) |
確認日 |
| Cuenote FC |
あり(ワンタイムパスワード) |
あり(管理画面) |
SPF・DKIMに標準対応、S/MIME |
2026年10月20日確認 |
| Cuenote SR-S |
記載なし |
あり(管理画面) |
SPF・DKIM・DMARCをフルサポート、S/MIME |
2026年10月20日確認 |
| 配配メール |
記載なし |
記載なし |
SPFの設定を案内、DKIM対応 |
2026年10月20日確認 |
| blastmail |
記載なし |
あり(Standardプラン以上) |
SPF、DKIM署名、BIMI |
2026年10月20日確認 |
| WEBCAS e-mail |
あり(スマホアプリのワンタイムパスワード) |
あり(ログイン) |
DKIM、S/MIME(オプション) |
2026年10月20日確認 |
| ベンチマークメール |
あり(メールの認証コード・全プラン) |
記載なし |
SPF・DKIM・DMARCに対応 |
2026年10月20日確認 |
| Mailchimp |
あり(SMSか認証アプリ) |
記載なし |
DKIMとDMARCの設定を案内 |
2026年10月20日確認 |
| SendGrid |
全員に必須 |
あり(IP Access Management) |
自動の設定でSPF・DKIM・DMARCのレコードを作り保守 |
2026年10月20日確認 |
| Amazon SES |
AWSのIAMで設定 |
IAMの条件(aws:SourceIp) |
DKIM、SPF(MAIL FROM)、DMARC、BIMIを案内 |
2026年10月20日確認 |
| Mailgun |
あり(2FA、SAML) |
記載なし |
DKIM・SPF、DMARC |
2026年10月20日確認 |
送信ドメイン認証は、SPF・DKIM・DMARCの仕組みで、自社のドメインを名乗る偽のメールを見分けやすくするものです。提供会社が対応していても、自社のDNSに正しいレコードが入っていなければ働きません。
委託先として、何を預けているか
どちらの形の製品でも、会社は次のものを提供会社に預けています。
| 預けるもの |
中身 |
漏れたときに起きること |
| 配信先のリスト |
メールアドレス、氏名、属性など |
顧客や会員への偽のメール |
| 本文と配信の記録 |
送った内容、開封やクリックの記録 |
誰が何に関心を持ったかが外に出る |
| 管理者のアカウント |
管理画面に入るIDと権限 |
自社の名前で勝手に配信される |
| 送るための鍵 |
APIキー、SMTPの認証情報 |
自社のドメインから迷惑メールが送られる |
個人情報の扱いを委託している場合、委託先で漏えいが起きると、委託元の会社にも個人情報保護委員会への報告の義務がかかることがあります。だれが、どの製品に、どの配信先のリストを預けているかを、平時に一覧にしておくことが、事故のときの最初の一歩を早くします。
今日からできること
- 使っているメール配信のサービスを一覧にします。 マーケティング部門のメールマガジン、システムの通知、人事の安否確認、委託先の制作会社が契約したものも含めます。請求書と、自社のドメインのSPFのレコードに書かれている送信元が手がかりになります。
- 預けている配信先のリストを確かめます。 製品ごとに、何件の、どんな項目を預けているか。使わなくなったリストや、退会した人のデータが残っていないかを見ます。
- 管理者の権限と入り口を絞ります。 管理画面のアカウントの一覧を出し、退職者や使っていない人を消します。2要素認証と接続元のIPの制限が使えるなら、有効にします。
- 提供会社のサポートの権限と、事故のときの連絡を確かめます。 サポートの担当者が自社の環境に入れる設定や手順があるか、事故のときにだれへ、いつまでに知らせるかを、契約書か提供会社への問い合わせで確かめます。
- 送信ドメイン認証を自社のDNSで確かめます。 SPF・DKIM・DMARCのレコードが、使っている製品に合わせて正しく入っているか。使わなくなった製品の送信元が、SPFに残っていないかも見ます。
2026年10月20日時点の内容です。