Microsoft 365 (M365)のバックアップ 製品は、データを守るために、メール やファイルを広く読み書きできる権限を持ちます。10月15日には、MSP(ITの運用 を請け負う事業者)向けの「ConnectWise Cloud Backup(旧SkyKick)」のアプリの認証情報 が悪用され、ConnectWiseは17日にサービスを止めました。M365の標準の機能と外部の製品の違いを整理し、12製品を保存先で3つに分けた地図と、選ぶときと入れた後に確かめることをまとめます。
この地図の決まりと見方
載せる製品と並べ方は、次の決まりで作りました。
確かめた日: 2026年10月18日。編集部がMicrosoft Learnと各社の公式のページ、ドキュメントを開いて確かめたことだけを載せています
並び: 保存先で3つに分け、その中はアルファベット順です。順位、優劣、おすすめを表すものではありません
記載なし: 確かめた公式のページに書かれていなかったという意味です。「できない」という意味ではありません
価格: 10月18日に公式のページで見た額です
対象: メール(Exchange Online)、OneDrive、SharePointは、12製品とも対象に挙げています。差が出るのはTeamsの範囲です
広告: 広告やアフィリエイトの契約はありません
情シスが扱うSaaS全体の地図は情シスのSaaSマップ 2026年秋 12分野67製品を図解で一覧に にまとめています。そちらのバックアップの欄はAvePointの1製品だけでした。この記事は、M365のバックアップの1分野を深く見ます。
Microsoft 365の標準の機能で、どこまで戻せるか
M365には、消したものを戻す標準の機能があります。ただし、戻せる期間と使い方に決まりがあります。
機能
対象
戻せる期間
注意
ごみ箱
SharePoint、OneDrive
消してから93日
93日をすぎると完全に消える
回復可能なアイテム
Exchange Online
既定14日、最大30日
予定表のアイテムは既定で120日
保持ポリシー、ホールド
Exchange、SharePoint、OneDrive、Teamsなど
決めた期間
写しを残す仕組み。ホールドは書き出し向けで、大量の復元向けではないとMicrosoftは説明
Microsoft 365 Backup(有料)
Exchange Online、OneDrive、SharePoint
3か月、6か月、1年、2年から選ぶ(既定1年)
保護するデータ1GBあたり月0.15ドル。Teamsは対象の一覧にない
回復可能なアイテムは、「削除済みアイテム」からも消したメールが入る、利用者に見えない場所です。保持ポリシーは、Microsoft Purviewで写しを決めた期間残す仕組みです。
MicrosoftはMicrosoft 365 BackupのFAQで、データ保護の責任についての考えを次のように答えています。
Has Microsoft's stance on shared responsibility of data protection changed?
No, we still have the same point of view, but are now offering more tools to help organizations achieve those goals and responsibilities.
出典: Microsoft Learn「Frequently asked questions about Microsoft 365 Backup」
データを守る責任を利用する会社と分け合う考えは変わらず、そのための道具を増やしたという答えです。
Microsoft 365 Backupの中身
Microsoft 365 Backupは、Microsoftの有料のバックアップです。外部のアプリは使わず、Microsoft 365管理センターで設定します。
設定: SharePoint管理者かグローバル管理者が行い、支払いにAzureのサブスクリプションが要ります
保存先: Microsoft 365のデータの境界の外に出ず、テナントのデータの所在地に従います
戻せる時点: OneDriveとSharePointは、直近2週間なら10分ごとの時点です
メール: 利用者と共有のメールボックスが対象で、会議室とグループのメールボックスは対象外です
地図 12製品を保存先で3つに分ける
バックアップをどこに置くかで、12製品を3つに分けました。
M365のバックアップ12製品を保存先で3つに分けた地図(2026年10月18日確認) 作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式のページ
1 Microsoft の中に取る
Microsoft 365 Backupが当たります。外部の製品にも、保存先にMicrosoft 365 Backup Storage(Microsoft 365 Backupと同じ保存の仕組み)を使う版があります。Microsoftは連携する製品に、Veeam、Rubrik、AvePoint、Cohesity、Commvault、Druvaを挙げています。
2 製品の会社のクラウドに取る(SaaS)
9製品があります。保存先はM365とは別の、製品の会社が用意するクラウドです。
日本の地域を選べると公式に書いているのは6製品です(下の表)。Acronisはデータセンターの一覧に日本(長野、神奈川)がありますが、M365のバックアップを置けるという記載は見つかりませんでした。Keepitの今の地域は、米国、カナダ、豪州、欧州の7か国です。
IIJシンプルバックアップサービスは、IIJが「Acronisのバックアップエンジンを使った」と案内しています。日本の会社のサービスでも、中身は海外の製品のことがあります。
3 自社で置く
Synology Active Backup for Microsoft 365は、SynologyのNASに入れる無償のアドオンで、ライセンスは要らないと案内しています。保存先はNASです。ただしヘルプには、認証に「Synology が台湾でホストする別のサーバーが必要」とあります。
Veeam Backup for Microsoft 365は、自社のサーバーに入れるソフトです。どちらも、保存先の守りとソフトの更新は自社の仕事になります。
12製品のTeamsの範囲・保存先・日本の地域・価格
差が出る項目を、公式のページのとおりに並べました。図と同じ内容です。
12製品のTeamsの範囲・保存先・日本の地域・価格(2026年10月18日確認) 作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式のページ
製品(会社)
分類
Teamsの範囲
保存先
日本の地域
価格
Microsoft 365 Backup(Microsoft)
1 Microsoftの中
対象の一覧にない
Microsoft 365の中
テナントの地域に従う
公開: 1GBあたり月0.15ドル
Acronis Backup for Microsoft 365(Acronis)
2 SaaS
チャネル、ファイル(1対1とグループのチャットは対象外)
Acronisのクラウド、Microsoft 365 Backup Storage
記載なし
公開: 日本の購入ページに年額
AvePoint Cloud Backup for Microsoft 365(AvePoint)
2 SaaS
チャネル、1対1とグループのチャット
AvePoint管理のクラウド、自社の保存先、Express版はBackup Storage
選べる(Japan West 大阪など)
公開: 1ユーザー月340円か640円(税抜)
Barracuda Cloud-to-Cloud Backup(Barracuda)
2 SaaS
チーム、チャネル、ファイル(投稿とチャットは一覧にない)
Barracuda管理のAzure
選べる(国として日本)
見積り
Commvault Cloud Backup & Recovery for Microsoft 365(Commvault)
2 SaaS
チャネルの投稿、チャット
Commvaultのクラウド(Azure)、Backup Storageを使う版
選べる(Japan West)
公開: 1ユーザー月1.70ドルから
ConnectWise Cloud Backup(ConnectWise、旧SkyKick)
2 SaaS
対象(細目は記載なし)
ConnectWiseのAzure、パートナーが選ぶAzure
選べる(日本を含む)
見積り
Druva for Microsoft 365(Druva)
2 SaaS
チャネル、チャット
Druvaのクラウド(AWS、Azure)、Express版はBackup Storage
記載なし
金額の記載なし
IIJシンプルバックアップサービス(IIJ)
2 SaaS
チーム、チャネル、ファイル、メッセージ
IIJのクラウドストレージ
選べる(東日本、西日本)
公開: 月額基本料24,150円、500GBまで(税抜)
Keepit(Keepit)
2 SaaS
チャネルの投稿、チャット(チャットは自社でアプリ登録)
Keepitのクラウド
一覧にない(7か国)
見積り
Veeam Data Cloud for Microsoft 365(Veeam)
2 SaaS
チャネルの投稿(チャットは対象外)
Veeamが運用するAzure、PremiumはBackup Storageも
選べる(Japan West)
公開: 1ユーザー月2.63〜7.00ドル
Synology Active Backup for Microsoft 365(Synology)
3 自社
チャネルの投稿(1対1チャットは対象外)
自社のSynology NAS
自社で決める
ライセンス不要(NASは別)
Veeam Backup for Microsoft 365(Veeam)
3 自社
チャネルの投稿(チャットは対象外)
自社で用意(オンプレ、S3、Azure Blobなど)
自社で決める
公開: 1ユーザー月1.80ドル
ドルは米ドルです。AvePointの340円は保持3年、640円は保持無期限のプランです。IIJは500GBを超えた分が1GBあたり月48円(税抜)です。Veeamの2製品は、年払いのときの1か月分の額です。
各製品の公式のページは「出典・参考」にまとめています。
ConnectWise Cloud Backupは10月17日から止まっている
10月15日に、このバックアップのアプリの認証情報を使った不正なサインインが各社のテナントで相次ぎました。経緯と確かめ方はConnectWiseのM365バックアップの認証情報が悪用 不正アクセス相次ぐ にまとめています。
ConnectWiseの告知の、日本時間10月18日2時の更新の内容は次のとおりです。
影響を受けたアプリの接続に使う証明書を、すべての利用者で無効にし、サービスを止めた
それまで共有していた認証情報は、もう使えない
保管済みのバックアップは暗号化され、隔離して残している。止まっている間は、取り出しも復元もできない
再開の時期は、調べが次の段階に進んだら知らせる
この製品を使っている会社では、止まっている間の新しいバックアップがありません。その間に消えたものは、標準のごみ箱や削除済みアイテムの期間のうちに戻す必要があります。
選ぶとき・入れた後に確かめる3点
標準の機能の範囲と、外部の製品で確かめる3点の図です。
標準の機能で戻せる範囲と、外部の製品で確かめる3点(権限・保存先・戻し方) 作成: 編集部 / もとの資料: 各社の公式のページ
1 アプリに渡す権限
外部の製品は、M365にアプリとしてつながります。つなぎ方は製品で分かれます。
つなぎ方
製品
製品の会社のアプリに同意する
Acronis、Barracuda、Druva、Keepit(Teamsのチャットだけは自社でアプリを登録)
会社のアプリと自社での登録を選べる
AvePoint、Commvault、Veeam Data Cloud
自社のテナントにアプリを作る
Synology(バックアップの設定ごとに自動で作る)、Veeam Backup for Microsoft 365
外部のアプリを使わない
Microsoft 365 Backup
ConnectWiseとIIJは、公開の資料でつなぎ方を確かめきれませんでした。ConnectWiseの告知は、各社のテナントで同じアプリケーションIDを探すよう案内していました。
求められる権限は強いものが多くあります。AvePoint、Keepit、Synology、Veeam Backup for Microsoft 365などの権限の一覧には、全メールボックスへのフルアクセス(Exchangeのfull_access_as_app)と、全サイトのフルコントロール(Sites.FullControl.All)が載っています。Druvaは、グループを守るにはAdvancedのアプリにディレクトリの書き込みの権限が要るとしています。この権限のないBasicのアプリでは、グループは守れません。
最初につなぐときは、多くの製品がグローバル管理者のサインインを求めます。Barracudaは、つないだ後は普通の管理者の役割に戻せると案内しています。Commvaultは、グローバル管理者は最初の設定だけに要り、その後のバックアップには要らないとしています。
製品の会社のアプリに同意する方式は、設定が少なく、アプリの鍵(シークレットや証明書)の管理を製品の会社に任せます。自社で登録する方式は、アプリと鍵がテナントごとに分かれますが、鍵の更新は自社の仕事です。どちらでも、製品の会社に鍵の守り方を聞いておきます。
2 保存先
保存先は、Microsoftの中、製品の会社のクラウド、自社の3つです。製品の会社のクラウドでは、地域を選べるかと、後から変えられるかを見ます。AvePointは、登録した後はデータセンターを変えられないとしています。Barracudaも、地域は最初に1回だけ選び、後から変えられないとしています。
製品の会社のサービスが止まると、その製品でのバックアップと復元も止まります。ConnectWiseの件がその例です。
3 戻し方
戻せる先は、元の場所、別のユーザー、別の場所が基本です。メールをPSTなどのファイルで取り出せる製品も多くあります。
Teamsは、製品で差が大きいところです。AcronisとVeeam Backup for Microsoft 365は、チャネルの投稿をTeamsに直接は戻せないと案内しています。Synologyは、別のテナントへの復元に対応していません。委託先が製品を持っている場合は、誰に頼めば、どのくらいの時間で戻るかを決めておきます。
MicrosoftはExchange OnlineのEWS(メールなどを読み書きする古い仕組み)を、2026年10月から順に止め、2027年4月に完全に止めると案内しています。BarracudaやSynologyは、Microsoft Graphへの切り替えのために、接続のやり直しや権限の追加を案内しています。製品の会社からの案内を見落としていないか確かめます。
うちの会社は関係あるか
見直しが要る: ConnectWise Cloud Backupを使っている会社と、委託先が入れている会社です。バックアップが止まっています
見直しが要る: 外部のバックアップ製品を入れている会社です。アプリの権限、保存先の地域、戻し方を確かめます
見直しが要る: 標準の機能だけで運用している会社です。ごみ箱の93日、削除済みアイテムの最大30日より前の時点には戻せません
急がなくてよい: 戻したい期間が標準の機能の範囲に収まり、そのことを社内で決めてある会社です
今日からできること
Microsoft Entra管理センターの「エンタープライズ アプリケーション」で、バックアップ製品のアプリを探し、付与された権限を書き出す(Microsoft Learnの手順 )
委託先に、使っている製品名(中身の製品も)、保存先の地域、戻し方、止まったときの連絡の方法を聞く
標準の機能の期間(ごみ箱93日、削除済みアイテム最大30日)と、自社が戻したい期間を並べ、足りない分を決める
メール1件とフォルダ1つを実際に戻し、かかった時間を記録する
使っていないバックアップ製品の接続は、無効にする(Microsoft Learnの手順 )
記録には、次の確認表がそのまま使えます。最後に戻せることを試した日を書く欄があります。
製品の対象や価格は変わることがあります。契約の前と更新のたびに、公式のページで確かめてください。