e-Tax(国税の電子申告・納税システム)で、79人分の贈与税申告書などが本人以外から見られる状態になっていました。国税庁が2026年10月2日に発表し、日経クロステック、税のしるべ、NHKなどが報じています。当サイトが10月6日に国税庁のホームページとe-Taxのお知らせを確かめた範囲では、この件の掲載は見つかりませんでした。
報道から分かること
税のしるべ(大蔵財務協会)と日経クロステックの報道をまとめます。
| 項目 |
報道の内容 |
| 発表した日 |
2026年10月2日(国税庁) |
| 起きた場所 |
e-Taxのマイページの「贈与税関係情報」 |
| 期間 |
9月24日8時30分から25日0時までと、25日4時から15時58分まで |
| 見られる状態だった申告書 |
79人分の贈与税申告書など |
| 閲覧された可能性がある個人情報 |
申告書に載る贈与者や関与税理士を含め、計203人分 |
| 他人の申告書を見た可能性がある人 |
19人 |
| 原因 |
9月24日に、贈与税関係情報の機能を充実させるシステム改修をした際に生じた不具合 |
| 閲覧した人への対応 |
閲覧した可能性がある19人に個別に連絡し、データの保存の有無を確かめ、保存していれば削除を頼んだ(すでに終了)(税のしるべ) |
日経クロステックによると、国税庁は別の件も公表しています。9月24日に稼働した国税総合管理システム(KSK2)で、納税証明書の作成・交付に時間がかかっている件です。今回の不具合とは関連がないとしています。
どんな不具合で他人の申告書が表示されたのかは、どの報道にも書かれていません。この記事でも推し量りません。
不具合が起きた「贈与税関係情報」とは
e-Taxのお知らせによると、贈与税関係情報は、マイページで提出した贈与税の申告情報などを見られる機能です。9月24日には、「更正・決定の通知情報」「相続時精算課税適用状況」「書面申告提出状況」の3つを足すと案内していました。
申告書などを見るときは、マイナンバーカードなどの電子証明書が要ります。e-Taxで納税者と委任関係を登録した税理士も、納税者の贈与税関係情報を見られます。
e-Taxのお知らせ。9月24日に贈与税関係情報へ3つの機能を足すと案内している出典: 国税庁 e-Tax「マイページの「贈与税関係情報」が更に便利になります。」(引用)
国税庁の対応(報道から)
- 9月25日15時58分に、e-Taxのマイページの機能の利用を止めた(日経クロステック)。その後システムを改修し、不具合は解消したとしている(税のしるべ・日経クロステック)
- 閲覧された可能性のある申告者・贈与者・税理士に、国税局や税務署の職員が個別に連絡した。経緯を説明し、謝罪している(日経クロステック・税のしるべ)
- 他人の申告書を見た可能性がある人に、データを保存していれば削除するよう頼んだ(日経クロステック)。税のしるべは、この確認はすでに終えたと報じている
申告した人・税理士が気をつけること
国税庁が案内していること
対象の人には、国税局か税務署の職員が個別に連絡していると報じられています。e-Taxのお知らせは、国税庁からの連絡を装った不審なメールにも注意を呼びかけています。
なお、e-Taxから送信するメールは、「『税務署からのお知らせ』メールが届いた方へ」のとおり定型の文面であり、原則としてメール本文内にURLを記載していません。
出典: 国税庁 e-Tax「e-Taxを装った不審なメール等にご注意ください」
一般的な注意
ここからは国税庁の案内ではなく、一般的な注意です。
- 税務署を名乗る電話で用件が分からないときは、いったん切り、自分で調べた税務署の番号にかけ直す
- e-Taxの中身を確かめるときは、メールのリンクではなく、ブックマークした公式サイトからログインする
影響する人・会社、しない人・会社
- 影響する: 贈与税の申告書が、9月24日から25日にかけて本人以外から見られる状態だった79人。報道では、国税局か税務署から個別に連絡があるとされています。
- 影響する: その申告書に名前などが載っている贈与者と関与税理士。79人と合わせて計203人分の個人情報が、閲覧された可能性があると報じられています。
- 影響する: 顧客の贈与税の申告をe-Taxで出している税理士事務所。報道では、関与税理士も個人情報を閲覧された可能性のある人に含まれています。
- 影響しない: 贈与税の申告をe-Taxで出していない人と会社。報道で見られる状態だったとされるのは、贈与税関係情報の申告書などです。
- 影響しない: 所得税や法人税の申告だけをe-Taxで出している会社。これらの申告書が見られる状態だったという報道は、確認できていません(10月6日時点)。
自社のシステムで「他人の情報が見える」を防ぐ
報道から言えること
- 不具合は、機能を足す改修をした日に起きた
- 見られる状態だったのは、24日の約15時間半と25日の約12時間の2回(当サイトの計算)。25日の分は、機能を止めた時刻で終わっている
- 国税庁は機能を止めるまでの閲覧の記録を確かめ、他人の申告書を見た可能性がある人を19人と特定した(日経クロステック)
一般的な備え
ここからは今回の原因と結びつけず、会社のWebサービスや社内システムの一般的な備えです。
- 改修のあとは、2人分以上の試験用アカウントで、他人のデータが見えないかを確かめる
- 誰がどのデータを見たかの記録(閲覧ログ)を残し、何日分残るかを決めておく。範囲を絞れれば、連絡する相手を決められる
- 他人の情報が見えると分かったときに、機能を止める人と判断の基準を前もって決める
会社で漏えいのおそれに気づいたときの報告と通知は、委託先で個人情報が漏えいしたら?報告3〜5日・30日と本人通知の流れで整理しています。
会社・情シスが今日やること
- 役員の贈与税の申告を頼んでいる顧問税理士がいれば、この件で国税局や税務署から連絡があったかを聞く
- 国税庁や税務署を名乗るメール・SMSのリンクは開かず、公式サイトから自分でログインして確かめるよう社員に伝える
- 自社のWebサービスや社内システムの改修の試験に、「別のアカウントで他人のデータが見えないか」の項目を足す
- 個人の情報を出す画面で、誰が何を見たかの記録が残っているか、何日分残るかを確かめる
- 他人の情報が見えると分かったときに、機能を止める人と、報告の順番を決めておく
事故が起きたときの記録には、次の報告書を使えます。