営業 部から「メール を送った直後に、送り先のほぼ全員が開封になった」「まだ誰も読んでいないのに、リンクが開かれている」と相談されることがあります。多くの場合、原因は不正なアクセスではありません。受け手の会社のメールの守りや、メールアプリの保護の機能が、人より先にリンクや画像を開いていることが理由です。Microsoft とApple の公式の説明をもとに、情シス が営業部に説明できることと、送る側の数え方を整理します。
営業部から届く相談の中身
配信のサービスが数える「開封」は、多くの場合、本文に入れた小さな画像が読み込まれたかどうかです。「クリック」は、送り先ごとに違うURLが開かれたかどうかで数えます。どちらも、人が読む前に開かれることがあります。
人より先にリンクや画像を開くもの
営業メールが送り先に届いてから人が読むまでに、リンクや画像を先に開くもの 作成: 編集部 / もとの資料: Microsoft Learn・Apple・MiraqLink
受け手の会社のメールの守り(Safe Links)
Microsoft Defender for Office 365には「安全なリンク(Safe Links)」という機能があります。Microsoftの説明では、受信したメールのURLを、メールの流れの中で調べて書き換え、社員が押したときにも確かめます。保護が有効なら、URLを書き換えるかどうかにかかわらず、届ける前にURLを調べます。
評判が定まっていないURLは、裏で実際に開いて確かめるとも書かれています。また、「URLを調べ終わるまで、メールを届けるのを待つ」設定があり、Microsoftはこれをオンにすることを勧めています。Defender for Office 365のライセンスが1つでもある組織では、既定の保護(Built-in protection)によって、受信者にSafe Linksの保護がかかります。
自社がDefender for Office 365を使っていれば、同じことが、ほかの会社から届く営業メールにも起きています。送り手の画面では、自社の社員が読む前に「開いた」と出ているかもしれません。
メールアプリの保護(Apple)
Appleの説明では、「"メール"でのアクティビティを保護」を使うと、メールを開いたときにリモートコンテンツをダウンロードするのではなく、操作にかかわらずバックグラウンドでダウンロードします。読み込みは異なる事業者が運用する2つの中継を通り、送り手は受け手のIPアドレスを使えません。送り手から見ると、本文の画像が読み込まれたことは分かっても、人が読んだかどうかは区別しにくくなります。
チャットのプレビューなど
メール以外でも、人でないアクセスは起きます。短縮URLのサービスMiraqLinkの説明では、LINE・Slack・Teamsなどに貼られたURLは、プレビューを作るために先に開かれることがあります。検索エンジンのボットや、ページがあるかだけを確かめるアクセスもあります。
自社のSafe Linksは、ほかの会社の計測にどう見えるか
受け手の会社のSafe Linksの設定と、送り手の配信の画面での見え方 作成: 編集部 / もとの資料: Microsoft Learn・MiraqLink
設定(Microsoftの説明)
自社での意味
送り手の画面での見え方
保護をオン
届ける前にURLを調べる
届いた直後に、リンクが開かれたように見えることがある
評判が定まらないURLは裏で開いて確かめる
危ないページかを実際に開いて確かめる
データセンターからのアクセスとして見える
調べ終わるまで届けるのを待つ(推奨)
確認が済むまで受信箱に入れない
届くのが少し遅れる
URLの書き換えと、押したときの確認
社員が押した時点でももう一度調べる
人が押したアクセスは、受け手のブラウザから少し遅れて届く
どれも、社員をフィッシングから守るための正しい動きです。送り手の計測の都合で設定を弱める理由にはなりません。
「計測がずれるので、うちのURLを書き換えの対象から外してほしい」と頼まれることがあります。Microsoftの説明では、「書き換えないURL」の一覧に入れたURLは、メールの流れの中で調べたり書き換えたりされません。守りが1つ減るので、計測のために足すのは避けます。
一方で、Safe Linksには「ユーザーのクリックを記録する」設定があります。社員が押したURLの記録が自社に残るので、フィッシングのメールを誰が押したかを調べるときに役立ちます。Microsoftはこの設定をオンにしておくことを勧めています。
送る側では、数え方を変える
自社の営業部が送る側のときは、計測の読み方を変えるよう伝えます。目安は次のとおりです。
測り方
分かること
ずれる理由
向く使い方
開封(画像の読み込み)
メールが表示されたとみられること
アプリの保護が先に読み込む。画像を表示しない設定もある
配信全体の傾向を大まかに見る
リンクのクリック
どの相手が案内のページを開いたか
届ける前のURLの確認やチャットのプレビューも数に入りうる
自動のアクセスを除いて、連絡する相手を選ぶ
返信・問い合わせ
はっきりした関心
ほとんどない。件数は少ない
最終的な成果として数える
追いかける相手を選ぶなら、送り先ごとのリンクのうち、人が開いたものを手がかりにします。自動のアクセスをどう除くかはサービスによって違うので、ヘルプや説明のページで確かめます。
例として、ミラクシード株式会社の短縮URLのサービス「MiraqLink」は、見分け方を公開しています(2026年10月23日時点)。次のどれかに当てはまるアクセスを、自動のアクセスとして数えません。
検索エンジンのボットなどと名乗るアクセス。チャットのプレビューも含む。
ページの中身を受け取らず、あるかどうかだけを確かめるアクセス。
ブラウザの表示の言語の設定がないアクセス。
Microsoft・Google・Amazonや、メールのセキュリティの事業者などのデータセンターの回線からのアクセス。
同じ回線とブラウザから、10分以内に同じリストの別の送り先のリンクも開いたアクセス。
APIで知らせた送信の時刻の、10秒前から60秒後までに開かれたアクセス。
同じページには、見分けられないことも書かれています。一覧にない回線から開くセキュリティの機能は、人として数えることがあります。会社のVPNやプロキシーがデータセンターを通っていると、人が開いたものを自動のアクセスとして数えることがあります。iCloudプライベートリレーを使う人のため、Cloudflareはデータセンターの一覧に入れていないとも説明しています。
送る側のくわしい考え方は、姉妹サイトの営業メールの「開いた」は本当か(サービス・システム大全) にまとめています。
営業メールの決まりも、あわせて伝える
計測の相談を受けたときは、送ってよい相手かもあわせて確かめておきます。特定電子メール法は、営利の団体などが広告や宣伝のために送るメールについて、次のように定めています。
項目
決まり
条文
送ってよい相手
あらかじめ同意した相手が原則
第3条第1項
同意がなくても送れる相手の例
取引関係にある相手、メールアドレスをインターネットで公表している団体など
第3条第1項
公表アドレスの例外
アドレスと一緒に「送らないで」と書かれていれば送れない
施行規則第3条
止めてほしいと言われたら
その意思に反して送ってはいけない
第3条第3項
表示すること
送り手の名前、受信拒否を受け付ける連絡先など
第4条
送り先ごとにリンクを変える計測は、この決まりを守って送るメールの中で使うものです。計測ができるからといって、同意のない相手に送ってよいことにはなりません。
計測のサービスを選ぶときに、情シスが見る点
営業部が短縮URLや配信のサービスを選ぶときは、情シスとして次の点を一緒に確かめます。
相手のどんな情報を取るか。IPアドレスをどう扱い、いつ消すか。
飛び先が危険なサイトでないかを確かめる仕組みがあるか。
リンクに期限があるか。アカウントを消したとき、作ったリンクがどうなるか。
開いた人に、転送の途中で広告のページを見せないか。
MiraqLinkの公式サイトでは、次のように説明しています(2026年10月23日時点)。
分かるのは、開かれた日時と回数、国・地域、参照元のページ、端末の種類。名前やメールアドレスは分からない。
IPアドレスは判定が済んだら、通常は1分以内に削除する。その後は、鍵を使ったハッシュの形だけを残す。
飛び先は、作るときと変えるときにGoogle Web Riskで確かめ、その後も定期的に確かめる。
リンクに有効期限はなく、転送の途中に広告のページを挟まない。無料プランがある。
アカウントを削除すると、印刷物に載せたものを含めて、すべての短縮URLが開けなくなる。
開いたらメールで知らせる、結果をCSVで書き出す、などの機能は有料プランで、申し込みの受け付けは準備中。
料金や無料プランの条件は、公式の料金のページで確かめてください。
今日からできること
Microsoft Defenderポータルで自社のSafe Linksの方針を開き、「調べ終わるまで届けるのを待つ」とクリックの記録の設定を確かめる。
「書き換えないURL」の一覧に、計測や配信の都合で足したURLがないか見直す。
営業部に、届いた直後の開封は人でないことが多いと伝え、人が開いたリンクと返信で相手を選ぶよう案内する。
営業部が使う配信や短縮URLのサービスが、自動のアクセスをどう扱うかをヘルプで確かめる。
営業メールの送り先が、同意・取引関係・公表アドレスのどれに当たるかを、リストの列で分けておくよう伝える。
この記事で例に挙げた「MiraqLink」の運営会社(ミラクシード株式会社)は、編集部と付き合いのある会社です。