DNSサーバーのソフトBIND 9の開発元ISCは、2026年10月21日(日本時間22日)、BIND 9の脆弱性3件を公表し、修正版の9.20.30を出しました。日本レジストリサービス(JPRS)も10月22日、3件それぞれに「緊急」の告知を出しています。1件は、GSS-TSIGを使う設定でリモートからコードを実行される恐れがあるもので、ほかの2件は、特定の設定でnamedが止まるものです。社内やデータセンターでBINDを動かしている会社は、版と設定を確かめてください。
3件の中身
JPRSの緊急の告知(CVE-2026-94300)。GSS-TSIGでメモリが壊れ、遠隔実行の恐れ出典: 日本レジストリサービス(JPRS)「(緊急)BIND 9.xの脆弱性(DNSサービスの停止・リモートコード実行)について(CVE-2026-94300)」(引用)
| CVE |
起きること |
当てはまる設定 |
深刻度(CVSS) |
対象の版 |
| CVE-2026-94300 |
メモリが壊れ、namedが止まる。リモートでのコード実行の恐れ |
GSS-TSIGを使う。攻撃者が、署名された過去のUDPのメッセージを手に入れ、鍵が有効な間に再送する |
High(8.1) |
9.11.0以降 |
| CVE-2026-97313 |
namedが止まる |
再帰の問い合わせを受け付け、RPZのゾーンを2つ以上設定し、そのうち1つが「recursive-only yes」(既定)、もう1つが「recursive-only no」 |
High(7.5) |
9.16.0以降 |
| CVE-2026-96888 |
namedが止まる |
redirectのゾーン(nxdomain-redirect)と「qname-minimization strict」を一緒に設定している |
High(7.5) |
9.16.0以降 |
GSS-TSIGは、Kerberosなどの認証の仕組みを使って、DNSの通信に署名する方法です。Windowsの端末やSamba・Active Directoryの環境で、BINDのゾーンを自動で更新させる構成で使われることがあります(当社の見立て)。RPZ(Response Policy Zones)は、DNSの名前解決を使って危ないサイトを止める仕組みで、フィルタリングに使われます。
ISCの告知(CVE-2026-94300・英語)。対象は9.11.0以降、修正版は9.20.30出典: ISC「CVE-2026-94300: Concurrent GSS-TSIG messages corrupt memory」(引用)
ISCは、3件とも一時的な回避策は無く、実際の悪用は把握していないとしています。
修正版と、9.18系の扱い
修正版は9.20.30です(開発版は9.21.27、ISCのサポートの契約者向けの版は9.20.30-S1)。3件とも9.18系も対象に入っていますが、ISCは9.18系の修正版を出していません。ISCは、サポート中の系列だけに修正を出すとしています。
ディストリビューションの対応は、10月22日朝の時点で次のとおりです(当社調べ)。
| ディストリ |
状況 |
| Debian 13(trixie) |
DSA-6576-1で修正(9.20.30-1~deb13u1) |
| Debian 12(bookworm) |
9.18系のまま「影響あり」 |
| Ubuntu・Red Hat |
各社のCVEのページに、まだ情報が無い |
9.18系を載せたディストリビューションを使っている場合は、その配布元が修正を入れるかを見張り、入らない場合は9.20系への移行を考えます。
DNSのソフトの修正は、同じ10月21日に、キャッシュDNSサーバーのPowerDNS Recursorでも出ています(PowerDNS Recursorに脆弱性7件 5.3.12と5.4.8へ更新を)。
影響する会社・しない会社
- 影響する: BIND 9を、社内のキャッシュDNSサーバーや、自社のドメインの権威DNSサーバーとして動かしている会社です。9.11.0以降(2件は9.16.0以降)が対象です。
- 影響する(とくに): GSS-TSIGを使ってゾーンを自動で更新させている会社です。CVE-2026-94300は、コードの実行の恐れがあります。
- 影響する: RPZを2つ以上使ってフィルタリングしている会社や、redirectのゾーンを使っている会社です。
- 影響しない: BINDを使っていない会社です。UnboundやPowerDNS、Windows ServerのDNSなど、別のDNSのソフトは今回の対象外です。ただし、レンタルサーバーやネットワークの機器の中でBINDが動いていることがあるため、提供元に確かめます。