生成AIも、SaaSも、毎月のように新しいものが出ます。比べて、試して、稟議を書いて、契約して、使う人のアカウントを管理する。その全部を、少ない人数でこなしている情シスは少なくありません。
この特集では、公開されている調査とブログから、その本音を整理しました。前半から中盤は、特定の製品に寄らない中立の話です。選ぶ時間そのものを減らす考え方を書きます。後半に、運営会社の自社サービスの紹介(PR)を1節だけ入れています。
公開されている記事と調査10件を読んで整理しました(編集部)。声も数字も、すべて元のページを出典に載せています。
選ぶ作業は、契約して終わりではない
SaaSの数は増える方向です。フリー株式会社が経営者と情報システム担当者1,019人に聞いた調査(2024年5月)では、2年前と比べてSaaSの利用が「増えている/現状維持」と答えた会社が8割を超えました。
同じ調査で、情報システム部門がいちばん時間を割いている業務は、ヘルプデスクが35%、SaaS関連業務が20%、社内IT機器のキッティングが19%でした。フリーは「SaaS管理のための業務が新たな負担となっている」と書いています。
選ぶ作業は、始まりにすぎません。契約したあとに、アカウントの発行、棚卸し、退職時の削除が、使っている間ずっと続きます。
現場の本音は、数年前から変わっていない
ソフトウェアエンジニアから情シスになった筆者が2021年に書いた note に、こんな一節があります。
SaaSが増えるごとに翌営業日、2営業日、3営業日以内の対応…みたいにズルズルと延びていきます。
出典: note「なぜ情シスがすべてのSaaSの管理をするとうまくいかないのか?」Tatsuya Nakano / howdy39
人を増やせば延びないが、対応できる人はSaaSの数に比例しては増えない、と続きます。5年前の文章ですが、いまの生成AIの申し込みにも、そのまま当てはまります。
もうひとつ、2025年12月のIT中小企業診断士のコラムです。
結果として「現状維持で何とか回してほしい」という無言の期待が、一人情シスに集中します。
出典: 村上知也「一人情シスは大変だよねえ 人手不足の中どうすべきなのか?」
選定の時間が足りないのは、担当者の段取りの問題だけではありません。判断と作業が、少数の人に集まる形になっていることが背景にあります。
数字で見る、増えたあとの管理
管理の側の数字を並べます。調査の主体も、対象も、時期も違うので、単純には比べられません。傾向を見る目安として読んでください。
| 項目 |
結果 |
調査(時期) |
| 使われていないアカウントがある |
78.0% |
マネーフォワードi・1,021人(2023年4月) |
| そのうち、月3万円以上のムダがある |
63.2% |
同上(該当者796人) |
| 未認可のサービス(シャドーIT)を「完全に検知できている」 |
15.3% |
同上 |
| 最も手間な作業は「退職時のアカウント削除」 |
5割以上 |
同上(該当者758人) |
| 部門が選んだSaaSのほうが全社利用より多い |
50.6% |
同上(事業部主体で選んでいる会社) |
| 情シスが把握しない部門独自のSaaSがある |
86.4% |
NTTデータビジネスブレインズ・情シス221人(2026年) |
| 退職者のアカウントが残っていた経験がある |
74.4% |
同上 |
| 勝手に導入されたツールの不具合対応を任された |
79.2% |
同上 |
NTTデータビジネスブレインズの調査では、事業部門と進めるときに最も壁やストレスを感じる要因として、「情シスに丸なげされること」が52.1%で最多でした。
これを読むと、時間を取られているのは「比べる」だけではないと分かります。部門が選んだものが、あとから情シスに回ってくる。その管理が見えにくい。ここに手間が重なっています。
退職時の削除は、手順を決めておくと軽くなります。進め方は退職者のアカウントはいつ消す?にまとめました。
選定そのものにも、時間がかかる
SaaSの選定を扱うある会社の解説は、候補を挙げてから決めるまでを2〜3か月と見ています。内訳は、市場調査と絞り込みに2週間、トライアル評価に2〜4週間、稟議と契約に2〜4週間です。1か月で決めると評価が足りず、半年以上かけると情報が古くなる、とも書いています。
IPAの調査にも、似た指摘があります。SaaSの利用者は「情報が多すぎること、情報収集・利用に工数がかけられないこと」を課題に挙げていて、公開情報から必要な項目を絞って比べることは容易ではない、と報告しています。
生成AIは、さらに動きが速い分野です。Business Insider Japan は、主要サービスの料金早見表を月ごとに出し直しています。2026年6月版の題は「価格据え置きのまま、主力モデルが軒並み世代交代を遂げる」でした。比べた表が、翌月には古くなります。
AIを全社に入れる担当者の側も、楽ではありません。TechTargetジャパンが紹介した Ragate の調査(2025年12月、AI推進を担当する情報システム部門・DX推進室の505人)では、最重要の課題として「情報漏えいなどのセキュリティリスク」が42.2%、「従業員のスキル不足」が24.9%、「費用対効果の算出の困難さ」が17.6%でした。選ぶ前に、守ることと説明することが山のようにあります。
選定の時間を減らす4つの考え方
ここからは、選ぶ時間そのものを減らす考え方です。どれも「完璧に選ぶ」ことをやめる方向の話です。
1. 決める基準を3〜5個に絞る
比較の軸を20個並べると、差がつかないところで時間を使います。会社として外せない条件だけを先に決めます。
| 種類 |
例 |
使い方 |
| 必須(満たさなければ候補から外す) |
入力した内容が学習に使われない設定がある。管理者が利用者を追加・削除できる |
公式の資料で確かめる。質問票は1回で済ませる |
| あれば加点 |
日本語のサポート、請求書払い、使用量の見える化 |
点数は3段階までにする |
| 見ない |
機能の数、話題性 |
使わない機能は点数に入れない |
必須は、法人で使う前提のものに絞ります。差が出るのは、たいてい「管理者が何をできるか」と「支払いの形」です。
2. 試す期間に期限を切る
トライアルは、終わりを決めないと延びます。先に期間と人数と課題を決めます。
- 期間: 2週間(長くても4週間)
- 人数: 3〜5人。情シスだけで試さず、実際に使う部署を1つ入れる
- 課題: 実際の業務から3つだけ。同じ課題を、候補すべてに同じ手順で試す
- 判定: 期間の最後に「続ける/外す」を決める会を30分だけ開く
「もう少し様子を見る」は、結論の先送りです。続ける理由が出なかったものは、外します。
3. やめる基準を、始める前に決める
導入するときは盛り上がりますが、やめるときの基準は誰も決めていません。そのため、使われないアカウントの請求が続きます。先に、やめる条件を書いておきます。
- 3か月続けて、月に1回も使っていない人が全体の半分を超えたら見直す
- 提供元の料金やプランが変わったら、その月のうちに続けるかを決める
- 同じ用途のものが2つ重なったら、1つに寄せる
棚卸しは、四半期に1回で足ります。カレンダーに入れて、決まった日に必ず行います。
4. まとめて契約する
契約先が増えるほど、稟議、請求、アカウント管理が増えます。「同じ用途のものは、会社として入口を1つにする」と決めるだけで、手間は減ります。
まとめ方には、いくつか種類があります。
| まとめ方 |
向いている会社 |
気をつける点 |
| すでに使っている基盤の中のAIに寄せる |
その基盤の管理画面で十分に済む会社 |
使えるモデルは、その基盤が用意したものに限られる |
| 1社と法人契約する |
使うAIを1つに決めて、全員に配りたい会社 |
他社のAIを使いたい人が出る。席数の変更の手間 |
| 複数のAIを1つの窓口で使える仕組みを選ぶ |
用途ごとに使い分けたい会社 |
管理者の権限、上限の設定、請求の形を確かめる |
どれが正解という話ではありません。会社の規模と、すでに使っているものによって変わります。確かめる点を、次のとおり並べます。
稟議に書く文面の例
選定を軽くするには、稟議も短くします。次の4行で足りる場合が多いです。
- 目的: 生成AIの契約窓口を会社として1つにまとめ、部署ごとの個別契約を減らす
- 比較した範囲: 必須条件(学習に使われない・管理者機能・請求書払い)を満たす候補のうち、2週間試した3つ
- 費用の上限: 月額の上限と、自動チャージの上限を管理者が設定する
- やめる条件: 3か月の利用状況を見て、使われていなければ契約を見直す
【PR】複数のAIを1つで使える YOBITSUGI AI(運営会社の自社サービス)
ここからは、情シスのミカタの運営会社、株式会社Gameの自社サービスの紹介です。前の節で挙げた「まとめて契約する」の選択肢の1つとして載せます。
YOBITSUGI AIは、国内の会社(株式会社Game)が運営する AI プラットフォームです。Claude、GPT、Gemini、Grok、DeepSeek などを、1つの画面で使えます。
特徴を、先ほどの確認点に合わせて並べます。
| 確認点 |
YOBITSUGI AI で書かれていること |
| 費用の形 |
月額は0円で、使った分だけ。提供元の定価に2%を足すだけで、1クレジットは税抜1円。登録するだけでは費用はかからない |
| 上限と管理 |
管理者が上限と自動チャージを設定できる。使用量を、人・モデル・日ごとに見られる |
| 支払い |
法人は請求書払いもできる |
| 使い方 |
日本語で頼むと、AIが実際に作って、ファイルで届ける(画像・動画・音楽・資料など) |
使った分だけの課金なので、「席数を先に決めて契約する」形とは違います。まず少人数で試して、使用量の画面を見ながら広げる、という進め方になります。2週間の試用に向いた形です。
向いているのは、用途に応じて複数のAIを使い分けたい会社や、部署ごとの契約をまとめたい会社です。逆に、すでに使っている基盤の中のAIで足りている会社は、そのままで問題ありません。
試すときは、前の節の確認点を、同じ手順で当ててください。他のサービスと並べて、基準に合うほうを選ぶのが筋です。
今日からできること
読んだ日にできることを、5つに絞りました。
- 契約と利用の一覧を作る: 生成AIとSaaSを、用途・契約者・費用・管理者の4列で一覧にします。部門が契約しているものも聞いて、入れます。
- 決める基準を、3〜5個に絞って書く: 必須の条件を、上司と先に合意しておきます。次の選定からは、この紙を使います。
- 試す期間を、カレンダーに入れる: 開始日と終了日と「続ける/外す」を決める30分を、先に予定に入れます。
- やめる条件を、1行だけ書く: 「3か月使われなければ見直す」でも十分です。契約の台帳に書き足します。
- 同じ用途で重なっているものを、1つ探す: 重なっていれば、片方を次の更新日で止める候補にします。
SaaS全体の候補は情シスのSaaSマップ 2026年秋、法人向けの生成AIは法人向け生成AIの地図 2026年秋で、名前と提供元を並べています。
選ぶ時間を減らす目的は、手を抜くことではありません。管理と、人に説明する時間を、残すためです。