「パソコンが重いです」。情シスに届く問い合わせの中でも、いちばん聞く一言かもしれません。ところが、この一言だけでは、何が重いのか分かりません。
公開されている声を10件読み、Microsoftの公式案内で確かめました。笑ってしまう場面と、1分で聞く質問、社員の方が自分で試せる手順をまとめます。他部署の方も、読み終わったころには「次の連絡で何を添えればいいか」が分かる内容にしています。
「重い」は症状の名前であって、原因ではない
「熱が出た」と言われても、風邪かどうかは分かりません。「重い」も同じです。クリックの反応が遅いのか、起動に時間がかかるのか、Excelだけ遅いのか。人によって指している状態が違います。
読んだ声には、共通した進め方がありました。まず、パソコンの中で何が忙しいのかを見る。そのための道具が、タスク マネージャーです。
itオッサンさん(note・2026年7月)は、見るのは次の3つの数字だけでよい、と説明しています。CPUが高い(80〜90%超)は何かのアプリが必死に計算している状態、メモリーが100%に近いのは作業机が書類で溢れている状態、ディスクが100%なのは読み書きが追いついていない状態です。
原因は6つの場所に分けられる
公開されている声とMicrosoftの案内を、原因のある場所で分けると、次の6つになります。
| 場所 |
よくある原因 |
声や公式にあった例 |
| メモリー |
アプリとタブの開きすぎ、メモリーが少ない |
Windows 11でメモリー8GBは厳しい、ブラウザ・Teams・Excel・OneDriveだけでほぼ満杯(itオッサン) |
| ディスクの空き |
Cドライブがいっぱい、同期やキャッシュの肥大 |
空きが20GBを切ったら要注意(itオッサン)。Microsoftもディスク領域の不足を挙げる |
| 起動時に動くアプリ |
常駐するクラウド同期、Web会議、チャットなど |
起動が遅いときは、まずスタートアップアプリを疑う(としぃ) |
| 更新・スキャン |
Windows Update、ウイルス対策のスキャンが裏で動く |
朝イチだけ遅いときは、更新かセキュリティソフトのフルスキャンの可能性が高い(セキュアサーキット) |
| ネットワーク |
VPN、Wi-Fi、通信待ち |
遅い=PCが悪いとは限らない(itオッサン) |
| 機械の古さ |
HDD、古い世代のCPU、メモリー不足 |
ハードウェアが古いPCは改善が小さいことがある(Microsoft) |
笑える場面と、その正体
何日も再起動していない
イナデジさん(note・2025年7月)は、重くなる原因の最初に再起動をあげています。
実は「再起動」していないだけで、PCの動作が重くなるケースがとても多いです。
出典: note「パソコンが急に重くなった時に試すべき!原因とスピード改善チェックポイント【初心者向け】」イナデジ
情シス側の声も同じ向きです。なるモの調査記事(2024年5月、情シス20名へのアンケートの回答)には、こんな一言がありました。
とにかく再起動してから問い合わせしてみてください。(40代男性/情シス歴4年目)
出典: なるモ「【情シスあるある8選】とりあえず再起動…共感必至の社内問い合わせ&お悩み一覧」
ただ、再起動してほしい気持ちの裏に、社員側の事情もあります。itオッサンさんの記事に、その本音が出てきます。
再起動すれば直るのは分かってる。
でも開いているファイルを全部閉じるのは面倒くさい。
出典: note「パソコンが重い!を3分で解決するタスクマネージャーの見方と対処法」itオッサン
開いている資料を保存して閉じるのは、たしかに手間です。再起動を頼むときは、「保存してから」の一言と、いつなら都合がよいかを添えると、気持ちよく動いてもらえます。
「シャットダウンしているのに」再起動になっていない
毎晩シャットダウンしているのに、重さが取れない。これには理由があるかもしれません。
Microsoftの案内(Windows 10向け)によると、高速スタートアップが有効だと、シャットダウンでも完全な終了ではなく、休止状態になります。この機能は、休止状態にできるパソコンでは、初期設定で有効です。一部の更新は完全に終了してからの起動でないと終わらないため、確実に更新を終えるには、電源メニューから「再起動」を選ぶ、とあります。
「毎日シャットダウンしているのに更新が終わらない」は、このためかもしれません。Windows 11での挙動は今回確認していないので、断定はしません。重いときは「シャットダウン」ではなく「再起動」、と覚えてもらうのが無難です。
ブラウザのタブが何十枚、デスクトップにファイルの山
itオッサンさん(2025年12月)は、重くなる現場あるあるに、会議と画面共有と動画、デスクトップにファイルが山積み、を並べています。タブについては、「Chromeでタブ20個」「Edgeで会議しながら画像検索」と、メモリーが苦しくなる例を書いています。
笑い事に見えて、Microsoftも同じことを書いています。
Microsoftの案内「解決策12」。アプリとタブを閉じ、再起動する出典: Microsoft サポート「Windows で PC のパフォーマンスを向上させるためのヒント」(引用)
タブは、閉じるだけで効く場合があります。再起動の前に、まず閉じてもらいましょう。
デスクトップのファイルが原因だった
同じ記事の失敗談が印象的です。タブも閉じた、Teamsも落とした、再起動もした、それでも軽くならない。原因は、ファイルでした。
“デスクトップに置いた動画ファイル(30GB)”。
出典: note「【急に重くなる理由】PCが“もっさり”動く時の原因と、情シスオッサンが現場で即やる解決策」itオッサン
デスクトップがOneDriveの配下になっていて、同期が止まらなかった、という話です。筆者はこの日から、重いときはOneDriveを疑う、が鉄則になったそうです。
更新やスキャンは、決まって忙しいときに動く
ナベキンファクトリーさん(2025年12月)は、重さの原因が「裏で動く設定」と「後から入れたアプリ」の取り合いにある、と説明しています。たとえばセキュリティソフトとWindows標準のセキュリティが同時にスキャンして、ディスクが100%に張り付く場合です。
itオッサンさんは、更新が裏で走るのは会議中や作業中に限って、と書いています。朝イチだけ遅いなら、更新かフルスキャンの可能性が高い、というセキュアサーキットの説明もあります。情シスの側で、更新の時間を夜間や昼休みにずらせるなら、問い合わせが減ります。
「もう買い替えてください」
としぃさん(2025年10月)は、現場のフィールドエンジニアの視点で、「もう買い替えかな」と思う前に、ちょっとした確認で改善できることが多い、と書いています。
買い替えが必要なことも、もちろんあります。Microsoftの案内は、ハードウェアが古いPCでは、手順を試しても大きな改善が見られないことがあり、その場合はデバイスのアップグレードが長期的に最善、としています。ただ、先に試す順番があります。それを守ると、買い替えの理由も説明しやすくなります。
情シスが最初に聞く3つの質問
現地へ行く前に、チャットか電話で次の3つを聞きます。
| 質問 |
聞く理由 |
| いつから重いですか。急にですか、少しずつですか |
急なら裏の更新やスキャン、少しずつなら容量やメモリーの積み重ねを疑う |
| いま何を開いていますか。タブは何枚くらいですか |
メモリーの不足か、特定のアプリの問題かを見る |
| 最後に再起動したのはいつですか |
数日以上なら、まず再起動で当たりがつく |
大事なのは、「何をしましたか」とは聞かないことです。責められているように感じられるためです。詳しい聞き方は、「何もしてないのに壊れた」の正体 情シスが見た三大犯人と1分チェックにまとめています。
切り分けの順番
聞き取りの後は、Microsoftの案内の順を参考に、軽いものから試します。
- 使っていないアプリとブラウザのタブを閉じる
- それでも重ければ、[スタート]>[電源]>[再起動]を選ぶ(Microsoftの解決策12)
- タスク マネージャー(Ctrl + Shift + Esc)で、CPU・メモリー・ディスクのどれが高いかを見る
- 更新プログラムを確認する。再起動が必要な更新が残っていないか見る
- ディスクの空きを確認する。ストレージ センサーで一時ファイルを消す
- スタートアップ アプリを見直す。タスク マネージャーの[スタートアップ アプリ]から、不要なものを無効にする
- 保存先(デスクトップなど)とクラウド同期を見る
- ここまでで直らなければ、古さを疑う(メモリーの増設、HDDからSSD、買い替え)
社員の方が自分で試せること
次のリストを、社内ポータルやチャットの固定メッセージに載せておくと、問い合わせの質が上がります。
情シスが先に手を打っておくこと
- 重くなった社員向けに、「まず閉じる、次に再起動、それでもだめならタスク マネージャーの画面を送る」の3行カードを作る
- 更新とスキャンの時間を、業務時間外にずらせるか確かめる
- メモリー、ディスクの空き、HDDかSSDかを台帳で見て、古い機械を先に把握しておく
- デスクトップやドキュメントのクラウド同期の対象に、大きなファイルが入っていないか確かめる
- 再起動のお願いには、「保存してから」と、都合のよい時間を一緒に書く
今日からできること
社員の方へ
情シスの方へ
「重い」と言われて困るのは、情シスも社員も同じです。順番を決めて、結果を添える習慣があれば、お互いに遠回りをしなくて済みます。
公開されている声10件(note 6件、企業・団体のサイト4件)を読んで整理しました(編集部)。