攻撃の手口を整理した世界共通の「辞書」である「MITRE ATT&CK」の最新版、v20が2026年10月13日に公開されました。注目は、AIを悪用したり、AIそのものを標的にしたりする攻撃の技術が、正式に加わった点です。AIが仕事に入り込むほど、攻撃にも使われ、狙われます。その手口が、防御側の共通の言葉として整理されました。
MITRE ATT&CKと、今回の追加
MITRE ATT&CKは、実際に観測された攻撃を、戦術(何を狙うか)と技術(どうやるか)に分けて並べた知識ベースです。防御側は、これを物差しにして、自社がどの手口に備えられているかを点検します。今回のv20では、企業向けで戦術15・技術227・サブ技術479になりました(前の版v19.2からの更新)。
MITREの公開情報によると、AIに関して加わった主な技術は次のとおりです。
- 直接プロンプトインジェクション(T1699): AIへの指示に、攻撃者が悪意のある命令を直接紛れ込ませる手口です。
- 間接プロンプトインジェクション(T1698): AIが読み込む外部のデータ(Webページ、文書、メールなど)に命令を仕込み、AIにそれを実行させる手口です。
- AIを使ったデータ持ち出し(T1700): AIの仕組みを使って、情報を外部へ持ち出す手口です。
- AI結果の汚染(T1608.007): 攻撃の準備として、AIの結果や参照するデータを汚し、誤った出力をさせる手口です。
あわせて、これらを見つけるための検知の考え方(AIを使ったデータ持ち出しの検知、AI結果の汚染の検知)や、AIを使った実際の攻撃活動の記録(メキシコ政府インフラへのAI支援型の侵害)も追加されました。
MITRE ATT&CK v20のリリースノート(2026年10月)出典: MITRE ATT&CK(引用)
影響を受けるのはどんな環境か
関係するのは、AIを業務に使っている組織や、セキュリティで脅威を整理する担当者です。自社でAIのアプリやアシスタントを動かしている場合はもちろん、取引先や使っているサービスがAIを組み込んでいる場合も、これらの手口は無縁ではありません。とくに、AIに外部のデータを読ませる使い方(文書の要約、Webの参照、メールの処理など)は、間接プロンプトインジェクションの入口になりえます。
情シスが今日やること
- 手口を共通の言葉で知る: v20で加わったAIの技術(プロンプトインジェクションなど)を、チームで共有します。攻撃の名前と中身を知ることが、対策を考える出発点になります。
- AIに読ませる入力を点検する: 社内でAIに外部のデータを読ませている使い方を洗い出し、信頼できない入力(外部のWebや文書)を、重要な操作の前にそのまま通していないかを確認します。
- 検知の観点を取り入れる: ATT&CKの検知の考え方を参考に、AIがからむ通信やデータ持ち出しの兆候を、ログで追えるようにしておきます。
- 自社の守りを棚卸しする: ATT&CKを物差しに、AIにかかわる手口のうち、どれに備えられていて、どれが手薄かを整理します。すべてに一度に対応する必要はなく、影響の大きいところから進めます。
AIの攻撃が、世界共通の「辞書」に正式に載ったことは、脅威が「特別な話」から「整理して備える対象」へ移ったことを意味します。まずは手口を知り、自社がどこまで備えられているかを共通の言葉で点検することが、情シスにできる現実的な一歩になります。