日立製作所など5社は2026年10月8日、電力と通信を効果的に連携させる「ワット・ビット連携」の実証に着手したと発表しました。横浜と北九州のAIデータセンターをつなぎ、電力の状況などに合わせてAIの処理場所や時間を変える仕組みを検証します。実証は2026年8月に始まっており、2027年2月1日まで実施する予定です。
日立製作所が発表に添えた画像出典: 日立製作所(PR TIMES)(報道用の素材)
電力の状況に合わせてAIの処理を配置
参加企業は日立製作所、Jパワー、シスコ、JR東日本、ビットメディアです。5社の提案は、総務省の令和8年度「ワット・ビット連携関連実証」に採択されました。
実証では、複数の電力供給エリアに分散したAIデータセンターを連携させます。中心となるのは、AIの学習や推論の処理を、場所と時間に応じて動的に配置するWLSシステムです。推論とは、学習したAIを使って結果を出す処理です。
配置の判断には、再生可能エネルギーの発電量予測、電力取引価格と需給、計算資源の利用状況、災害情報を使います。オール光ネットワーク(APN)などを利用し、電力・通信・計算資源をまとめて制御する構成です。
横浜と北九州の拠点間は、クラウド型のネットワークサービスであるNaaSで接続します。接続した拠点の状況に応じて計算処理の配置を変え、再エネの有効活用や、発電を抑える出力抑制の低減につながるかを評価します。電力需給を安定させる効果も評価対象です。
コストだけでなく処理時間と通信品質も検証
情シスが注目したいのは、電力コストを抑える効果だけを調べる実証ではない点です。WLSに伴うAI処理時間の増加などの負担も検証し、サービス品質を維持しながら運用できる方法を確かめます。災害などへの対応力を意味するレジリエンスが、AIデータセンターで向上するかも評価します。
通信面では、新幹線沿線の既設光ファイバーを使い、鉄道沿線APNの通信性能と伝送品質を検証します。沿線の振動や気象の影響下で、伝送損失、エラー、通信の遅延やその変動を調べる計画です。
ただし、今回は分散型AIデータセンターの運用モデルを確立するための、初期段階の技術実証です。電力コストの削減や処理品質の維持が達成されたという発表ではありません。実証後も実環境で段階的に検証し、システムとネットワークの構成を検討する方針です。
影響する会社・しない会社
- 影響する: 横浜・北九州の実証拠点や、今回の電力・通信・計算資源の連携に関わる会社です。処理の配置変更とサービス品質を両立する運用が検証対象になります。
- 影響する: 分散型AIデータセンターの運用を検討する会社には、判断材料となる実証です。ただし、利用企業の規模や参加条件、商用サービスの提供条件は発表には書かれていません。
- 影響しない: 今回の実証に関わらない会社について、既存サービスの変更や設定変更の義務は発表には書かれていません。日立製作所の製品を使っているだけで対応が必要になるとは読み取れません。
情シスが今日やること
発表に利用企業向けの対応期限はありません。以下は、分散型AI基盤の検討に備えるための確認手順です。
- 自社が実証に関わるかを確認する。 今日の確認では、AI基盤の契約台帳や構成資料を開き、利用拠点と運用委託先を見ます。横浜・北九州という所在地だけで対象と決めず、実証への関与が不明なら基盤担当者や契約窓口に確認します。
- AI処理の期限を整理する。 AIの業務担当者に、学習・推論の各処理について、完了が必要な時点と許容できる待ち時間を確認します。次の基盤検討までに一覧にし、処理場所や時間を変えてよい業務を検討する材料にします。
- 電力コストと運用負担を分けて評価する。 基盤担当者と調達担当者に、今回の実証は処理時間の増加も評価することを共有します。次回の提案評価では、電力コストだけでなく、処理時間とサービス品質を確認項目に入れることを検討します。
- 導入判断に足りない情報を記録する。 利用企業向け管理画面の操作場所や商用提供条件は、発表には書かれていません。現時点で設定を変えるのではなく、実証結果、利用条件、運用方法を今後確認する項目として残します。