AWSは2026年10月1日、クラウド環境の改善案を示す「AWS Well-Architected Agent」のパブリックプレビューを発表しました。AWS環境を分析し、事業への影響と改善に必要な労力を踏まえて、取り組む順番を提案するAIサービスです。一般提供ではなく試験提供で、AWSサポートプランを持つ顧客が利用対象です。
改善案をリソースからシステム構造まで提示
最適化の対象は、コスト、セキュリティ、パフォーマンス、レジリエンスです。レジリエンスは、障害に耐え、復旧する力を指します。AWSによると、65以上のAWSのサービスを、推奨される設計・運用方法と照合して分析します。
評価では、使用率だけでなく、リソースの構成とアプリケーションの構造を関連付けます。改善案は、個別リソース、複数リソース、システム全体の構造という3段階で提示します。単体の設定を見直す案と、構成そのものを変える案を分けて検討できます。
推奨事項には、期待される影響と、改善に伴って別の面で不利になる点も示します。該当する場合は費用への影響も含みます。情シスにとっての確認点は、単に「改善できるか」ではなく、事業上の効果に見合う作業量かどうかです。
ただし、AWSは生成AIの推奨事項に誤りや情報不足が含まれる可能性を明記しています。提案の評価と、適切な監督・保護措置は利用者の責任です。優先順位が高い提案でも、そのまま本番環境に適用する判断とは分ける必要があります。
分析範囲の設定が必要、設計段階の確認にも対応
利用開始には、分析範囲を定める「エージェントプロファイル」と、アクセス権限を定めるIAMロールの設定が必要です。分析対象のAWSアカウント、リージョンという地域単位、最適化目標を指定できます。AWSによると、プロファイル作成後24時間以内に、リソースとアプリケーションの推奨事項を生成し、その後も定期的に更新します。
稼働中の環境だけでなく、IaCプロジェクトをアップロードして、導入前の設計をレビューできます。IaCは、クラウドの構成をコードで定義する方法です。Terraform、AWS CloudFormation、AWS Cloud Development Kit(CDK)が分析対象です。
修正手段として、コンソールでの操作手順、IaCの変更、コマンドで操作するAWS CLIを選べます。また、システム同士をつなぐAPIを通じて、推奨事項を既存の開発・運用手順に組み込めます。提案を見る担当者だけでなく、変更を実施する担当者との役割分担が検討点になります。
影響する会社・しない会社
- 影響する: AWSサポートプランを持ち、AWS環境のコストやセキュリティなどを見直したい会社です。利用条件として、サポートプランの保有が示されています。
- 影響する: Terraform、AWS CloudFormation、CDKで構成を管理する会社です。稼働後の分析に加え、導入前の設計レビューも検討対象になります。
- 影響しない: AWSを利用していない会社や、AWSサポートプランを持たない顧客は、今回示された利用対象には入りません。
サービスの提供地域は、米国東部(バージニア北部)、米国東部(オハイオ)、米国西部(オレゴン)です。一方、分析に登録できるワークロード、つまり稼働するシステムや処理は、どのAWS商用リージョンのものでも対象です。サービスの提供地域と分析対象の所在地は分けて確認してください。日本語対応、日本向けの価格、必要なサポートプランの種類は、発表には書かれていません。
情シスが今日やること
- 試用を始める前に、AWS契約を管理する担当者へ、サポートプランの有無を確認してください。必要なプランの種類や利用費用が不明な場合は、AWSへの確認事項として残します。
- エージェントプロファイルを作る前に、分析対象のアカウント、リージョン、最適化目標を運用担当者と決めます。設定時はプロファイルの対象範囲とIAMロールの権限を確認してください。
- プロファイル作成後24時間以内の生成を目安に、推奨事項を確認する担当者を決めます。各提案の影響、必要な労力、費用への影響を確認し、採用候補をシステム責任者に共有します。
- 本番変更の前に、提案の根拠と不利益になり得る点を評価します。コンソール手順、IaC変更、AWS CLIのどれで実施するかを決め、変更担当者と承認者を明確にしてください。生成AIの出力は、社内の変更承認を省く理由にはしない運用を検討します。