Google Cloudは2026年10月7日、金融取引所や市場参加者の高頻度取引向けに、ULL Solutionと新マシンファミリーU4の一般提供を発表しました。取引の通信遅延を抑えるための構成ですが、提供先は一部のプライベートGoogle Cloudリージョンに限られ、利用には担当チームへのアクセス申請が必要です。
U4は取引所向けと市場参加者向けで構成が異なる
ULL Solutionは、非常に短い通信遅延を目指す金融取引向けのソリューションです。U4には、用途に応じた3種類があります。
U4Pは取引所運営者向け、U4Cは市場参加者向けです。どちらも物理サーバーを使うベアメタルで、第5世代Intel Xeonを搭載します。120物理コアを備え、メモリは512 GBまたは768 GBです。
両構成は、ネットワーク接続を担う物理NICを3基搭載します。そのうち2基はULL専用です。Googleは、仮想化に伴う余分な処理がなく、物理コロケーションと同等の遅延を実現すると説明しています。コロケーションは、取引所などの設備にサーバーを設置する運用形態です。
一方、U4Sは取引所運営者、市場参加者、サービス提供者向けの高性能な仮想マシンです。第6世代Intel Xeonを搭載し、仮想CPUは2〜288 vCPU、メモリは最大2,232 GBです。ベアメタルと仮想マシンを、利用者の役割や処理に合わせて選ぶ構成になっています。
通信の計測と本番・試験環境の分離にも対応
Googleによると、ハードウェアによるマルチキャストで市場データを取り込めます。マルチキャストは、同じデータを複数の宛先に送る仕組みです。通信データの処理向けに、OpenOnloadとDPDKもサポートします。
ネットワークの時刻記録であるタイムスタンプの精度は、Googleの説明では10ナノ秒未満です。これは時刻を記録する精度であり、通信遅延そのものを示す数字ではありません。また、主通信に影響せず、24時間365日のパケット取得が可能としています。
本番取引用の専用ゾーンと、保守・試験用のセカンダリゾーンは分離されています。標準APIで専用ハードウェアを割り当てられ、独立した通信経路でBigQueryなどへデータを送れるとしています。
Google CloudはCME Groupと、上場デリバティブ市場のクラウド移行を進めています。ただし、この取り組みと、自社がU4を利用できる条件は分けて確認する必要があります。
日本での提供は発表には書かれていません。日本向けの提供時期、日本語対応、価格、利用可能なリージョン名も、今回の資料には記載がありません。一般提供という発表だけで、日本の既存環境から利用できると判断しないことが重要です。
影響する会社・しない会社
- 影響する: 高頻度取引を行う金融取引所や市場参加者です。U4PとU4Cでは対象者が異なるため、自社の役割に合う構成とアクセス条件の確認が必要です。
- 影響する: 取引所運営者や市場参加者にサービスを提供し、U4Sの導入を検討する会社です。利用可能なプライベートリージョンが判断材料になります。
- 影響しない: 高頻度取引向けの基盤を使わず、ULL SolutionやU4の導入も検討していない会社です。今回の発表には、既存環境の変更や移行を求める記載はありません。
- 影響しない: 既存のGoogle Cloud利用者すべてに、一律の対応が必要になる発表ではありません。既存契約や他のマシンファミリーへの影響は、発表には書かれていません。
情シスが今日やること
- 自社の構成資料と運用台帳で、高頻度取引に使う基盤があるかを確認します。取引所運営者、市場参加者、サービス提供者のどの立場に当たるかを、取引システムの責任者と整理してください。
- 導入候補なら、Google Cloudの担当チームにアクセスを申請します。あわせて、日本からの利用可否、対象リージョン、提供時期、価格を問い合わせます。申請用の管理画面の場所や申請期限は、発表には書かれていません。
- 技術評価の前に、開発・ネットワーク担当へU4P、U4C、U4Sの違いを共有します。現在のCPU、メモリ、通信処理方式と照合し、OpenOnloadやDPDKの利用状況も確認します。
- 導入判断の前に、取引システムの責任者と、本番・保守・試験の分離、通信記録の取得、BigQueryなどへのデータ送信要件を整理します。担当チームからの回答と合わせ、必要な構成と費用を確認してから判断してください。