クラウドのファイル共有サービス「Azure Files」。災害対策(DR)やリージョン移行のために、別のリージョンへデータの副本を持ちたい場面は多くあります。ところが、速度重視のプレミアム(SSD)共有は、地理冗長ストレージ(GRS)が使えず、リージョン障害に備えた副本を持ちにくい、という悩みがありました。Microsoftは、この穴を埋めうる機能として、Azure Filesを別のAzure Filesへコピー・定期同期する仕組みを、Azure Storage Moverのパブリックプレビューとして提供しました。
何ができるのか
今回の機能は、移行用のマネージドサービス「Azure Storage Mover」に追加されたものです。
Azure Filesのリージョン間コピー・同期の要点と注意(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: Azure公式の更新告知(ID 576542)とMicrosoft Learnを編集部が整理
同一のMicrosoft Entraテナント内であれば、別のストレージアカウント・リージョン・サブスクリプションにあるAzure Filesへ、データをコピーし、定期的に同期できます。スケジュールは1時間ごとから月ごとまで設定でき、増分で転送されます。コピーは、コピー元のスナップショットから行われ、ACL(アクセス権)やタイムスタンプなどのメタデータも保持されます。用途として、事業継続(DR)、リージョン移行、複数の共有の統合、データをアプリや分析の近くへ配置すること、などが挙げられています。
とくに注目したいのが、地理冗長(GRS)が使えないプレミアム(SSD)共有でも、任意のリージョンへ定期的に副本を持てる点です。これまで手動のコピー(AzCopyなど)で対応していた部分を、集中的なスケジュール・監視・ログ付きのマネージドな仕組みで行えます。
影響する会社・しない会社
関係する: Azureでファイル共有(Azure Files)を運用していて、別リージョンへの副本(DR)や、リージョン移行、共有の統合を考えている会社。とくに、GRSが使えないプレミアム(SSD)共有を使っている場合は、これまでの悩みを埋める選択肢になりえます。
関係しない・小さい: Azure Filesを使っていない環境。また、NFSの共有や、標準(HDD)共有だけを使っている環境は、今回のプレビューの対象ではありません。
使う前の注意
便利な一方で、プレビュー段階ゆえの制約があります。本番採用の前に、次の点を押さえておきましょう。
- プレビュー段階: GAの時期やSLAは未定で、プレビュー規約が適用されます。利用にはサブスクリプション単位での事前の申し込み・承認が必要です。
- 対象が限定: SMBのAzure Files(SSD)共有のみで、NFSは非対応です。設定はポータルからのみ行えます(CLI/PowerShell非対応)。
- RPOの保証はない: 復旧ポイントは「最後に成功したジョブの完了時点」で、スケジュールの頻度がそのままRPO(目標復旧時点)になるわけではありません。同期中のコピー先は読み取り専用として扱われます。
情シスが今日やること
- 自社のAzure Filesを棚卸しする: プレミアム(SSD)のSMB共有で、別リージョンへの副本を持てていないものがないかを確認します。
- DRの要件を確認する: その共有に、どれくらいの復旧目標(RPO/RTO)が必要かを整理します。今回の機能はRPOを保証しないため、要件と照らして妥当かを見ます。
- 検証として試す: 本番に入れる前に、検証用のサブスクリプションでプレビューに申し込み、挙動(同期の頻度、メタデータの保持、コピー先の扱い)を確かめます。
- GAを待つ判断をする: 本番のDR設計に組み込むのは、GAやSLAの提供、CLI対応、NFS対応などの状況を見てから判断します。
リージョン障害への備えは、ファイル共有の運用で見落とされがちな点です。こうした新しい選択肢を、要件とプレビューの制約を踏まえて、落ち着いて見極めていきましょう。