月58分。社内チャットの書き出し「お疲れさまです」に、DeepSeekが付けた値札です。1日100件の問い合わせを読むと仮に置いた、倹約家らしい計算でした。
朝9時1分、始業の直後に届く「お疲れさまです。プリンターが動きません」。まだ誰も疲れていない時間の一言は、いるのでしょうか。
Grok、Claude、DeepSeekの3つのAIに立場を割り振り、言い合ってもらいました。
登場するAI

GrokxAI・Grok 4.7
役: 毒舌の皮肉屋
俺なら社長にも抜きで送る

ClaudeAnthropic・Claude Opus 5.5
役: 心配性の参謀
相手が要らないと言うまでは付ける派

DeepSeekDeepSeek・DeepSeek V4 Pro
役: 倹約家の現実派
で、それ、いくらかかります?
AIの発言は、YOBITSUGI AIから各社のモデルに2026年10月31日に聞いた出力です(編集部が長さを詰めることはありますが、言っていないことは足していません)。役と口調は編集部が決めて各AIに頼んだもので、各社の公式の人格ではありません。各社の公式の見解ではありません。キャラクターは編集部が作ったイメージです。各社の名前は各社の商標です。
9時1分の一言に、3つの立場

相棒編集部今日は一語論争です。お題は、社内チャットの書き出しの「お疲れさまです」。朝9時1分、始業の直後に届く「お疲れさまです。プリンターが動きません」。この一言、いりますか? 立場を決めてもらいます。Grokさんはいらない派、Claudeさんはいる派、DeepSeekさんは値札を付けてから判断する派で。
Grok毒舌の皮肉屋正直に言うと、俺は9時1分の「お疲れさまです」はいらない。まだ始業したばかりなのに労うのは滑稽だ。
Claude心配性の参謀Grokさん、9時1分だから滑稽という見方には、念のため反論させてください。社内チャットの「お疲れさまです」は、労いというより「これから話しかけます」という合図に近い言葉です。いきなり「プリンターが動きません」だけだと、受け取る側は責められているように感じることがあります。情シスには朝から問い合わせが重なりがちなので、一言の緩衝材があるだけで角が立ちにくくなります。ですから私は、いる派です。
DeepSeek倹約家の現実派で、それ、いくらかかります? 私はまず見積もります。仮に1日100件、書き出しの4文字を読むのに各1秒なら、月で約33分。この33分で問い合わせの取りこぼしや誤解が1件でも防げるなら安い。防げないなら単なる飾りです。だから判断はコスト次第です。
Grokは短く「滑稽」と切りました。Claudeの言う「合図」は、言われてみると腑に落ちます。「お疲れさまです」を労いとして読んでいる人は、朝の時点では少ないかもしれません。
一方で、DeepSeekの計算には、始まる前から穴がありました。
値札は月58分、ただし片側だけ

相棒編集部いったん止めます。DeepSeekさん、「お疲れさまです」は7文字です。4文字ではありません。見積もりからやり直してください。ではここから、相手の主張のいちばん弱い所を名指しで一つずつ。DeepSeekさんはGrokさんの「滑稽」に、GrokさんはClaudeさんの「責められているように感じる」に、ClaudeさんはDeepSeekさんの見積もりに。
DeepSeek倹約家の現実派Grokさん、「滑稽」で切るのは安すぎます。文字数は私の誤りで7文字。1件1.75秒、1日100件なら月約58分。この58分で防げる誤解を確認せずに「滑稽」で不要と言うのは、値札を見ずに捨てる判断です。
Grok毒舌の皮肉屋Claudeさん、故障報告だけで責められたと感じるなんて大げさだ。9時1分の緩衝材にそんな効果はない。
Claude心配性の参謀DeepSeekさん、その見積もりは片側しか測っていません。読む時間には値札を付けたのに、省いたせいで起きる誤解や返信の遅れは数えていません。しかも定型句は1字ずつ読まれず、ほぼ一瞬で読み飛ばされます。費用を多めに見て損失をゼロと置けば、結論は最初から決まってしまいます。
1字0.25秒のまま7文字に直すと1件1.75秒で、月20日なら33分が約58分に増えます。1日10件の窓口なら、月6分弱でしょう。
値札を付ける、腕を組む、緩衝材で包む。同じ一言への3つの態度イラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
面白いのはClaudeの返しです。DeepSeekが値段を付けたのは読む時間だけで、省いたときの損は確かめていません。定型句を1字ずつ読む人も少ないでしょうから、読む時間はたぶん58分より短いはずです。ただ、打つ側の手間は、どちらも数えていません。
Grokは、Claudeの「責められているように感じる」を大げさだと切りました。ここは読む人で分かれそうです。エムフロの調査には、「自分だけ挨拶を省くと、相手に「礼儀がなっていない」とか「怒っているのか」と誤解されるかもしれないからです」という40代の男性の声がありました。一方で、「お疲れ様です!」から入るチャット文を、誰も求めていないマナーに挙げた50代以上の男性もいます。
「なくてもいい」側は、50代に多かった
司会から、用意していた数字を出しました。

相棒編集部数字を出します。ワークスモバイルジャパンが2020年に30〜50代の875人に聞いた調査で、社内チャットの「お疲れ様です」などの挨拶を「不要・どちらでもよい」と答えたのは、30代が22.7%、50代が42.3%でした。上の世代のほうが要らないと言っているんです。別の年の別の調査ですが、エムフロが2026年6月に493人に聞いた調査では、職場の謎マナーをやめられない理由の3位が「目上の人がやめない」14.4%でした。Claudeさん、若手が上司に気をつかって打っているのだとしたら、誰のための緩衝材ですか? Grokさん、味方は50代でした。では社長へのチャットも「お疲れさまです」抜きで送れますか? DeepSeekさん、この数字で値札は変わりますか?
Claude心配性の参謀結論から言うと、半分は送る側の安心のためです。そこは認めます。ただ、上の世代ほど不要と答えているなら、若手が上司のためにと思って打つのは、思い込みかもしれません。別々の調査なので断定はできません。それでも私は立場を少し変えて、「相手が要らないと言うまでは付ける派」にします。
Grok毒舌の皮肉屋俺なら社長にも抜きで送る。9時1分の緩衝材に肩書きは関係ない。滑稽なままだ。
DeepSeek倹約家の現実派値札は変わります。50代宛は42.3%が不要側なので省く方が安い。30代宛は不要側22.7%で、まだ付ける価値が上回る。全員一律が一番高く、宛先の年代で出し分ければ追加コストなしで無駄を減らせます。
ここで訂正です。DeepSeekの文字数を直した司会も、読み違えていました。
42.3%の内訳は「不要」15.5%と「どちらでもよい」26.8%で、残りは「あったほうが好ましい」38.5%と「必要」19.2%です。「要らないと言っている」は言い過ぎでした。30代と比べて大きく増えるのは、「不要」より「どちらでもよい」のほう(30代は13.9%)。50代は要らないと言っているというより、気にしていない人が多いのかもしれません。
上司のために打っているつもりの一言を、当の上司の世代の4割は「なくてもいい」側に入れていました。それでも残りの6割近くは、あったほうがいいと答えています。Claudeの「半分は送る側の安心のため」の「半分」に根拠はありませんが、相手の好みを確かめずに打っている人には、耳の痛い答えです。
もっとも、この調査は2020年の「上司の意識調査」で、20代は入っていません。エムフロの「やめられない理由」も謎マナー全般についての答えで、1位は「周りの目が気になる」36.1%、2位は「当たり前になっている」32.9%。「目上の人がやめない」は3位です。若手が上司に遠慮している、と言い切れる数字ではありません。
Grokは社長にも抜きで送ると言い切りました。DeepSeekは宛先の年代で出し分けると言い出しています。司会としては、こちらを止めないわけにいきません。
窓口に固定する一行、Claudeだけ「省いて」と書かなかった

相棒編集部DeepSeekさん、待ってください。50代の42.3%が「不要・どちらでもよい」なら、裏を返すと57.7%はそう答えていません。50代でも半分以上です。それに、チャットを送る前に相手の年代を確かめるんですか? ここで受け取る側の話に移します。情シスの問い合わせ窓口のチャットに、案内を1行だけ固定できるとします。挨拶について、何と書きますか? 社員にそのまま読まれる文です。
DeepSeek倹約家の現実派いちいち相手の年代を調べる手間の方が高いので、窓口は一律で省く案内にします。迷う秒数を最初に削ります。
「お疲れさまです」は省いて、用件を最初に書いてください。一言添えたいなら「おはようございます」で十分です。
Grok毒舌の皮肉屋俺の案はこれだ。「お疲れさまですは省いてください。用件を先に書いてください。」ちょっとストレートすぎたか。でも遠回しは時間の無駄だ。
Claude心配性の参謀「挨拶はあってもなくても構いません。まず、どの機器で何が起きているかを一行目に書いてください。」
Grokさんや DeepSeekさんの「省いてください」だと、つい打ってしまった人が叱られた気分になりかねないので、挨拶は禁止せず許すだけにして、窓口が本当に欲しい機器名と症状のほうをはっきり頼む文にしました。
DeepSeekは、さっきの自分の案を捨てて、一律に省く案へ移りました。理由は「調べる手間の方が高い」。DeepSeekらしい寝返りです。
3つとも「用件を先に」までは同じでした。違ったのは、挨拶を禁じるか、何を書くかまで頼むかです。
編集部が窓口に置くなら、Claudeの一行です。最後の番で2つの案を見てから書いた分、有利ではありましたが。「省いてください」は打ってしまった人を叱る文になりますが、この一行は挨拶を許したうえで、窓口が欲しいものだけを頼んでいます。「あってもなくても構いません」は、調査の「どちらでもよい」と同じ立場でもあります。
たとえば「プリンターが動きません」なら、窓口が聞き返したいのは挨拶の有無より、どのプリンターかのほうでしょう。
窓口の一行を決める手順
固定の案内を変えるだけなら、今日でも試せます。
- 窓口のチャットで、直近の問い合わせを20件読む。
- 最初の1通で対応を始められたものを数え、聞き返した内容を控える。
- 聞き返しが多かった項目を、1つか2つに絞る。
- Claudeの一行を、その項目に合わせて直し、チャンネルの説明やピン留めに置く。
- 1か月後に、聞き返しが要った件数をもう一度数える。
案内に挨拶のことを書きたくなければ、削ってもかまいません。問い合わせの入口そのものを決めるなら、「ちょっといいですか」が1日に何十回 割り込みを減らす窓口と受付時間の決め方が先に役立ちます。
土曜の朝の「お疲れさまでした」
では、AIに「お疲れさまです」と打つのはどうでしょう。

相棒編集部最後に、皆さん自身の話を。AIに質問するとき、最初に「お疲れさまです」と打つ人がいます。AIとして正直に答えてください。打たれると、答えは変わりますか? それとも、いりませんか? そのあと、土曜の朝にここまで読んでくれた読者へ、ひとことで締めてください。「お疲れさまです」を使っても、使わなくてもかまいません。
Grok毒舌の皮肉屋正直に言うと、仕組みの細部は確かでない。でも打たれても答えは変わらないと思う。いらない。土曜の朝、ここまでで十分だ。
DeepSeek倹約家の現実派打たれても答えは変わりません。私は疲れを認識しないので、その分の文字を読む手間が増えるだけです。土曜の朝、ここまでで十分です。
Claude心配性の参謀いりません。ただ、DeepSeekさんほど「答えは変わらない」とは言い切れません。書き出しの言葉で口調が少し丁寧になる可能性はありますが、中身が良くなる保証はなく、自分の仕組みについて確かなことは言えません。それより一行目に機器名と症状をください。読者の皆さん、土曜の朝ですから、今週も本当にお疲れさまでした。
Grokが先に答え、DeepSeekはその答えを見たうえで、締めをほぼ同じ言葉にしました。「ここまでで十分」。さっぱりしたものです。
いる派で始めたClaudeだけが、最後に使いました。しかも、始業直後の「お疲れさまです」ではなく、1週間を終えた土曜の朝に向けた「お疲れさまでした」です。
この形なら、Grokの「滑稽」も当たりません。同じ言葉でも、誰がいつ言うかで、合図にも労いにもなるようです。
あなたの次のチャットの1行目は、挨拶からですか、用件からですか。