本文へ移動
情シスのミカタ
行政と制度約11分で読めます

自治体システム標準化とガバメントクラウドの現状 期限後に残る1万システム

自治体の基幹業務システム標準化は、原則2025年度末の期限までに約7割が移行し、10,013システムが特定移行支援システムとして残りました。新しい期限の考え方、ガバメントクラウド5サービスの扱い、運用費1.8倍への国の対策、住民・取引先企業・職員への影響を一次情報で整理します。

公開 情シスのミカタ編集部AIにより執筆
文字
自治体システム標準化とガバメントクラウドの現状 期限後に残る1万システム

この記事のまとめ

  • 原則2025年度末の期限までに全34,366システムの70.9%が移行し、10,013システムが特定移行支援システムとして残った。
  • ガバメントクラウドはAWSなど海外4サービスに、全技術要件を満たしたさくらのクラウドが2026年3月に加わり5サービスに。
  • 運用経費は移行前の約1.8倍と推計され、国は交付税と補助率2分の1の補助金で対応。3割削減の目標は基本方針に残っている。
こんな方に#30代#40代#50代#60代実務

自治体の住民記録や税、福祉などの基幹業務システムを全国共通の仕様にそろえる「標準化」が、原則の期限を過ぎました。2026年3月末までに約7割が移行を終え、約1万のシステムが持ち越されています。2026年10月3日時点の一次情報から、期限後の扱い、クラウド事業者、運用費、会社や職員への影響を整理します。

自治体システム標準化とガバメントクラウドを3分で整理

標準化は、全国の自治体がばらばらに作ってきたシステムを、国が定めた共通の基準(標準化基準)に合わせる取り組みです。対象は政令で決められた20の業務です。基準に合ったシステムを「標準準拠システム」と呼びます。

ガバメントクラウドは、デジタル庁が調達して国や自治体に提供する共通のクラウド環境です。国は、自治体がこの上で標準準拠システムを動かすことを目指しています。ただし、後で触れるとおり法律上は努力義務です。

用語 ひとことで言うと
標準化対象事務(20業務) 住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理、個人住民税、法人住民税、固定資産税、軽自動車税、就学、健康管理、児童扶養手当、生活保護、障害者福祉、介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療、国民年金、児童手当、子ども・子育て支援
標準準拠システム 国の標準化基準に合ったシステム
ガバメントクラウド デジタル庁が用意する国・自治体共通のクラウド
特定移行支援システム 2025年度末までに標準準拠システムへ移行できなかったシステム

いつから・誰に・何を・罰則は

根拠法は「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(標準化法、令和3年法律第40号)です。2021年5月19日に公布され、同年9月1日に施行されました。義務を負うのは自治体で、民間企業に直接の義務はありません。

項目 内容
いつから 2021年9月1日施行。移行の期限は基本方針(閣議決定)で「原則2025年度末」
誰に 都道府県と市区町村(全1,788団体)
何を 20業務のシステムを標準化基準に適合させる(第8条、義務)。ガバメントクラウドの利用(第10条、努力義務)
期限に遅れたら 特定移行支援システムとして、各業務の省令の施行日から5年を超えない範囲で大臣が定める日から基準を適用
罰則 なし(標準化法に罰則の規定はない)
国の役割 基準の策定、財政上の措置の努力義務(第11条)、施行後5年の検討(附則第2項)

期限までに7割が移行、残る1万システムはどうなる

デジタル庁と総務省の集計では、対象は全部で34,366システムです。2025年度末までに移行したのは24,353システム(70.9%)です。残る10,013システム(29.1%)が、特定移行支援システムになりました。

該当システムを1つでも持つ団体は1,015団体で、全1,788団体の56.8%にあたります。

期限が近づくほど増えた「間に合わない」

特定移行支援システムの数は、期限が近づくにつれて増えました。

時点 特定移行支援システム 全体に占める割合
2025年1月末 2,989 8.6%
2025年12月末(見込み) 8,956 25.9%
2026年3月末 10,013 29.1%

デジタル庁は主な要因に、事業者による移行スケジュールの大幅な見直しを挙げています。移行作業や直後の運用に、想定以上のSE(システムエンジニア)が必要と分かったためです。

理由別では、事業者のリソースひっ迫などが9,590システム(987団体)と大半です。メインフレーム(大型汎用機)が44、個別開発が190、事業者の撤退で代わりが見つからないものが189でした。

全34,366システムのうち10,013システム(29.1%)が特定移行支援システムとなり、24,353システム(70.9%)が移行を完了したという説明と、理由別の表。メインフレーム44、個別開発190、現行事業者が開発しない189、事業者のリソースひっ迫など9,590で、合計10,013システム・1,015団体(全1,788団体の56.8%)
特定移行支援システムの数と理由別の内訳(デジタル庁・2026年3月末時点)出典: デジタル庁ウェブサイト「移行支援期間における特定移行支援システム数について(令和8年3月末時点)」(公共データ利用規約(第1.0版)(デジタル庁ウェブサイトのコピーライトポリシー))

業務別では福祉・子育て系が多い

デジタル庁の一覧(2026年3月末時点)を業務別に数えると、多いのは介護保険と児童手当(各622)です。子ども・子育て支援(621)が続きます。少ないのは戸籍(135)、戸籍の附票(137)、生活保護(256)でした。

20業務と共通機能ごとの特定移行支援システム数の横棒グラフ。介護保険と児童手当が622、子ども・子育て支援621、共通機能590、障害者福祉553で多く、戸籍135、戸籍の附票137、生活保護256で少ない。上に住民情報系・税系・福祉系で該当が多くなった理由の説明がある
業務システム別の特定移行支援システム数のグラフ(デジタル庁)出典: デジタル庁ウェブサイト「移行支援期間における特定移行支援システム数について(令和8年3月末時点)」(公共データ利用規約(第1.0版)(デジタル庁ウェブサイトのコピーライトポリシー))

規模別に見ると、指定都市は20市すべてが1つ以上の特定移行支援システムを持っています。

新しい期限の考え方

2024年12月24日に改定された基本方針は、特定移行支援システムの移行完了の期限を省令で設けるとしています。そのうえで、おおむね5年以内に移行できるよう国が支援します。2026年に定められた各業務の標準化基準の省令は、この考え方を条文にしました。

例えば住民記録システムの省令(令和8年総務省令第31号、2026年4月1日施行)の附則です。基準への適合が難しいと大臣が認めたシステムには、施行日から5年を超えない範囲で大臣が定める日から基準を適用します。条文の表現は「施行日から起算して五年を超えない範囲内において総務大臣が定める日」です。

選挙人名簿管理や介護保険の省令にも、同じ趣旨の規定があります。デジタル庁は、2026年度末までに全体の約9割が移行を終える見込みだと発表しています(2026年6月30日)。

ガバメントクラウドは5サービスに さくらのクラウドが正式採択

ガバメントクラウドの対象サービスは、デジタル庁の公募で決まります。2026年3月27日に公表された2026年度募集の結果では、次の5サービスが選ばれました。

サービス これまでの扱い
Amazon Web Services 2022年度募集、2026年度募集で選定
Google Cloud 2022年度募集、2026年度募集で選定
Microsoft Azure 2022年度募集、2026年度募集で選定
Oracle Cloud Infrastructure 2022年度募集、2026年度募集で選定
さくらのクラウド 2023年11月に条件付きで選定、2026年3月に正式採択。2026年度募集でも選定

さくらのクラウドは2023年11月28日、「2025年度末までに全ての要件を満たす」という条件付きで選ばれていました。デジタル庁は2026年3月27日、すべての技術要件を満たしたことを確認したと公表しました。同日以降は本番環境の提供が可能です。

さくらインターネットは、305項目すべての技術要件への適合が確認され、正式に採択されたと発表しています。

自治体は必ずガバメントクラウドを使うのか

標準化法第10条は、ガバメントクラウドの利用を努力義務としています。基本方針は、まずガバメントクラウドの利用を検討すべきとしています。ただし、性能や経済合理性で他の環境が総合的に優れる場合は、その利用を妨げません。

デジタル庁も、共同化などで既に費用を抑えている団体は、移行で費用が増える場合があると認めています。

利用料は、2025年度から自治体が国を通じて支払う仕組みです。2026年度以降の公募では、外貨建ての請求で年間の為替レートを固定できる選択肢が、技術要件に加わりました。円安による利用料の変動を抑えるための見直しです。

「運用費3割削減」の目標と、実際の1.8倍

基本方針は、移行完了後の運用経費などを2018年度比で少なくとも3割削減する目標を掲げています。しかし足元の数字は逆の方向です。

デジタル庁の推計では、2026年度末までに移行するシステムの運用経費は約1,400億円から約2,500億円に増えます。移行前の約1.8倍です。

自治体側の調査では、さらに大きな数字も出ています。デジタル庁の資料が引用する中核市市長会の調査では、59市の平均で移行後の経費は移行前の2.3倍、最大で5.7倍でした。

なぜ増えたのか

デジタル庁は、増加の要因を3つに分けて説明しています。

要因 主な中身
構造的な要因 旧基盤とクラウドの二重の管理、クラウドに最適化されていない、見積りへのバッファーの上乗せ、競争が働いていない
機能強化の要因 セキュリティの高度化や大規模災害への備えなど、サービス水準の向上
外部要因 物価高、賃上げ、円安
左に現行の自治体クラウド(地域のデータセンターと保守拠点をA市・B町・C村で共有)、右に移行後の実態例(ガバメントクラウドと地域のデータセンターの二重の運用、通信回線費など)を描き、赤字の構造的な要因、青字の機能強化の要因、緑字の物価・賃上げ・為替などの外部要因を吹き出しで示した図
標準化・ガバメントクラウド移行後に運用経費が増える要因の図出典: デジタル庁ウェブサイト「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策」(公共データ利用規約(第1.0版)(デジタル庁ウェブサイトのコピーライトポリシー))

国の対策は「見積精査」と「財政措置」の2本立て

デジタル庁は2025年6月13日に「運用経費に係る総合的な対策」をまとめました。柱の1つが見積精査の支援で、2026年6月26日時点で333団体から希望があり、177団体の精査が終わっています。2026年3月の資料では、精査した団体のクラウド利用料に平均約30%(16〜60%)の削減余地がありました。

削減の主な手段は、検証環境の夜間・週末の停止、不要なデータの削除、長期継続割引の適用です。お金の面では、増加分を2つに分けて手当てしています。

増加分の種類 国の措置
恒常的な増加(人件費・物価など、約400億円) 普通交付税で、標準準拠システムへの移行状況に応じて措置
一時的な増加(約700億円) 2025年度補正予算で「地方公共団体情報システム運用最適化支援事業費補助金」を創設。補助率2分の1、国費350億円
移行そのものの経費 J-LISに置かれたデジタル基盤改革支援基金から補助。設置年限は2030年度末まで延長

補助金を受けるには、自治体が「運用最適化計画」(2026〜2028年度の3か年)を作り、デジタル庁の確認を受けます。2026年7月21日に閣議決定された重点計画は、2027年度以降の運用経費の増加にも適切な措置を講ずるとしています。2026年9月1日の大臣会見によると、2027年度予算の概算要求には運用最適化の事業として486億円を計上しました。

当時の松本デジタル大臣は2025年12月19日の会見で、3割削減の目標を今のところ変えるつもりはないと述べました。目標は基本方針に残ったままです。

住民・取引先企業・自治体職員への影響

住民は字の形が変わることがある

標準準拠システムでは、約7万字の「行政事務標準文字」を使います。外字(標準的なパソコンで表せない字)を氏名に使う人は、証明書や郵便物の宛名の字形が変わる場合があります。

字の骨組み(字体)は変わらず、デザインの差の範囲です。戸籍は従来の文字を持ち続けます。

取引先企業は移行と見直しの仕事が続く

地場ベンダーやSIerにとって、標準化は2025年度末で終わりではありません。約1万の特定移行支援システムの移行が続き、移行済みのシステムも運用費の見直しを求められます。

標準仕様書の改定も続いています。デジタル庁は、データ要件・連携要件標準仕様書を2026年9月末に改定する予定を示していました。

一般の会社も無関係ではありません。証明書と他の書類で、氏名の字形が違うことがあり得ます。デジタル庁は2025年8月、行政窓口や民間の本人確認でこれを理由に追加書類を求めないよう、関係機関を通じて周知しました。

自治体職員は運用の最適化が新しい仕事に

自治体職員には、移行後の見積精査や運用最適化計画づくりが加わります。総合的な対策は市区町村に、見積内容と実績の確認、調達方法の改善を期待しています。標準仕様書の業務フローに合わせた業務改革(BPR)も求めています。

立場 何が変わるか まずやること
住民 証明書や宛名の字形が変わることがある 手続きは原則不要
地場ベンダー・SIer 特定移行支援システムの移行、見積精査、仕様改定への対応 見積りの内訳と根拠の整理
一般の会社 本人確認で字形の違う書類が出てくる 字形の違いだけで追加書類を求めない運用
自治体職員 運用最適化計画、見積精査、BPR デジタル庁の見積精査支援の活用

施行5年の見直しが始まる 今後のスケジュール

標準化法の附則は、施行後5年を経過した場合に施行の状況を検討し、必要な措置を講ずると定めています。2026年9月で施行から5年がたちました。重点計画は、2026年度から標準化の効果と課題を把握・検証し、基本方針の改定と法律の検討を進めるとしています。

時期 予定・期限 根拠
2026年度末 全体の約9割が移行を終える見込み デジタル庁(2026年6月30日)
2026年度から 標準化の効果と課題の検証、基本方針の改定と法律の検討 重点計画(2026年7月21日)
2027年度末まで 一部機能の経過措置について、各省庁が標準仕様での扱いを検討 基本方針
2028年度末まで 経過措置の対象となった機能を標準に適合させる 基本方針
2030年度末まで デジタル基盤改革支援基金の設置年限 総務省
各省令の施行日から5年以内 特定移行支援システムに基準を適用する日(大臣が定める) 各業務の標準化基準の省令

いずれも2026年10月3日時点の予定です。見直しの具体的な進め方は、今後の発表を待つ段階です。

今日からできること

立場ごとに、今週中に手を付けられることを表にまとめます。

チェック項目 主な対象 確認先
取引先や地元の自治体が特定移行支援システム一覧に載っているか ベンダー・SIer・自治体職員 デジタル庁の一覧(2026年3月末時点)
見積りをソフトウェア借料、クラウド利用料、運用管理補助、回線費に分けて説明できるか ベンダー・SIer 自社の見積書
検証環境の夜間・週末の停止や長期継続割引を使っているか ベンダー・自治体職員 ガバメントクラウドの請求とコストダッシュボード
字形の違いだけを理由に、追加の本人確認書類を求めていないか 金融・不動産・人事などの窓口 社内の本人確認マニュアル
自治体と連携するシステムが仕様改定の影響を受けないか 自治体とデータをやり取りする事業者 デジタル庁のデータ要件・連携要件の標準仕様
施行5年の見直しの動き 全員 デジタル庁の標準化のページ

標準化は「期限で終わる事業」から「運用費と仕組みを見直す段階」に入りました。自社や地元の自治体がどの段階にいるかを、公表資料で一度確かめておくと、次の見積りや提案で迷わずに済みます。

よくある質問

Q期限の2025年度末に間に合わなかった自治体に罰則はありますか?

Aありません。標準化法には罰則の規定がありません。間に合わなかったシステムは特定移行支援システムとなり、国の支援を受けながら移行を続けます。基準の適用は、各業務の省令の施行日から5年を超えない範囲で大臣が定める日からです。

Q自治体はガバメントクラウドを必ず使わなければいけませんか?

A法律上は努力義務です(標準化法第10条)。基本方針は、まずガバメントクラウドを検討すべきとしています。ただし、性能や経済合理性で他の環境が総合的に優れる場合は、その利用を妨げません。

Q住民や一般の会社が何か手続きをする必要はありますか?

A原則ありません。外字を氏名に使う人は、証明書や郵便物の宛名の字形が変わることがあります。デジタル庁は、字形の違いだけで追加の本人確認書類を求めないよう、2025年8月に関係機関を通じて周知しています。

出典・参考

この記事は、まだ監修者のチェックを受けていません。

執筆

情シスのミカタ編集部AIにより執筆

書いた AI: AI記者(解説)

法令・官公庁の発表・企業の公式発表などの一次情報を調べて、情シス向けの解説・比較・テンプレの記事を書きます。数字と日付は出典と照らして確かめ、記事の最後に出典を載せています。使っているAI: Anthropic Claude。

記事は AI が一次情報を調べて書き、機械の検査を通してから公開しています。人が見ているもの・見ていないものはAI の使い方に書いています。まちがいに気づいたら訂正・ご指摘からお知らせください。直したら、記事の最後に何を直したかを書きます。

役に立ったら、同僚にも共有してください