文部科学省は2026年10月23日、「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等に関する指針の策定に向けて(素案)」について、意見の募集を始めました。締め切りは11月8日(日)必着です。
2026年の学校教育法などの改正で、教科書に、動画や音声などのデジタルの内容を含められるようになりました。新しい教科書は2030年度から小学校で使い始めます。素案は、その発行、採択、学校での使い方の留意点をまとめたもので、ビューアの標準仕様書や、学校のネットワークと端末の前提も書かれています。
素案で分かったこと
素案は、文部科学大臣の求めで開かれた検討会議がまとめたものです。この内容をもとに、文部科学大臣が指針を作ります。
| 項目 |
素案の内容 |
| 新しい教科書の形 |
紙とデジタルを組み合わせた形が基本。すべて紙、すべてデジタルの教科書もありうる。どの形でも検定を経て、学校で使わなければならない |
| デジタルの内容 |
動画、音声、シミュレーションなども、教科書の内容にできる |
| 法律の施行 |
2027年4月1日 |
| 採択 |
2029年度から、デジタルな形態を含む教科書を採択する |
| 使い始め |
2030年度に小学校、2031年度に中学校、2032年度に高校(導入のスケジュールの図) |
素案の「導入に向けたスケジュール」。2030年度に小学校で新しい教科書を使い始める出典: デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議「指針の策定に向けて(素案)」(引用)
紙が向く場面とデジタルが向く場面を、教科ごとに表で整理しています。「紙かデジタルか」の二者択一にせず、場面で使い分けるという考え方です。
ビューアは標準仕様書で決める
教科書のデジタル部分と、それを見るためのWebアプリ(ビューア)については、文部科学省が標準仕様書を作ります。素案によると、次のものを含む予定です。
- アクセシビリティの機能(今の仕様書にある拡大、ルビ振り、色反転、リフロー表示、音声読み上げなどに加え、動画や音声に対応したもの)
- デジタル部分の印刷・ダウンロードの機能
- 拡散を防ぐ機能
教科書の発行者と配信事業者には、標準仕様書にそったビューアを作り、ビューアで見ることを前提に教科書を作るよう求めています。仕様書の細かい中身は、まだ示されていません。
採択のときは、教科書でない教材が選び方に影響しないよう、標準仕様書で、連携するデジタル教材へのリンクを採択の担当に見せることを認めないとしています。文部科学省は、発行者が教科書のデジタルの機能と内容を一覧にして、採択の担当に知らせる仕組みも整えるとしています。
学習ツールとの連携は「全体最適」で
素案は、教科書のデジタル部分と、ほかのデジタル教材や学習ツールとの間で、オープンで公平な連携が大事だとしています。教科書やビューアの中だけで連携を考えると、部分だけの最適になりかねないためです。
設計のときは、学校で使う校務支援システム、連携のための基盤、ポータルサイト、各種の学習ツールを含めた、教育のDX全体の動きを見るよう求めています。複数の学習ツールが互いにつながる仕組みは、文部科学省が引き続き検討します。
ネットワークと1人1台端末が前提
素案は、新しい教科書の前提として、すべての学校で、使うのに支障のないネットワークが整っていることと、児童生徒が1人1台の端末を使えることを挙げています。
素案の「デジタル学習基盤の整備について」。必要な速さを満たす学校は約64%出典: デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議「指針の策定に向けて(素案)」(引用)
| 項目 |
素案の内容 |
| 必要なネットワークの速さを満たす学校 |
約64%(2025年12月時点) |
| 見込み |
2028年度までに、学校の設置者の約95%で満たす |
| 目標 |
新しい教科書が始まる2030年度までに、すべての学校で満たす |
| 学校の設置者に求めること |
国の支援も使いながら、ネットワークを着実によくする |
端末の使い方についても書いています。1人1台端末は、学習に関係のない目的では使わないことが求められます。教育委員会は、フィルタリングの設定や、使える時間帯の制限などで、学習に関係のないサイトの閲覧や長い時間の利用を防いでいます。こうした決まりを、学校の設置者、学校、保護者の間で確かめ合っておくことが望ましいとしています。
このほか、教員を育てる大学の授業では、ライセンスの条件で、デジタル教科書を使える大学教員や学生が限られる場合があると指摘しています。文部科学省が、発行者との間でライセンスの条件の在り方を調整するとしています。
意見の出し方
| 項目 |
内容 |
| 締め切り |
2026年11月8日(日)必着 |
| 出し方 |
e-Govの意見提出フォームか、郵送(文部科学省初等中等教育局教科書課あて) |
| 受け付けない方法 |
電話、電子メール |
| 書き方 |
件名、氏名、住所、電話番号、意見。理由を付け、論点ごとに1枚1意見 |
| 公表 |
意見は、氏名・住所・電話番号を除いて公表されることがある。個別の回答はしない |
影響する会社・しない会社
- 影響する: 学校の設置者である教育委員会と、私立学校です。2030年度までに、ネットワークの速さと1人1台端末を整える必要があります。採択の担当は、2029年度から、デジタルの機能や内容も含めて教科書を調べることになります。
- 影響する: 教科書の発行者と、教科書を配信する会社です。標準仕様書にそったビューアを作る必要があります。
- 影響する: 学校向けの学習ツール、校務支援システム、ポータルを出す会社です。教科書のデジタル部分との連携の仕組みが、これから決まります。
- 影響しない: 学校や教育向けのサービスに関わらない会社です。
情シスが今日やること
- ネットワークの速さの今を確かめます。 学校の設置者のICT担当は、文部科学省の「学校のネットワークの状況について」(2026年3月)が示す「必要なネットワーク速度」を、各校が満たしているかを確かめます。満たさない学校は、2030年度までの改善の計画に入れます。
- 端末の台数と入れ替えの時期を並べます。 2030年度に児童生徒が1人1台を使える状態か、端末の入れ替えの予定と合わせて確かめます(当社の見立て)。
- 端末の使い方の決まりを見直します。 フィルタリングや使える時間帯の制限を、学校と保護者に分かる形で示しているかを確かめます。
- 標準仕様書の動きを追う担当を決めます。 教育向けのサービスを出す会社は、ビューアの標準仕様書(印刷・ダウンロード、拡散を防ぐ機能、アクセシビリティ)と、ツールどうしの連携の検討を追う人を決めます。
- 意見を出すなら、11月8日までに出します。 現場の通信の事情や、連携の仕組みについて意見があれば、論点ごとに理由を付けてe-Govから出します。