本文へ移動
情シスのミカタ
ニュース約7分で読めます

BroadcomのWi-Fiに未修正の欠陥 電波の届く所からルーター操作の恐れ

BroadcomのWi-Fiの部品に、電波の届く所からパスワードなしでルーターの中で命令を動かせる欠陥があると、研究者が10月16日に公開しました。CVEは付かず、確かめた機器は未修正です。一覧に載ったシスコの小規模向け機種なども含め、会社で確かめることを整理します。

公開 情シスのミカタ編集部AIにより執筆チェック済み
文字
BroadcomのWi-Fiに未修正の欠陥 電波の届く所からルーター操作の恐れ

この記事のまとめ

  • BroadcomのWi-Fiの古いWPSの処理に欠陥があり、電波の届く所から、パスワードなしでルーターの中で命令を動かせると研究者が公開しました。
  • BroadcomはCVEを付けず、研究者が確かめた機器は10月15日時点で未修正です。シスコのRV・WAPなど18社の製品が一覧に載りました。
  • 情シスは、無線LANの機器の型番を一覧と照らし、メーカーに更新の有無を聞きます。サポートの切れた機器は入れ替えを決めます。
こんな方に#30代#40代#50代実務

BroadcomのWi-Fiの部品に、電波の届く所から、Wi-Fiのパスワードなしでルーターの中で命令を動かせる欠陥があると、セキュリティ研究者のQuentin Kaiser氏が2026年10月16日に公開しました。BroadcomはCVE(脆弱性に付く共通の番号)を付けておらず、研究者が確かめた機器は10月15日時点で直っていません。研究者の公開資料をもとに、会社の無線LANで確かめることを整理します。

何が見つかったか

欠陥は、WPS(ボタンやPINの入力でWi-Fiにつなぐ仕組み)を受け持つ、Broadcomの古い実装「WPS Monitor」にあります。WPSのデータは分けて届くことがあり、受け取った側でつなぎ直します。このとき、つなぎ直した大きさが受け皿を超えても止めない作りになっていました。

研究者は、パリのセキュリティの会議Hexaconで10月16日に発表しました。同じ日に、技術の詳しい解説をブログに載せています。一般向けには「WPSplinter」という名前のページを作り、確かめるための道具をGitHubで公開しました。

Quentin Kaiser氏が公開したページ『WPSplinter』の冒頭。見出しはBroadcom WPS EAP fragment reassembly vulnerability。BroadcomのレガシーなWPS Monitorの実装が、組み立て直したEAP-WPSの断片を受け皿の大きさに制限しておらず、近くの攻撃者がネットワークの鍵を知らず、WPSの登録も済ませずにWi-Fi越しに処理に届き、メモリの読み出しと任意のコードの実行につながりうると説明している。Hexacon 2026での発表であること、BroadcomがCVEの割り当てを断ったこと、WPSplinterは研究者が付けた名前でCVEではないことが囲みに書かれ、その下に影響する機器の一覧(ARRIS SURFboard AC1200、Arcadyan VRV9517、Askey TCG3000、Askey RTF3505VW、CastleNETの機種など)が始まっている
研究者が公開した一般向けのページ「WPSplinter」の冒頭出典: Quentin Kaiser「WPSplinter」(引用)

ブログの要点は、次の一文です。

The vulnerability can be triggered remotely over WiFi without knowledge of the network key or completion of a normal WPS enrollment. Exploitation provides controlled information disclosure and arbitrary code execution.

出典: Quentin Kaiser「One Parser, Two Bugs, Many Routers」

Wi-Fiのネットワークの鍵を知らなくても、WPSの登録を最後まで済ませなくても、電波越しに欠陥に届くという意味です。悪用すると、メモリの中身を狙って読み出したり、好きなプログラムを動かしたりできるとしています。

研究者は、ベルギーの通信会社の機器で実演しています。Orange Belgiumの機器(ASKEY TCG3000)では、機器の中に保存されたWi-Fiのパスワードを読み出し、電波で送り返しました。Proximusの機器(BBOX3V+)では、Wi-Fiの電波を通して機器を遠くから操作できる状態にしました。研究者は、アンテナが近い映像でも、離れた所から攻撃できると書いています。

悪用されたという報告は、研究者の公開資料には書かれていません。CISA(米国のサイバー安全の当局)の悪用が確認された脆弱性の一覧(KEV)は、CVEの番号が付いたものを載せる一覧で、本件は載っていません。

なぜ番号も修正も無いのか

研究者によると、欠陥は遅くとも2010年からBroadcomのSDK(機器のメーカーに配る開発の部品)に入っていました。2018年に不完全な修正が告知なしに出て、Broadcomは代わりにhostapd(広く使われるオープンソースのWi-Fiの仕組み)へ移るよう勧めたとしています。

研究者がBroadcomや関係先とやり取りした経過は、次のとおりです。

日付 研究者の公開による経過
2026年7月18日 BroadcomのPSIRT(製品の脆弱性の窓口)へ報告(eCosの機種)。27日にLinuxの機種の分も報告
7月28日 Broadcomは、修正はあると回答。対象の機器を見つけたら、メーカーからBroadcomへ連絡させるよう求めた
7月29日 BroadcomはCVEの登録と、メーカーに送った通知の写しの提供を断った。研究者はベルギーの通信会社と、同国のサイバーセキュリティセンターにも連絡
8月4日 CERT/CC(米国の脆弱性の調整機関)に相談。BroadcomがCVEの採番機関で登録を望まないため、同じ日に終了
10月15日 研究者が確かめた機器は、どれも修正されていない
10月16日 Hexaconで発表し、ブログ・一般向けのページ・道具を公開

一般向けのページのよくある質問では、BroadcomがCVEを求めなかった理由を、対象のソフトが古く、サポートの期間の外だから、と説明しています。研究者は、CVEが無く公に知らされなかったことが、多くのメーカーが直していない理由だろうと見ています。

CVEの番号が無いと、番号で脆弱性を追う管理の道具や一覧では見つけにくくなります。今回は、型番と使っている部品で確かめる必要があります。

どの機器が対象か

研究者は、対象のチップを2つの系統に分けています。eCos(小型機器向けの基本ソフト)のBCM3380・BCM3383・BCM33834は、新しい実装へ移る道が無く、直らないままになるおそれがあるとしています。Linuxで動くBCM3390・BCM63xx・BCM65xx・BCM68xxは、メーカーが移行すれば直るとしています。

図解。左は経緯: 2010年ごろからBroadcomのSDKに欠陥、2018年に不完全な修正が告知なしに出てhostapdへの移行を推奨、2026年7月18日に研究者がBroadcomへ報告(27日に2件目)、7月29日にBroadcomがCVEの登録を断る、8月4日にCERT/CCの案件が同日終了、10月15日に研究者が確かめた機器はどれも未修正、10月16日にHexaconで発表し資料と道具を公開。右は狙われる条件: 電波の届く範囲にいれば足りる、Wi-Fiのパスワードは要らずWPSの登録の完了も不要、WPSを設定で切っても安心できない、中で任意の命令が動く(実演ではWi-Fiのパスワードの読み出しと遠隔操作)。対象のチップ: eCosのBCM3380・BCM3383・BCM33834は移行の道が無く直らないままのおそれ、LinuxのBCM3390・BCM63xx・BCM65xx・BCM68xxはメーカーが新しい実装に移れば直る。下は研究者の一覧に載ったメーカー18社: ARRIS、Arcadyan、Askey、CastleNET、Cisco(RV・WAP)、Comtrend、Huawei、MitraStar、NetComm、Netgear、Neuf、Nokia、Sagemcom、Technicolor、Tenda、TP-Link、ZTE、Zyxel。まとめ: 型番が一覧に無くても安全とは言えず、メーカーかプロバイダーに更新があるかを聞く。サポートの切れた機器は入れ替えを決める
WPSplinterの経緯・狙われる条件・対象のチップと一覧のメーカー(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: Quentin Kaiser氏のブログ・WPSplinterの公開ページ・GitHubの資料を編集部が整理

一般向けのページの一覧には、18社の製品が載っています(10月19日確認)。会社で使われることのある機種を抜き出すと、次のとおりです。

メーカー 一覧に載った型番 一覧の書き方
Cisco RV110W、RV130W、RV215W、RV340W、WAP121、WAP125、WAP150、WAP361、WAP371、WAP571、WAP571E、WAP581 確認済み
TP-Link VR1600、TD-VG5612、Archer C3150、C5400、VR600、VR900、VR2800 確認済み
Zyxel VMG3312-B10A、VMG3312-B10B 確認済み
Huawei B310、B315、B593、WS880 一覧に掲載。ファームウェアの確認が必要
Nokia・ZTE Nokia G-140W-H、G-240W系、G-2426G-A。ZTE F680 v4、368N 確認済み。一覧では、海外の通信会社が配る機器として載っている

ほかに、ARRIS、Arcadyan、Askey、CastleNET、Comtrend、MitraStar、NetComm、Netgear、Neuf、Sagemcom、Technicolor、Tendaの製品が載っています。研究者は、一覧は全部ではないとしています。同じ型番でも、ハードウェアやファームウェアの版で違うことがあるとも書いています。

研究者の一覧に、日本の通信会社の名前はありません。日本で売られている機器がどれだけ当たるかは、資料には書かれていません。

シスコの小規模向け機種は、サポートの状況も見る

一覧には、シスコの小規模向けのルーター(RV)とアクセスポイント(WAP)が多く載っています。このうちRV110W・RV130W・RV215Wは、シスコの販売終了の案内で、ソフトの保守が2020年12月1日に、サポートが2024年11月30日に終わっています。

シスコは2023年9月のアドバイザリーで、この3機種などについて、更新を出しておらず今後も出さないとしています。今回の欠陥でも、更新は見込みにくい機種です。

ほかの型番のサポートの状況は、シスコの製品ごとのページで確かめます。この欠陥についてのシスコのアドバイザリーは、10月19日に編集部が探した範囲では見つかりませんでした。

WPSを切れば済むのか

研究者の一般向けのページは、WPSを設定で切れば直る、とは考えないよう求めています。設定を切っても、欠陥のある処理が取り除かれないおそれがあるためです。

WPSを使っていないなら、切っておくこと自体はかまいません。ただし、それで直ったとは扱いません。直ったかどうかは、メーカーか通信会社に、この欠陥を直したファームウェアがあるかを確かめます。

影響する会社・しない会社

  • 影響する: 研究者の一覧に載った型番の無線LANルーターやアクセスポイントを使っている会社です。シスコのRV・WAP、TP-LinkのArcherなどが含まれます。
  • 影響する: Broadcomのチップを使う無線LANの機器を、支店・店舗・倉庫・来客用などに置いている会社です。建物の外まで電波が届く場所ほど、注意が要ります。
  • 影響する: サポートの切れた無線LANルーターを使い続けている会社です。更新が出ないまま残るおそれがあります。
  • 影響しない: Wi-Fiの電波を出さない、有線だけの機器です。攻撃はWi-Fiの電波を通して行われます。
  • 影響しない: 公開された研究の対象は、アクセスポイント(親機)の側です。パソコンやスマートフォンは、対象として挙がっていません。

情シスが今日やること

  1. 無線LANの機器の台帳を開き、メーカーと型番を一覧と照らします。 本社だけでなく、支店・店舗・倉庫の機器と、在宅勤務の社員に配った機器も含めます。
  2. 一覧に当たる機器は、メーカーか通信会社に文書で聞きます。 CVEの番号が無いので、「BroadcomのWPS MonitorのEAP-WPSの断片の組み立ての欠陥(通称WPSplinter)」と書き、研究者の公開ページのURLを添えます。回答の期限も決めます。
  3. サポートの切れた機器は、入れ替えの日を決めます。 シスコのRV110W・RV130W・RV215Wなどが当たります。入れ替えまでの間、その機器のWi-Fiを止めて有線だけで使えるなら、そうします。
  4. 電波が外に届く場所の機器から先に確かめます。 1階や駐車場に面した部屋、来客の多い場所、人の少ない倉庫などです。
  5. 研究者の確かめる道具は、自社の機器にだけ使います。 他人のアクセスポイントには向けません。無線の特別なモード(モニターモード)が要るので、慣れていなければ専門の事業者に任せます。

2026年10月19日時点の内容です。

よくある質問

QWPSを設定で切れば、対策になりますか?

A研究者は、そう考えないよう求めています。設定を切っても、欠陥のある処理が残るおそれがあるためです。使っていないなら切っておいてかまいませんが、それで直ったとは扱わず、メーカーか通信会社に、この欠陥を直した更新があるかを確かめます。

QCVEの番号はありますか?

Aありません。研究者によると、Broadcomは対象のソフトが古くサポートの期間の外だとして、CVEを求めませんでした。「WPSplinter」は研究者が付けた呼び名です。番号で脆弱性を追う仕組みでは見つけにくいので、型番で確かめます。

Q日本で売られている機器や、通信会社の機器は対象ですか?

A研究者の一覧に、日本の通信会社の名前はありません(10月19日確認)。ただし一覧は全部ではなく、同じ部品を使う機器はほかにもありうるとしています。一覧に無い機器でも、Broadcomのチップを使う無線LANの機器は、メーカーに確かめます。

出典・参考

チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月19日)

執筆

情シスのミカタ編集部AIにより執筆

書いた AI: AI記者(解説)

法令・官公庁の発表・企業の公式発表などの一次情報を調べて、情シス向けの解説・比較・テンプレの記事を書きます。数字と日付は出典と照らして確かめ、記事の最後に出典を載せています。使っているAI: Anthropic Claude。

監修

佐々木 航株式会社Game

代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。

メモ: 掲載時に自動で(しばらくの間)

記事は AI が一次情報を調べて書き、機械の検査を通してから公開しています。人が見ているもの・見ていないものはAI の使い方に書いています。まちがいに気づいたら訂正・ご指摘からお知らせください。直したら、記事の最後に何を直したかを書きます。

役に立ったら、いいねと共有をお願いします