トレンドマイクロが、日本の組織と個人に向けた支援策「Japan Cyber Resilience Initiative」を発表しました。法人には最大100億円相当のライセンスクレジット、中小企業には無料体験、個人には詐欺対策アプリの無償提供を用意します。ただし、100億円は現金ではなくクレジットで、条件の多くはこれから決まります。同社の発表から、何が決まっていて、何がまだかを整理します。
何が発表されたか
トレンドマイクロは2026年10月19日、「Japan Cyber Resilience Initiative(日本向けサイバーレジリエンス支援策)」の計画を発表しました。背景として、同社の調べでは、2026年1月から9月までに国内で公表されたサイバーセキュリティの事故が607件にのぼり、2025年の1年間の594件をすでに上回ったとしています(10月9日時点の集計)。
支援は、次の6つです。
| 対象 |
支援 |
決まっていること |
| 法人 |
最大100億円相当の「TrendAI Flex」ライセンスクレジット |
TrendAI Vision Oneの導入・活用に使う。現金ではない。条件・配分・使い方は順次発表 |
| 法人 |
フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)などによる実践の支援 |
リスクの特定、穴の分析、優先順位づけなどを、組織や既存のパートナーと一緒に行う。初めは重要インフラ・経済活動・サプライチェーンで特に重要な組織を優先 |
| 法人 |
検知・対応(MDR)と運用の支援 |
継続的な監視、事故の調査、対応の支援を追加で使えるようにする |
| 中小企業 |
「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」の60日間の無料体験 |
2026年12月31日までに使い始めることが条件 |
| 中小企業 |
LINE公式アカウントへのAIを使った詐欺検知の組み込み |
LINE関連の事業者とAPIでつなぐ準備中。年内の実運用を目指す |
| 個人 |
詐欺対策アプリ「詐欺バスター」の90日間の無償提供 |
2026年12月31日までに使い始めることが条件 |
このほか、対象の法人には、パートナー経由で最大10日間の専門サービスを無償で提供するとしています。使うための要件は、問い合わせるよう案内しています。
100億円は「クレジット」で、条件はこれから
法人向けの中心は、TrendAI Vision Oneの導入や機能の追加に使えるライセンスクレジットです。発表は、現金の給付ではないことと、条件がまだ決まっていないことを、はっきり書いています。
法人向けの支援。現金ではなくライセンスクレジットで、条件は順次発表出典: トレンドマイクロ「最大100億円相当のサイバーレジリエンス支援策を発表」(引用)
適用の条件、クレジットの配分や使い方、パートナーの参加条件、使えるサービスの詳細は、順に知らせるとしています。対象は全国の組織ですが、支援は、組織のニーズ、対象の要件、使える資源に応じて段階的に提供し、まずは重要インフラの事業者や大企業、それを支えるサプライチェーン上の中小企業を優先するとしています。参加を希望する組織は、担当の営業に問い合わせるか、ウェブサイトから登録する形です。
中小企業と個人の支援は、12月31日までに使い始める
中小企業向けの無料体験は、2026年12月31日までに使い始めた会社が対象です。
中小企業向けの無料体験。2026年12月31日までに使い始めることが条件出典: トレンドマイクロ「最大100億円相当のサイバーレジリエンス支援策を発表」(引用)
あわせて「Worry-Free」シリーズについても、販売パートナーと新しい支援策を検討しており、決まりしだい知らせるとしています。個人向けの「詐欺バスター」の90日間の無償提供も、12月31日までに使い始めることが条件です。
影響する会社・しない会社
- 影響する: 重要インフラの事業者や大企業、それらの取引先の中小企業です。優先して支援する対象とされています。取引先から、参加や対策の強化を求められることも考えられます。
- 影響する: セキュリティの専任の担当者がいない中小企業です。無料体験は、12月31日までに使い始める必要があります。
- 影響する: すでにトレンドマイクロの製品を使っている会社です。クレジットやFDEの支援が、今の契約とどう組み合わさるかを確かめます。
- 影響しない(今のところ): 支援を使わない会社です。申し込まなければ、今の契約や製品の動きは変わりません。
情シスが今日やること
- 条件が出る前に、聞くことを決めておく。クレジットを使える期間、使い切ったあとや期間が終わったあとの費用、今の契約との関係、データをどこに置くか。どれも発表ではまだ決まっていないため、担当の営業や販売店に確かめる項目として控えておきます。
- 今の製品と重ならないかを見る。ほかの会社のウイルス対策やEDRを入れている端末に、別のエージェントを重ねて入れると、動きがぶつかることがあります。試すなら、本番と分けた端末で試します。
- 無料体験の期限と、その後を確かめる。中小企業の60日間の無料体験は、12月31日までに使い始める必要があります。体験のあとに自動で有償に切り替わるかは発表に書かれていないため、申し込む前に確かめます。
- 取引先からの求めに備える。サプライチェーンの中小企業が優先の対象とされているため、取引先から対策の状況を聞かれることがあります。今の対策(ウイルス対策・EDR・バックアップ・多要素認証)を、1枚にまとめておくと答えやすくなります。
国内の事故が相次ぐ中で、セキュリティの会社の支援策は今後も出てきそうです。無料や割引の言葉だけで決めず、続けて使う費用と、自社の運用で回せるかを先に確かめることが、あとで困らないための近道です。