三菱UFJ銀行、NTTデータグループ、NTT西日本は2026年10月23日、光ネットワークのIOWN® APNを用いたデータセンター(DC)相互接続の技術検証結果を発表しました。離れた拠点でデータベースを動かす構成で、模擬IP-VPN環境より距離の増加に伴う性能低下を抑えたとしています。一方、通信遮断後には性能が落ちるケースもあり、実システムへの適用には検討が必要です。
1,000km相当で約1.7倍、ただし商用回線との比較ではない
検証は、地理的に離れた複数のDCを使う将来の金融システムを想定しています。国内3拠点に置いた分散データベースの5ノードを、すべて稼働させました。ノードは、データベースを構成する個々の稼働単位です。
IOWN® APN環境と模擬IP-VPN環境で、データの読み込み・書き込み性能を測定しました。遅延制御装置を使い、250km、500km、1,000km相当の拠点間遅延を再現しています。この距離は通信遅延を光ファイバーの伝搬距離に換算した値であり、実回線の距離ではありません。
三社によると、どちらの環境でも距離が増すと処理性能は低下しましたが、IOWN® APNでは低下が抑えられました。銀行振込を模擬した評価では、1,000km相当で単位時間当たりの処理件数が模擬IP-VPNの約1.7倍でした。
比較対象の模擬IP-VPNは、公開情報を参考に通信の遅延とパケットロスを再現した実験環境です。パケットロスは、通信するデータの一部が途中で失われることを指します。商用IP-VPN回線との直接比較ではないため、約1.7倍という結果を、そのまま自社回線の置き換え効果として扱うことはできません。
通信遮断後に再開できても、性能が戻るとは限らない
同じ分散データベース環境で、1拠点と他拠点との通信を遮断する試験も行いました。三社によると、遮断後は残った拠点のデータベースノードで処理を再開でき、評価対象の更新処理ではデータの欠落や重複は確認されませんでした。
ただし、遮断直後に処理性能が一時的に大きく低下したケースがあります。障害拠点に直接依存しない処理への影響や、再開後も障害前より性能が低いケースも確認されました。処理を続けられるかだけでなく、再開後に必要な処理量を確保できるかも、設計時の確認点になります。
三菱UFJ銀行が金融分野の活用シナリオと検証条件を、NTTデータグループがプロジェクト管理やデータベース設計・構築、検証推進を担当しました。NTT西日本はAPNを含む検証環境とネットワーク基盤を担当しています。三社は構成、データ配置、障害時の制御方式などの検討を続け、災害時の金融サービス継続性の向上を目指します。
影響する会社・しない会社
- 影響する: 離れた複数のDCを使う金融システムを検討している会社です。今回の検証は、その構成での通常時と通信遮断時の性能を評価する際の参考になります。
- 影響する: 分散データベースを使った事業継続を検討する会社です。ただし、結果は国内3拠点5ノードという検証条件に基づきます。別の構成でも同じ効果が得られると確認されたわけではありません。
- 影響しない: 既存サービスの契約変更や必須の設定変更が必要になる対象企業は、発表には書かれていません。この検証結果だけを理由に、自社が回線変更の対象になったと判断する必要はありません。
情シスが今日やること
発表には、特定の管理画面での操作や設定変更期限は示されていません。導入や拠点分散を検討している場合は、次の順に確認するとよいでしょう。
- 今日、ネットワーク構成図とデータベース構成資料を開き、拠点数、ノードの配置、拠点間通信に依存する処理を整理します。今回の3拠点5ノードとの違いを、比較の前提として残してください。
- 性能評価を依頼する前に、回線担当者とデータベース担当者へ検証条件を共有します。約1.7倍は模擬環境での結果であること、距離は遅延の換算値であることを明記します。
- 次回の障害試験計画を確定するまでに、確認項目を追加します。処理再開の可否だけでなく、遮断直後と再開後の処理量、他の処理への影響、更新データの欠落・重複を分けて評価します。
- 導入判断の前に、システム責任者と事業継続の担当者へ、再開後も性能が落ちる可能性を説明します。構成、データ配置、障害時の制御方式について、委託先に確認する事項をまとめます。