警察庁とMicrosoft、JC3(日本サイバー犯罪対策センター)が連携し、日本の個人や法人を狙うフィッシング詐欺を支える犯罪インフラを停止したと公表しました。個別の偽サイトをひとつずつ消すのではなく、それらを量産する「供給元」そのものが差し押さえられた、という点が重要です。この記事は、3者の公式発表をもとにまとめます。
何が止められたのか
止められたのは、フィッシング詐欺を「サービス」として支える、3つの基盤です。
- 不正なMicrosoft・Googleアカウントや、詐欺ツールを売買する闇マーケット
- 企業・銀行・官公庁をかたる偽サイトやメッセージを、量産する基盤
- メールやSMS、Web用の、なりすましのテンプレート(2,300種類超が確認)を提供する基盤
これらは、攻撃者が偽サイトやなりすましメールを、手早く大量に作るための「道具屋」のような存在です。これらが差し押さえられたことで、直近で詐欺を仕掛ける手段が、一時的に断たれました。
連携の中身と、規模
Microsoftのデジタル犯罪対策部門(DCU)が捜査を主導し、米国フロリダ州南部地区の連邦地方裁判所に民事訴訟を起こしました。警察庁の資料によると、今月6日に提訴し、8日に裁判所の命令が出て、その命令にもとづいてドメインの差し押さえなどが行われました。警察庁は実態の解明と捜査を支援し、JC3は会員組織からの情報で、日本での被害の実態や規模を提供したとしています。
規模として、次の数字が公表されています。
- 不正アカウントを扱う闇マーケット関連のアカウント: 2万件超を無効化
- なりすまし・詐欺用のドメイン: 10万件超をブロック
- 2026年1月以降、これらの基盤を経由して配信された悪意あるメッセージ: 10億件超
- 標的は、150か国を超える
依然として残るリスク
テイクダウンは、強力な一打ですが、万能ではありません。
とくに、失効した(使われなくなった)ドメインを乗っ取って、なりすましに悪用する手口が指摘されています。NPOや学校の失効ドメインが悪用された例もあります。自社や関連団体が持つドメインの管理が、あらためて問われます。
影響する会社・しない会社
- 影響する: 従業員や顧客が、銀行・取引先・官公庁をかたるフィッシングの標的になりうる、すべての会社です(つまり、ほぼすべての会社です)。
- 影響する: 使わなくなったドメインを、放置している会社です。失効したドメインが乗っ取られ、なりすましに使われる恐れがあります。
- 影響する: Microsoft 365などのアカウントを使う会社です。不正に作られたアカウントや、乗っ取りの監視が要ります。
- 影響しない(誤解に注意): 自社のブランド名が、なりすましのテンプレートに含まれていること自体は、自社システムの侵害を意味しません。
情シスが今日やること
- 認証情報を守る運用。銀行・取引先・官公庁・社内のヘルプデスクをかたるメール・SMS・電話で、パスワードや多要素認証のコードを入力させる手口を、疑う運用を社内に広げます。
- 不正アカウントの監視。Microsoft 365などで、不正に作られたアカウントや乗っ取りを監視し、多要素認証や条件付きアクセスを効かせます。
- 失効ドメインの棚卸し。自社や関連団体が持つドメインのうち、放置しているものや、失効する予定のものを洗い出し、乗っ取り対策を考えます。
- 自社ブランドのなりすまし注意。自社の名前が、なりすましに使われうる前提で、顧客や従業員へ、本物の見分け方を案内します。