ノーコード/ローコードで業務の自動化を組める定番ツール「n8n」に、複数の脆弱性が公表されました。n8n公式が2026年10月14日に、GitHubのセキュリティアドバイザリとして10件を一度に公開したものです。深刻度はHigh 3件・Moderate 7件で、Critical(緊急)はありません。いずれもn8nにログインできる内部の利用者が前提で成立します。n8nは多数の外部サービスの認証情報をためる基盤のため、更新と、公開範囲・権限の見直しを、公式情報をもとに整理します。
何が公表されたのか
n8nは、各種のSaaSやデータを組み合わせて業務を自動化するツールで、無料で自前運用(セルフホスト)できます。今回の10件は、すべてGitHubのセキュリティアドバイザリ(GHSA)として公開され、CVE番号はまだ付いていません。修正版は、2.x系が2.44.1以降、1.x系が1.123.85以降で、これらに更新すれば今回の全件がカバーされます(エラーワークフローに関する1件は2.42.2・2.41.5でも修正)。
重要なのは、10件すべてが「n8nにログインできる内部の利用者」を前提にしている点です。認証なしで遠隔からコードを実行されるものや、認証をすり抜けるものは、今回のバッチにはありません。公開時点で、悪用やPoC(実証コード)の公開、CISAの「悪用が確認された脆弱性の一覧(KEV)」への掲載も確認されていません。
n8nの10件の脆弱性の要点と、更新・公開範囲の見直し(編集部作成)作成: 編集部 / もとの資料: 情シスのミカタ編集部
内容: XSS・越境アクセス・DoS・認証情報の漏えい
深刻度が高い主なものは、次のとおりです。
- 保存型のクロスサイトスクリプティング(GHSA-mp7q-23hg-35cf・CVSS 8.4): Webhookの応答を通じて、n8nの画面上でスクリプトが実行され、ほかの利用者のセッションで動くおそれ
- 別プロジェクトへの越境アクセス(GHSA-wvjj-qg37-pv73・CVSS 7.2): ワークフローのIDの細工で、本来見えない別プロジェクトのデータ(Data Table)を閲覧・改変・削除できるおそれ
- サービス停止(GHSA-m7gv-mpg5-7c9v・CVSS 7.1): ファイル操作のノードで、n8nのプロセス全体が止まるおそれ
また、保存した外部サービスの認証情報(Git・MongoDB・Google Cloud・SeaTableなどのパスワードやトークン)が、本来は資格情報を読めない内部の利用者に漏れうる問題が複数含まれます。いずれも深刻度はModerateで、外部の匿名の攻撃者が直接奪うものではありませんが、n8nが多数のサービスの認証情報をためる基盤であることを踏まえると、軽視できません。
危ないのは「公開している」「権限を広げすぎている」こと
今回の脆弱性は、内部の利用者が前提です。そのため、実務でとくに気をつけたいのは、(1)n8nの管理画面やWebhookをインターネットに直接公開していないか、(2)半信頼の利用者に、安易にワークフローの作成や編集の権限を与えていないか、の2点です。
n8nは過去に、実際に悪用されてCISAのKEVに載った脆弱性(別件・CVE-2025-68613)もあり、インターネットに公開されたままの未修正インスタンスが多数あったと報告されています。今回のバッチとは別の話ですが、「n8nを外部に公開していないか」という確認は、引き続き有効です。
影響する会社・しない会社
- 影響する: n8nを自前で運用(セルフホスト)している会社です。とくに、複数の利用者でワークフローを作っていたり、管理画面・Webhookを外部から届く状態にしている場合、優先度が上がります。
- 影響が小さい: クラウド版のn8n Cloudを使っている場合は、提供元が管理・更新します。
- 影響しない: n8nを使っていない会社です。
情シスが今日やること
- 最新版へ更新する: n8nを2.44.1以降(2.x系)または1.123.85以降(1.x系)へ更新します(npmやDockerで)。n8n公式は「回避策は完全な修正ではない。更新が解決策」としています
- 公開範囲を確認する: n8nの管理画面やWebhookが、インターネットから直接届く状態になっていないかを確認します。リバースプロキシでの認証・IP制限、SSRF対策、Webhookのネットワーク制限を行います
- 権限を最小にする: 利用者のアカウントの権限を見直し、半信頼のメンバーに、安易にワークフローの作成・編集の権限を与えないようにします
- 認証情報を見直す: 認証情報が漏れうる問題に該当する運用では、念のため関連するサービスのパスワードやトークンを変更し、実行ログの閲覧権限を絞ります
- 記録を残す: 確認した版・公開範囲・権限、更新した版、対応日を資産台帳に残します
n8nのような自動化の基盤は、便利な一方で、多くのサービスの認証情報が1か所に集まります。今回のバッチは「外部から誰でも」ではなく「ログインできる内部者・設定ミス・公開しすぎ」が効く類です。更新とあわせて、公開範囲と権限の基本を、この機会に点検してください。